【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授
現在、科学的に正しいと考えられている認知症のリスク要因の中で、老齢期(66歳以上)の方に最も大きな影響があるのは「社会的孤立」です。

社会的孤立は認知症のリスクの他にも、生きがいの低下、犯罪や消費者被害、孤独死の増加などにつながる問題です。孤独・孤立状態にある人への支援を行うために、2024年4月より「孤独・孤立対策推進法」が施行され、各地域で取り組みが始まっています。
社会的孤立とは?
社会的孤立とは「家族や地域社会との交流が、客観的にみて著しく乏しい状態」を指します。簡単に言うと「会話や相談できる相手がおらず、近所付き合いもない」ような状態のことです。
家族や友人、知り合い、地域の人々とコミュニケーションする機会がよくある方、何か困ったときに相談する相手がいる方は、社会的に孤立していません。たとえ一人暮らしであったとしても、気軽におしゃべりできる人が周りにいるなら、社会的孤立ではありません。
一方、同居する家族がいてもほとんど話さない、親族や友人とも疎遠という状態の人は、社会的孤立に陥っている可能性が高いです。
実際に、孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(2024年)によると、程度の差はあれ、約4割の人が孤独感を感じているそうです。
社会的孤立が認知症リスクになる理由
社会的孤立が問題なのは、他者とのコミュニケーションの機会が減るからです。
会話するときは、相手の声を聞き取り、表情やしぐさを見て話の内容を理解し、その意図を把握したうえで適切な返事を考え、発語し、身振り手振りで気持ちを伝えます。これを何往復もするので、会話中はとてもよく脳を使っています。
特に、よく知らない人との会話は、最も脳を使います。相手の性格や好みが分からないですから、慎重に話題や言葉遣いを選ぶ必要があるからです。そのような触れ合いの中で、新たな友人を得て、よりコミュニケーションの機会を増やせるかもしれません。
他者とのコミュニケーションで脳は刺激を受け、認知機能が保たれます。孤立状態では、「会話」で認知機能をトレーニングすることができません。また、気分の落ち込み(抑うつ)や運動不足などの他のリスクも呼び込みやすくなってしまいます。

社会的孤立を解消するには?
他者とのコミュニケーションの機会を増やすには、家の中に閉じこもっていないで(出不精にならないで)、外出することです。
仕事を引退すると途端に予定や話し相手がいなくなってしまう人は少なくありません。現役時代から仕事以外に趣味や地域の役割を持って、休日をアクティブに過ごす習慣をつけておきましょう。地域のイベントに出かけるのも、他人と触れ合う良い機会となります。
どんな趣味がいいのかは人それぞれですが、あえて示すなら楽器の演奏や歌を歌うような音楽系の趣味や、絵を描いたり写真撮影をしたりする美術系の趣味が、認知症予防に良いと言われています。仲間と一緒に旅行に行くことも、とても良い脳の刺激になりますよ。
<参考記事>
●他人と話す機会があまりないのですが、家族と話すだけでも認知症予防になりますか?
●直接会って話すのではなく、電話やメール、LINEのようなメッセージアプリでのコミュニケーションだけでも認知症予防になりますか?
社会的孤立に対する鳥取県の取り組み
2024年4月に施行された「孤独・孤立対策推進法」に基づき、孤独・孤立対策が全国的に取組まれていますが、鳥取県では、「鳥取県孤独・孤立を防ぐ温もりのある支え愛社会づくり推進条例」を2022年12月に制定し、全国に先駆けて孤独・孤立対策を進めています。「生活困りごと相談窓口」では電話や来所だけでなく、LINEでも相談を受け付けています(詳しくはこちらをご参照ください)。
また、孤独・孤立対策に取り組む意欲のある県民に対人援助の手法などの研修を受けていただき、「とっとり孤独・孤立サポーター」を養成しています。当サポーターには孤立状態にありながら行政や支援機関が把握していない人に寄り添い、支援につなぐことが期待されています。