お金があれば幸せになるわけではない、しかしお金がなくて幸せになれないことは多い。企業社会が豊かにならなければ雇用は増えず、税収も増えず、政策のための財源もできない。
この10年間の県内の従業者数4名以上の製造業者数とその製品出荷額及び卸売業と小売業の事業者数とその販売額は長期低落傾向にある。
大手企業は自立的に打開策を考えそれを実行する力があるが、県内中小企業は資金不足、人材難、技術開発力不足のため考えることはできても実行力に欠ける。欠けているものを公的支援により補っていく必要がある。道路・港湾等のインフラ整備だけでなく、経営相談や国内・海外の商談会への出展、研究機関と民間事業者の連携等ソフト面での公的支援により県内産業の底上げをしなければ幸福は訪れない。
第1 組織の目的
財団法人鳥取県産業振興機構(以下機構という。)は、県内企業の高度化、情報化の推進並びに企業の創業及び経営革新の支援を行うとともに、県内における新たな産業の創出を推進し、地域経済の活性化を図り、県産業の発展に寄与することを目的としている。
第2 組織の沿革
機構は、鳥取県の外郭団体であった旧中小企業振興公社、旧工業技術振興協会及び旧中小企業情報センターの3つの財団法人が平成12年度に統合されてできたものである。
第3 組織の活動状況
1 事業の重点目標
機構は、平成14年度に起業化支援の推進、人材育成の推進、販路開拓の推進の3つの重点目標を掲げ、さらに平成16年度に賛助会員への支援を加え、平成18年度に産学金官の連携促進を掲げ、県内の経営のサポートセンターとしての体制を充実させてきている。
2 県内企業への認知向上活動
機構と県内中小企業との双方向性のある信頼の太いパイプを築くためには、機構の業務内容を周知させ、それが認められることが必要である。そのために賛助会員を募っている。賛助会員数は、平成14年4月現在の368会員が平成20年度末には690会員へ増加しているが、会員の増加数は近年頭打ちである。
法人会員の年会費は一口2万円と定められている。企業側の会費負担は、機構職員の励みにつながるものである。地道な日常活動の成果が賛助会員の増加につながると思っている。
3 産業支援プラザ体制
機構は、機構本部と同所に県内の本部を置く社団法人発明協会鳥取県支部、隣接した地方独立行政法人鳥取県産業技術センターとともにとっとり産業支援プラザ体制として一致協力して県内産業の育成支援事業を行っている。
第4 基本財産等
1 基本財産
基本財産の金額は2,900万円である。出資者は、鳥取県1,500万円、県内4市200万円、金融機関520万円、民間企業600万円、商工団体60万円、機構20万円である。
2 基金
機構は事業目的別に6つの基金を設定している。その中で、恒久的な基金として保有しているのは情報化基盤整備促進金3億円と研究開発基金3億6,558万円の2つである。
第5 組織及び所掌業務
機構の目標とする起業化支援の推進、人材育成の推進、販路開拓の推進、賛助会員への支援、産学金官の連携促進を推進するための部課編成をしている。機構本部は鳥取市若葉台を拠点として活動している。西部支部を米子市日下の鳥取県産業創出支援館内に設置している。
常勤の理事長と6名の正規職員が組織の核となっている。理事長は現在の地方独立行政法人鳥取県産業技術センターの出身者であり、製造技術等に精通し県内企業に幅広い人脈を有する人である。正規職員のうち4名は50歳代である。正規職員の少なさと年齢構成から考えて、10年後には機構の業務全般を理解している者が少なくなることが目に見えている。
事業の前線に立つ実務者である非常勤等が職員の7割強を占め、県の商工労働部からの出向者が6名、県内の市職員の出向者が2名、県内金融機関からの出向者が3名いる。
第6 機構の財源元・事業形態別分類
第7 機構の財務諸表を理解する上での留意点
(報告書9頁参照)
第8 指摘事項 機構の基本財産中の機構出資額20万円を解消すべきである
基本財産の出資の中に機構自らの出資額が20万円存在する。機構の基本財産を機構自体が持っていることは認められることではない。解消すべきことである。
第9 意見 組織力の維持・向上のために正規職員の確保が必要である
職員総数62名中、正規職員数は6名と少なく、10年以内に4名の男性職員は定年退職を迎えてしまう。機構の継続的な事業を遂行するためには、組織運営の中核となる人材を複数人確保し育てなければならない。県内企業の人材育成に力を注ぐだけでなく、足元の人材を確保し育成することも忘れてはいけない
第1 事業化育成支援事業
(報告書11頁参照
第2 専門家派遣事業
1 事業の内容と実績
機構は、県内の中小企業等の依頼により、登録した専門家(中小企業診断士、技術士、公認会計士、ITコーディネーター等)を企業に派遣して、経営診断、技術改善、ISO取得、情報化、ビジネスプラン作成等の支援を行っている。
登録している外部の専門家を派遣するため、機構は専門家に対して1日当たり3万9,000円(半日の場合はこの半額)の謝金を支払い、その謝金の半額を派遣先企業から徴収している。
平成16年度から平成20年度の間の専門家の派遣実績数は1,569件、派遣企業数は262社であった。平成16年度の登録専門家数は46名であったが、平成20年度は97名に増加している。
平成20年度の相談の内容は、経営全般68件、IT関係52件、ISO関係50件、技術・生産関係 49件、その他14件であった。
2 事業費
