【監修】鳥取大学医学部認知症予防学講座(寄附講座)浦上克哉教授
軽度認知障害(MCI)を早期発見するメリット
MCI(エムシーアイ)は、「ご本人やご家族に認知機能低下の自覚があるものの、日常生活は問題なく送ることができている状態」であり、認知症と診断される一歩手前です。
以前は、病院でMCIと診断しても「認知症ではありません」「年相応ですよ」「心配いりませんよ」と説明されることが少なくありませんでした。しかし、MCIの段階から使える抗アミロイドβ抗体薬(レカネマブ、ドナネマブ)が登場したことで、医療現場ではMCIの早期発見に努める機運が高まっています。
どういうことなのか、もう少し詳しく見ていきましょう。認知機能の変化と治療法、予防法をまとめた図を示します。

アルツハイマー型認知症はいきなり発症するわけではなく、いったんMCIという段階を経由し、それより認知機能が低下すると認知症と診断されます。認知症を発症した後も、軽度(会話や生活に支障が出始める)から、中等度(生活の多くの場面で介助が必要)、重度(常に介助が必要)という段階があります。
治療法としては、2023年まではMCIの段階では処方できる薬がない状態でした。認知症を発症した後に、症状の進行を抑えるコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)やNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が使われていました。
ところが、2023年にレカネマブ、2024年にドナネマブが登場し、MCIから軽度認知症の段階で使えるようになりました。そのため、医療現場では「MCIを早期に発見して治療につなげよう」という機運が高まっているのです。
つまり、MCIを早期発見するメリットの一つは「治療を受けられる可能性がある」ということです。
軽度認知障害(MCI)の早期発見には、本人・家族の気づきが重要
MCIの治療薬が登場したことで、MCIの早期発見が重要になりましたが、実際にはそれほど簡単ではありません。
なぜなら、MCIは「ご本人やご家族に認知機能低下の自覚があるものの、日常生活は問題なく送ることができている状態」だからです。日常生活に支障がないので、「年のせい」「わざわざ受診するほどでもない」と思いがちです。
日常生活に問題が出てきたタイミングで受診されると、もうMCIの段階は過ぎて、認知症レベルにまで認知機能が低下している可能性もあります。そうなる前に、もの忘れ外来などで相談していただく必要があります。
MCIの可能性に気づくポイントは「家族や周囲の人からもの忘れを指摘される」ということです。この時点でご本人ももの忘れを気にしていることが多いですから、ためらわずに受診してください。
軽度認知障害(MCI)の相談先
MCIが心配になったときは、下記の医療機関に受診・相談してみてください。
◆鳥取県内の認知症の受診・相談窓口一覧に掲載されている医療機関
他にも、下記のような病院や診療科で対応いただける可能性があります。
◆いつも通っているかかりつけ医
◆お近くの精神科、心療内科、脳神経内科、脳神経外科
ただし、本当にMCIかどうか、抗アミロイドβ抗体薬の適応があるかどうかは、詳しい検査をしないと分かりませんので、認知症の診療を専門的に行っている医療機関の方がスムーズかもしれません。
もし、適切な相談先が分からなければ、お近くの地域包括支援センターにご相談ください。
MCIの早期発見は、治療につながる可能性だけではなく、しっかり予防に取り組むきっかけにもなります。また、MCIの段階で治療・予防すれば、正常の認知機能に戻ることもできます。メリットが大きいので、おかしいなと思ったらためらわずに受診してください。