防災・危機管理情報


 大辻隆弘審査員、穂村弘審査員、江戸雪審査員の講評は、大会当日、会場でお話しいただいた内容を掲載しています。

 大森静佳審査員、小島なお審査員の講評は、書面でお寄せいただいた内容を掲載しています。

  

特別賞 大辻隆弘審査員選 講評

受賞作品

夕暮れはひとりのわたし青だけを選んで入れたプレイリスト聴く

 鳥取県立鳥取東高等学校 3年 圓城寺 陽菜乃

講評:大辻隆弘審査員

 「夕暮れは1人の私」、これがなかなかさらっとしてるけどいいんですよね。つまり夕暮れは1人なんだけど、普段の昼間とかはそうじゃない、学校の中の一員であったり、家族の中の一員であったり。でも、夕暮れだけは、私は1人。私だけがこの時間を占有しているっていう感じの、この初句、二句のつぶやくようなフレーズがすっと心に入ってきてすごく魅力的です。後の5・7・7の三句以降でどうそれを裏付けて、それを実感持たすかっていうところが勝負なわけですけど、それもすごくうまくいっていて、「青だけを選んで入れたプレイリスト」っていうのはいいですね。つまり青に関わる曲ばっかり入れるんでしょう、『青いサンゴ礁』とか、『青いフォトグラフ』とか。それを聴くっていうところが、すごくいいと思いました。選んで「入れた」っていうのも、「入れた」っていう動詞もやはり今の人の感覚なのだと思います。僕たちの世代はダビングして「移した」んですけど、今の人は「入れる」という感覚なのだなと。「入れる」という動詞の選択も非常にいいなと思います。

 「プレイリスト聴く」っていうのも字余りなんですけども、このたっぷりした結句の感じもこの歌の場合はぴったり合ってると思いました。とにかく、夕暮れの1人の時間を大切に愛おしんでいる作者の気持ちというものが、非常によく出ていて、一瞬で心掴まれた歌でした。

 

特別賞 穂村弘審査員選 講評

受賞作品

逆光のあなたが好きでおはようは踊り場で言う、と、きめている

 千葉県立千葉高等学校 3年 土屋 沙音

講評:穂村弘審査員

 「逆光のあなたが好き」っていう感覚が面白いですね。

 「おはようは踊り場で言う」という表現からは、距離を詰めたいとか仲良くなりたいといったベクトルとは逆のベクトルを感じます。オーラを纏うとか、後光が差すみたいな表現がありますが、「逆光のあなた」という表現は別世界感が強化されているような気がして、自分がいる場所から遠ざかるベクトルをあえて選択していることに面白さを感じました。

 また、「と、きめている」という変則的なリズムと内容もよかった。自分が決めたからといって、そううまく踊り場で「おはよう」が言えるもんだろうか、という揺らぎの感覚を含んでいて、そこにも魅力を感じました。

 

特別賞 江戸雪審査員選 講評

受賞作品

真夜中のぱらりとめくる単語帳隣の弟ぐっすり寝ている

 鳥取県立鳥取東高等学校 3年 櫛田 ななみ

講評:江戸雪審査員

 文体が完結でありながら味わいのあるうたです。「ぱらりと」って言っているけれど、この音は実際に鳴るわけではない音無き音で、そういう気配みたいなものにすごく敏感になっている真夜中。ふと横を見ると弟が寝ているわけです。ここではやっぱり弟じゃないとだめで、例えばそこに猫が寝ているだけだったら、自分からはちょっと遠いものである、動物だし、距離がある。ここでは猫ではなく、自分と似ているのに不思議な存在としての弟だからこそ、作者の何ともいえない感情が感じられます。しかも寝てなきゃだめですよね。起きて話しかけられたりしたら少し邪魔でしょう。何となく横にいてくれる弟の気配を感じているっていうところがいい。何とも言えない弟への親愛感や、安心感、そういったものがうまく詠まれていています。

 この「弟」はやはり現代的な弟ですよね。昔の弟ってもう少し危なっかしい存在だったんだけれど、このうたの「弟」は、かわいい素直な弟という感じがしました。単語帳をめくるときにふっと意識が弟に飛んで、次にふたたび単語帳に目をやって単語の方にぐっと意識が傾く。さらにまた単語をめくるときに見たら弟はまだすやすや寝ている、というような穏やかな時間の流れも感じました。下の句は音数が多く、そこにも時間のたゆたいがあるようにおもいます。

 

特別賞 大森静佳審査員選 講評

受賞作品

雀の子鈴のようなる声であり石器時代の形容詞思う

 渋谷教育学園幕張高等学校 2年 矢野 麟太郎

講評:大森静佳審査員

 石器時代には、ごく簡単な言葉があったにしても、今と同じようなこまかい形容詞や形容動詞などはきっと存在しなかったでしょう。もっと人間の心の叫びや興奮と直結した、みじかい言葉があっただけなのではないか。鈴をころがすような可愛い子雀の声を耳にして、まだ「鈴」や金属が存在しなかった石器時代のひとびとは、こんな鳥の声をどんなふうに聴いていただろうか、と遠い時代へ思いを馳せた一首。人間がはるか太古から感じてきた音、言葉、感覚をめぐって、さまざまに思考が刺激される、スケールが大きく魅力的な歌です

 

特別賞 小島なお審査員選 講評

受賞作品

光あれと神が言ったら光ある そんな単純だから眩しい

  名古屋高等学校 3年 福田 匠翔 

講評:小島なお審査員

「神は光あれと言われた。すると光があった。」
聖書のなかで神が発した最初の言葉であるとされている。
ここでいう「光」は何なのだろう。
平和のこと、美しさのこと、正しさのこと、命のこと。
いずれにしても神のたったひとことがこの広大な世界を創造したのだという。
日々、傷ついたり、傷つけてしまったり、目に見えない心の問題によって、
世界はどんどん複雑に脆くなってゆくように感じられる。
けれど、私たちが生きる今は、さかのぼればそんな単純によって作られているのだ。
光あれ。この言葉は悩みに翳る自身の心を照らす言葉であり、
隣にいる他者の心をよく見つめるための光源になる言葉なのだろう。

 

  

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