準決勝 第2回戦

海月LIFE(高田高等学校) × 名古屋高校文学部(名古屋高等学校)

対戦結果:1対2で「名古屋高校文学部」の勝利

 会場写真 会場写真

題:先鋒「紙」、中堅「深」、大将「食」

海月LIFE(くらげらいふ)

(高田高等学校) 

判定

名古屋高校文学部

(名古屋高等学校)

先鋒

ぺらい紙と一緒に剥がされるまではあなたはカステラだった

神田 実咲

1-2

道端の紙飛行機は0点のテストあるいは誰かの恋文

福田 匠翔

中堅

古代より流るる塩分濃度にて腹の底に深海魚見ゆ

治田 優花

2-1

ビー玉が欲しくて割ったラムネ瓶破片に海の深淵のある

服部 亮汰

大将

隣席の親子の食べてる定食が花火のようでおばちゃんを呼ぶ

加藤 晴香

1-2

もう髪を染めないと言う姉の食う冷やし中華にのっぺりとハム

加納 輝一

  

講評

先鋒戦

先攻:海月LIFE

薄ぺらい紙と一緒に剥がされるまではあなたはカステラだった 神田 実咲

後攻:名古屋高校文学部

道端の紙飛行機は0点のテストあるいは誰かの恋文 福田 匠翔

 

講評 穂村弘審査員

 先攻の『海月LIFE』の歌は、「薄ぺらい」という表現がすごく印象的でしたし、「あなたはカステラだった」という言い方によって、全体が比喩のような効果を上げていると思います。この下の句で、これはカステラのあの部分のことを歌っているんだけれど、自分たちにもこういうシーンはあるなという感じが伝わってきて、そこもいいなと思いましたね。

 後攻の『名古屋高校文学部』の歌は、「0点のテスト」を紙飛行機にしたのは、多分そのテストを取った本人だけど、「恋文」は、書いた側か、それとももらった側か、可能性としては両方ありうると感じました。いずれにしてもその誰かの思いが届かなかったということは確かで、それが「紙飛行機」と上手く結びついていて、シャープだと思いました。質問への答え方も完璧でしたね。

 

中堅戦

先攻:海月LIFE

古代より流るる塩分濃度にて腹の底に深海魚見ゆ 治田 優花

後攻:名古屋高校文学部

ビー玉が欲しくて割ったラムネ瓶破片に海の深淵のある 服部 亮汰

 

講評 江戸雪審査員

 「深」いという題に対して、どちらも「海」というものが出てきて面白いと思いました。やっぱり「深い」となると、お互い同じイメージを持つんですね。

 先攻の歌は、「塩分濃度にて」の「にて」が少し分かりにくかったのと、四句目の「腹の底に」が6音だったので、もう少し推敲できたらいいと思いました。すごく大きな、長い時間が歌われていて、「古代」なんていう言葉は、なかなか短歌に収まらないんですが、うまく作られていると思います。

 後攻の歌は、ラムネ瓶ってなかなか割れないんですが、それが割れたというところに力強さを感じましたし、割れた時に、その分厚いガラス瓶の中に、海があったんだというのは、とてもイメージが綺麗で、好きな歌でした。

 接戦で楽しませていただきました。

 

大将戦

先攻:海月LIFE

隣席の親子の食べてる定食が花火のようでおばちゃんを呼ぶ 加藤 晴香

後攻:名古屋高校文学部

もう髪を染めないと言う姉の食う冷やし中華にのっぺりとハム 加納 輝一

 

講評 大辻隆弘審査員

 「食」という題から、どちらも人間の生々しい感じが出ていて、面白いと思いました。

 先攻の歌は、「花火のよう」というところに、色とりどりの料理という意味だけではなくて、料理を前にした家族団らんの様子を見ている作者の、憧れの気持ちみたいなものが入っていて、とてもいいと思いました。「おばちゃん」という呼称も、とても親しみがあって、アットホームな温かさがある店だということがよく表れていて、神経が細やかに使われた言葉遣いだと思って感心しました。

 後攻の歌は、「のっぺりとハム」という表現がとてもよかったですね。本来だったら、冷やし中華には、細かく切った短冊状のハムを乗せると思いますが、それさえもせずに、面倒くさそうに、ぺらっとハムを1枚乗せているというところに、お姉さんの投げやりな気持ち、人生に疲れた感じがすごく出ています。お姉さんは、失恋されたのか、あるいは何か挫折されたのか分かりませんが、「もう髪を染めない」というところで、髪を染めるおしゃれさえも放棄してしまったということを、直接的に言わずに捉えているというところも鋭い。人生の疲れとか倦怠感みたいなものを捉えた歌で、なかなか大人っぽい視点だと思って感心しました。

 

  

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