防災・危機管理情報

監査委員のホームページ

平成18年度鳥取県包括外部監査報告書の概要
  包括外部監査人 植田 昭
  

監査の概要

1 監査の種類
  地方自治法第252条の37第1項に基づく包括外部監査
 
2 選定した特定の事件
  未利用財産、職員住宅及び県営住宅

3 監査の対象を選定した理由
  全国的に地方自治体の財政難が深刻な状況になっている。鳥取県でも、平成17年度末で県債残高は6,000億円を超える財政の厳しい状況にあり、財政改革が必要に迫られている。
  財政改革においては、主に「収支予算額」と「債務残高」がクローズアップされるが、財政改革は本来、「歳出・歳入の改革」とともに「資産と負債の改革」、つまり「バランスシート改革」が必要不可欠である。
  そこで、普段はあまり注目されることが少ない県有財産について監査することには重要な意義があると考えた。
  したがって、未利用財産、職員住宅及び県営住宅などの県有財産が有効活用されているか否か、その状況について監査を実施することが、鳥取県が進める財政改革の中味をチェックするという意味において有用であると考え、監査のテーマとして選定したものである。

4 監査を実施した期間
  平成18年4月1日から平成19年2月23日まで
 
5 実施した監査の方法
  県有財産である土地等がどのような状況にあり、どのように利用されているかを各担当部署に対する質問等により検証した。

6 包括外部監査人の資格及び氏名
  公認会計士  植田  昭
 
7 監査の事務を補助した者の資格及び氏名
  公認会計士  入江 道憲
  公認会計士  伊木 隆司
 
8 利害関係
  包括外部監査の対象とした事件につき、外部監査人及び補助者は地方自治法第252条の29に規定する利害関係はない。

未利用財産

1 監査対象部署
  すべての知事部局、教育委員会及び警察本部
 
2 監査の視点
 (1) 未利用財産を網羅的に把握する仕組みができているか。
 (2) 未利用財産は適切に管理されているか。
 (3) 未利用財産の処分は遅滞なく行われているか。
 (4) 貸付財産の管理及び使用状況は適切に把握されているか。
 
3 対象財産
  県有財産のうち、土地及び建物を対象とした。
 
4 未利用財産の定義
  不稼動状態にある財産をいう。
  不稼動状態とは、当該財産がそれぞれの用途又は目的に利用されていない状態を指し、県が直接利用せず、使用許可又は貸し付けているものも含んでいる。
 
5 実施した監査の方法
  各部局が所管する財産で、平成18年3月31日以前において1年以上不稼動状態(土地については、100㎡以上、建物については50%以上)にある財産(理由のいかんは問わない。)について、対象となる各部署へのアンケート方式により抽出し、状況についてヒアリングを実施した。
 
6 監査の結果
  全体で100件(土地1,448,325.70㎡、建物40,856.08㎡)の未利用財産を抽出した。
  その内、貸付財産を除く未利用財産は、67件(土地1,307,164.31㎡、建物33,769.66㎡)であり、これは東京ドーム28個分に相当する。
 
7 指摘事項
7.1 未利用財産の網羅的な把握方法について
 ① 県として未利用財産の定義を適切、かつ明確に定めるべきである。
 ② 県庁内に、財産の所管課以外の部局が定期的に未利用財産の有無を調査し、集計する体制を整え、もって未利用財産の網羅的な把握に努める必要がある。
 
7.2 売却処分の促進及び再活用計画の迅速な検討について
    未利用財産のうち、13件(土地19,637.95㎡、建物82.63㎡ 明細は本文p.8の「①a速やかに売却処分すべきもの」に記載)については、すでに再活用する計画がないにもかかわらず、1年以上放置されている物件である。県が所有し続ける合理的な理由のない財産であることから、速やかに処分すべきである。
    また、13件(土地169,565.59㎡、建物6,377.10㎡ 明細は本文p.10の「②再活用案を早急に検討すべきもの」に記載)については、検討期間が徒に長くならないよう、検討期間に期限を設けたうえで検討を急ぐべきである。

8 監査の結果に添えて提出する意見
8.1 未利用財産の網羅的な把握方法について指摘事項に示した問題点を改善するためには、以下の視点が必要である。
    第一に、県として未利用財産の定義を定めるにあたっては、未利用財産の存在が、県民の不利益につながることを明確に意識して、できるだけ広く拾うことができるようにすべきである。
    第二に、未利用財産の調査は自己申告制ではなく、所管外の部局の職員が積極的に発見し、指摘をすべきである。客観性を担保するには少なくとも自分で自分の所管する未利用財産を指摘させる方式はやめなければならない。
 
