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猿とひき蛙のめおい餅(智頭町波多)

昭和62年(1987)8月23日、智頭町波多で採集

語り                                                                 

 昔あるときに雨が降っていたが、晴れたのでひき蛙がひょっこりひょっこりやってきて「今日はええ天気になったがよう。」と思ってひょっこひょっこしていたら、今度は山の上からひょこひょこっと猿が下りてきて、ひき蛙に向かって「ああ、これはええとこで出会った。こりゃあまあほんに、おめえと久しぶりで会うたなあ。久しぶりで会うたじゃけえ、めおい(費用をお互いに出し合って飲食すること)をしょうじゃないかい。」と言って、それから、「ほんならなら、まあ、餅米を、うら(自分)がもろうてくるけえ。」と言って、町やら村から出て餅米を二升ほど担いで帰って来て、それから、ひき蛙はそれをごっしょりごっしょりといで、そうして、セイロウ(蒸籠)に入れて蒸して、臼に入れてつこうとしたら、「こんなとこでは、食うてもおもしろうねいけん。」と猿が言い出して「ついた餅をどぎゃするじゃ。」とひき蛙が言ったら「ほんならウネ(尾根)の頭に持って上がって、そこから食おう。」と言うことになった。
 猿が元気なものだから、臼ごと尾根の頭へ担いで上がるし、ひきはひょっこりひょっこり、後で上がってきて「まあ、尾根から来るじゃろう。」と思って、上がったところが、猿が手に合わない(やんちゃでしかたがない)から、猿は「なんとここから食うたって、おもしろげがないけえ、これへ転ばけいて、そぎゃして下へ落といて食うてもいいになあ。」って言う。ひき蛙はおとなしいものだから「ほんなら、まあ、そぎゃしょう。」と言った。
 それから尾根のてっぺんから、谷へごろごろっと転ばす。そうするというともう猿はさっと「待て待て待て待て待て。」と言って臼へついて出るししたら、その臼はぼーっど下まで転んで出たので「さあ、臼の中のぞいて、一人で食べよう。」と思って見たら、中にはほんの少しも何にもなく空っぽだった。
 猿は「こりゃまあ、何ちゅうこっちゃ、一つもありゃせん。」と言いながら思案して。それからまた、ごそごそっと猿が山の途中まで引き返してみたら、そこにひき蛙がいるので「おい、ひきどん、どがぇしよるじゃいや。」と言ったところが、ひき蛙は、猿が臼をほんのちょっと転ばしたら餅がひょっと出て、木の切り株にその餅がだらーっと引っかかっているので「ずーっと流れる方から食ーべましょう。だーるまさん。」と言いながら「あっちが冷めとる、こっちが冷めとる。熱い餅をほうほうほうほう。」と言いながら食べているそうな。
 猿はほんとうにうらやましくてならないものだから「あっ、こっちい流れよる。あっ、こっちい流れよる。」と言っていろいろとひき蛙に言い聞かせるけれども、ひき蛙はそれにはおかまいなく一人、むしゃりむしゃり、流れる方から食べていた。
 たまらなくなった猿が「何とわしにもちいとちっとくれえや。ちーっと。」と言うものだから、ひき蛙は「よしよし。」と言って、それからさっと中の熱いところをぴしゅーんと猿の顔にぶつけたそうな。
 猿がとても熱うてかなわないものだから「あつつつ、あつつつ。」と言って、それでもとてもいやしんぼうな猿は、みなじきに食べてしまって、今度は「まあ、もちぃーとでええけえ、もちぃーとでええけえ。」と言うので、ひき蛙は「よしよし。」と言ったそうな。猿の方はまた中の熱いところを、今度は顔へぶつけられたらかなわないと思って、お尻を向けたので、それから、ひき蛙がお尻にぴしゅーんと投げたところが、それでも猿は食べたので、それで今でも猿の顔は焼けて赤いし、猿のお尻も赤いのだそうな。それだからなあ、欲張りをしてはいけないのだよ。
 そればっちり。(語り手:明治40年生まれ)
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解説
 実にきめの細かさがうかがえる語りである。関敬吾博士の『日本昔話大成』から戸籍を探ってみると、動物昔話の「動物競争」の中に「猿蟹餅競争」として存在している。つまり、猿が主人公、蟹が副主人公となっていることが多いようだが、地方によっては蟹の代わりに蟇(がま)がその役を引き受けている場合がある。この語りは、副主人公が蟇、つまりひき蛙となっているのである。


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