第10章 捜査報償費の監査
第1 問題点の所在
捜査報償費については、他県において大きな問題となったことがある。その内容は、架空の捜査協力者への報償費の支出あるいはニセの領収書による支出を通じて、組織的に捜査報償費を裏金づくりに利用していたことであった。
捜査活動に当たる警察官は、聞き込みによる情報提供者等に対する謝礼(品物提供が一般的であり、現金提供も一部ある。)を提供する等のため所定の要件のもとで現金を支出することが認められている。捜査活動における第三者からの情報は不可欠なものである。また、捜査の過程で、市街地の有料駐車場を利用することや深夜の張り込みの際に補食を摂ることもある。このような経費は捜査活動上必要なものである。少額であるからという理由で、自己負担することがあってはならない。捜査が迅速かつ効果的に実施されるために必要な経費は公費で支出される必要がある。
鳥取県警察の執行した捜査報償費の執行状況を分析し、適正に支出されているかを監査した。
第2 捜査報償費の支出額の把握と個別点検
平成17年度から平成19年度の3年間の捜査報償費の支出合計金額は1,605万円、年平均で 535万円であった。この支出額のうち、捜査員等の判断により支出できる1件当たりの支出額が概ね 3,000円以下の諸雑費は3年間の合計で750万円、割合は約46.7%となっている。
捜査報償費の個別点検は、平成18年2月の警察本部捜査第一課、平成20年1月の警察本部捜査第二課、平成19年5月の米子警察署及び平成20年2月の郡家警察署の執行分の明細を入手して、証拠書類等と照合した。
第3 監査結果
監査の結果、捜査報償費は適正に支出執行されていると判断した。また、支出内容からみて、いわゆる裏金財源として利用されていることはないと判断した。
第11章 食糧費の監査
第1 食糧費の内容と問題点の所在
食糧費とは、いわゆる食事を対象とした支出であり、各種会議で供される食事代、接待用茶菓代、警察被留置者に対する食事代、病院・療養所等の患者に対する食事代などが含まれる。
交際費と類似する点があるが、食糧費は行政事務執行上の直接的必要性から支出されるものである点で区別されるものである。
第2 平成19年度の食糧費
平成19年度における鳥取県警察の食糧費支出額は3,065万円であった。
食糧費のほとんどは、警察署内の被留置者や被疑者に対する食事代である。県内の大規模警察署(鳥取・倉吉・米子)の被留置者に対する食事代は、総額2,818万円に及ぶ。被留置者に対する食糧費については、米子警察署の監査時に証拠書類をみて支出額の正確性を確認した。
食糧費のほとんどは、警察事務執行上の直接的必要性から支出される被留置者等に対するものであることが分かった。
第3 警察本部費の食糧費
平成19年度の警察本部費の食糧費は64万円であった。このうち35万円が全国規模の会議後の意見交換会参加費として支出されていた。監査人は、この意見交換会費の支出のうち捜査第一課分12件、合計金額60,500円の内容について証拠書類と照合し、県の定めた執行基準に沿った内容であるかを点検した。
第5 意見
支出手続きと支出金額に問題はなかった。
意見交換会費は、食糧費の執行基準から判断して妥当なものである。しかし、行政事務執行上の直接的必要性の視点で判断すると、直接的な必要性はないと考える。
平成7年の総務部長通知食糧費の執行基準では、行政事務執行上の必要性に対する直接性と間接性の区別を明記していない。そのために、間接的に必要と判断した飲食を対価とする支出を食糧費として扱うとの誤解が生じたと考えている。
意見交換会費のような行政事務執行上の間接的必要経費は交際費として会計処理することにより人目につきやすくしたほうが良いと考える。また、会議用のお茶代や来客用のお茶代も間接的必要経費であるので交際費として扱う方が良いと考える。
第12章 交際費の監査
第1 鳥取県警察の交際費と問題点の所在
交際費という用語は、地方自治法施行規則中、歳出の表中の節の表にのみ規定があり、法令上他に規定がない。交際費として支出できる範囲については、鳥取県独自の解釈により運用している。
国や地方自治体の交際費は、行政事務執行上の直接的必要性から支出されるものではないと考えている。鳥取県警察の平成17年度から平成19年度の交際費支出額を見たところ、この3年度で約128万円、各年度ほぼ同額の支出があることが分かった。
監査人は、鳥取県警察の交際費執行における問題点の有無を判断することにした。
第2 平成17年度から平成19年度の交際費支出額
鳥取県警察の交際費の取扱い部署は2つある。公安委員会扱いのものと警察本部長扱いの2つである。平成17年度から平成19年度までの3か年度の取り扱い部署別の合計支出額は、公安委員会扱いが16,321円、本部長扱いが1,272,466円であった。
平成19年度の公安委員会の交際費の内容は、公安委員の名刺代と弔電郵送料であった。同年度の警察本部長の交際費は、弔電郵送料6,880円、名刺代10,000円と社交的経費382,100円であった。
第3 警察本部長の社交的経費の内容
平成19年度の社交的経費の内容は、本報告書の97ページに掲載している。 これらの支出に対しては、関連証拠書類と照合、支出理由を聴取確認した。
第4 意見
公安委員会の支出内容は、公安委員の名刺代と弔電に対するものであり、職務上の立場をわきまえた納得性のあるものであった。
本部長扱いの交際費の中の社交的経費約38万円については、出席する会自体の意義はそれなりに理解できる。しかし、交際費の執行は行政事務執行上の視点から必要最小限に止めるべきである。
県としてその範囲、金額などについてより具体的な執行基準を設け、簡素かつ納得性のある執行に努めるべきである。