この漁業は、本県の主幹漁業の一つで、長足の進歩を遂げた。すなわち、昭和42年(1967)頃、自動イカ釣機の出現と相まって大和堆漁場が開発され、総トン数100トン以上の漁船が操業するにようになり、従来のイカ釣り漁業の概念を一変した。 また、一方では着業船が急増し、一時は日本海のイカ釣漁船が3、000隻以上にも及び、昭和47年(1972)ついにイカ釣り漁業の規制水域が設定され、あわせて30トン以上の動力漁船によるイカ釣漁業は農林水産大臣の承認がなければ操業できなくなった。 本県においては、昭和49年(1974)水産庁香住漁業調整事務所(現境港漁業調整事務所)管内の1府6県(石川、福井、京都、兵庫、鳥取、島根)が同一規制することとなり、海面漁業調整規則の一部が改正され、総トン数10トン以上30トン未満の漁船によるスルメイカ漁業が「小型いかつり漁業」として新しく知事許可漁業に加えられた。
 また、10トン未満漁船についても、平成3年(1991)海面漁業調整規則の一部改正により、新たに5トン以上10トン未満船も知事許可漁業となり、操業区域、集魚灯数等の制限も同時に設定された。今回は、着業統数が最も多い5トン以上10トン未満船のうち、網代港漁協所属船について記述する。

  • 漁期   周年
  • 漁獲物  スルメイカ
  • 漁場   本県沖合一帯から隠岐島周辺の水深80メートル以深
  • 漁具の構造   漁具の構成は図のように、先端に1.鉄製重り、2.イカ針(トンボ)(25~30個)、3.道糸からなり、船上に巻揚機を装備する。漁期始め(5,6月頃)の魚体の小さい時期は、図の漁具よりナイロンの太さをそれぞれ10号程度細くして使用するのが普通である。道糸にはワイヤーを使用し、鉄製で32号、ステンレス製で30号が主として使われる。また、イカ針は、巻揚ローラーとの関係により、その間隔を80~100センチメートルとしている。これは、巻揚ローラーの円周が約1メートルあるので、漁具をローラーに巻いた際、イカ針が重なり合わないように、ローラーの円周よりやや短くしている。
  

自動イカ釣り機と仕掛け疑似餌
次に漁労装置についてみると、イカ釣機、これに付随した誘導ローラー及び受台、発電機、集魚灯でこれにとも帆(スパンカー)及び潮帆(パラアンカー)を併用する。これら設備の一般的装置は下図のとおりである。
自動イカ釣り機の配置
イカ釣機
 原動機と巻揚ドラムからなっている。原動機は一般に交流400ワットで、原動機の左右にそれぞれ1個の巻揚ドラムを装備する(図1)。1972年頃から図1のようにイカ釣機に原動機を組込んだものが使用され、大型では油圧式イカ釣機が使用されている。イカ釣り機の設置台数は大型船で14~16台、沿岸小型船で6~8台である。
巻揚ドラムの形状は釣果を左右する要素にあげられており、過去に研究が重ねられてきた(図2)。いわゆる「シャクリ」がある程度強い方がイカ針のオドリが良く、現在はほとんどの漁船が図2のような形状の巻揚ドラムを使用している。
イカ釣り機の構造
誘導ローラー及び受台 巻揚ドラム一個に誘導ローラー1個とし、漁具の投入及び巻揚を円滑にする役割を果たしている。受台は、漁獲物の海中落下防止と、甲板上に設置されたイカ誘導樋に落とす役割を持っている。また、上図では受台に金網が貼り付けられているが、集魚灯の光が海中を照射する範囲を考慮して、受台の下方に板等を用いてその照射角度を変えることが試みられている。
イカ釣り機のローラーと受台

発電機及び集魚灯  発電機は、60キロワットから最大で120キロワットの発電機を装備している。
  集魚灯は、ほとんどの船で1灯3キロワットの放電管が使用されている。集魚灯数は、許可の制限条件により18灯までと規制されているため、発電機の容量により1隻あたり12灯から18灯を装備している。

とも帆、潮帆 操業時、漁具が相互に絡み合わないように漁船を一定方向に保つため、とも帆(スパンカー)潮帆(シーアンカー)が併用されている。とも帆は、風向に対し船首を風に立てるのが目的であり、潮帆は、船を潮流によって流し、漁具が海底に向かって真っ直ぐ下りるように使用するものである。両者の併用は、気象と海象条件により複雑となり、時に熟練を要する。
船の方向を保つ為の帆
船尾の帆
水中の帆となるパラアンカー

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