弥生時代になり大陸からもたらされた物の中に、鉄をはじめとした金属器があります。鳥取県でも弥生時代中期に拠点的な集落から鉄器の導入が始まり、後期には各集落に普及します。県内で出土する鉄器は、笠見(かさみ)第3遺跡出土鉄器のように鉄斧、刀子、ヤリガンナ、鎌、鋤先(すきさき)といった日常的に使用する農工具が主体となりますが、中には目を見張るような優品も含まれます。
東郷池を望む湯梨浜町の宮内(みやうち)第1遺跡では、弥生時代後期の四隅突出型墳丘墓(よすみとしゅつがたふんきゅうぼ)の埋葬施設から鉄剣と鉄刀が出土しています。いずれも弥生時代のものとしては国内最長クラスの優品です。鉄剣は抜身で、平絹(へいけん:平織の絹)で幾重にも包み棺に納められていました。鉄刀は、意図はわかりませんが、素環頭(そかんとう)と呼ばれる柄頭を飾る環状の部分が切り取られていました。この鉄剣と鉄刀は分析の結果、中国前漢時代に開発された製法により、大陸で鍛錬された可能性が高いことが分かっています。鉄器の普及が進んできたとはいえ、誰もが手軽に持つことができない時代、大陸で作られたこのような製品を入手できたのは、被葬者が東郷池とその先に広がる日本海を通じた海上交通の要衝の地を治めていた有力者であったことの証かも知れません。鉄剣と鉄刀は、そのような人物の権威の象徴であったと考えられます。
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鉄剣・鉄刀(宮内第1遺跡)

笠見第3遺跡出土鉄器
[令和2年8月30日掲載]