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一つとせ 燭に笈づる 杖に笠(手まり歌)智頭町宇波

昭和62年(1987)8月18日、智頭町宇波で採集

歌詞

一つとせ 燭(しょく)に笈(おい)づる 杖に笠 巡礼姿で父母を 尋にょうかいなあ
二つとせ 補陀落(ふだらく)岸うつ憎まれぬ 松さんお呼ばれ音高く 響こうかいなあ
三つとせ 見る間にお弓が 立ち上がる 小盆に精米(しらげ)の志 進じょうかいなあ
四つとせ よもよも巡礼 なさんすな 定めしお連れは 親御たち かわいいわいなあ
五つとせ いえいえわたしは 一人旅 父(とと)さん 母(かか)さん 顔知らず 会いたいわいなあ
六つとせ 無理に押しやる 返しやる 少々ばかりの餞(はなむけ)を 進じょうかいなあ
七つとせ 泣く子を抱いたり すかいたり たらかせ去(い)なせる親心 かわいいわいなあ
八つとせ 山坂海越え川をみり ここまで訪ねて 来たものに 会わりょうかいなあ
九つせ 九つばかりの巡礼が 十呂兵衛館の門口を 入ろうかいなあ
十とせ 十にもなったか これお鶴 わが子と知ったら 殺しゃせぬ かわいいわいなあ(歌い手:明治30年生まれ)

 

解説

 昔の手まり歌には、有名な浄瑠璃の演題に題材を取ったものがときおり見られる。この手まり歌もそのような一つで、江戸時代に書かれた「傾城阿波の鳴門」がテーマとなっている。

 原作は近松門左衛門の「夕霧阿波鳴門」であり、浄瑠璃はそれを翻案したもの。明和5年(1768)6月より竹本座初演であった。

 それは阿波徳島の玉木家の宝刀国次が紛失したのを捜すため、浪人となった十郎兵衛が女房お弓と共に賊徒に姿を変え、藤屋伊左衛門たちの尽力で、悪臣小野田郡兵衛の陰謀を暴く筋書きであるが、中でも八段目が名高い。ここではお弓がはるばる訪ねてきた巡礼姿のわが子お鶴に対し、親子の名乗りをせずに帰し、思い直して後を追ったのではあるが、すでにそのときには十郎兵衛が過って、わが子を殺してしまっていたのである。そのところがこの手まり歌の中心になっている。

 わたしは同類を岩美郡岩美町や鳥取市青谷町でも聞いたが、島根県では、まだ収録を果たしていない。しかし、今となってはその伝承者をもう見つけることは困難になってしまった。


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