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手仕事探査隊

第35回 匠のお仕事~郷土玩具編 その五 
 張り子面 彩色と仕上げ

 ひと晩自然乾燥させたお面を再び型にはめ、炭火で乾燥させます。
 時々炭がはぜる音がする以外は、柳屋さんの工房はとても静か。
 ひっそりと静かな部屋でしばらく待ち、水分が十分に飛んだら、いよいよ彩色です。

 まずはゼラチン溶液を塗りますが、これは胡粉が浮いてくるのを止めるために行う作業です。
 ゼラチンが乾いたら、酸性染料・スカーレットを混ぜたものを塗ります。
 染料が乾いたら、透明感を出すため、再度ゼラチンを塗り、乾燥させます。
 続いて、光沢を出すため、膠溶液を塗ります。
 さらに、膠と染料を合わせたものを塗る作業を繰り返します。
 気温や湿度などの条件により作業の回数は変わりますが、田中さんは納得のできる鮮やかな朱色になるまで何回も重ね塗りをしていました。
 時期的には、温度・湿度が低い晩秋から冬の頃が張り子作りに最も適しているそうです。

スカーレット
酸性染料

彩色
彩色

 猩々面に前髪をつける最終工程は田中宮子さんの担当。
 麻の尾をできるだけ細く漉き、直接染料で染め上げておいたものを前髪に見立て、ボンドでお面に貼り付けます。
 赤い奉書紙で留めてできあがり。
 ブラシで前髪を整えられている猩々は、まるでお母さんに髪を梳かしてもらっている子どものように見えます。

仕上げ
仕上げ

箱
猩々面の箱

 お面を紙箱に入れたら、宮子さんが硯と筆を出してきて、赤い紙に「猩々面」と墨書します。この紙を箱に貼ったら製作の全工程が終了、後は出荷を待つばかりです。
 乾燥を含めると、ひとつの猩々面が完成するまでに要する時間は約1週間。
 静かな部屋で黙々と手を動かされる柳屋さんご夫妻の姿と、その丁寧で妥協のない仕事ぶりに、ただ感嘆しました。

 次回は最終回スペシャルとして、柳屋さんの張り子面以外の玩具もご紹介します。お楽しみに!

さる豆知識 「染料と顔料」
胡粉と膠 「染料」と「顔料」はともに着色に用いる微粉末です。
 水や有機溶媒に溶かして繊維製品や皮革・紙などを染色するものを「染料」、色彩を持ち、溶媒に溶解せず何らかの媒体に分散させて使用されるものを「顔料」と総称します。
 顔料の方が歴史は古く、古代人の描いた洞窟の壁画に使われた絵の具が顔料の始まりと言われます。有色の石や土が原料でしたが、技術の進歩とともに人工的な合成が可能になり、塗料や着色料、化粧料など広く用いられています。
 染料は顔料より後の時代に生まれ、藍(インディゴ)などの植物を主な原料として天然染料が使われてきました。19世紀には合成染料も開発され、今では1万種類以上が作り出されています。
 染料と顔料は同じように着色する役目を果たしますが、その性質は異なります。柳屋さんも商品ごとに使い分けておられます。
 例えば、同じ赤い張り子面でも、「赤鬼」のように顔料を使って彩色するものもあれば、「きりん獅子」や「猩々」のように染料を使うものもあります。

更新日:2009年3月23日

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