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第16章 高専等活用中小企業人材育成事業

第1 制度の目的

 

鳥取県の産業基盤の強化と生産性の向上を図るため、電子部品・デバイス製造業等の若手技術者を対象に、実践的技術者へのレベルアップを目的とした人材育成を行う事業である。

第2 制度の背景

 

県内の多くの中小企業は、取引先の要求する多品種少量生産、短期納入生産への対応に追われ、人材育成の時間と資金に余裕がない現状がある。そのため、次世代の技術者を育成するために、人材育成のための講座を開き、実践的な教育を行うことが求められた。

第3 制度の仕組み

 

機構が経済産業省の委託事業である「高等専門学校等を活用した中小企業人材育成事業」に応募し採択された。そして、中国経済産業局から委託を受け、採択された実施計画書(仕様書)に従って委託業務を実施した。

第4 事業の内容

 

品質管理技術と、組み込みマイコンシステム技術の人材育成のためのカリキュラムを米子工業高等専門学校及びカリキュラム開発協力企業9社で開発し、受講料無料の実証講義を開催した。

第5 事業の実施状況

 

平成20年度は、米子工業高等専門学校を講座会場とし、品質管理講座として2コース、組み込みマイコンシステム技術入門講座として3コースが行われた。全ての講座が2日ないし2日半の期間で行われた。開講された講座の総日数は約11日間、受講者数は80名であった。講師は主に米子工業高等専門学校の講師が務めた。品質工学入門コースは企業の担当者が講師であった。

第6 平成20年度の決算の状況

 

事業費の合計は1,302万円である。事業費の主な内容は、機構の担当コーディネーター1名及びサブコーディネーター1名に対する給料手当333万円、教材の材料費263万円などである。

 

経常収益金額1,302万円と経常費用(事業費)は同額であり、収支差額はゼロになっている。委託事業に要する経費として認められたものが委託金収益として支弁されることになっているからである。

 

委託金1,302万円は平成20年度末現在では未収金となっている。委託金が入金されるまでの事業費に充てるため金融機関から1,000万円及び他会計から400万円の借入を行っている。

第7 意見 講座の有料化を検討すべきである

 

国からの委託事業は平成20年度に終了したが、平成21年度は全国中小企業団体中央会の補助事業として実施されている。

この事業の成果としての次年度以降も使用できる教育カリキュラム等をさらに進化及び深化させて、教育レベルの向上に資することを望んでいる。また、今後は有料化を検討すべきである。

 

 

 

 

 

 

第17章 地域資源活用型研究開発事業

報告書104ページ

第18章 中心市街地商業活性化推進事業

第1 制度の目的

 

県が中小企業構造の高度化を促進するため、独立行政法人中小企業基盤整備機構から借り入れる資金にこれと同額の県が負担する資金を加えた資金を機構に貸し付けることにより基金を設け、その運用益により中心市街地の活性化に関する法律(平成10年法律第92号)の趣旨に鑑み、商工会、商工会議所等が行う中心市街地における中小企業の活性化のための事業に助成金を交付する事業である。

第2 制度の仕組み

 

 

1 機構は県からの借入金を基金財源とし、その債券等運用益で事業費を賄う

 

県から借り入れた運用資金を債券及び定期預金で運用し、その運用益で事業費を賄う仕組みになっている。

 

2 助成事業の内容

 

助成事業の内容は、次に掲げるいずれかの事業であって、中心市街地の中小企業の活性化に寄与するものである。

(1) コンセンサス形成事業 商業関係者、地域住民の合意を形成するための事業

(2) テナント・ミックス管理事業 商業集積の魅力を高めるために必要な業種・業態の適正配置を図る事業

(3) 広域ソフト事業 複数の商店街のための広域的な商店街活動事業

(4) 事業設計・調査・システム開発事業 商業の活性化に向けた事業設計・調査・システム開発事業

第3 事業の内容と実績

 

 

1 平成18年度から平成20年度までの支出先別助成金額

 

平成18年度から平成20年度までの間の助成金額合計は約2,737万円、合計件数は20件である。1件当たりの助成額は約137万円になっている。

 

2 平成20年度の助成金の対象事業数と助成額

 

(1) 平成20年度の鳥取商工会議所への助成金の対象事業と助成額

平成20年度の鳥取商工会議所扱いの中心市街地活性化事業は6事業、助成金確定額は973万円であった。

(2) 平成20年度の米子商工会議所への助成金の対象事業数と助成額

平成20年度の米子商工会議所扱いの中心市街地活性化事業は2事業、助成金確定額は399万円であった。

第4 平成20年度の決算の状況

 

