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鳥取県立中央病院ホームページへお越しの方へ



鳥取県立中央病院は新しいホームページとなりました。

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新サイト「鳥取県立中央病院」

脳卒中センター

1:センター長あいさつ

 鳥取県立中央病院 脳卒中センターのホームページへようこそお越しくださいました。
鳥取県立中央病院は、2019年に新病院になりますが、その時には真新しい脳卒中センターが病院6階に設置されます。
 リハビリテーション室と隣り合わせになっており、脳神経外科と神経内科が病棟に入ります。
山陰で最も新しく、最もレベルの高い脳卒中センターになるように準備を進めていますので、ご支援をよろしくお願い致します。
 現在の病院でも、脳外科、神経内科の密接な連携体制をとり、また病棟看護師ならびにリハビリテーション室、医療連携センターならびに病院内の嚥下口腔サポートチームなどの各チームと、密接な連携をとりながら、脳卒中で救急に来られる患者さんに対応させていただいています。
 ホームページではこの詳しい内容について皆さんにご案内いたしますので、どうぞご覧下さい。
鳥取県立中央病院は、院内だけではなく、東部消防局との連携、あるいは急性期を担う鳥取市内の4病院との連携、回復期医療を担う回復期病院との連携、地域のかかりつけ医、介護分野の皆様との連携も大切にし、顔の見える関係を作るようにしております。
 このような、顔の見える関係者のネットワークで皆様の健康を守り、脳卒中の治療を行っています。
これからも 鳥取県立中央病院 脳卒中センターをどうぞよろしくお願い致します。

2:副センター長あいさつ

 脳卒中は医学と医療の進歩に伴い、死亡率自体は減少していますが、入院受療率は、がんの1.5倍、心臓病の3.5倍に達し、寝たきりや認知症の原因の第一位であり、高齢化が進むわが国における極めて重要な疾患です。単に長く生きるかどうかということよりも、生活の質がより重要視される時代です。実際、高齢者の医療ニーズの調査において、延命は調査項目中で最下位であり、活動性を保ち、生活機能を維持すること(自立性を保つこと)が上位にあります。 人口の急激な超高齢化により2025年(65歳以上の高齢者人口が日本の人口の3割に達し、75歳以上の後期高齢者が4人に1人となる)、2035年(人口の3人に1人が高齢者)、2055年(人口の約4割が高齢者、人口の3人に1人が後期高齢者)に向けて、これからの超高齢社会では、75歳以上のみが増える未曾有の人口構造となり、疾病構造が変わり、医療需要が変わることにより、それにあった医療供給体制に変わっていきます。生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)による脳動脈硬化、複数疾患(心疾患、腎疾患、がんなど)の併存、生活習慣そのもの(喫煙、多量飲酒、肥満など)に加え、脳卒中における最大の危険因子は加齢であり、誰でも高齢になると脳卒中リスクが高まります。平均寿命が延びますと、今度は、長く生きることによる様々なリスクや苦悩が生じてきます。ひとたび脳卒中を生じると、寝たきりとなることも多く、いわゆる“ぴんぴんころり、ぽっくりと逝く”こととは正反対の不本意な余生を余儀なくされることが多々あります。それにより、患者さん本人のみならず、ご家族の生活や将来設計にも大きな影響が及びます。したがって、健康寿命を延ばすことが大切ですが、それでも不幸にして脳卒中を生じた場合、一刻も早く適切な医療を受けていただき、患者さんにとって残念な晩年とならないように努力するのが我々の務めです。
 当院の脳卒中センターでは、それぞれの患者さんの病態に応じた最適な治療を選択し、急性期治療の間においても、適切なリハビリにより最大限の機能回復に努め、少しでも元の生活に近づけるように治療を進めていきます。 最大限の努力を行っていきたいと考えておりますが、そこで重要になってくるのがマンパワーです。今後、予想される大きな需要に対して、より多くのマンパワーが必要になります。是非当院の脳卒中センターに力をお貸しください。よろしくお願いします。

3:鳥取県東部の脳卒中医療体系の概要

 鳥取県東部地域では、消防との連携を緊密にはかり、脳卒中が疑われる緊急性のある方は、脳卒中の救急対応可能な病院へ救急車で速やかに搬送する体制を整えています。救急搬送の際には、病院に到着する前より、病院前脳卒中救護のスケール(倉敷病院前脳卒中スケール;KPSS、シンシナティ病院前脳卒中スケール;CPSS)の記録を開始し、急性期病院への引継ぎが行われます。
 鳥取県東部地域における脳卒中診療は、地域連携パスという仕組みを使い、急性期、回復期、維持期といったそれぞれの病院の役割分担を明確にし、地域の病院同士が協力する体制で行っています。発症時の救急診療は「急性期」、日常生活復帰に向けてのリハビリテーションは「回復期」、普段の体調管理はかかりつけ医や施設などの「維持期」にあたります。脳卒中センターは救急を担う急性期病院の位置づけとなりますが、必要な患者さんについては、1年に1回程度の画像検査を確認し、維持期の診療のサポートを行っています。

4:超急性期脳梗塞の東部地区診療体制

 これまで超急性期の脳梗塞治療は急性期血栓溶解療法(rt-PA)が主体でした。これまでにも急性期脳梗塞における脳血管内治療は行われていましたが、2015年になりその有用性が次々と報告されてからは特にさかんに行われるようになってきました。鳥取県東部地区では脳血管内治療まで行っているのは当院だけであり、他病院からの超急性期脳梗塞患者の転院搬送を積極的に受け入れています。可能であればrt-PAを投与しながら搬送をしていただくようお願いしており、それが難しい場合でも病院毎に個別に対応しています(検査結果の提供とエダラボンの投与を行いながら搬送いただくなど)。また、血管内治療のみが適応となる症例も少なくなく、そちらに関しても積極的に受け入れております。その他、複数の病院のスタッフが参加する合同カンファレンスも開催しており、定期的な見直しを行い、医療体制のさらなる向上を目指した取り組みも行っております。

