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2025年7月25日

認知症の早期発見に関する現状と課題:J-DEPP研究[2025年 認知症予防の日 記念式典] New!

【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授

 

 

認知症予防の日(6月14日)は、認知症予防を正しく知り、取り組むことの重要性を広くご理解いただくための記念日です。2025年の記念式典では、荒井秀典先生(国立長寿医療研究センター理事長)が特別記念講演を行いましたので、その一部をご紹介します。

荒井先生はJ-DEPP研究(Japan Dementia Early Phase Project)のリーダーを務めた著明な研究者です。

 

 

 

 

鳥取県は全国でも認知症施策が進んでいる

 

 

鳥取県では「とっとり方式認知症予防プログラム」や「脳とからだの健康LINE」などの認知症予防や早期発見の取り組みが行われています。しかし、認知症の早期発見に関する取り組みを行っている自治体は全国で4割しかないことが、J-DEPP研究で明らかになりました。

 

認知症の早期発見事業を行っている自治体の割合が最も多い(80%以上)のは福井県で、次いで多い(60~79%)のは鳥取県や島根県を含めた6都府県です。40~59%以上の自治体は13県しかなく、これ以外の自治体は39%以下という状況でした。

 

つまり、鳥取県は全国的にも認知症施策が進んでいる県であると言えます。2024年に施行された「認知症基本法」の要綱には認知症の予防等の推進が記載されたので、今後は他の自治体でも取り組みが広がっていくことが期待されます。

 

 

 

認知機能検査で引っ掛かっても、病院に行く人はわずか

 

 

J-DEPP研究は、地域の高齢者に気軽に認知機能の検査を受けていただき、必要に応じて医療機関を受診し、診断や治療、支援を受けられる仕組みづくりのために行われました。

 

8フィールド(北海道、秋田、東京・神奈川、愛知、兵庫、大阪、鳥取・島根、鹿児島)の自治体の協力を得て、地域の高齢者にポスターやダイレクトメールを通じて、認知機能検査を受けるように呼びかけました。

 

この呼びかけに応えたのは合計13,871人でした。このうち、スマホやタブレット、パソコンなどからウェブ上で認知機能検査を受けたのは5,704人、健診会場に来て検査を受けたのは5,556人でした。検査の結果、認知機能が低下していることが疑われる方には、病院で精密検査を受けるように推奨しました。

 

全8フィールドのうち、3フィールド(北海道、秋田、愛知)では、その後どうなったかを追跡する調査も行いました。この3フィールドで「認知機能低下が疑われるため要精密検査」となった人は1083人いましたが、実際に医療機関に受診したのは79人(7.3%)しかおらず、大多数の人は受診していませんでした。

 

なぜ受診しなかったのでしょうか。最も多かった理由は「健康状態に自信があり、自分には必要ないと感じたから」(42.2%)でした。次いで「面倒になったから」(11.8%)、「忘れていたから」(6.8%)、「お金がかかり、経済的に負担だから」(6.0%)、「近くに病院がなく不便だから」(5.9%)などの理由があげられました。

 

認知症はある日突然起こるのではなく、徐々に発症します。認知機能が正常な状態から、軽度認知障害(MCI)となり、やがて認知症となるのです。この研究で使った認知機能検査で異常があるなら、MCIもしくは認知症である可能性があります。

 

身体は健康かもしれませんが、脳はSOSを出し始めているかもしれません。特にMCIの場合は対策すれば正常の認知機能に戻すことができるので、せっかくの機会を逃してしまった方が多かったことは残念なことです。

 

一方、実際に医療機関に受診した人の中には、2~3年前からもの忘れが気になっていた70歳代の方がいました。病院で精密検査を受けたところ、アルツハイマー病を背景としたMCIと診断され、脳にアミロイドβの沈着があることが確認できたので、認知症の新薬(レカネマブ、ドナネマブ)の投与を検討しているそうです。これらの薬はMCI~軽度認知症の段階でしか使えないので、この機会に医療機関を受診できたのは幸運だったと思います。

 

 

 

 

認知症も早めに受診するメリットがある

 

 

普通の健康診断でもそうですが、異常値が出ても医療機関に行かない人は少なくありません。面倒な気持ちや検査結果を信じたくない気持ちがあるかもしれませんし、お金がかかることを心配したり、認知機能が低下するのは年のせいだから仕方ない(どうにもならない)と思ったりしてしまうかもしれません。

 

しかし、認知機能は生活習慣を見直すことで改善できますし、症状の悪化を遅らせる治療法もあります。新薬は高価ですが、高額療養費制度や自治体(一部)の治療費助成が受けられます。従来の薬も使えますので、経済面を相談しながら治療を行うことができます。

 

こういったことをしっかりお伝えすることが、認知症早期発見の取り組みでは大切であることが分かったので、今後は自治体の保健師や認知症初期集中支援チーム、薬剤師などとも協力して、今後もJ-DEPP研究を進めていくとのことです。

 

鳥取県にお住いの皆さんは、認知症予防や早期発見の取り組みに触れやすい環境におり、予防対策の重要性を認識している方が多いのではないでしょうか。もし、もの忘れが心配になったら、早めに医療機関に行くようにしてください。

 

鳥取県公式「脳とからだの健康LINE

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長寿社会課 2025/07/25 | コメント(0)


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