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「センター春の風物詩」

今年もPEG含浸木器取り上げの季節がやってきました(後編)

 令和3年4月19日から22日までの間に行われた、当センター春の風物詩であるPEG含浸木器取り上げ作業の様子を前・後編の2回に分けてお伝えしています。前編はPEG溶液の抜き取りから木器の乾燥までをお伝えしました。後編はいよいよ今年度分の仕込み、すなわち木器の浸け込み作業です。
 まずは浸け込み前の木器のクリーニングです。長い間水漬け保管していた木器の表面は、ぬめりが出ていたり、藻がついていたりすることがあるので、きれいに水洗いします。このとき、隙間に入った泥やめり込んだ砂粒もしっかり落としておきます。
 つぎに手当てです。ひびが入って折れそうな木器には添木をしたり、表面がはがれそうなものには不織布を巻いたりします(写真1)。すでに破損しているものは、部品がタンクの中で散逸しないように、穴をあけたポリチューブにまとめて封入するなどの処置を施します。木器の情報を記載したカードを木器に結わえ付けたら、タンク内に入れていきます(写真2)。

itamu2-11 写真1 傷んだ箇所に不織布を巻く

tannku2-22 写真2 タンクに木器を入れる

 タンクに注水して、一番上の木器が沈むまで水がたまれば、ひとまず浸け込みは完了です。この後はタンクを加熱して60℃まで温度を上げ、薬品を加えて木器の黒ずみの原因となる鉄分を除去します。水替えを2回繰り返して薬品を洗い流したら、いよいよPEGの含浸が始まります。

今回浸け込んだ木器は、高住井手添(たかずみいでぞえ)遺跡、高住平田(たかずみひらた)遺跡、本高弓ノ木(もとだかゆみのき)遺跡、青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡の約850点です。青谷上寺地遺跡の木器は細かなものがほとんどですが、ほかの遺跡はほとんどが杭や建築部材などの大型品であり、とくに本高弓ノ木遺跡出土の長さ3.8m、幅30cmのスギ材はとても重く、浸け込むのも大人6人がかりでした(写真3)。みんな作業に必死で、そのときの様子は記録できませんでしたが、来年の取り上げのときの様子が紹介できればと思っています。どうやってタンクから引き上げようかと、今から気が重いですが、皆さんはそれまでお楽しみに!

mokki2-33 写真3 今年の浸け込み木器


今年もPEG含浸木器取り上げの季節がやってきました(前編)

 今年もまたあの季節がやってきました。当センター春の風物詩であるPEG含浸木器取り上げ作業です。今年度は令和3年4月19日から22日までの4日間、青谷上寺地遺跡整備室の職員と合同で行いました(写真1)。
 例年必ずと言っていいほど春の嵐に見舞われ、突然の豪雨やテントを吹き飛ばす突風に打ちのめされていましたが、今年度は連日好天に恵まれ、スムーズに作業を完了することができました。
 今回は作業の様子を前・後編の2回に分けてお伝えします。

sagyouhuukei11 写真1 作業風景

 木器取り上げ作業は、PEGタンクからPEG溶液を抜き取るところから始まります。タンク下部に排水用のパイプがあり、そこから流れ出るPEG溶液をポリチューブの中に詰め(写真2)、チューブの口をひもで縛ります(写真3)。チューブ内のPEGは一晩経つとカチコチに固まります。これらは再利用するためにコンテナに入れて保管します。

PEG2 写真2  PEGをタンクから抜き取る

tyu-bu3 写真3 チューブの口を縛る

 タンク内の液面が下がって木器が露出してきたら木器を取り上げます(写真4)。熱湯で表面のPEGを洗い流し(写真5)、乾いた布で余分な水分をふき取ったら(写真6)、建物内の棚の上に並べて乾燥させます(写真7)。

tannku4 写真4 タンクから木器を取り上げる

mokki5 写真5 木器を熱湯で洗う

syoumen6 写真6 表面の水分をふき取る

dana77 写真7 棚を並べて乾燥させる

 この一連の作業を、タンク内の木器がなくなるまで繰り返します。タンク内を清掃したら、いよいよ今年度分の木器の浸け込み作業に入ります。(後編につづく) 


かわいい木製品には旅をさせよ

 昨年、専門業者に保存処理をお願いした木製品20点が帰ってきました。状態が悪いものや漆塗りのもの、厚手のものなど、当センターでは処理が難しい木製品については、専門の業者に保存処理をお願いしています。センターを旅立った時は、大量に水を含みブヨブヨだったり、バラバラとなっていましたが、薬剤含浸や接合が施され、今や立派な姿に生まれ変わりました。

