3-5教育対策

I 現状(分析)

 「平成12年度同和地区実態把握等調査」等によると、教育対策関係の主な状況は次のとおりである。

【中学校卒業者・高等学校卒業者の進学率の推移】

 県内同和地区の中学校卒業者の進学率は、昭和43年度では、県全体と23.0ポイントの較差があったが、平成11年度では、同和地区91.8%に対し、県全体95.2%と3.4ポイントの較差となっている。
 県内同和地区の高等学校卒業者の進学率は、昭和53年度では、県全体と23.4ポイントの較差があったが、平成11年度では、同和地区27.8%に対し、県全体38.0%と10.2ポイントの較差となっている。

<参考>
○同和地区生徒の進級できなかった生徒の割合は、県全体よりも高い。
○同和地区生徒の中途退学者の割合(私立も含む)は、年度による変動があるものの県全体よりも高く推移している。(平成12年度:同和地区4.1%、県全体2.7%)

【最終学歴の状況】

 15歳以上の世帯員の最終学歴状況をみると、最も多いのは「初等教育終了」の47.2%、次いで「中等教育終了」の40.8%、「高等教育終了」の7.0%と続き、「不就学」は1.8%となっている。これを前回調査の平成5年全国調査と比較すると、「初等教育終了」で3.2ポイント低くなり、「中等教育終了」で3.6ポイント高くなり、「高等教育終了」は7.0%で変化はなく、「不就学」で2.2ポイント低くなっている。
 また、年齢階層別最終学歴状況をみると、「初等教育修了者」の割合は50歳以上で過半数を超え、「不就学」の割合は60歳以上で1%を超え、80歳以上では16.6%まで上昇している。

【国公立・私立別の就学状況】

 国公立・私立別の就学状況をみると、「高等学校」の卒業者は「国公立」72.0%、「私立」26.8%で、「大学」の卒業者は「国公立」34.5%、「私立」64.7%となっている。これを前回調査と比較すると、「高等学校」の卒業者は「国公立」は3.2ポイント低くなり、「私立」は3.2ポイント高くなり、「大学」の卒業者は「国公立」は7.7ポイント高くなり、「私立」は8.5ポイント低くなっている。

【在学者の進学奨励資金の借入状況】

 県進学奨励資金を借り入れている在学者のうち県内在住者は、「高等学校」41.0%、「高等専門学校」40.7%、「短期大学」45.5%、「大学」55.0%となっており、前回調査と比較し、「高等学校」21.9ポイント、「高等専門学校」16.4ポイント、「短期大学」34.5ポイント、「大学」11.7ポイントそれぞれ減少となっている。なお、「国公立」と「私立」の内訳をみると、「私立」はすべての学校において減少しているのに対し、「国公立」は「高等学校」のみ減少し、「高等専門校」、「短期大学」及び「大学」はすべて増加している。
 県進学奨励資金を借り入れている在学者のうち県外転出者は、「高等学校」27.3%、「高等専門学校」45.5%、「短期大学」26.3%、「大学」47.4%となっている。

【教育委員会、教育集会所主催事業の実施状況】

 平成11年度の教育委員会、教育集会所主催の事業は、74地区において、教育集会所、隣保館、児童館などの施設で行われている。事業内容別にみると、事業実施地区の多い順に「学級・講座等の開設」55地区、「集会・大会等の開設」45地区などとなっている。
 事業への参加人員をみると、延べ135,128人となっており、参加人員の割合は「学級・講座等の開設」が65.5%で最も多くなっている。

II これまでの同和対策の成果と今後の課題

 県教育委員会では、「同対審答申」の精神に基づいて人権尊重の教育を徹底し、部落差別をはじめ、すべての偏見や差別を積極的に解消する人間を育成するための「鳥取県同和教育基本方針」を定め、同和教育の推進に努めてきた。
 しかしながら、依然として差別事象が発生しており、平成12年度県民意識調査の結果からも依然として根深い差別意識の存在が認められている。また、家庭の経済的な問題や学力及び進学率の較差の問題、同和地区住民の教育・文化の推進等の解決すべき課題が残されている。

III 今後の施策の基本的な方向

 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」(平成12年)では、「人権教育及び人権啓発に関する施策の推進について、国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、必要な措置を定め、もって人権の擁護に資することを目的とする。」とし、その基本理念を「国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用、国民の自主性の尊重及び実施機関の中立性の確保を旨として行われなければならない。」としている。そして、「国は、人権教育及び人権啓発の基本理念にのっとり、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。」とし、地方公共団体についても、「国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。」としている。
 また、「地対協意見具申」で「差別意識の解消のために教育及び啓発の果たす役割は極めて大きく、これまでの様々な手法で施策が推進されてきた。しかしながら、同和問題に関する国民の差別意識は解消へ向けて進んでいるものの依然として根深く存在しており、その解消に向けた教育及び啓発は引き続き積極的に推進していかなければならない。」と述べられているように、現行の教育関係事業を見直すにあたっては、これまでの事業の成果が損なわれないよう留意するとともに、同和地区児童生徒の学力向上及び同和地区住民の教育・文化の一層の充実が図られなければならない。同和問題の早期解決に向けて、今後とも、就学前教育をはじめ、学校同和教育・社会同和教育を推進していくものとする。

  

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