5 新生児聴覚検査について

(5)新生児聴覚検査の実施時期と回数

初回検査の実施時期
 出生医療機関入院中に初回検査を実施します。
 新生児の場合、出生直後には中耳にまだ液体が貯留していることが多く、これが空気に置き換わるには数時間から数日間を要するので、出生直後は偽陽性率が高くなります。このため、検査実施時期は生後24時間以降が望ましいと言われており、しかも、再検査を行う時間的余裕が必要なので、おおむね生後2~3日に初回検査を実施するのが適当です。
なお、低出生体重児や早産児などで入院治療を行っている場合は、退院時までの適切な時期に実施するようにしてください。

 

確認・再確認検査の実施時期と回数
 初回検査で「パス」と判定されれば検査は終了となりますが、「要再検」の場合は、入院中に確認検査を行います。
 なお、確認検査は、初回検査と同じ日には行わず、日を改めて実施してください。
 

 

 (a)自動ABR使用の場合

 自動ABRを用いて初回検査を行い、「要再検」と判定した場合には、入院中にもう一度、検査(確認検査)を実施します。
 確認検査でも「要再検」となった場合は、1か月健診時に、精密検査実施機関を紹介してください。

 

(b)OAE使用の場合

OAEを用いて初回検査を行い、「要再検」と判定した場合には、入院中に再度検査(確認検査)を実施します。このときの検査では、何度か繰り返し検査を行うようしてください。これはOAEの要再検率が自動ABRに比べ高いことから、偽陽性による精密検査受診者をできるだけ少なくし、保護者の負担を少なくするためです。 この確認検査でも「要再検」となった場合は1か月健診時に再度、検査(再確認検査)を行ない、「要再検」と判定した場合に、精密検査実施機関を紹介してください。 

 

(参考)聴覚検査の「要再検(refer)」率について  
 OAEの「要再検」率は、自動ABRよりやや高く、米国での聴覚検査の結果では、TEOAEは3~12%(平均8%)、 DOAEは4~15%(平均7%)、自動ABRは1~10%(平均4%)とされており、 2000年のposition statementでは、スクリーニングの過程(1か月まで)で精密検査にまわす要検査例を4%以下にすることが求められています。米国では入院期間が分娩後24時間から48時間の施設が多いため、「要再検」率が比較的高くなっていますが、わが国では米国に比べて、入院期間が長く、生後24時間以降に検査が実施でき、再検査も入院中に実施が可能なので、より低い「要再検」率が期待できます。また、実施回数を増やすことにより、「要再検」率を更に下げることが可能です。厚生科学研究「新生児期の効果的な聴覚検査方法と療育体制に関する研究」班が、平成10年から約20,000人に自動ABR(Natus ALGO2)を使用して聴覚検査を実施した結果では、両側「要再検」率は0.4%、片側「要再検」率は0.6%で、米国の成績に比べて、非常に低い結果でした。また、OAEのわが国での「要再検」率(両側及び片側)は、2回検査実施後で、DPOAEは2.5~9%、TEOAEは3~7%です。偽陽性率を低くすることにより、保護者の無用な不安や精密検査の数を減らすことが出来るので、出来るだけ要再検率を低くするよう努力することが必要です。

(6)検査結果と保護者への説明時期

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