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大門口から(手まり歌)日吉津村富吉

昭和59年(1984)3月20日、日吉津村富吉で採集

歌詞

大門口から揚屋の前まで
三好高さん みなみなどうじゃ 見事なことよ
行き先々花見が咲いて 豊さん 文さん
涙が島の 高岡しんさん ふるないそねがわ
錦早織り たつたの銀しゃ
風車よとおめおめ さァさぬっ手の枕で からたちぬ川
せんせんとんと やっとんとんなら
ちょと百ついた

(伝承者明治31年生)
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解説

 もともとは江戸時代に各地でうたわれていた古い手まり歌であるが、鳥取県西部地方と島根県出雲地方の古老から、ときおり聞き出すことのできた歌である。

大まん口から揚屋の前まで
三好高さん不昧の近じょ
みなみな同士ゃ 見事なことよ
行き先々花芽が咲いて 豊さん 文さん
なんだが縞の 坂尾がしんびょで
紅さんしがうれしき早織り 確かなきんにょ
おめぐりさまよと からぐりさまよ
向こうの衆に渡いた

(松江市竹矢町・明治24年生)

 さて、江戸時代の同類を調べてみると、文化7年(1810)刊の式亭三馬著『浮世風呂』二篇巻之上に出ていた。

  大門口 あげ屋町
  三浦高浦米屋の君
  みなみな道中みごとなこと
  ふりさけ見よなら 花紫 相がわ 清がわ
  あいあい染がわ 錦合わせてたつたの川
  あのせ このせ やっこのせ
  向こう見いさい 新川見いさい
  帆かけ舟が二艘つづく
  あの舟におん女郎乗せて こん女郎乗せて
  あとから家形が押しかける
  やれ止めろ 船頭止めろ
  止めたわいらにかまうと 日が暮れる お月は出やる
  それで殿御のおん心
  それ百よ それ二い百よ それ三百よ(中略)
  とどめて一貫貸した
  せんそうせん

 少し下って天保初年(1830)ごろ書かれた高橋仙果『熱田手鞠歌』などにも同類は出ている。石村春荘氏は、その著『出雲のわらべ歌』(1963年・自刊)で、「(江戸)吉原のおいらん道中の華やかさをたたえたもの」と述べておられる。案外そうであったかも知れない。当時の女の子のあこがれをうたっていたのであろうか。
 わたしが日吉津村の大道さんや松江市の角田さんからうかがったのは、いずれも一九八四年のことであった。当時、大道さんは八十歳、角田さんも九十歳を越えておられたから、ご高齢だった。この歌もお二人よりも若い年代では、もう知っておられる方はないと断言しても大きな間違いはなさそうである


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