 今回は容器類を中心としたラインナップで、中でも弥生時代前期(約2,500年前)の二脚盤(にきゃくばん)や弥生時代前期末(約2,300年前)の高杯(たかつき)の未成品、弥生時代後期(約1,900年前)の花弁(かべん)高杯、平安時代(約1,100年前)の漆塗りのお椀が特筆されます。特に花弁高杯は、接合する二片の内、一片だけが既に保存処理されており、もう一片を新たに保存処理して接合するという大変難しい作業となりましたが、違和感なく、上手く仕上がりました。また、赤色顔料や漆塗膜の分析も行っており、素材や塗り方など色々なことも分かってきました。 

 こうした木製品や分析結果は、来年度に開催する当センターの企画展示などで皆様にご覧いただく予定です。どうぞお楽しみに。

二脚盤

高杯の未成品

花弁高杯(下半部が新たに保存処理した破片)

漆塗椀


神代ケヤキの作品を寄贈いただきました 

 昨年6月にお知らせした、鳥取市の本高弓ノ木遺跡から出土した約2,700年前の神代ケヤキで、現代の木工職人さんに作品を製作していただく試み(6月3日Facebook記事)ですが、寄木細工で著名な白谷工房(日南町)の中村建治さんから作品を寄贈していただきました。

 作品は全部で4点。いずれも丸を基調としたデザインのネックレス、イアリング、ピアスとなっています。寄木の中で濃い褐色の木材が神代ケヤキであり、華やかな中にも現代の木材と調和した落ち着いた雰囲気があります。

 このアクセサリーですが、間もなく商品化されるとの事ですので、白谷工房のHP等をチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

 白谷工房HPhttps://shiroitani-koubou.com/

 ※フェイスブックで今回の作品について紹介されています(2月26日・3月3・5日記事)

神代ケヤキ出土状況

ネックレス

イアリング(左)とピアス(右)


君の名は?-変わり種の形代(かたしろ)−

 現在、青谷横木遺跡から出土した木製品の保存処理や調査研究の優先順位を決めるためのトリアージ作業を行っています。奈良・平安時代の木製祭祀具が多く、その中でも人形や馬形といった人や動物の形を模した形代が中心的なものになります。特に馬形の点数が多い点はこの遺跡の特徴です。また数は少ないものの、馬だけでなく、新年早々にお伝えした牛と考えられるもの(1月3日Facebook記事)や、蛇のようなものもあります。

 そんな中、今年度のトリアージ作業中に「これは一体…?」とも言うべき妙な形代が現れました。今まで知られている馬形などとは異なり、頭(左側)は丸く、短い前足と後足が表現されています。お腹に当たる部分には、馬形と同様に棒が差し込まれた跡があるので、同じように地面に突き刺して使用されたと思われます。

 調べた限り、似たような例がないのですが、直感的に連想したのは、渓流の王者「オオサンショウウオ」です。オオサンショウウオは国の特別天然記念物で、鳥取県は全国でも生息数の多い地域として知られています。古代においても珍獣として崇められたのかもしれません。皆さんはどう思いますか?

謎の形代

通常の馬形

オオサンショウウオ

(鳥取県教育委員会2007『特別天然記念物 オオサンショウウオ調査事業報告書』より転載)


PEGによる木製品の保存処理が進行中です

 昨年の春に、「センター春の風物詩」として、PEG(ポリエチレングリコール)による保存処理を行った木製品の取り上げと、新たに木製品を浸け込む作業を紹介しました(HPリンク)。あれから1か月ごとに10%ずつPEGの濃度を上げていき、現在は90%への引き上げの最中です。今回は先日行った濃度引き上げ作業の様子を紹介します。

 PEGは医薬品や化粧品など様々な分野で使われていますが、用途によって液状・ゲル状・固形など、様々な種類のものがあります。埋蔵文化財の保存処理に使われるPEGは常温では乾いたフレーク状ですが(写真1)、加熱するとロウのように溶けて液体になります。

写真1 PEGは手で触るとサラサラしています。

 これを60℃に加熱した含浸タンクの中に投入します。(写真2)このタンクは4000リットルの容積があり、濃度を10%引き上げるには400kgものPEGを投入しなければなりません。1袋20kgPEG20袋分投入するのですから、大変な重労働です。