5:脳卒中チーム

 医師、看護師、リハビリスタッフ、放射線技師、検査技師、薬剤師、医療ソーシャルワーカー(MSW)などによるチームで脳卒中医療を行っています。脳梗塞は神経内科を中心に、脳出血およびくも膜下出血は脳外科を中心に対応しており、重症度により救命救急センター、ハイケアセンター(HCU)、一般病棟のうち適切な病棟にて入院いただいております。脳卒中朝カンファレンスを毎週金曜日朝に開催しており、その1週間に入院になった方および今後の対応の相談が必要な方について多職種で検討しています。学会や研究会への参加も積極的に行っており、院内での勉強会も欠かさず開催しています。また、新病院での脳卒中センターも見据えて、脳卒中リハビリ認定看護師の育成も行っております。スタッフの連携も密接にとれており、よりよい医療が提供できるようスタッフ一同頑張っています。

6:当院における脳梗塞の内科治療

●急性期脳梗塞に対する血栓溶解療法(tPA静注療法)

 脳梗塞は脳血管が詰まる事で血流が遮断され、脳細胞に酸素や栄養素が運ばれなくなり、脳の神経細胞が死んでしまう疾患です。脳細胞は非常に弱く、一度血流が途絶するとすぐに死んでしまい、再生もしないため、詰まった血管を早期に開通させる必要があります。この脳血管に詰まってしまった血の塊(血栓)を溶かし、血流を再開させる治療が血栓溶解療法です。
この治療に必要なtPA製剤は2005年に厚生労働省で脳梗塞に対して認可されました(1)。症状を劇的に改善させる可能性がある治療であり、当院でもこの治療を受ける事ができますが、副作用に注意する必要があり、その使用にはいくつかの条件が存在しています。

●血栓溶解療法を受けられる条件と副作用

 最も重要な条件は、発症から4.5時間以内での使用でなければならない事です。もしも発症した時点がはっきりせず、脳梗塞による麻痺などで本人から確認する事ができない場合には、本人が最後に元気であったと確認できた時間(最終健常時刻)から4.5時間以内でないと使用することができません。その効果は4.5時間以内であっても治療開始が早い程良好になるとされており(2)、適応時間内であっても発症から出来るだけ早く治療を行う事が重要になります。
副作用として薬剤に対するアレルギーなどが挙げられますが、最も重大な副作用は出血です。血栓溶解療法は血の塊を強力に溶かす事ができますが、その分出血をきたす可能性が高まります。血栓溶解療法をした方のうち6%前後(3,4)に症状の悪化を伴うような脳出血が発生するとされています。

●脳血管内治療

 血管内にカテーテルなどを挿入して、脳の血管内で直接治療を施す事ができます。オランダにおいて脳梗塞患者に対する大規模な試験が行われた結果、特定の血管において発症後6時間以内に行った脳血管内治療は有効であると2015年に発表されました。当院ではその結果を受け、神経内科と脳外科が連携しながら施行可能な患者さんに対しては脳血管内治療を検討する方針としています。

●一般的な点滴治療とリハビリ

 血栓溶解療法や脳血管内治療を受けられない場合は、従来使用されてきた抗血栓薬(血を固まりにくくする薬)や脳を保護する点滴を使用していきます。この治療は血液の流れをよくしたり、脳梗塞の早期に生じる脳浮腫(脳梗塞の部分がむくむ事)を改善する目的があります。ただ、先述のように脳自体は血流がなくなるとすぐに壊死してしまうため、これらの治療は起きてしまった脳梗塞がさらに悪化していかないようにする事が主な役割になります。

●リハビリテーション

 昔は脳梗塞治療の際にはとにかく安静に寝ておくことが推奨されていましたが、現在はできるだけ早期から手足の関節を動かしたりなどのリハビリテーションを行う事が推奨されています。脳梗塞による症状が不安定で悪化の傾向がケースもあるため、安静にしておく期間自体は人によって様々ですが、そのような方も症状が落ち着けば早期にリハビリテーションを開始していきます。内容も患者さんの状態に合わせて必要なものを行うようにしており、簡単な関節運動や、歩行訓練、日常動作の訓練(食事、トイレ、着替えなど)などを行っていきます。

●予防薬

 一度脳梗塞を生じると麻痺やしびれなどの後遺症をきたし、生活に様々な困難が生じるようになります。さらに、一度脳梗塞になった方は再発をきたしやすく、再発を繰り返せば後遺症も増えていってしまいます。上記のような血栓溶解療法や血管内治療があってもその改善率は100%ではないため、まずは脳梗塞自体が生じないように予防をしていく事が非常に重要となります。
脳梗塞の原因は動脈硬化によるものや、心臓の不整脈によるものなど様々な原因がありますが、今後できる限り脳梗塞の再発を低下させるように、その原因にあわせた内服治療を開始していきます。アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール、ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンなどがあります。また、動脈硬化を進行させたりするような高血圧や糖尿病、高コレステロール血症などの是正も行っていきます。

参考文献;

  1. 日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会. 脳卒中治療ガイドライン2015
  2. Aoki J, Kimura K, et al. NIHSS-time score easily predicts outcomes in rt-PA patiens: the SAMURAI rt-PA registry. J Neurol Sci 2013;327:6-11
  3. Institute of Neurological Disorders and Stroke rt-PA Stroke Study Group. Tissue plasminogen activator for acute ischemic stroke. N Engl J med. 1995;333(24):1581-1587.
  4. Emberson J, Lees KR, et al. Effect of treatment delay, age, and stroke severity on the effects of intravenous thrombolysis with alteplase for acute ischaemic stroke: a meta-analysis of individual patient data from randomised trials. Lancet. 2014;384:1929-35

