事業者へのインタビュー

倉吉未来中心

<所在地> 倉吉市
<口述者> 館長 野崎 淳 様

Q1:地震発生直後の様子は?

 12時過ぎに発生した前震でアトリウム丸柱上部に被害が発生した。本震が発生した時は、すぐに職員は身の安全確保を図り、揺れがある程度収まってから火災時の避難訓練と同様に避難誘導を開始した。正面玄関部分の天井材が落下しており危険なため、他の2箇所の入り口を使って避難誘導をした。  地震が起きた時点で恐らく100名ぐらいの人が建物内におり、約30分で全員の避難確認を行なった。

Q2:どのような被害が発生しましたか?

 メディアで報じられたとおり、正面玄関部分の吊り天井が落下し、アトリウムの基礎部分に多数亀裂が発生した。  大ホールの吊り物関係が破損、その他、小ホールや梨記念館などの壁の一部にひび割れ、空調設備等の基礎等が損傷、外部では歩道や花壇があちこちで破損する等の被害が起きた。

Q3:地震発生当日の対応は?

 職員と利用者が避難した後、舞台用のトランシーバを使いながら内部の点検を始めた。県営繕課にすぐに被害発生の報告を行なったところ、15時30分ごろには県営繕課と建設会社が到着し、施設の被害調査を行なった。
 調査の結果、建物の一部は問題ないと判断し、正面部分を避けて入室を許可し、貴重品等の最低限のものだけ持ち出しを開始した。避難の際には館内に商品等を置いたままの利用者もいたが、本日のところはお帰りいただき、施設内の商品等は後日送ることにした。
 当日は17時30分には利用者も職員も帰宅させた。警備については午後10時まで防災センターに部長とともに待機させた。

Q4:事業再開までの対応は?

 翌日22日(土)は始業の8時30分に裏口から建物内に入った。職員は予定していた各種イベント関係の事務対応と施設の被害調査、復旧対応に追われた。
 詳しい被害調査の結果、アトリウムがかなり被災していたため、下部に位置する事務所も危険と判断し、拠点の移転と同時に県民文化会館に職員を派遣し、外部対応を行なうこととした。一般職員については、翌日曜日は自宅待機とした。
 23日(日)は安全が確認された大ホールのスタッフルームに事務所を移転することにし、責任者を中心として電話やネット回線の準備を行なった。ウェブサイトや留守番電話で問い合わせは県民文化会館で行なうことを伝えた。
 その後はイベントの払い戻しのための事務作業が膨大となった。大型イベントのチケットの払い戻しは別の施設を利用し窓口処理を行なった。
 施設利用はできなかったが、事務処理が膨大で休館中も職員の自宅待機等はしなかった。

Q5:対応に苦慮したことは

 地震発生後の対応で苦労したこととして、施設利用ができないため、主な収入源である施設利用料が大幅に減ってしまい、資金的に厳しくなったことがある。収入が無くなったため、支出を抑えざるをなくなった。支出の内、施設の利用範囲が減ったこともあり、清掃作業については変更契約を行ない外注費の減額をしてもらった。外部への支払いを減らすことは、地域の経済活動にも影響が出るがいたしかたなかった。施設内のそば屋も営業再開したが、来客数が少なく売り上げが大幅に減っており、事業継続面では影響が続いている。今後、施設は全面オープンとなるが、資金面でも今後のイベント企画や運営が重要となる。
 また、建物への被害が大きく、施設が利用できなくなったことで、建物の指定管理者としては仕事が無くなる可能性があり、それが心配だった。
 そこで、11月3日に組織としての今後の対応について協議を行った。その結果、施設利用ができなくても、従来から行なってきた施設外でのイベントを増やし、文化活動を行なうことで組織としての役割を果たそうと言う事になり、「ちゅうぶ元気プロジェクト」が始まった。施設担当や舞台担当も外部イベントの運営に携わった。地震後に実施した外部イベントはすべて職員の発意によるものであった。

Q6:迅速な事業再開のために大切だと思ったことは

 従前から組織としてのミッションを明確にし、ぶれない対応を行なえるように努めてきた。また、業務として施設の運用を行なっているが、最後は人であると認識していたため、外部とのネットワークを強めて行った。これらが地震後に施設外でイベントを推進するために大きな役割を果たしたと感じる。
 また、職員の働きかけは大切だと感じた。組織としてのミッションを達成するために、仕事を作り出すように啓発を続けた。
 地震を対象とした防災訓練は行なっていなかった、それでも日常の訓練の効果が見られた。防災訓練を続けることで、いざという時の対応を習慣づけておくことで、被害を軽減することができると思われる。
 非常事態に対応していくには、トップのリーダーシップが非常に重要である。また、トップ同士のネットワークや組織内の責任者との一致も大切であると感じた。

Q7:今回の震災を経験して、職員の皆さんの変化は

 災害後の復旧対応を経験することで、職員のトラブル対応のスピードが上がったと感じた。報告が早くなり、仕事に対する意識も高まった。

<本事例から得られる事業継続対策へのヒント>

1. 自組織のミッションの明確化と組織内浸透
 同組織のように、自組織のミッションを明確にし、それを組織内に浸透させていることで、非常時においても、そのミッションに基づいた活動を進めるために、社員が自ら必要な行動を行なう様子が見られた。東日本大震災の際、被災した企業の事業再開に最も効果があったのは、自社の経営理念とした調査結果もあるように、組織の理念やミッションを明確にし、それを社内に浸透させることは重要な備えと言える。

2. 繰り返し行なう訓練の必要性
 同組織では地震を対象にした訓練は十分できていなかったものの、火災を想定した避難訓練の経験を通じて、地震直後もスムーズに対応ができている。このように定期的な訓練を社内で実施することで、いざと言う時の初動対応を的確に行なうことが可能となる。

3. 早い段階での目標の提示
 倉吉未来中心では知事が早い段階から復旧に向けた目標を提示し、予算化を図った。そのために、当初の予想以上のスピードで施設の再開に至っている。このようにトップの判断は事業再開対応を迅速に進めるためには非常に重要である。

4. 財政的な経営面への対応
 倉吉未来中心では、施設利用ができなくなったために収入が大幅に減ってしまった。そこで、必要となる支出を可能な限り抑え、運転資金の確保に努めている。事業中断した場合は止血のための対処を緊急的に実施することは重要と言える。
  

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