写真2 PEGをタンクの中に投入する様子です。

 液面に山盛りになって浮かんでいるPEGを液の中にかき混ぜて溶かしていきます。(写真3)これをしっかりやっておかないと、塊のまま溶けずにタンクの底に沈殿してしまいます。PEGを投入すると液温が10くらい下がってしまうので、このあとは蓋を閉めて加熱を続けます。

写真3 PEGをかき混ぜて液の中に溶かしている様子です。

 液温が上昇して、投入したPEGが溶けたことを確認したら、今度はタンクの蓋を少し開けて、水分を蒸発させることによって目標の濃度に近づけていきます。濃度の確認は、サンプルをホットプレートで加熱して水分を蒸発させ、その前後の重量比を計算して行います(写真4)。目標濃度に達したら、蓋を閉めて濃度を維持しながら約1か月間含浸を続けます。

写真4 サンプルのPEGを加熱して水分を蒸発させます。

 この後もひと月ごとに濃度を引き上げていき、順調にいけば3月末には含浸が完了する予定です。そうすればまた、センター春の風物詩である木製品の取り上げ作業が始まります。


「センター春の風物詩」

 昨年5月にフェイスブックで「一番過酷な作業」(写真(1))と紹介したPEG(ポリエチレングリコール)による保存処理をした木製品の取り上げですが、当初予定より遅れたものの、つい先日その作業を青谷上寺地遺跡整備室と合同で行いました(写真(2)・(3))。

 では、なぜPEG含浸の木製品の取り上げは過酷なのでしょうか???

 その過酷な理由その1です。PEG溶液は60と熱く、水槽の周辺は蒸気で蒸し暑い上、水濡れと汚れ防止のために合羽と手袋を着用して作業を行うため、衣服の下は汗だくです。例年、熱中症にならないように注意を払いながら作業を行っていますが、今年は新型コロナウイルスに感染しないようマスクも着用していたため、暑さと息苦しさでさらに過酷な状況となりました。

 過酷な理由その2PEGに含浸した木製品は水浸け時のものと比較すると、水より重いPEGが木製品の中に浸透することによってさらに重くなります。しかも取り上げてすぐの木製品の表面にはPEG溶液が付着しているため、ぬるぬるです。水槽の中からぬるぬるした重い木製品を取り上げるのは、非常に疲れます。もちろん、手を滑らせて木製品が破損しないよう慎重な作業が求められます。

PEGに含浸した木製品の取り上げ作業は、緊張感を保ちながらも、暑さと重さに耐える、精神的にも肉体的にも過酷な業務なのです。

 さて、そんな困難をものともせず取り上げた木製品は、高住井手添遺跡(たかずみいでぞえいせき)と青谷上寺地遺跡(あおやかみじちいせき)から出土した木製品です。長さが4mを超えるような建築材や杭、矢板といった大型品もあれば、斎串(いぐし)や馬形といった木製祭祀具のような小型品まで多種多様あり、しかも大量でした(写真(4)・(5))。これらの保存処理が終了した木製品については今後も調査研究を進め、また新たな成果がみつかったおりには、ホームページ等でお知らせする予定にしています。

 取り上げが無事に終りほっとしたのも束の間、その後新たに保存処理をする木製品を多量に浸け込みました(写真(6))。また来年の春には、過酷な作業が待っています。

写真(1) 昨年度の作業風景です。

(2019年5月1日フェイスブック記事)

 写真(2) 木製品を取り上げている様子です。

写真(3) 木製品の表面についた余分なPEGを60℃の熱湯で洗います。

 写真(4) 建築部材など大型品を乾燥さ せています。

写真(5) 小型の木製品を乾燥させています。 

写真(6) 保存処理を行う木製品を浸け込みました。

  今年1年かけて、PEGを含浸していきます

  

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センター紹介

県の中心部は、室町時代の後期には湖山池ほとりの天神山に守護所が移り、江戸時代の前からは久松山(麓)に城が置かれるようになり、明治時代から現在まで県庁が置かれています。県庁から4キロほど離れた国府町に奈良時代の国史跡となっている因幡国庁や因幡守護所がありました。今ではひっそりとした田園地帯ですが、因幡三山(甑山(こしきやま)、今木山(いまきやま)、面影山(おもかげやま))に囲まれ、万葉の歴史と古代の出土品にあふれた万葉の里に埋蔵文化財センターはあります。


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