7:当院における脳梗塞の外科治療

 脳梗塞(虚血性脳血管障害)に対する外科的治療には、超急性期(発症直後)の治療から、亜急性期治療、慢性期治療まで様々なものが存在します。

1) 血管内治療(カテーテル治療)

 発症直後の超急性期治療として、脳梗塞の発症4.5時間以内であればtPA という血栓を溶解するお薬を静脈から投与して,血栓を溶解する治療を行うことができますが,この薬でも血栓が溶解しないような場合あるいは患者さんによってはこの薬が使えないような場合もあります.このようなtPA 無効例,あるいは使用不可能な場合に原則として発症から8時間以内であれば血栓回収器具を用いて血流を再開できる場合があります。
 国内では脳卒中ガイドライン2015の本文改訂には間に合わなかったのですが、2015年に発行されたAHA/ASAガイドラインでは、発症前 mRS 0,1、IV tPAが施行された急性期脳梗塞、ICA・M1閉塞、18歳以上、NIHSS 6点以上、ASPECTS 6点以上、発症6時間以内に治療開始可能な例ではステントリトリーバーを用いた血管内治療が推奨レベルの最も高いClass 1で推奨されています。
治療は、大腿動脈とよばれる足の付け根の血管からガイディングカテーテルと呼ばれる直径3mm程度の管を閉塞血管手前まで誘導します。ガイディングカテーテルを通して血栓除去用の器具を閉塞血管まで誘導し血流の再開通を試みます。 2011年にペナンブラカテーテルとよばれる血栓を吸引除去するシステム、2014年にステントタイプの血栓回収カテーテル(ソリティア、トレボ)が認可されています。これらのシステムを症例毎に使い分け治療を行っています。
 問題点としては血流が再開した時点ですでに脳梗塞に陥ってしまっていれば血流を再開しても症状の改善が得られないばかりか、脳出血を合併して、より重篤になる可能性もあります。
 最近では、この治療の対象となる症例数が増加傾向にあります。


 また、亜急性期から慢性期の治療として、頚部内頚動脈狭窄症の治療があります。
頸部内頸動脈狭窄は、近年増加傾向にあり、進行すると血液の流れが妨げられて遠位の血流が減少したり、狭窄部で血液の流れが乱れることによりできた血の塊(血栓)が遠位の細い血管に詰まったりすることにより、脳梗塞を生じたり、脳虚血症状を生じることがあります。 脳梗塞を来たすと、その部位に応じた神経症状(運動麻痺、知覚障害、言語障害、視機能障害など)を呈します。
 治療の目的は狭窄によって引き起こされる新たな脳梗塞を予防することです。方法としては、(1)内科的薬物治療、(2)直達手術、(3)血管内治療によるステント留置術があります。内科的治療としては、高血圧、高脂血症、糖尿病などの動脈硬化増強因子のコントロールとともに、狭窄部に起こる血栓症を防ぐための薬物治療を行います。 50%以上の狭窄を有する症候性の場合、無症候性でも80%以上の狭窄を有する場合には外科的な血行再建術を行ったほうが脳梗塞の予防効果が高いといわれています。
外科的な治療法には頚動脈内膜剥離術(直達手術)と頸動脈ステント留置術(血管内治療)があります。 頚動脈内膜剥離術は、狭窄部を解除して血液の流れを改善する手術です。この手術は、全身麻酔の下に、狭窄の原因となっている動脈硬化塊である粥腫を除去するものです。
 一方、頸動脈内膜剥離術の危険因子(心臓疾患、重篤な呼吸疾患、対側頸動脈閉塞、対側喉頭神経麻痺、頸動脈直達手術の既往、頸部放射線治療の既往、頸動脈内膜剥離術後再狭窄)を持つ症例が血管内治療の適応となりますが、最近では高齢化の影響と高リスク症例の増加から、適応となることが多く、また、低侵襲性の観点からも、血管内治療を希望される患者さんが多くなっています。
 血管内治療では、足の付け根に局所麻酔したのち動脈を穿刺し、ロングシースと呼ばれる直径約3mmの管を、頚部の病変手前まで誘導します。この管を通して、手術中に狭窄部から脳に血栓がとばないようにブロックするため、バルーン(風船)のついたガイドワイヤーまたはフィルター(網目状の傘のようなもの)を挿入します。その後拡張用のバルーン、ステントを挿入し、病変部を広げます。ステント拡張後、再度バルーンで拡張を行うこともあります。血栓を吸引して手術を終了します。手術後、シースを抜去し穿刺部を止血します。細心の注意をはらって手術を行いますが、一過性のものを含めて5%程度の合併症の可能性があります。主なものとして、以下のものが挙げられます。

(1) 脳梗塞

 脳梗塞がおこると、麻痺が起こったり、重篤な後遺症が残存する可能性があります。

(2) 過灌流症候群

 不穏、意識障害、偏頭痛様の頭痛、てんかん発作、局所神経症状、脳出血を生じることがあります。過灌流症候群は約1.2%に生じ、そのなかでも重篤な脳出血は約0.74%に生じるといわれております。脳出血を生じると重篤な後遺症が残存する可能性があります。

(3) 徐脈、低血圧

 頚動脈分岐部にある圧受容器が、ステントやバルーンで圧迫されると血管反射による一時的な徐脈・低血圧を生じることがあります。
 また治療後に狭窄をきたし再度治療が必要となることもあります。

2) バイパス術(脳血管吻合術)

