調査・研究(木製品トリアージ)

木製品の中身は?

 木製品整理に使うアイテムとして、前回お伝えしたのは赤外線ですが、今回お伝えするのはX線です。X線は健康診断の際のレントゲン撮影に使われることでおなじみですが、木製品にも使用されます。写真は、トリアージ作業で見つけた青谷横木遺跡の稲の穂を摘むのに使う木包丁ですが、刃の部分に溝があり、何かはめ込んでいた事が分かります。これまで見つかった例から、恐らく鉄の刃がはめ込まれていたと思われますが、一見すると鉄の刃はありません。

 そこでX線を当てて写真撮影をした所、写真の木包丁の内部に白い塊が確認できます。木の部分はX線を通しやすいのですが、金属は通しにくいため、こうした現象がおこるのです。

 稲刈りの季節にぴったりの、この鉄刃付の木包丁ですが、穂を摘む道具の大半は石を磨いてつくった石包丁で、全国で出土します。石包丁は石材の調達や磨きなどの製作にかかる労力が、木包丁に比べてかなり大変であり、木包丁が使われたのはそうした背景があるのかもしれません。木包丁は青谷上寺地遺跡などでみられますが、鉄刃付きとなると、全国でも出土例がかなり少なくなります。ただしその大半は、実はこの鳥取県内で出土しています。しかも弥生時代、古墳時代、奈良・平安時代と時代毎に出土しており、その変遷や歴史的意義などについて、今後研究を進めていきたいと思います。

木製穂摘具

横からみた状況

X線写真

[令和2年10月掲載]


赤外線カメラを駆使して木製品再整理

 今年度も昨年度に引き続き(20190911Facebook記事)、鳥取西道路出土木製品のトリアージ作業を行っています。トリアージ作業とは、木製品の調査研究や保存処理を効率的に行うため、大きさなどの基本的な情報や木製品の状態を確認する作業です。現在は、青谷横木遺跡から出土した斎串(いぐし)、人形(ひとがた)、馬形(うまがた)といった木製祭祀具や、木簡(もっかん)を中心に作業を進めています。これらの遺物の中でも木簡や人形は要注意です。なぜなら木簡や人形には墨で書かれた文字や絵が残っている可能性があるのですが、墨が消えて肉眼では見えにくくなっていることが多いからです。

 そんな時には赤外線カメラの出番です!赤外線カメラは、肉眼では確認できないような墨の痕跡も映し出してくれることから、木簡や人形を観察する上では欠かせないアイテムです。

 写真1は、今年度のトリアージ作業中に見つけた木簡です。肉眼では文字はもちろん、黒いシミのような物もはっきりとは確認できません。写真2・3は写真1の木簡を赤外線カメラで撮影したものです。あら、不思議!木簡の一部に文字のようなものが確認できます。

写真1

写真2

写真3

 既に今年度のトリアージ作業で、新たに14点の墨の痕跡のある木製品を確認しています。これらがどのような文字や絵なのかについては、これまでに全国から出土した文字資料と比較検討し、解読作業を進める予定です。青谷横木遺跡からは県内最多の木簡が出土していますが、このような新資料を加え、改めて調査研究を進めることによって、新たな視点で青谷横木遺跡を評価することに繋がっていきます。

[令和2年10月掲載]

  

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 久松山地域は戦国時代以降鳥取城が築かれ、鳥取藩32万石の中心地でした。現在でもこの地域は県庁があり、行政の中心地となっています。

 しかし、戦国時代から遡ること約800年前の奈良時代、県庁から4キロほど離れたこの国府町に国史跡因幡国庁(現在の県庁にあたるもの)がありました。今ではひっそりとした田園地帯ですが、因幡三山(甑山(こしきやま)、今木山(いまきやま)、面影山(おもかげやま))に囲まれ、当時の面影を残す万葉の歴史と古代の出土品にあふれた万葉の里となっています。
 この歴史豊かな万葉の里の一角に埋蔵文化財センターはあります。


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