【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授
現在、科学的に正しいと考えられている認知症のリスク要因の中で、青年~中年期(18~65歳)の方に関係してくるものに「気分の落ち込み(抑うつ)」があります。

抑うつと認知症は発病までのメカニズムに共通点がいくつかあり、専門家でも「抑うつなのか、認知症なのか」をすぐに区別することは難しいことがあります。抑うつも認知症も、症状が軽いうちに早く治療やケアを開始することが大切です。
抑うつが認知症リスクになる理由
誰にでも落ち込むことはあります。ミスをして叱られたという比較的軽いものから、大切な人との別離という重大なものまで、何らかのストレスがきっかけで気分が落ち込む(抑うつ)ことはよくあります。
抑うつ状態にあるときは、ストレスから身を守るためのホルモン(糖質コルチコイド)が多く分泌されます。このホルモンは、「自分を苦しめる脅威と戦う/逃げる」ために、血糖値や血圧を高めます。一方で、記憶を司る脳の部位(海馬)を萎縮させたり、脳内でのアミロイド沈着を増加させたりしてしまうという負の作用もあります。
抑うつが一時的であれば基本的に問題ありませんが、長期間に及ぶと、神経成長因子の低下やアミロイドβ沈着、そして海馬の萎縮などが起こります。脳にとってマイナスの状態が続いてしまい、認知機能の低下や認知症の発症につながると考えられています。

抑うつから脱するには、休養が必要
何か悲しい出来事(ストレス)があって心が塞いでしまっても、時間をかけて少しずつ元通りになります。誰しもにそのような経験はあると思います。
心が回復するときに、無理は禁物です。「早く立ち直らなければいけない」と焦って、転職などの重大な決断をしがちですが、それはいけません。まずは「もう脅威(ストレス)と戦ったり、逃げたりしなくていい」と思える環境でゆっくり休養を取ることが大切です。
深呼吸をして心を落ち着かせ、あなたの好きなものを見たり・聞いたり・行ったりしてください。それが心の栄養になります
日光もよい心の栄養になります。ぜひ、午前中は窓際で太陽の光を浴びるようにしてください。日光は目を通じて神経に刺激を送り、セロトニン(いわゆる「幸せホルモン」)の分泌を高めてくれます。
落ち込んでいるときは食欲がないかもしれませんが、脳と心に栄養をあげるためには、ご飯を食べて栄養素を摂り込まないといけません。まずは食べられそうな、好きなものから召し上がってみてください。
また、ゆっくり散歩をするなど、軽くでもいいので身体を動かしましょう。血流が良くなりますので、脳と心に栄養が行き届きます。良い気分転換にもなります。
抑うつが長引きそうなら、ためらわずに病院へ
ずっと心が抑うつに支配されたままで、改善なくつらい状態が2週間以上続いているようなら、医療機関に行きましょう。
「たかが気分の落ち込みくらいで、病院に行くなんて恥ずかしい」などと思う必要はありません。専門家(精神科医、心療内科医など)に相談して、カウンセリングや薬物治療などを行って、早めに対処することが認知症予防の面でも重要です。
鳥取県は、抑うつについて相談できる医師の名簿を公開しています。どこを受診すればいいのか迷ったら、下記の名簿からお近くの医療機関を探してみてください。
★抑うつについて相談できる医師の名簿はこちら★
もしくは、かかりつけの医師がいるなら、まずはその先生に相談してみてもいいかもしれません。
また、「こころの相談」窓口もあります。抑うつが続いている、夜ぐっすり眠れない、食欲が出ない、何に対しても関心がもてず、やる気が起きない……ということがあれば、気兼ねなく相談してください。
★「こころの相談」窓口はこちら★
うつ状態はあなたの脳や心の大きな危機です。なるべく早く治療や対策を行って、心が回復しやすい環境を作りましょう。