伝統工芸の世界で、現代的な表現に挑戦し、活躍する陶芸作家たちがいます。なかでも、社団法人日本工芸会は毎年、日本伝統工芸展を開催し、現代作家の作品や活動を一般の方々に広く、紹介しています。
鳥取県在住の作家では、やなせ窯 前田昭博氏と国造焼 山本浩彩氏が日本伝統工芸展などで積極的に作品を発表しています。
やなせ窯 前田昭博氏は、大学在学中に白磁に出会い、造形性の強い作風の現代的、彫刻的な作品を発表しています。白磁の色が透明感を増し、柔らかい丸みを持った地肌に面取りを施した作品は、光と影が美しく、現代感覚があふれており、国内外の展示会で数多く受賞しています。
白瓷面取鉢
日本の伝統工芸は世界的にも評価が高く、イギリス・ロンドンにあります大英博物館にて、今夏7月19日から日本の工芸を紹介する企画展「技の美 伝統工芸の五十年」が始まります。やなせ窯 前田氏の作品も現代の日本陶芸を代表する作家の一人として紹介されます。
白瓷面取壷(東京国立近代美術館収蔵、今回大英博物館展示作品)
国造焼 山本浩彩氏は、焼締と窯変により、アカネ色やパステルカラーの青色などのグラデュエーションが美しい色彩豊かな作品を数多く発表しています。焼締めた陶土の地肌が素材感を主張しながらも、窯の炎が綾取る穏やかな色調との組み合わせが新鮮です。彩色のため、何度も窯の雰囲気を変え、手間暇かけて焼成して仕上げてあります。
焼締窯変花入
最近の国造焼 山本浩彩氏は、新しい試みの瑠璃色窯変の大皿や菓子鉢などを創作しています。ちょっとエキゾチックな感じでエジプトや中近東の空気を感じます。つや消しのアカネ色から金属的な輝きがある瑠璃色へ新たな挑戦が展開しているところです。
瑠璃色窯変皿(左側)
鳥取県の窯元軒数こそ30余りと全国的に少ない方ですが、茶陶や民芸から現代陶芸まで幅広い分野で元気に活躍しています。