普段はなかなか目にする機会のない伝統的な技術や技法を紹介する新連載「匠のお仕事」。
まず最初は、鳥取県の誇る伝統工芸品「因州和紙」です。
因州和紙の起源は平安時代にもさかのぼるとも言われますが、現在の製造工程をごく簡単にまとめると、下の図のようになります。
この連載では、因州和紙の製造工程を、伝統工芸士・西村信吾さんの下で修行中の中原寛治さんに、一部実演をまじえて詳しく解説していただきます。
第1回めの今回は「1.原料繊維の抽出」の工程についてです。
原料の
下処理 |
煮 熟 |
精 選 |
叩 解 |
配合・抄紙 |
圧搾・脱水 |
乾 燥 |
二次加工
・仕上げ |
(1)刈り取り
原料を刈り取って、束にします。
和紙の主な原料は三椏(みつまた)、楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)で、作りたい和紙によって原料を選びます。
(2)蒸す
皮を剥きやすくするために蒸します。
雁皮などは蒸さずに皮を剥く場合もあります。
(3)皮剥ぎ(かわはぎ)
外皮の最も外側にある「黒皮」をむくことです。
乾燥させて保存することもできます。
「外皮」の部分を和紙の材料として使います。余った「木質」の部分は生け花などに利用されます。
外皮をさらに分けると、3つの部分から構成されています。
(4)表の皮を取り除く
「甘皮」についている赤い鬼皮(黒皮のむき残し)を丁寧に取り除きます。
踏んで鬼皮を落とすと同時に楮の繊維を柔らかくする「かごふみ」と、撫でるように刃物で節(ふし)やキズを取り除く「かごなで」のふたつの作業に分けられます。
美しい和紙を作るために、不要なものは徹底的に落とします。
和紙の材料として「白皮」だけを使うことが多いのですが、因州では「白皮」と緑っぽい「甘皮」の両方を使うのが特徴のひとつです。
※「かご」とは楮のことですが、「三椏かご」などのように、この種の原料一般を指す場合もあります。
(5)水に晒す(洗い)
皮についた不要なものを洗い流します。
「洗い」の作業
(6)かご干し
洗った原料を一本ずつほどいて竿にかけ、天日で一日、乾燥させます。梅雨に入る前に一気に行います。
通常はかこ干しを行って保存しますが、洗った原料をすぐに使う場合はそのまま煮塾することもあります。
「かご干し」作業
道具の紹介「かごなで包丁」
包丁に似た長い柄をした刃物です。昔からかごなでに使われています。
長い柄をぐっと掴んで使います。