山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館の小矢野学芸員が共同研究した標本調査において、新種5種を含む7種のウミクワガタが発見されました。
このうち岩美町田後沖などで発見された「タジリウミクワガタ」ほか2種の標本とパネルを山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館で展示します。
・展示期間:令和7年6月3日(火)~8月31日(日)
・展示場所:山陰海岸ジオパーク海と大地の自然館常設展示室(甲殻類のはく製コーナー)
※生体展示はおこないません。
<展示するウミクワガタの紹介>

(スケールバーは1mm)
【写真:左から】タジリウミクワガタ、ヨコナガウミクワガタ、マエカドウミクワガタ
●鳥取県におけるウミクワガタ類の発見
鳥取県からは、以下3種がいずれも岩美町田後沖の水深約30mで見つかった。
・【新種】タジリウミクワガタ
沖縄近海から鳥取県沖の水深30-202mで見つかった。学名は「Gnathia tajiran(グナチア・タジラーナ)」。和名・学名ともに、田後の名前を献名した。
・【日本初記録種】マエカドウミクワガタ
韓国南部で見つかり、国内では宮崎県沖から鳥取県沖の水深20-484mで見つかった。学名は「Gnathia koreana(グナチア・コーレアナ)」。
和名の「マエカド」は頭部前方に張り出した突起があることから新たに提唱。
・【99年ぶりの再発見種】ヨコナガウミクワガタ
長崎で見つかり、フランスの研究者が1926年に報告して以来、詳細が分からなかった。九州の離島の馬毛島沖から鳥取県沖の水深20-119mで、成体は海底の付着生物の中から見つかった。学名は「Gnathia consobrina(グナチア・コンソブリナ)」。和名の由来は頭部の幅が広いことから。
●ウミクワガタについて
・甲殻類の仲間で、等脚目(ワラジムシ目)ウミクワガタ科に属する。
・体長は、5ミリ以下の種が多い。
・幼生は魚の体表で蚊のように短い時間体液を吸う外部寄生虫で、成長して成体になると、オスのみがクワガタムシのような大顎を持ち、メスは大顎がなく、丸く膨張した体で子ども(幼生)が孵化するまで抱く。
・成体は魚に寄生することはなく、海底の岩の隙間や付着生物の中などに入りこんで、何も食べずに繁殖行動のみを行う。
・世界で12属、約240種、日本近海では6属37種が知られている。