 対象となる疾患は、内頸動脈閉塞症、中大脳動脈閉塞症、もやもや病、未破裂脳動脈瘤などです。一般に、急性期でのバイパス術の適応となる症例は非常に少なく、大部分は亜急性期ないし慢性期での治療になります。 バイパス術の多くは、頭蓋外―頭蓋内バイパス(EC-IC bypass)で、頭皮の血管を脳表(ないし脳深部)に吻合し、血流の不足している脳領域に新たな血流をもたらす手術で、上記の血管内手術で治療できない症例が含まれます(血管内手術とは相補的な関係になります)。その多くは、脳梗塞や一過性脳虚血発作を生じ、神経内科で入院治療を受けられている際に、精査により、上記病変を指摘され、手術適応の有無につき、脳外科紹介となります。 上記疾患に対しては、まずは内科的治療が第一選択ですが、最大限の内科的治療(薬物治療)を行っても脳虚血発作をコントロールできないケースでは、最後の手段として外科的脳血行再建術が必要となります。 それでは、具体的な症例を提示してみましょう。

 もやもや病の症例(出張手術例)ですが、この患者さんは、抗血小板剤 (血液をさらさらにする薬)2剤内服に加え、入院での点滴治療を追加するも、麻痺や失語などの脳虚血発作をコントロールできませんでした。 

 両側内頚動脈終末部が閉塞し、異常な血管網(もやもや血管)が認めらました。 術前、左側の脳虚血症状を繰り返しており、知能低下も認められました。



 もやもや病では通常、直径1mm未満の脆弱な血管(血管の壁が薄く弱い)にバイパスが必要です。11-0 ナイロン糸(直径 0.01mm)を使用して吻合します。緑のラバーダムの目盛り1枡が1mmです。
 確実に直接吻合を施行し、さらにこの後、硬膜と側頭筋の一部を使用して、間接バイパスを追加しました。 
 もやもや病に対する治療としては、現時点ではこのような脳血行再建術が最も有効であり、当院では、通常、直接間接併用バイパス(STA-MCA anastomosis + EDMS)を行っています。 術後、脳虚血発作は速やかに消失し退院可能となりました。 成人例でも術後にIQが改善することがあります。 もやもや病は、小児例のみならず、最近では成人例も増えており、また診断技術の進歩により、無症候性の症例も以前に比べ多く見つかるようになっています。 また、もやもや病では、脳出血で発症することがありますが、虚血発症例に対して上記手術を行うことにより、将来的な脳出血発症に対する予防効果も期待されます。

 バイパスの開存を術中に確認する方法として、2009年より、術中蛍光脳血管造影をルーチンで使用しています。


3) 外減圧術

重症脳梗塞(多くは心原性脳塞栓症)における、救命のための最終手段が、減圧開頭術(および硬膜形成術)です。薬剤での治療の限界を超え、脳腫張が進行し、切迫脳ヘルニアを生じるケースで時に行われますが、仮に救命できた場合でも、予後は大変厳しいことが多く、手術適応を慎重に判断する必要があります。



8:当院における脳出血の治療

1) 保存的治療(内科的治療)

 原則、脳出血では、手術適応の判断が必要ですので、脳外科医が主治医となって治療させていただきます。 脳出血の多くは、高血圧性のものですが、その他の原因(脳血管奇形等)によるものもあります。また、最近では、薬剤性(抗血小板剤、抗凝固剤)や悪性疾患(癌など)に起因するものも増えています。 脳出血の原因が何であるかにより治療方針が変わってきます。ここで一番大切なことは、ひとたび脳出血を発症すると、その出血の程度と出血部位に応じた症状が出現し、多くは後遺症として残ってしまうことです。 つまり、いったん出血により破壊された脳組織自体は基本的には回復が難しく、残された部位の機能代償に期待せざるを得なくなるということです。 したがって、治療の目的は、内科的治療の場合は、被害を最小限に食い止めるためのものと全身管理(血圧管理、肺炎予防その他)が中心になりますし、仮に手術を行う場合でも、既に出現した症状そのものを手術により治せるわけではなく、あくまで救命や二次的被害を最小化させるためのものであるということを十分に理解していただく必要があります。 また、一度脳出血を生じた患者さんは、再発することが多く、再発予防が非常に大切になります(初回が軽症ですんでも、二回目にはより重症となり、寝たきりになることがあります)。そのためにどうすべきかについても、入院中に詳しく指導させていただきます。

2) 外科的治療(脳内血腫除去術)

 入院時の状態および画像所見(CTなど)により、緊急で外科的治療が必要と判断される場合もありますし、経過中に血腫の増大等により、手術が必要となる場合もあります。脳外科医が手術適応の判断および最善の治療方針を立てます。内科的治療の方が望ましいと判断される場合は、内科的治療を行います。基本的に、脳出血における外科的治療の役割は、外交交渉が決裂した場合の武力行使のようなものであるとご理解ください。つまり、手術はあくまで最終手段であって、手術を行わずに治療できるのがベストですが、どうしても必要となるケースがあります。その際には、タイミングを逃さず、手術に踏み切ることが必要です。 繰り返しになりますが、手術は、既に生じた症状自体を良くするためのものではなく、そのまま内科的治療を継続した場合には、死亡する可能性が高い、ないし、より重症化すると判断される場合に行うものであることは十分にご理解ください。
 それでは、具体的にどのような外科的治療を行っているかにつき、ご紹介いたします。
 脳出血の手術は、従来は、大きく開頭し、肉眼ないし、手術用顕微鏡を用いて血腫を除去するのが常識でした(現在でもそれが一般的です)。 しかし、この方法では侵襲が大きく、手術時間も長くなり、術後の回復にも支障の出ることがあります。 また、小さな脳出血に対し、定位血腫除去術といって、特殊な装置を用いて針を刺して血腫を吸引する、より低侵襲な手術もありますが、位置決めをしてから盲目的に針を刺すもので、術中出血が生じても止血する手立てがなく、実際に再出血率が高く、超急性期には行えず、しかも血腫除去率が低いため、適応は限られています。    
 今日では、両者の長所を組み合わせ、短所を克服した第三の手術として、神経内視鏡下脳内血腫除去術があります。この手術では、通常、2cm程度の小さな穴を頭蓋骨に穿ち(症例によっては4cm程度の小開頭とすることもあり)、その穴から脳内に神経内視鏡を入れて血腫を除去する方法で、内視鏡で観察しながら止血操作も可能で、傷が小さく、手術時間も短く、術後の傷のトラブルも非常に少なく、術後の早期離床、早期リハビリが進みやすいという利点があります。すべての症例で適応になるわけではなく、慎重に適応判断しています。 2014年には待望の保険適応も通り、現在では、標準的な術式として全国的に行われるようになってきています。 高齢者の脳出血に限らず、世の中の流れからも、より低侵襲な手術が望まれ、今後、脳出血の手術の主流になるものと思われます。

