第1 制度の概要
企業が希望する設備を低利かつ長期にわたり割賦販売(分割払による販売)又はリースする国の制度である。現在債権回収業務のみを行っている。
第2 制度の仕組み
機構の収益は設備販売代金を賦払いにした利息分であり、この事業の形態は設備の割賦販売又はリースとなっているが融資事業に該当するものと考えている。債権に対する貸倒れが生じた時には、割賦販売時に預った割賦設備保証金、機械類信用保険・リース信用保険預り金にて補てんする。県は損失額の45パーセントの補償を行い、残額が機構の自己負担となる。
第3 平成20年度決算の状況
借入金の残高は県2億5,021万円、金融機関1億4,883万円であり、販売又はリース資産の購入財源になっている。
延滞及び破綻した融資残高は1億9,191万円である。貸倒損失に備える財源として、信用保険預り金7,026万円、割賦設備保証金の残高2,886万円、貸倒引当金4,408万円がある。
経常収益は1億6,394万円、これに対する費用は1億2,614万円である。経常収益とこの費用の差額3,780万円を貸倒引当金として繰り入れることにより、収支差額をゼロにしている。
第4 未収貸与料債権の取り扱い
未収貸与料債権が発生した時には、未収貸与料債権管理規程に基づき管理業務を行っている。
第5 延滞債権及び破綻債権の状況
平成20年度末の延滞債権及び破綻債権の残高は、1億9,191万円である。平成19年度末と比べ2,244万円の純減であった。しかし、平成20年度中の新規発生額は2,483万円に及び回収額1,504万円を超えている。残高が減少したのは債権の貸倒償却額3,223万円によるものである。
第6 貸倒引当金の妥当性
平成20年度末の延滞債権及び破綻債権の残高1億9,191万円に対し、4,408万円の貸倒引当金を設定している。財務規程に従って計算した貸倒引当金は1億2,906万円となる。8,498万円の貸倒引当金不足が生じていることになる。
第7 未収貸与料債権の償却
平成16年度から平成20年度までの5年間で1億8,282万円の貸倒償却額が生じている。うち機械類信用保険により補てんした金額2,685万円、リース信用保険により補てんした金額6,053万円、県が損失補償を行った金額は7,497万円、2,045万円が機構の負担となっている。
第8 指摘事項 貸倒引当金の計上不足の結果、債務超過状態である
8,498万円の貸倒引当金不足をこの事業の決算に反映すると8,498万円の債務超過となる。
第9 意見
1
財務諸表上、未収債権の総額と貸倒償却額を示す必要がある
未収となる可能性の高い債権金額を明らかにするために、未収債権先の支払期限未到来の債権額を注記することを提案する。
現在の財務諸表は、貸倒償却額も含めた金額を貸倒引当金繰入額として表示している。このため財務諸表上に貸倒償却額が表われない。これでは、貸倒損失という融資事業上の失敗が見えないことになる。貸倒償却額を開示する必要がある。
2
県に対する損失補償の請求を速やかに行うべきである
県との損失補償契約書には、機構が未収債権を各事業年度終了後3か月経過してもなお回収することができなかった場合は、県に対し損失補償を請求することができる規定がある。しかし、3か月経過後にすぐに請求を行うことはまれである。平成20年度末の未収債権のうち、県に対する損失補償の請求期限切れになった債権は4社、合計で898万円ある。県と機構が一体となって回収に努力し、県の損失を可能な限り圧縮するための事務手続の第一歩として、3か月経過後の請求は県に速やかに行うべきである。
第1 制度の概要
制度の基本的な枠組は設備貸与事業と同じである。設備貸与事業が国の制度であるのに対し、この事業は県の制度となっている。
第2 貸付の対象
一般枠とリストラ枠の二つの制度がある。一般枠は、現在の事業を1年以上営んでいること等を貸付の要件とする。リストラ枠とは、新たな事業活動を行い経営革新を図る企業をその対象とするものである。貸付限度額は、一般枠は6,000万円以下であり、リストラ枠は8,000万円以下である。
第3 平成20年度の決算の状況
割賦設備代金のうち販売代金の回収期限未到来金額に対応した割賦設備残高は6,790万円である。未収債権5,850万円は、延滞債権と破綻認定した先に対する未収債権残高である。短期借入金1億7,615万円、長期借入金1,426万円を資産の購入資金に充当している。
貸倒損失に備える財源として、信用保険預り金2,794万円、割賦設備保証金2,157万円、貸倒引当金2,312万円がある。
経常収益は1億204万円である。これに対する費用は7,892万円である。経常収益とこの費用の差額2,312万円を貸倒引当金として繰り入れることにより、収支差額をゼロにしている。
第4 未収貸与料債権の取扱い
未収貸与料債権が発生した時には、未収貸与料管理規程に基づき管理業務を行っている。
第5 延滞債権及び破綻債権の状況
