誰一人取り残さない防災・減災へ
鳥取県中部地震や豪雨災害を踏まえ、誰一人取り残さない防災・減災を目指す鳥取県独自の取組みをご紹介します。
支え愛でまちづくり!「支え愛マップ」でつながる地域
支え愛マップとは、災害時に誰かの手助け・声かけを必要とする人、声かけができる人、避難先などの情報が書き込まれた地図のことです。
あらかじめ支え愛マップを作っておくことで、災害時には地域での避難に役立ちます。またマップの作成にあたり地域のことを皆さんで話合う中で「日ごろからのつながり、支え合い」を考えることにつながります。
「支え愛マップ」の取組みは、平成24年度からスタートしました。平成29年度からは「災害時」をキッカケに取組みを強化しています。
全国から注目を集める鳥取県版「災害ケースマネジメント」
「災害ケースマネジメント」とは被災者一人ひとりに寄り添った支援
被災世帯の生活全体における状況を把握し、行政や民間団体、弁護士等の専門家が協力して、それぞれの課題に応じた情報提供や人的支援など個別の支援を組み合わせた計画を実施する取り組みです。2005年(平成17年)にハリケーン「カトリーナ」で甚大な被害を受けたアメリカ合衆国で初めて制度化されました。国内では東日本大震災で被災した仙台市が初めて本格的に取り入れています。
鳥取県版災害ケースマネジメントに至る背景
鳥取県中部地震における住家被害は、中部1市4町を中心に15,000棟を超え、特に、古い住宅を中心として屋根瓦(特に土葺きの瓦)のズレや落下が多く見られたほか、外壁のひび割れ・落下、塀の倒壊等が発生しました。
県は、発災2日後の10月23日に、「被災建物修繕等相談窓口」を開設、被災者の相談に対応するとともに、10月25日に専決予算により、被災した世帯の住宅再建及び修繕のための支援措置を講じ、さらに職人不足を解消するため、県外からの職人招致を支援する「住宅修繕促進支援事業(県外職人招致支援)」を創設しました。
こうした県や市町村の積極的な支援により発災から約1年で、ブルーシートが残る住家は被災した全戸の概ね5%にまで減少しました。
しかし、発災後1年を経過してもなお、住宅修繕に着手することができない世帯があり、その多くが健康面、資金面での問題を抱えていたり、高齢者世帯で修繕の気力を失っている方々などもおられました。
鳥取県版災害ケースマネジメントの導入へ
このような世帯への対応を協議するため、平成30年1月18日、知事をトップとした中部地震対策会議を開催し、鳥取県における災害ケースマネジメントの制度化が検討され、同年2月3日に開催されれた第4回鳥取県中部地震復興会議の場において、関係市町長等の賛同を得て、災
害ケースマネジメントの導入が決定されました。
併せて、県は「鳥取県防災及び危機管理に関する基本条例」に災害ケースマネジメントの制度化を盛り込む条例改正案を平成30年2月定例県議会に提案、全国に先駆けて条例によって恒久制度化も実現しました。
鳥取県版災害ケースマネジメント「生活復興支援」の仕組み
県中部地震における災害ケースマネジメントは、市町が個別訪問等により被災者の実態調査を行い、住宅面、資金面、健康面などの課題を抽出、課題に応じ生活復興支援チームを県、市町、震災復興活動支援センター及び県弁護士会、県建築士会、県宅地建物取引業協会、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会等の関係団体で編成し、それぞれの課題に応じた生活復興プランを作成の上、専門家派遣等の支援を行い、被災者の生活復興を後押しています。
この(1)個別訪問→(2)ケース会議→(3)専門家派遣 が鳥取県版災害ケースマネジメントの基本型となります。
鳥取県版災害ケースマネジメントの全県展開へ
災害ケースマネジメントによる「生活復興支援」によりブルーシートの残る住家はさらに減少しています。さらに県では、令和3年4月1日に鳥取県社会福祉協議会内に「鳥取県災害福祉支援センター」を開設し、全県展開を進めています。また鳥取県版災害ケースマネジメントの取組みは報道にも度々取り上げられるほか、県外からの視察受入れなど全国的にも注目されつつあります。
住民自らが避難のタイミングを決める「避難スイッチ」
「避難スイッチ」とは?
「避難スイッチ」とは、地域住民自らが避難を判断する手法のことです。
市町村が発出する避難情報(高齢者等避難、避難指示等)だけに頼らず、住民に身近な目で見る異変(例:ライブカメラで見る河川水位)を避難スイッチの候補とすることで、避難の判断材料を増やすことができます。
「避難スイッチ」は、京都大学防災研究所の矢守克也教授他が提唱する住民避難を促進させるための取組手法の一つであり、鳥取県では浸水害や土砂災害など、避難のためのリードタイムがある自然災害を対象に、住民の主体的な避難を促進する有効な手法として取り入れています。
背景と目的
近年激甚化している豪雨災害において、住民が適時適切に避難することの重要性は再認識されているところですが、一方で、さまざまな避難に関係する情報が、必ずしも住民の避難行動につながっていないことは、全国的な課題となっています。
鳥取県においても、令和元年度「防災避難対策検討会」の提言において、各種防災情報と避難行動(判断)との結びつきが重要であることが指摘されており、それを具体化する対策として、住民が「いつ」避難するかを判断する目安(=避難スイッチ)を決める取組を県下全域で進めていくことを通じて、広く県民に「避難をわがこと」とする意識の醸成を図っています。