 それでは、代表的な症例を提示してみましょう。
まず、高血圧性脳出血の中で最も代表的な被殻出血ですが、比較的小さな傷ですみ、手術時間も1時間から1時間半以内に終わります。通常は、安全性を重視して全身麻酔で行いますが、超緊急性のあるケースでは局所麻酔で行うことも可能です。


 次に、小脳出血ですが、この方法では、術者が一人で行っても通常2時間程度で終了します。 特殊な神経内視鏡専用手術器具を使用します。 第四脳室底を術中に確実に確認でき、術後の水頭症も防ぐことができます。 術後の髄液漏もなく、離床とリハビリが早く進むのが大きな利点です。





 その他、視床出血などに伴う鋳型状の脳室内血腫(急性閉塞性水頭症を合併)の症例では、硬性内視鏡と軟性内視鏡(先端が屈曲する内視鏡)を併用することにより、効率的に脳室内の血腫を除去することができ(第三脳室内および中脳水道内の血腫も除去可能)、その後の、水頭症コントロールが容易となり、髄膜炎の合併も減らし、さらに続発性の正常圧水頭症発症を減らせる可能性もあります。



9:当院におけるくも膜下出血の治療

 くも膜下出血は、脳卒中の中で最も致死率が高く、極めて悲惨な疾患です。 その原因の大部分は脳の動脈にできた瘤(脳動脈瘤)が破裂することにより生じます。 最重症例では、手術適応がなく、内科的治療(多くは延命治療)を行います。 手術適応があるケース(救命の可能性がある症例)では外科的治療がその中心になりますが、術前術後の内科的治療(全身管理)も非常に大切です。 脳動脈瘤破裂以外の原因によるくも膜下出血もあり、その場合、多くは内科的治療を行います。
 この手術は、くも膜下出血の患者さんに対して救命目的(受動的)で行う場合と、未破裂脳動脈瘤の患者さんに対して破裂予防目的(能動的)で行う場合の大きく2通りに分けられます。 この両者は治療目的が異なるため、全く別ものとして考える必要があります。また、術式として、大別すると、以下の2つの手術があります。

1) クリッピング術(開頭手術)

 脳動脈瘤に対する根治術としては長い歴史のある代表的かつ標準的な手術で、現在でも最も根治性の高い治療法であり、多くの施設で主流となっている手術です。 最近では、低侵襲性の観点から、次に述べるカテーテル治療が増えてきており、当院でも最近はほぼ半々となってきています。 将来的な展望からは、今後、カテーテル治療が主流となり、ごく一部のカテーテル治療に向かない、あるいは困難な症例のみ、開頭手術を行うようになるものと思われます。高齢者においては、低侵襲なカテーテル治療が圧倒的に有利となってきます(術後20年間程度であれば、治療効果はクリッピング術に劣らないといわれています)。 今後、治療器具と技術の進歩により、さらに長期成績の改善や適応拡大なども見込まれます。
 クリッピング術は、全身麻酔下に開頭して、手術用顕微鏡を用いて脳の溝を分け入り、脳動脈瘤の頚部にチタン性のクリップをかけることにより、脳動脈瘤が再破裂(再出血)しないように根治的に処置するものです。したがって、クリッピング術そのものは、既に破裂して出血により生じた症状(意識障害、麻痺など)を治すためのものではなく、この点は脳出血とも共通します。 再破裂防止による救命が最大の目的です。
 当院において現在までに取り組んでいる工夫をご紹介しますと、クリッピング術の安全性、確実性を増すための手段として、2009年より、鳥取県内で初めて、術中蛍光脳血管造影を導入し、手術を行っています。これにより、クリッピングにより、脳動脈瘤が完全に消失していること、周囲動脈の血流が保たれていることなどが、術中に容易に確認でき、治療成績向上につながります。


 未破裂脳動脈瘤の手術では、神経内視鏡を併用して、手術用顕微鏡の死角を補うことも有用です。


 また、末梢性の脳動脈瘤の場合には、術中ナビゲーションを併用することにより、動脈瘤の位置を正確に把握し、より正確で迅速なアプローチが可能となります

2) コイル塞栓術(カテーテル治療)

 コイル塞栓術は血管の中から直接動脈瘤に到達し、脳に触れずに行える治療です。脳に触る侵襲がないため、早期の回復につながる場合もあります。高齢者や合併症の多い人にも有用です。
治療の欠点としては、手術中に出血した場合には対処が困難であり、緊急で開頭術が必要な場合があります。また動脈瘤が再び大きくなったり、留置したコイルがつぶれ再治療が必要となる可能性があります。コイルや血栓により脳梗塞を起こす可能性もあります。
 治療は基本的に全身麻酔で行います。全身麻酔に対して危険性のある患者さんでは、局所麻酔で行うこともあります。 足の付け根の血管(大腿動脈)からガイディングカテーテルと呼ばれる直径2mm程度の管を脳に行く血管まで誘導します。この中をマイクロカテーテルという非常に細い管を動脈瘤にいれます。プラチナでできた細く柔らかいコイルで動脈瘤への血液の流入を遮断し破裂を予防します。

