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亀とアブの報恩(智頭町波多)

昭和54年(1979)9月15日、智頭町波多で採集

語り

 昔あるときに若い者が道を通っていたら、三人の子どもが、一匹の亀をとてもいじめているので、かわいそうに思いました。
「おい、おまえら、その亀をそげぇにいじめんなや。」
「まあ、おもしれぇじゃ。」
「おもしろうても、おまえらいじめるもんじゃあないわや。ほんなら、お金をやるけえ、その亀をおれにごせぇや。」
「うん、そらあ、亀をいじめるたあ錢になりゃ、いいもんが買えるし、そりゃいいけん。そうしよう。」
 そこで、若い者はお金を出してその亀を買い、それからその亀を逃がしてやりました。
 また、先へ行きますと、子どもたちが虻を捕らえて、虻の尻を押さえ、棒を挿そうとしていじめていました。
「おめえら、何ちゅうことをしよるじゃ。虻じゃって尻へ棒を挿されりゃ痛いわい。放いちゃれ。」
「そぎゃんことを言ったって、おもしれわ。こぎゃすりゃ、ようたちゃせんけえ、よう放さんじゃわな。」
「ほんなら、ちょっと錢ょやるけえ、それを放いちゃれ。」
「まあ、錢ゅごされりゃあなあ。」
 若い者は子どもたちにお金を渡して、その虻をもらい、すぐに逃がしてやりました。
 また、若い者が歩いて行きますと、長者の大きな屋敷がありました。
 そしてそこの屋敷に大きな堀があり、堀のまん中に一本の松の木があって、そこには鶴が卵を産んでいました。
 そしてそこに立て札があり、見ると、
『この鶴の卵を取ってきたら、うちの婿にしてやる。』と書いてあります。若い者は「このような名のある長者の婿さんにゃ、簡単には行けれんがのう。」と思って見ていたところが、一匹の亀がす-っと寄って来ました。
 助けてやったあの亀です。そして、亀は背中を向けるので「ああ、これへ乗れ、ちゅうことじゃなあ。」と言って、亀に乗ると、亀はその松の木に連れて行ってくれました。
 若い者は松の木に登って鶴の卵を取り、懐へ入れて屋敷まで行き、長者のところへ持って行ったところが、
「ふーん、あの松の木の鶴の卵を取って来たかな。」と長者は喜ばれて「しかしのう、今日は近所の娘たちをみんな呼んどるけえ、この中からうちの娘じゃ思うもんに一杯酒の酌をせえ。それに杯をさせ。」と言われました。
 見ればみんないい娘さんばっかりです。あれもこれも呼ばれて並んで座っています。
「はーあ、どれじゃろうかなあ、きれいにみんな座っておられるが…」と思っていたら、障子に助けた虻が来ました。
  虻は娘たちの周りを飛びながら、
  酌取りさせぇ ブンブン 酌取りさせぇ ブンブン
と中の娘に向けてそう言うものだから、若い者は何はともあれと思って、中の娘に杯をさしたら、案の定、それがそこの長者の娘さんだって、そこの婿にしてもらったと。
 だから、生き物はいじめるものではありませんよ。
そればっちり。(伝承者:明治40年生)

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解説

   関敬吾『日本昔話大成』では、この話は本格昔話に属し、「婚姻・難題婿」として位置づけられている。


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