【総評】
4チームの皆さん、本当にご苦労様でした。
皆さん自分の歌を客観的に見て、自分の歌が人から見てどう見えるか、どういうところが疑問に感じられるか、そういうことをきちっと自分の中やクラブの中で議論しながら問題を全部整理して、理論武装してきていてさすがだなと思いました。今年はレベルの高い討論ができたような気がします。
それと今年の4チームは雰囲気がすごく温かくて、ニコニコしながら、メンバー同士支え合っているといった印象でした。見ていてほほえましく、心が温かくなるような、そんな4チームだと特に感じました。
敢闘賞を受賞された名古屋高校さんは高校生のピュアなところと、少し拗ねたようなシニカルなところ、そういう2点が感じられ、自分の高校生時代を思わせるような感じがしました。例えば武田さんのピュアな作品「いつまでも時間はとまるいつまでも君を好きだと言えないばかりに」、それから井上さんのシニカルな作品「どこにでもある金賞のコロッケ」、こういったピュアさとシニカルさの2つの側面から高校生らしさのようなものが出ているなと見せていただきました。
それから、敢闘賞の光陵高校さんもすごく仲のいい感じがしました。宇山さんが発表したときに、森岡さんと植草さんが心配そうに見つめていたまなざしっていうのが、すごくほほえましかったです。きちんと短歌というものの定型や、詞の特性、言葉の並び方によってどのように世界が変わっていくのか、そういう高度な短歌感を持ったメンバーと、短歌を作る喜びみたいなものが溢れているメンバーとが合わさって、チームとしてのバランスがとてもいいと思いました。
惜しくも準優勝になった高田高校さんの歌の解説一つ一つがすごく心を打って、決してごまかしで言ってない、自分が心から信じている、そういう確信みたいなものをさらりと出されていて、一番自信に満ち溢れていた感じがさすがだなと思いました。また、なぜ短歌は短歌定型でなくてはならないのか、5・7・5・7・7以外のリズム、文体の可能性もあるのではないだろうか、と短歌の定義、公式に対してすごく疑問を抱きながら、チャレンジングな定型意識を持った姿勢をこのチームから一貫して感じられました。それは本当に素晴らしいことだなと思う一方、やはりもっと短歌定型を信じてもいいんじゃないかなという感じもしました。5・7・5・7・7というこの形式が、1300年間日本の文化の中で育まれてきて残っている。そうやって残っているからには何か理由があるわけで、その定型の意味みたいなものをもう一度噛み締めながら、短歌を作ってもいいのではという気もしました。チャレンジング意識を失わずに、これからもずっと短歌を作って欲しいなっていうことを感じたチームでした。
優勝された尚学館さんのテーマは、全部人と人とのつながりですよね。恋人か、或いは友達か、そういう人と人との繋がりみたいなものにものすごく繊細な感覚があって、それを自分の言葉に置き換えて、それが読み手の方の心のやさしい、やわらかい部分を刺激してくれる。そういうところが、とても審査員の胸を打ったような気がします。このチームもすごく仲がよく、いつも袖を引っ張って隣の人を応援していて、そういった仲の良さや初出場の緊張感もすごく伝わってきて、楽しい発表を聞かせていただきました。
この大会も7回目になってきて本当に定着してきて、それぞれが学校の持ち味をきちっと持ちながら、こうやって歌を作っていただいていることを本当にうれしく思います。今年も素晴らしい、いい対戦だったと思います。ありがとうございました。
コンテストに限らずどこでも、共感できる歌、伝わる歌が人気なんですけど、伝わる歌がなぜ伝わるかというと受け手の中にすでにそれは要素として存在するからだと思うんですね。つまり、人気のある歌が要注意なのは、既知の世界に吸い込まれてしまう、という可能性がある。逆に、1人の強い思い込みで作った歌って伝わりにくいのですが、なぜ伝わりにくいかというと、まだ世界がそれに気づいていない、ということがある。
今回僕が注目したのは、例えば「無機物が表彰される夢を見た 汗は布団にすべて吸われて」の「無機物が表彰される」という、全く予測できなかったイメージ。あと、「でも確かに時刻表には載っていない蛹の最期のような夕立」の「でも確かに」という確信の深さみたいなもの。この辺りに1人の特異な思い込みを感じるのだけれども、短歌の出発点は常に、読者受けではなくて1人の世界の想像、思い込みから作られるべきで、そういう歌はまだ世界が気づいてない要素をその人が最初に発見したという可能性がある。それを既存の世界に突きつけるときに、世界の側が更新される、変革される可能性を含んだ歌と思うんですよね。もちろん単なる的外れの場合もある。でもそれも含めて、重要なことだと思うので、今回そういったチャレンジングな歌を見ることができてとてもうれしかったです。頑張ってください。
全体をふりかえると、会話がうたの中に入っているうたが割とあった印象です。心の中のつぶやきも含めて、会話調が多いように感じました。そんな中で、やはり、読んでパッとわかりやすいということは大事だとは思っています。例えば「私の思っていたことをよく言ってくれた」と思わせてくれるようなうたは共感されやすいから人気もある。でも一方で、意味がはっきりとれなくても何か惹かれる、というのが短歌のひとつの要素としてあってほしいとも思います。例をあげると、今回発表されなかった名古屋高校の武田直弥さんの「あのね今日好きな子に轢かれたんだよ 全然痛くなかったんだよ」。このうた、一瞬何のことかとおもいますよね。好きな子が自分を轢いた、しかも、全然痛くなかった、っていうのは何かしらその好きな子に対する気持ちを象徴的に語っているようで、一瞬どきっとしてしまう。意味が取れないうただけど何故か気になり心に残ります。もう1首、光陵高校の森岡千尋さんの「広告の中で微笑む俳優に突然冷たくなってく感じ」。例えば俳優の表情が笑いから怒りとか悲しみに変わっていく瞬間を切り取ったのだろうけど、状況としてはよくわからない。見る人によって受け取り方が違う表情の変化だから、読んで理解できない人もきっといると思うんですよね。それでも、そういうことも恐れずに、果敢にチャレンジして詠っていってほしいと思いました。