 以上のように、手術には力を尽くしますが、手術がうまくいっても、必ずしもそれだけで病気が良くなるわけではありません。 くも膜下出血の全治療過程の中に占める手術の貢献割合は、実は一部に過ぎません。 この病気の予後を規定する最大の要因は発症時の重症度であり、重症例に対しては、いかに良い手術を行ったとしても、それだけでは必ずしも病気が良くなるとは言えません。最重症例では、そもそも手術を行うことすらできません。くも膜下出血には手術以外に乗り越えるべきハードルが多く存在します。脳は全身の臓器を司っていますが、その司令塔に、くも膜下出血という極めて大きなストレスが加わることにより、全身に実に様々な影響が及びます(その全身の合併症により死亡することもあります)。くも膜下出血には多くの合併症が生じることが常であり、いかにそれらの合併症をきたさないか、あるいは生じた場合に、その被害を最小化するかという術後管理が非常に大きな意味を持ちます。 特に脳血管攣縮(遅発性脳虚血障害)という、くも膜下出血に特有な怖い合併症があり、これをいかに防ぐかが大切です。当院では脳卒中センターにおいて濃厚な術後管理を行っています。 PiCCOモニター(経動脈的熱希釈法)を用いた循環動態管理や、症候性脳血管攣縮を生じた場合の、脳血管内治療なども必要に応じて積極的に行っています。 最大限の治療を行っても良くならないケースはありますが、現在、限られたマンパワーの中で最善を尽くしています。


(以下補足説明:やや専門的内容)

 くも膜下出血は致死率の高い疾患であり、ひとたび発症すると、結果的に1/3以上(半数近く)の人が亡くなり、助かっても後遺症を残す可能性の高い病気です。 発症時点の重症度により予後はほぼ決まってくるため、最重症例では、手術適応にならないことが多くあります。 実際、当院に搬入された、くも膜下出血症例の統計(2009 - 2015年の過去7年間の集計)をみても、手術適応に至らない最重症例(心肺停止例、脳死状態およびWFNS grade 5)が搬入患者の34%を占めます。 その場合は、もはやなすすべはなく、あとは延命治療を行うか行わないかという選択肢しかありません。くも膜下出血に限らず、脳外科では、常日頃、そのような患者さんに多く接しています。 脳死状態などの救命不能および意識回復不能な状態になった場合に、どのような最期を迎えるかという問題につき、日頃からご家族間で良く話し合われているご家庭では、ご本人の意思を尊重し、延命治療を行わず、安らかな最期を迎えさせてあげるという選択肢もあります。 上記データに関しては、当院は三次救急(心肺停止例などの最重症例)を扱う高度急性期病院であるため、超重症例が優先的に搬送されてくるという事情もあるでしょう。 搬入患者の中で手術が行われた症例は57%で、手術が行われた症例の中でも重症例(WFNS grade 4, 5)が、34%を占めています。これら重症例では、仮に手術を行っても一般的に予後は良くありません。75歳以上で手術適応があった人の48%が重症例であり、これら75歳以上の重症例では、術後3ヵ月後の時点で67%が介護を要する状態(および死亡)となりました。

 また、くも膜下出血には明らかな性差があり、女性に多い病気です。 当院搬入例の68%が女性であり、50歳以上の女性(主として閉経後女性)が全体(男女含む)の61%、70歳以上の女性が37%を占めます。 骨粗鬆症やアルツハイマー型認知症のように、閉経後の女性に多い(ないしリスクが高まる)疾患であるという見方ができます。 日本人は欧米人に比べ、くも膜下出血の発症率が高く、未破裂脳動脈瘤は欧米人の3倍近く破裂が多く、特に高齢女性で増大、破裂しやすいといわれています。 人口の高齢化が進むと、今後この傾向はさらに増幅されることが予想されます(男女差はさらに拡大するでしょう)。 当院での年代別の発症頻度を分析すると(下のグラフを御参照ください)、女性の発症ピークは70代~80代(80代の方がやや上回る)、男性で50代~60台(50代と60代が同数)で、あくまで一施設のデータにすぎませんが、これは最新の成書に記載されている出雲地区のデータのトレンドと比較的良く似ています。 特に女性は60歳を超えると急に発症が増えます。逆に男性では70歳になると減少します。 脳卒中データバンク2015(日本国内の2000~2013年に登録された大規模データ)によると、男性のピークは50代、女性のピークは70代であり、当院の最新のデータでは、さらにより高齢側にシフトしていることが良くわかります。 高齢化の進んだ出雲地区と鳥取地区のデータは、全国平均より6 ~ 10年程度先行していると思われ、近い将来の全国平均のデータ(トレンド)を先取りしている状況であると考えられます。 

 以上述べたように、くも膜下出血はいったん発症しますと、厳しい現実を述べますと、高齢者の場合、 元の生活に戻れるケースはその一部にすぎません。 したがって、くも膜下出血の治療において最も大切なことは、くも膜下出血を発症しないように予防することに尽きます。 最近では、未破裂瘤の段階で見つけられ、予防目的で外科治療されるケースが増えてきています。 その場合、症例に応じて、治療方針が検討され、それは患者さん一人一人で異なってきます。 ただし未破裂脳動脈瘤の外科的治療が、本当に患者さんの生命予後を改善しているかどうかについては、実は未だ確たる証拠はなく、治療には慎重に取り組む必要があります。 また、未破裂脳動脈瘤をもつ人は、他の心血管リスクを多く持ち、死亡率そのものが高いといわれており、未破裂脳動脈瘤の外科治療そのものは、全体での患者さんの予後にあまり影響していない(未破裂脳動脈瘤患者の長期予後において、77%以上が他の死因で死亡する)という報告もあり、全身病としてのとらえ方も必要と思われます。

