第21章 給与
第1 機構に勤務する者の給与の支給実績
平成20年度の給与支給総額は2億4,184万円であった。
理事長と正規職員1人当たり年間平均支給額は564万円となる。県からの出向職員6名に対する平均支給額は736万円である。
非常勤職員は、補助金交付要綱により機構が社会保険料を負担する非常勤職員27名と社会保険料を負担しない非常勤職員(以下「謝金対応職員」という。)3名に区分される。
機構が社会保険料を負担する非常勤職員27名の1人当たり年間平均支給額は448万円である。
謝金対応職員に対する1人当たり年間平均支給額は391万円となっている。
臨時的任用職員の1日当たり(8時間)の賃金は6,750円であり、年間平均支給額は170万円となっている。
市出向職員は、鳥取市と米子市から各1名の出向者である。米子市からの出向者に対しては米子市の給与等の規程による金額を支給し、同額を米子市から受取っている。鳥取市からの出向職員に対しては機構から時間外手当と通勤手当を支給している。
第2 機構の給与規程の概要
機構の正規職員に対しては、県の給与条例に準じた給与規程を適用している。県からの出向者に対しては県の給与条例を適用している。非常勤職員、臨時的任用職員、謝金対応職員に対しては、それぞれの賃金単価が機構の給与規程に定められている。
外部からの出向者は、機構と出向元との協定により機構の人件費負担額が定められている。
第3 給与事務の監査
1 検証対象者10名の給料月額及び諸手当は、財団法人鳥取県産業振興機構の役員及び職員の給与その他の給付に関する規程に従い正確に計算されていた。
2 意見 定期券代の支給は6か月単位とすべきである
検証対象者のうち1名が公共交通機関利用者であり、その者に対しては1か月単位で通勤定期代が支給となっていた。公共交通機関の定期券は、最長6か月分で購入すると割引率が高くなるため、経費節減のために6か月単位での通勤手当の支給方法に改めるべきである。
第4 金融機関からの職員派遣について
1 意見 金融機関からの無償派遣を問題視する
県内の3つの金融機関から3名の派遣職員を受け入れている。それらの給与等に対して機構の負担がないことを問題視する。機構は県の行政代行事業を行う外郭団体である。その機構が民間から無償で職員を受け入れることは、民間からの労務の無償受入に該当するものである。
応分の負担、例えば金融機関からの派遣者負担金に関する統一価格を取り決めることにより機構が人件費を負担すべきである。
金融機関から職員の派遣を受け入れ、その職員が機構の業務を100パーセント行っているのであれば、応分の負担をしなければ機構、ひいては県と金融機関との対等な関係は維持できないと考える。
2 意見 金融機関との派遣協定書の内容を見直すべきである
金融機関との派遣協定書の内容が簡略的過ぎる。その内容を見直すべきである。
第22章 謝金
第1 謝金の支給額
機構の職員以外の人件費として、外部の専門的な知識・経験を有する者(以下「専門家」という。)の人件費及び各種委員会の委員に対する人件費の2つがある。平成20年度は、専門家謝金4,149万円、諸委員会の委員謝金143万円、合計4,292万円の謝金を支出している。
第2 謝金の支給単位
謝金の支給単位は、時間制、日額制及び回数制の3つである。
時間制は、要した業務時間に応じて支給額を算定するので支給する側及び受給する側双方にとって合理的な方法である。所要業務時間を把握管理する手間がかかるが、あらかじめ所要業務時間を講師等に伝えているので実務上の煩雑性はないと考えている。
日額制は、科学技術コーディネーターを含めた専門家謝金に適用している。専門家を招致する場合、あらかじめ業務時間(半日あるいは1日)を設定しているのでこの方法を採用している。管理が容易な方法である。
回数制は、1回の所要時間の長短に関らず一律支給となるものである。遠隔地に居住する外部専門家は、正味時間が1時間であっても1日を費やされることになる。参加するための所要時間を考慮していない一律支給には問題があると考えている。
再生協議会の委員謝金は、日額制が適用となっている。これは、鳥取県の協議会報償費単価を適用しているものである。
第3 謝金の支給単価
時間制を採用している謝金の支給単価は、1時間4,375円と6,000円がある。1日8時間拘束した場合の日額は、それぞれ3万5,000円と4万8,000円になる。対象者は一定の専門知識と技能を有している者であるので、この金額は納得できる範囲内と考える。
日額制は一定の専門的知識・技能を有している者と、各種委員会の委員謝金である。専門家等の謝金単価は1日1万8,000円、3万円、3万9,000円の3つが適用となっている。国の事業である再生協議会の委員の支給単価は、1日9,200円である
第4 意見
1 謝金という用語では対価性と透明性が失せてくる
行政上の必要経費に対価性を希薄化させた謝金という曖昧性・漠然性をもった用語を使用することは好ましいことではない。明確に外部報酬として位置づけ、適正な報酬を算定すべきである。
2 謝金の支給単位を時間軸に統一すべきである
委員会に出席するため遠方から来る委員は、丸1日時間を要するのは事実である。しかしながら、近くから来る人も、遠方から来る人も同額を支給することは不公平であると考える。