平成20年度の専門家派遣事業の派遣先企業1社当たりの県負担額は約11万円(県負担額417万円÷派遣企業数38社)となる。
3 意見 派遣先負担の増額を検討すべきである
半額を派遣先企業が負担しているとはいえ、個々の企業に専門家を派遣するために1社当たり 11万円もの県費を負担している。専門家派遣は、機構が斡旋・紹介をする程度にとどめることを検討しなければならないと考える。例えば、紹介した初回だけを県が半額負担するという制度である。斡旋・紹介した後は、専門家と派遣先企業の個別相談契約にもっていかなければならない。なぜなら、専門家派遣の利益を享受するのは派遣先企業だけだからである。 |
第3 販路開拓支援事業
県内の多くの中小企業が抱える課題はマーケティングができない、大手企業への販売ルートを作れない、営業できる要員がいないなどである。その課題を支援するのが販路開拓支援事業である。
1 受発注情報等収集提供事業(報告書15頁参照)
2 商談会開催事業
(1) 販路開拓事業の商談会
機構は、新規受注に意欲的な県内中小企業を支援するため、大都市圏の大手メーカーとの技術提案展示・商談会、食品相談会や県内誘致企業との商談会を企画・実施している。商談件数は合計161件に及んでいる。
平成20年度の広域展示・商談会は、県単独主催の商談会1回、他県・他市あるいは他県の産業振興事業を実施する財団との合同開催の商談会7回、合計8回であった。
食品商談会(食のみやこ鳥取県)は、県内で3回実施している。商談件数は264件であったが、買い手企業数の少なさは今後の課題となると感じた。(食のみやこ鳥取)を標ぼうしているが、全国的に鳥取県の食のすばらしさを浸透させるには、まだまだ時間とお金を要するであろう。
(2) 事業費
平成20年度の事業費は415万円であった。同額を県からの補助金で賄っている。商談会 1回当たりの経費は約38万円になっている。機構は、出展企業から参加料は徴収していない。出展企業は、商談会に参加する要員の派遣、それらの旅費交通費、商品の搬入費等を負担しているからである。
(3) 意見 出展企業の営業成果に応じた参加料の徴収を検討すべきである
商談会による取引成立の経済効果は、個々の企業に帰属するものである。商談会による、個々の事業者の製品の営業成果に応じた参加料を求めることを検討すべきである。 |
3 ビジネスパートナー発掘支援事業
(1) 事業の内容と成果
機構は、食品、電子・電機分野における全国規模の専門フェアに鳥取県ブースを設 置し、新製品・新技術を保有する県内中小企業の新規取引先の獲得・販路拡大を支援する事業を行っている。
平成20年度に機構が県内企業に参加を募った専門フェアは、電子部品・ディバイスが集まる民間企業主催の専門商談会ELE TRADE 2009 とアジア最大級の食品・飲料専門展示会FOODEX JAPAN 2009 の2つであった。
(2) 事業費
この2つの全国専門フェアに要した事業費は782万円であった。全額が県の補助金で賄われている。2つのフェアへの参加企業は18社であり、機構を通じて県は1社当たり43万円の経費を支出していることになる。参加企業からは参加料は徴収していない。
(3) 意見 出展企業からの参加料の徴収を検討すべきである
参加企業には、鳥取県による経営革新承認企業となっているという条件がある。打って出る企業、上昇気流に乗りたい企業には応分の負担を求めることを検討すべきである。
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4 地域資源活用新事業展開支援事業
(報告書21頁参照)
5 とっとり産業技術フェア開催事業
(報告書22頁参照)
第4 海外展開支援事業
機構は、ジェトロ鳥取貿易情報センター、さかいみなと貿易センター、境港貿易振興会等と連携して、とっとり貿易支援センターを設置し、企業の海外展開を支援している。平成20年度に実施した事業を以下に記載する。
1.0gd">1 県内企業海外チャレンジ支援事業補助金事業
(1) 事業の内容と事業費
機構は、県内企業が海外見本市に出展、サンプル輸入など、企業の初期的な海外活動に対しての補助金の審査・交付を行っている。
平成20年度は、海外・国内見本市商談会等参加経費の助成を6件、総額358万円の補助金を支出している。開催に要した経費の2分の1以上は、企業側の負担である。1社当たりの補助金支給限度額は100万円となっている。
海外で開催される商談会への参加企業を募る形ではなく、企業側の自立的な海外チャレンジ事業に対する補助金交付であることに特徴がある。
平成20年度の事業費(企業への補助金額)は358万円、全額を県からの補助金で賄っている。補助金を受けた企業6社の補助対象事業費合計は732万円であり、平均して約49パーセントの補助率となっている。
(2) 意見 チャレンジ支援期間の制限を検討すべきである
平成18年度から平成20年度までの3か年度において毎年補助金を受けている企業が1社、2回受けている企業が1社あった。同一企業に毎年補助金が交付されることに抵抗感がある。補助金が交付されることが海外取引の誘引になる時期であれば容認できると考えるが、海外取引が一定の規模以上になれば自立化したものと考えることができる。交付要綱及び交付要領の見直しを考えるべきである。チャレンジ期間の見極めである。 |
2 商談会開催事業(報告書24頁参照)
3 食のみやこ鳥取県 in 上海推進事業(報告書26頁参照)
第5 機構の共通的運営費(報告書28頁参照)