 以上のように、発症後のくも膜下出血の治療には限界があり(超高齢社会においては、主たる患者層となる高齢者の重症例に対して予後を改善させるための治療の余地はほぼ限界に達しており)、今後のくも膜下出血の治療のトレンドは、現在の受動的な治療(発症後の治療)から、能動的な治療(発症前の治療:先制医療)に軸足が移っていくことは必定でしょう。 実際、日本脳神経外科学会の調査でも、全国のくも膜下出血の手術件数は減少傾向にあり、逆に未破裂脳動脈瘤の手術件数は増加傾向にあります。ただし、それですら、推定患者全体のごく一部にしか治療を行えておらず、未破裂脳動脈瘤の診断がついた症例の中でも、外科的治療の適応外の未治療の症例(経過観察症例)が大多数を占めています。そのような症例に対する有効な治療法が存在しないことが、今後解決されるべき大きな課題です。
 この問題をもう少しわかりやすく表現しますと、例えば骨粗鬆症を例にとりますと、骨粗鬆症そのものが未破裂脳動脈瘤に該当し、大腿骨頚部骨折発症がくも膜下出血の発症ということに置き換えることができます。ひとたび骨折を生じますと、手術が必要なこともあり(したがって整形外科医が主として治療を担当)、骨折の治癒変形は、疼痛および骨格の障害として生活の質を大きく損ない、結果的に寝たきりや死亡につながります。 これはくも膜下出血発症後の様々な後遺症と同じ関係になります。 一方、骨粗鬆症の診断は進歩しており、治療の目的は骨折の予防であり、直ちに薬物治療が検討されます。骨粗鬆症に対する薬物治療は近年大きな進歩があり、治療成績も向上していますが、一方、未破裂脳動脈瘤に対しての薬物療法は未だ存在すらしておらず、整形外科領域に比べ、大きく遅れているということもできます。
 現在は、くも膜下出血に対する血管内治療の進歩や未破裂脳動脈瘤に対する外科的治療が臨床現場や学会における主たる関心事項となっています。このうち、クリッピング術は今日までの歴史的経過を俯瞰すると、既に完成の域に達した治療法であり、今後の発展の余地は極めて限られますが、一方、血管内治療はフローダイバーターの臨床導入も含め、今後もさらなる発展の余地があり、大きな期待が寄せられています。 ただし、未破裂脳動脈瘤の治療において、非高齢者に対して長期治療成績を考慮する場合と、治療困難な症例に対する開頭術は一定の割合で需要が残りますが、そのような症例の治療はごく一部の施設(多くは都市部の大規模施設)に集約されてくるものと思われます。ただし、これもある意味、現在は過渡期にある段階と言え、今後は、発症リスクのある患者さんの早期検出法(およびそのシステム作り)、治療の必要性、妥当性を適正化させるためのリスク算出法の開発(機能的質的画像評価、流体力学的評価、バイオマーカー評価など)、治療の必要性の高い危険な脳動脈瘤の選別、脳動脈瘤の増大、破裂メカニズムに基づく、増大予防、破裂予防のための新たな治療法開発および先制医療が、来るべき時代の主役になってくるものと思われ、それらに向けた研究をさらに進めていく必要があります。


10:脳卒中リハビリテーション

 脳卒中センターでのリハビリテーションは理学療法、作業療法、言語聴覚療法の3部門に分かれ、入院翌日より各分野の専門性を活かし機能評価や訓練を実施しています。入院後早期より離床することで廃用症候群の予防を図ります。また、リスク管理を行いながら状態に応じて個別でのプログラムを立案し、機能改善や効率的な動作を促し最大限に能力が発揮できるよう援助します。他職種と連携をとり包括的に介入すると共に、状態が安定される頃には自宅退院や職場復帰ができることを目標にしています。また、直接自宅への退院が難しい方は回復期病院と連携をとり継続したリハビリテーションを実施して頂いています。

11:脳卒中診療に対する看護や再発予防に対する教育

 7階西病棟はHCU4床を含む38床の神経内科・脳神経外科の病棟です。脳神経の神経学的所見や全身の観察を行い、異常の早期発見に努めています。病気の発症に伴い、意識障害や麻痺が出現した患者様が多いため、入院早期からリハビリスタッフと連携し、ADLの向上を目指して、 安全・安楽で丁寧な看護を提供できるように留意しています。
嚥下障害のある患者様が安全に食事をとることができるように、毎週口腔嚥下サポートチームが嚥下回診を行い、摂取状況を評価しながら食事のサポートを行っています。また、月に2回医師やリハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカーなど多職種が参加し、リハビリカンファレンスを実施し、リハビリの目標設定や看護ケアの統一を図っています。
 また、再発予防に対する教育として、当院で作成したDVDやパンフレットを使用し、個別性のある指導を行っています。指導内容は「疾患の説明」、「再発を予防するための日常生活のポイント」、「再発時の対処方法」などがあり、DVDはご家族と一緒に観て学んでいただきます。

12:医療ソーシャルワーカーによる医療連携

 当院では、地域連携センターに所属する医療ソーシャルワーカーが必要に応じて入院早期から退院支援に関わります。患者さんが安心して急性期治療を受けていただけるよう、医療費や今後の生活、介護に関わることなど、病気をきっかけとして生じる様々な療養上の不安や心配事の相談を受けています。
 また、脳卒中を発症された方の多くは、急性期治療後も継続したリハビリテーションが必要となります。当院での急性期治療後、引き続きその方に必要な医療を受ける事ができるよう、地域の医療機関や福祉施設、事業所との連絡調整を行い、患者さんが地域で生活していくために必要な転院、退院の手続きを患者さん・ご家族と共に行います。
 さらに、鳥取県東部地域では、急性期・回復期・維持期と医療機関毎に役割を分担し、それぞれの専門性をもって患者さんの医療を担っています。患者さんの転院時には共通の地域連携パスを使用し、転院後も切れ目なく共通の診療計画に沿った医療が提供できるよう、地域の医療機関との情報共有も行っています。

13:当院の業績

脳卒中センター業績

発表論文(近年のもの)

 

周藤 豊, 古和 久典, 中安 弘幸:

高齢者における脳梗塞の急性期病院退院時の移動能力重症度と3年後の生命予後に関する検討

米子医学雑誌 60: 33-39, 2009.

