先鋒戦
先攻:尚学館・さくらんぼ♡
次こそは正解だろと蹴る石が時空を超えて君に会えない
後攻:名古屋高等学校・大いなる雅
いつまでも時間はとまるいつまでも君を好きだと言えないばかりに
講評 大辻隆弘審査員
時というものが、自分の気持ち次第で永遠に感じられたり、一瞬に感じられたりといえばそのとおりで、時というのは単なる物理学的な1秒ではなく、心の中の伸び縮みする生きている時間というのが時というものの本質だと思うので、『大いなる雅』さんの気持ちもよく理解できる。
また、『さくらんぼ』さんの歌からは、本当はこの蹴った石は時空を超えるはずなのだけれど、現実の世界にぐっと引き戻されるというような、そういう現実の重みみたいなものも感じられました。時というもののとらえ方が、非常に深く多面的に出ていた対戦だったと思います。
ピュアな『大いなる雅』さんと、心の中でいろいろ屈折を感じながら、いろいろ考えている『さくらんぼ』さんと、なかなか対照的な対決でとても楽しかったです。
中堅戦
先攻:尚学館・さくらんぼ♡
楽園へ今なら飛べる階段の先に広がる青空を見て
後攻:名古屋高等学校・大いなる雅
どこにでもある金賞のコロッケを詰めれば楽園は作れそう
講評 穂村弘審査員
『さくらんぼ』さんの歌は耳で聞いてすぐに理解できるっていう良さがあったと思います。何となくうっすら自分の中にもある、天国と楽園の間のギャップみたいなものがうまく表現されていて、区切れも綺麗で、韻律的にすっきりしていますね。
『大いなる雅』さんの「どこにでもある金賞のコロッケ」は、耳に聞いただけでは「どこにでもある金賞」ってなんだろう、と微妙に難しいんですけど、目で見て、頭で考えながら読むと、ああそうか、そういうちょっとアイロニカルな歌なのか、とわかる構造になっていて面白いなと。楽園という言葉から、「どこにでもある金賞のコロッケ」でそれを作るっていう発想は、この作者だけのものだと思うので、その独自性、オリジナリティに魅力を感じました。
大将戦
先攻:尚学館・さくらんぼ♡
表情のうそもほんとも受け止めて雨の名前を君に教える
後攻:名古屋高等学校・大いなる雅
無機物が表彰される夢を見た 汗は布団にすべて吸われて
講評 江戸雪審査員
『さくらんぼ』さんの「君に教える」という積極性がすごく素敵だと思いました。一方で「受けとめて」の受け手が〈自分〉か〈相手〉か、どちらにも読み取ることが出来ますね。どちらが「受け止め」るかによって、うたの内容が変わってくると思っていました。でも、作者からのコメントを聞いて、自分がすべてを受けとめる側のうたであることがわかりました。それから「うそもほんとも」と軽くひらがなで、しかも「ほんとう」を「ほんと」と書くことにより、かえって真実味や実感が伝わってくる、そこがうまいと思いました。
『大いなる雅』さんのうたも面白かったですが、「汗」というものの対比が「無機物」というのがちょっとゆるいなと。汗に対するのであれば具体的なものの方が面白かったかなと思いました。また、「表彰される」は複雑な感情なのかな、よそよそしい感じもする反面、好きだよっていう気持ちも含まれているようで面白いと思いました。