美術鑑賞の秋です。ちょっと民芸できる展示会が始まりました。
鳥取民藝美術舘にて企画展「鳥取民藝運動の軌跡」(会期:来年4月22日まで)が始まりました。鳥取の民芸運動を知るにはとても良い展示会です。
当美術館学芸員 尾崎麻理子氏から今回の展示会の見どころを寄稿していただきました。1回目染織品、2回目木工品、3回目陶磁器の3回に分けて紹介します。
・・・・・・
鳥取民藝美術舘 企画展「鳥取民藝運動の軌跡」から その1
鳥取民藝美術舘は、民藝運動家・吉田璋也(よしだしょうや)(明治31年~昭和47年)が創設した美術館です。
璋也は柳宗悦に師事し、昭和六年より鳥取にて民藝運動を展開しました。古典に学び、現代に相応しい民藝品を制作した「新作民藝運動」は陶磁器、木工、金工、染織、和紙など多岐にわたり、鳥取の工藝文化の礎となりました。
当館では、現在所蔵品調査を行なっておりますが、この2年の成果を展示公開する「企画展 鳥取民藝運動の軌跡」を現在開催しています。民藝のことはよく知っているという方でも、「あれ?こんなものもあったのか」という発見のできる内容になっています。今回の染織・木工・陶器の見どころをご紹介しましょう。
○染織品
柳宗悦が創刊した雑誌『工藝』は装丁を染色家・芹沢銈介や板画家・棟方志功などが行い、各地の和紙を用いて製本されるという極めて芸術性の高い雑誌でした。
装丁は年ごとに異なる産地の織物を用いた時期もあり、璋也が鳥取の民藝運動にて木綿制作に力を入れていた昭和初期には、『工藝』第13号から第24号(昭和7年1月号~12月号)までを、「因州木綿」を使用して作られています。
この木綿地は璋也の発案により、敷物、カーテン、座布団など様々に加工し、販売したことが当時の資料に記されていますが、その後、木綿糸禁止となり生産されなくなりました。
この度、これらの布が見本として当館に多数保管されていたことがわかり、工藝の表紙となった布だけでなく、様々な格子柄の布が見つかりました。
丹波布や裂織の影響を受けた図柄など80点以上の色彩豊かな布は、因州木綿の質の高さを物語っています。
会場ではこれを用いた座布団に座ることもできます。是非お試し下さい。
また、「ににぐりネクタイ」は英国製のネクタイから璋也がヒントを得て考案したものです。くず繭の再生方法として生み出されたものですが、現在見てもモダンで、色の組み合わせ方も様々。展示にはかつて、ネクタイのディスプレイ用に作られた掛台を利用して、当時を彷彿とさせた陳列を行っています。(次回は木工の話です。)