 

田渕貞治、渡辺高志:

スパズムを起こした患者のMMT

Brain Nursing 25:250, 2009.

 

Suto Y, Nakayasu H, Maeda M, Kusumi M, Kowa H, Awaki E, Saito J, Nakashima K:

Long-term prognosis of patients with large subcortical infarctions.

Eur Neurol 62:304-10, 2009.

 

Suto Y, Kowa H, Nakayasu H, Awaki E, Saito J, Irizawa Y, Nakashima K.:

Relationship between three-year survival and functional outcome at discharge from acute-care hospitals in each subtype of first-ever ischemic stroke patients.

Intern Med 50:1377-83, 2011.

 

森崎 剛史, 足立 正, 後藤 寛之, 真砂 俊彦, 周藤豊, 中安 弘幸, 中島 健二:

一過性閉塞性排尿障害を伴った延髄外側症候群の1

鳥取医学雑誌 40: 90-93, 2012

 

Asai Y, Nakayasu H, Fusayasu E, Nakashima K:

Moyamoya disease presenting as thalamic hemorrhage in a patient with neuromyelitis optica and Sjögren's syndrome.

J Stroke Cerebrovasc Dis 21:619.e7-9, 2012

 

Murawaki A, Nakayasu H, Doi M, Suzuki-Kinoshita K, Asai Y, Omura H, Nakashima K:

Heparin-induced thrombocytopenia in essential thrombocytosis.

J Stroke Cerebrovasc Dis 21: 916.e1-5, 2012

 

Tabuchi S, Nakajima S, Suto Y, Nakayasu H:

Emergency superficial temporal artery to middle cerebral artery bypass after intravenous recombinant tissue plasminogen activator administration for acute cerebral ischemia in a patient with moyamoya disease.

Case Rep Neurol 5:214-219, 2013.

 

田渕貞治

スマートデバイスでの遠隔電子カルテ閲覧システムがもたらした医師の労働環境改善効果

新医療 467:44-48, 2013.

 

Tabuchi S:

Auditory dysfunction in patients with cerebrovascular disease.

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Ruptured aneurysm at the fenestration of the middle cerebral artery detected by magnetic resonance angiography in a patient with systemic lupus erythematosus and renal failure: a case report.

J Med Case Rep 8:30, 2014.

 

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Isolated thrombosis of the vein of Labbe after contralateral cortical subarachnoid hemorrhage of unknown origin with positive antinuclear antibody.

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Pooling of contrast medium into a pseudoaneurysm derived from a ruptured internal carotid artery anterior wall blister-like aneurysm mimicking multiple cerebral aneursyms on CT angiography.

Neurol Clin Neurosci 2:212, 2014.

 

 

坂本誠宇野哲史中島定男、黒崎雅道、渡辺高志、篠原祐樹、竹内啓九、田辺路晴、近藤慎二、田渕貞治

偽閉塞症例に対する頸動脈ステント留置術 周術期管理と手技上の工夫

脳卒中の外科 43:103-109, 2015.

 

Tabuchi S, Nakayasu H:

Traumatic vertebral artery dissection and cerebral infarction following head and neck injury with a lucid interval.

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Plasma Brain Natriuretic Peptide is a Marker of Prognostic Functional Outcome in Non-Cardioembolic Infarction.

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Tabuchi S, Nakamoto S, Watanabe T:

Initial manifestation of massive fatal intracerebral hemorrhage presenting as cardiopulmonary arrest in a patient with previously undiagnosed chronic myelogenous leukemia in the chronic phase.

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Sone J, Mori K, Inagaki T, Katsumata R, Takagi S, Yokoi S, Araki K, Kato T, Nakamura T, Koike H, Takashima H, Hashiguchi A, Kohno Y, Kurashige T, Kuriyama M, Takiyama Y, Tsuchiya M, Kitagawa N, Kawamoto M, Yoshimura H, Suto Y, Nakayasu H, Uehara N, Sugiyama H, Takahashi M, Kokubun N, Konno T, Katsuno M, Tanaka F, Iwasaki Y, Yoshida M, Sobue G. Clinicopathological features of adult-onset neuronal intranuclear inclusion disease. Brain. 139:3170-3186, 2016.

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小西 吉裕, 中安 弘幸, 那須 博司, 西村 広健:
右中大脳動脈と左後大脳動脈の塞栓性閉塞を12年の間をおいて起こした脳梗塞例で剖検にて軽度のアルツハイマー病型組織変化を認めた1経験例. 鳥取臨床科学研究会誌8巻:179-201, 2017.

田中健一郎中安弘幸周藤豊高橋正太郎影嶋健二中島健二
急性脳梗塞と急性心筋梗塞を同時に来たし、t-PA静注療法が奏功した1例.脳卒中 39巻:205-209, 2017.

Kawase S, Kowa H, Suto Y, Fukuda H, Kusumi M, Nakayasu H, Nakashima K.
Association between Serum Uric Acid Level and Activity of Daily Living in Japanese Patients with Ischemic Stroke. J Stroke Cerebrovasc Dis. 26:1960-1965, 2017.


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14:脳卒中センターとしての啓発活動

脳卒中について:周藤豊、田中健一郎.
「教えてホームドクター」日本海ケーブルネットワーク:2015.8

脳卒中:田渕貞治
「病院の実力」読売新聞:2016.1.10

中央病院の脳卒中診療:中安弘幸
「平成27年度第4回市民講座」鳥取県立図書館にて:2016.2.6