県から借り入れた6億円を全額運用目的に特定し、地方債と定期預金で運用している。運用目的の特定資産の利息を事業収益として、その事業収益の範囲内で事業費と管理費を賄っている。

事業費の中の返還金2,129万円は、この事業の実績が予定を下回る等により未使用額が発生したことにより、県に返還した金額である。

第5 未使用額について

 

 

1 未使用額とは

 

未使用額とは、この事業の実績が予定を下回る等により発生した金額である。原則として当該未使用額は県に返還することになっている。

 

2 直近3か年度の事業収益と事業費(助成金と返還金)の推移

 

返還金は事業費の未使用額であり、事業に対する経費ではないが、機構の決算書上の扱いは事業費に含めている。

平成18年度からの3か年度の経常収益合計額6,910万円に対し、実際にこの期間に助成した金額は2,737万円にとどまっている。機構が中心市街地の活性化のために基金を運用して助成財源を用意しているのに使いきれていないのである。使いきれなかった財源(基金利息)は、返還金として一定の計算により県に返還することが定められている。平成18年度からの3か年度の返還金合計額は4,505万円と助成金額2,737万円を上回っている。

第6 意見 

事業の推進ができていない

 

中心市街地商業活性化事業に使われた助成金額よりも返還金額の方が上回っているという事実がある。未使用額が常態化していることは、衰退している中心市街地商業活性化のための事業提案の難しさを映し出している。

この助成事業は、”自分たちで考えて活性化事業を提案してください。事業費は予算の範囲内で助成しますよ。”という自発提案事業に対する後押し型の施策である。用意された財源を有効に活用できる事業提案ができなかったことは、まことに残念なことである。

助成事業の乏しさは、商工業の活性化のリーダーである商工会議所のやる気、企画力の乏しさ、リーダーシップの欠如を表しているといえる。

約10年に及ぶ活性化事業である。年間の基金運用益を2,000万円強として総額2億円を超える助成金財源を用意していた国や県の施策を生かしていないといえる。

この制度は平成11年度から平成23年度までの事業である。先が見えてきている。失われた10年にならないことを切望している。
  なお、県からの借入金を財源に県債を購入し運用していることについての意見は、第20章の第2で報告する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第19章 農商工連携促進事業

報告書116頁

第20章 基金型事業に潜む盲点

第1 基金型の事業の盲点

(報告書118頁参照)

第2 県からの借入金等の調達資金を県発行の債券で運用している

1 機構の県債保有状況とその調達財源

   平成20年度末に機構が保有する県債の額面金額の残高は6億5,000万円、内訳は特別会計の中心市街地商業活性化推進事業が2億円、一般会計が4億5,000万円である。この県債の購入財源は、中心市街地商業活性化推進事業が県からの借入金6億円であり、一般会計の県債の保有財源は県、県内各市及び県内の事業者等が出資した出捐金等である。

2 意見  県からの借入金を財源に県債を購入し運用している

    機構は、中心市街地商業活性化推進事業を行うため、県から6億円を借り入れ、その資金で東京都公債額面3億9,400万円、県発行の法人引受債額面2億円を購入し約6百万円の定期預金の預入れを行い運用益を得て事業費を賄っている。県の歳入・歳出は、機構に対する6億円の貸付金歳出のうち2億円と、機構からの2億円の借入金歳入(法人引受債)を計上していることになる。
   つまり、県が機構に貸し付けた資金で機構が法人引受債を購入しているので、2億円の資金を県に返していることになる。機構が保有する法人引受債には発行条件どおりの確定利息を支払っている。
   しかし、機構に貸し付けたお金の一部を県債発行により借り入れているのであれば、それに対して利息を支払うことは納得が得られない。

3 一般会計の基金運用益は使い切れていない

   一般会計には二つの基金が設定されている。一つは、国と県が全額出資した情報化基盤整備促進基金3億円、二つ目は、鳥取県、県内各市及び県内の団体・事業者が出資して造成した研究開発基金約3億6,558万円である。 機構は、研究開発基金造成と情報化基盤基金造成のために債券を購入している。債券からの確定利息を財源に事業を行っているのであるが、受取利息を下回る事業費となっている。県が県債の利息として支出するより、毎年度これらの事業の必要額を補助金として支出する方が県費の使い方としては節減になると考えている。   
  あるいは、基金利息から事業費を控除した差額を県に返還する仕組みができれば、多少ではあるが県の歳入に寄与することになると考える。
  

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