緊急レポート:タイにおける新型コロナウイルスの影響について
(2020年2月28日現在)
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
今回は緊急速報としまして、タイにおける新型コロナウイルスの影響についてお送りします。
1.タイ国内の感染者数
2020年1月13日に、中国国外では初となる感染者がタイにて確認されています。その後、2月17日付での感染者の数は累計で35名確認、2月26日には40名の感染が報告されています(そのうち、24人が回復)。なお、2月26日時点で、タイ国内でのコロナウイルスによる死者は報告されておりません。
2.タイ国内における感染防止対策
コロナウイルスに関する特設ウェブサイトを設け、注意喚起を行うと共に、電話でのホットラインや、コロナウイルスの簡易な感染確認ができる自己診断サイトを立ち上げ、国民の感染への不安解消に動いています。
また、駅構内や大型商業施設の出入り口に、アルコールの消毒液を設置し、感染拡大への対策をしています。
3.対国外向けの対策
現時点で、中国を含む海外からの入国の制限は設けられておりません。また、国外への渡航についても、禁止措置は取られておりません。
現状の対応としてタイ保健省は、日本を含む感染例の多く見られる国については、渡航の自粛を呼び掛けており、該当の国からの到着便の乗客については、入国時に体温を測る措置を行っています。37.5度以上の発熱が発覚し、呼吸器系に症状のある場合は別室にて再検査を受け、その際にまだ熱があれば医療機関で診察と治療を受けることになります。熱がない場合でも、少なくとも14日間は自宅やホテル等で症状を観察するよう協力を呼びかけるとともに、以下の行動をするようにと協力を要請しています。
- 人込みには行かない
- 公共交通機関の利用を避ける
- 他人と物品の共有をしない
- 症状の有無に関わらず毎日検温
- 疑わしい症状が見られる場合にはマスクを着用
- 症状が悪化した場合には、直ちに医療機関にかかり渡航歴を報告
対象となる国は、日本と中国の他、マカオ、香港、シンガポール、台湾、韓国です。
在タイ日本国大使館ホームページ[外部サイトへリンク]
4.航空会社の対応
各航空会社についても、各社対応策を講じており、タイ国際航空では、日本を含む感染例の多い国について、2月、3月中の減便を決定しました。対象となるのは、日本(福岡便、名古屋便)、中国、香港、台湾、韓国、シンガポール、フィリピン、バングラデシュ、アラブ首長国連邦です。
Bangkok Postホームページ[外部サイトへリンク]
タイ・エアアジアでも、中国と韓国(3/6-3/27限定)への発着便を運休し、日本の路線についても、予約の延期、支払った運賃のポイントとの交換を無料で受け付けると発表をしています。
また、全日空でも、定められた条件を満たす航空券については、設定期間内での予約の変更や払戻しを受け付けるとしています。
ANAホームページ[外部サイトへリンク]
5.タイ在住日本人への影響
前述のとおり、タイ保健省から該当地域への渡航については自粛を、該当地域からの渡航者に対しては自己観察の協力を求める声明が出ていますが、現時点ではあくまで協力を呼びかけているものであり、出社や観光を一律に制限するものでもありません。日本への渡航も日本からの渡航もできます。
バンコク日本人商工会議所が2月26日に発表した理事や監事などの50企業・団体を対象に行った海外出張に関するアンケートによると、タイ-日本間の出張を全面禁止している企業は5%前後で、7割前後の企業が条件付きで出張を認めている結果となりました。
出張制限の状況 |
タイ→日本 |
日本→タイ |
タイ→中国本土* |
タイ→シンガポール |
回答数 |
割合 |
回答数 |
割合 |
回答数 |
割合 |
回答数 |
割合 |
すべて禁止 |
2 |
4% |
3 |
6% |
36 |
72% |
3 |
6% |
緊急・重要なものに限り認めている |
38 |
76% |
34 |
68% |
11 |
22% |
34 |
68% |
特に制限なし |
10 |
20% |
13 |
26% |
2 |
4% |
13 |
26% |
その他 |
0 |
0% |
0 |
0% |
1 |
2% |
0 |
0% |
合計 |
50 |
100% |
50 |
100% |
50 |
100% |
50 |
100% |
*武漢、湖北省などを除く
データ出所:バンコク日本人商工会議所(JCC)
2月25日、バンコク日本人学校と東部チョンブリ県のシーラチャー日本人学校では、感染例の多く見られる中国、日本、韓国、台湾、シンガポール、香港、マカオ、マレーシア、ベトナムの9か国からタイに入国した児童・生徒、教職員、保護者に対して入国後14日間以内の校内への立ち入りを2月26日以降禁止すると発表しました。同居する家族が、これらの感染地域へ渡航した場合も、14日間の登校の自粛を求めました。同様の措置は地元タイの学校や大学、インターナショナルスクールでも講じられています。
2月26日の現地報道によると、2月中旬に北海道などを訪れていたタイ人男性が帰国した後、高熱、せきなどの症状が出て、23日に民間病院に入院し検査をした結果、新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。この男性は当初日本への渡航歴を隠したまま受診していて、その結果、同居している小学生の孫にも感染が広がってしまい、その小学生が通う学校は26日から14日間臨時休校する事態に発展しました。このことにより、タイ人の日本に対するイメージが低下してしまったと言わざるを得ません。
6.今後の見通し
世界的に感染が広がっている中、まだ収束の兆しが見えませんが、今すぐにタイ-日本間の渡航が全面的に制限されることはないと思われます。一方で、タイ政府は24日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を「危険感染症」に指定しました。このことにより、タイ保健当局は感染の拡大を阻止するために迅速に対策として集会禁止、国境閉鎖、移動禁止、感染疑い者に対する医療機関で検査命令、治療に有効と考えられる未承認薬の輸入などが可能となります。渡航される際には、以下の在タイ日本大使館、在東京タイ王国大使館のWebなどから最新情報を確認するようにしてください。
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