移動時間も含めた時間を軸にした支給方法に改正することが必要であると考える。
第23章 委託料
第1 機構の交わした委託契約の概要
平成20年度中に機構が交わした委託契約は30件、契約金額の総額は1億3,442万円であった。機構の交わした委託契約は、研究開発委託が大半である。機構が研究開発型事業の支援機関としての立場にあることが分かる。
第2 採用した契約形態とその採用理由
随意契約を採用できるのは、主に、特殊な機械、建物等の保守の委託又は特殊な技術を有する者に行わせる場合、あるいは予定価格が100万円以下の場合のいずれかの場合である。
機構の随意契約は25件、契約金額総額は1億1,146万円である。この中で1,000万円を超える契約金額の2件は、国からの公募委託事業を受託するために機構が鳥取大学等と共同で研究開発内容を議論し、事業内容及び事業予算を提案したものであり、事前確定型の随意契約といえる。
プロポーザル方式は、予定価格の範囲内で最高の企画内容を示し、かつ実行力のある業者を選定する方式のことである。展示会のブースのデザイン企画、施工業者の選定に採用している。価格面で競争させるより、その中身で勝負させる方式に納得する。
平成20年度は、機構の建物の清掃業務委託1件が指名競争入札で行われた。特殊な技術を必要とするために以前は随意契約を採用していたが、過去の県の監査において指名競争入札にするよう、また3年の契約にするよう指摘を受けたため、その指摘に従い3年間の委託期間による契約にした経緯がある。
平成20年度の一般競争入札は1件であった。システム保守運用管理に係る業務委託契約である。保守管理業務のために職員1名を機構に週40時間以上常駐させることが条件となっている。この一般競争入札の応募者は1事業者であり、予定価格576万円を148万円下回る委託契約が交わされた。
公募を採用した契約は、液晶人材育成プログラムに係るマネージャー業務委託契約であった。この事業が国の補助事業として採択されるための要件として、公募による委託先の選定が求められていたため、公募の手続を取った。実質的には一般競争入札と同様の手続によるものである。
第3 意見 一般競争入札には、適正な予定価格の算定が必要である
一般競争入札によってシステム保守運用管理に係る委託業務の受託を受けた事業者は、予定価格 576万円を148万円下回る428万円で落札している。低く抑えることができたと喜んではいけない。システムの保守管理に必要なのは、それに向かう知識、技能及び技術だけでなく、長くサービスを提供できる継続性、担当者の傷病時のバックアップ体制である。
機構はこの一般競争入札に他の事業者が参加しなかったことを重く受けとめ、適正な予定価格を設定し、他の事業者が入札に参加できるようにしなければならない。機構は予定価格算定の実務経験に乏しいため、必要に応じて県の積算を参考に入札に臨むべきである。
第24章 金融機関からの短期借入金
第1 短期借入金の借入状況
平成20年度中に、金融機関より合計で9億1,160万円(7事業、11口)の短期借入れを行っている。大きな借入れは施設管理事業にかかる借入れ6億1,500万円と中小企業ハイテク設備貸与事業にかかる借入れ1億7,615万円である。借入金の利率は、借入金の口別に1.975パーセントから2.375パーセントの範囲のものが適用されていた。
第2 金融機関からの1日の借入金
短期借入金のうち、中小企業ハイテク設備貸与事業と施設管理事業の借入金は、年度末に金融機関から借入れをし、翌日に返済した借入金である。これは、県及び鳥取市からの短期借入金の借入期間が年度初めから年度末になっているためである。
第3 期中の事業資金不足による金融機関からの短期借入金
中小企業ハイテク設備貸与事業と施設管理事業の借入金以外の借入金は、委託事業に係る借入金である。借入理由は、委託金収益の入金が翌年度になるからである。
これらの借入金については、他会計からの借入れ等を行うことにより外部からの借入金額を抑えることができたのではないかと考える。
機構全体の資金繰りを総合的にとらえることにより、他会計の余剰資金を不足する事業に回すことができると考えている。そうすることにより、金融機関に支払う利息の節減にもつながる。
第4 意見 県との短期借入金は長期契約に変更することを検討すべきである
中小企業ハイテク設備貸与事業の県からの短期借入金と施設管理事業における県及び鳥取市からの短期借入金は、年度当初を借入日として年度末を返済期日とする契約を継続している。この資金は年度末に民間金融機関からの借入金で返済し、翌事業年度始めに県及び鳥取市(施設管理事業は鳥取市も借入先になる)からの借入金により金融機関に返済している。
このようなことをする理由は、これら2つの事業は収益の見通しが難しいため安定した返済財源の確保ができないため、毎年度の収支結果に左右された”ある時払い”の返済になっているからである。
“ある時払い”の資金貸借では事業運営に緊張感が生み出せないと考えている。”お金がなければ、県がなんとかしてくれる。”気持ちを醸成することにもなる。
また、金融機関からわずか1日の借入れに収入印紙代30万円と利息5万円を支出していることはもったいないことである。
県と機構との間における短期借入金契約を長期借入金契約へ変更することを検討すべきである。