平成20年度末の未収債権残高は5,850万円である。新規に発生した延滞債権及び破綻債権は191万円、回収した金額は103万円である。同年度中の貸倒償却はない。
延滞先2社のうち、1社(債権90万円)と破綻先4社5,760万円は回収困難債権である。
第6 指摘事項 貸倒引当金の計上不足の結果、債務超過状態である
延滞先及び破綻先の状況を勘案すると、機構が計上している貸倒引当金2,312万円は明らかに引当金不足があると考える。破綻債権5,760万円の90パーセントを回収不能とすると5,265万円の回収不能額があることになる。実質債務超過状態にあると考えている。
第7 意見
1
未収債権先の支払期限未到来債権の注記を求める
未収となる可能性の高い債権金額を明らかにするために、未収債権先の支払期限未到来の債権額を注記することが必要である。
2
損失が生じた時の負担を明らかにする必要がある
この事業において機構は県との損失補償契約を締結していない。そのため、貸倒れが発生した際には、機械類信用保険預り金、割賦設備保証金で充当される部分を除き、機構が自己財源で損失の負担をしなくてはならない。しかしながら、機構には多額の不良債権を損失処理する余力はない。不良債権に対する損失処理方法を県と協議し実行しなければ、後年度の負担にのしかかってくるだけである。
第1 事業の内容と経緯
機構が鳥取市若葉台南七丁目5番1号に所有管理する建物内の部屋を賃貸する事業である。17室を外部貸出用の部屋として持っている。機構が所有する土地は面積3,497平方メートル、取得価額は1億6,200万円、建物は面積3,281平方メートル、その取得価額は8億2,005万円である。
同建物・土地は、第三セクター株式会社新産業創造センター所有の不動産であった。その第三セクターの会社清算処理方法の一環の中で、同不動産を機構が平成14年11月に取得した経緯がある。平成21年3月末時点の借入金残高は、県に対して約880万円、金融機関に対して6億1,500万円、合計約6億2,380万円となっている。
第2 施設賃貸事業の状況
1 貸付け条件の要旨
機構と賃借人は、貸室賃貸借契約書を取り交わしている。貸付け条件の要旨として、1平方メートル当たりの貸し室料は税抜月額2,000円(坪当たり換算金額は約6,600円となる)、共益費(光熱水費)は1平方メートル当たり税抜月額100円である。入居者敷金として1平方メートル当たり1万 2,000円(貸し室料の6か月分)を機構は預かっていることなど通常の不動産賃貸借契約条項になっている。
2 入居状況と修繕等保全費用
満室ではないが、平成20年度の入居率は約90パーセントと高い水準である。同年度の賃貸料収
入は3,542万円、施設利用料収入は622万円であった。
平成16年度から平成20年度の間における維持管理費(主に光熱水費・通信費・清掃委託費・エレベーター等保守管理料)と修繕費は1,998万円から2,406万円の範囲で推移している。また、平成19年度及び平成20年度に空調機器の維持補修・改修工事等を実施し、そのための支出に 1,349万円を要している。設備老朽化の兆しが現れてきている。
第3 平成20年度の決算の状況
平成20年度の当期一般正味財産増減額(収支差額)は33万円のマイナスであった。減価償却費 1,480万円控除前の収支差額は1,447万円のプラスであり、多額の借入金の返済資金となっている。
財産・債務上の特徴は、土地・建物等の固定資産9億3,403万円に対し、不動産購入のための借入金残高が6億2,380万円あることである。
第4 借入金の状況
平成20年度末の借入金残高は、金融機関からの短期借入金6億1,500万円と県からの長期借入金880万円、合計6億2,380万円となっているが、年度中には鳥取市からの借入金もある。
その年度の収支結果から県及び鳥取市への返済金額を決めるため、県及び鳥取市とは長期約定返済予定表の取り交わしを行っていない。県及び鳥取市からの年度内短期借入金を年度末に金融機関から借り入れることにより返済し、翌年度初めに県及び鳥取市から年度内短期借入金(前年度借入額から実返済額を控除した額)を実行することにより金融機関への返済を行っている。
機構の単年度収支の結果から、借入金返済可能額は年間1,000万円から1,500万円と試算できる。6億円以上の借入金の完済までに50年以上要する計算になる。
第5 意見 機構の不動産を県に譲渡することを検討すべきである
機構は、不動産取得のための無利息借入金を県・鳥取市に返済しながら、一方で多額の改修補修工事に要する経費の補助金を受けている。これでは、不動産の所有者責任が誰にあるのかが曖昧なままで推移することになる。
機構は、県内産業の振興を主目的とする公益法人である。機構は、この主目的のために機動性ある態勢にしておかなければならない。不動産賃貸管理、不動産維持管理、借入資金の管理など産業振興目的にそぐわない事業から解放してやらなければならないと考える。そのためには、機構が所有する不動産を県に譲渡することを検討すべきである。