8.2 抽出した未利用財産の分類管理について
    未利用財産の置かれる状況に応じて適切な分類を設け、その分類ごとに手続を定めることによって、業務の効率化及び責任所在の明確化を図るべきである。
    監査の結果に示したように、分類は概ね以下のようなものが想定される。
    ① 速やかに売却処分すべきもの
    ② 再活用案を早急に検討すべきもの
    ③ 売却処分が困難と思われるもの
    ④ 貸付財産
 
8.3 県有未利用地有効活用検討委員会について
    検討委員会が、1,000平方メートル以上の大規模な土地について、「将来的に必要となり得る」、「まとまった土地は、いざというときに入手が困難」との理由で、売却処分に慎重な姿勢をとっていることは、財政逼迫の折、県民の理解は得られないと考える。不要不急の財産の使い道を延々と議論することのないよう、検討委員会においては検討する期限を設け、活用する予定のない土地については売却処分するよう促すべきである。
 
8.4 予定価格の設定について
    予定価格が高かったことに関して、財産評価審議会の審議プロセスに問題があるとは言えないが、結果として売残り物件が生じている状況は打開すべきである。そのためには、買い手が付きにくい物件に関しては、「売却可能価格」という売買が成立する価格帯まで売却価格を下げる工夫が求められる。
    また、手続的にも柔軟な価格設定が可能となるような工夫が必要である。
 
8.5 県有財産に対する意識改革の必要性
    行政の仕組みは単年度ごとの予算編成となっているため、過年度の予算で取得した財産の活用状況には、関心が向かない仕組みになっている。
    使われずに放っておかれる財産が、これだけあるということは、県民に対して自治体の財政状態を適切に情報開示できていないことを意味している。
    また、税金で取得した財産を不活性状態に置いていることは、住民の福祉に役立てられると考えた県民の期待を裏切るものである。
    今後、このような事態が発生しないよう、県は県有財産に対する認識を抜本的に改める必要がある。

職員住宅

1 職員住宅
  職員住宅には、管財課が管理する職員宿舎、教育委員会が管理する教職員宿舎、警察本部が管理する警察職員宿舎、病院局が管理する医師公舎、企業局が管理する職員宿舎がある。
 
2 監査の視点
  公有財産である職員宿舎が、有効に管理運営され、有効利用されているかどうかを担当者に対する質問等で検証する。
 
3 監査手続
  宿舎貸付料の算定方法から入退去の手続、家賃の収納方法、修繕費の費用負担及び管理方法について鳥取県宿舎管理規則等に準拠しているか質問等により確認する。
 
4 監査の結果
  以下の指摘事項を除いて、鳥取県宿舎管理規則等に準拠していた。
 
4.1 指摘事項
 (1) 入居時に「確認書」を作成することになっているが、口頭のみの確認で書類作成されていなかった。
 (2) 家賃を期日に納付していないケースが多い。
 (3) 退去時の修繕費の負担が不明確である。
 
5 監査の結果に添えて提出する意見
5.1 家賃の設定について
    平成18年度から民間住宅との家賃の均衡を図るため、家賃の算定方式を近傍同種住宅算定家賃を基準とする方式に変更したが、減価償却計算の基になる耐用年数の問題、建設費の問題、及び民間の市場家賃調査の問題から目的を達成していないのではないか。
    民間住宅との均衡を図るのであれば、市場性がある宿舎は市場家賃とし、民間には無いような古い宿舎はあえて変更する必要がないように思われる。
 
5.2 修繕費について
    修繕費については、以下の3点に問題があると思われる。第1点は、もう少し具体性を持たせた運用規定を作るべきである。
    第2点は、入居時に「確認表」を作成し、また、退去時には検査チェックリストを作成し、両者の比較により退去時の費用負担を決定すべきである。
    第3点として古い宿舎は退去時に修繕をするのではなく、入居者が決まってから修繕することに変更した方がよいのではないか。古い宿舎は、入居に時間がかかるため入居時に再度修繕の必要が発生する恐れがあるからである。
     このためには、退去者が負担した修繕費を県で保管する必要がある。県の会計で預り金とすることが無理であるならば、雑収入処理をし、入居が確定したときに、雑収入処理した金額を入れて全額県が負担すればよいと思われる。
 
5.3 古い宿舎について
    現在、宿舎が古く入居者があまり入っていないところがある。これらの中には、立地条件は良いが宿舎が古いため、入居者が入っていないところがあり、県有財産の有効利用という観点から見ると非常に「ムダ」な使われ方をしていると思われる。これらの宿舎については、早急にどうすべきかを検討すべきである。再利用するか、又は不必要な財産として売却するか。
    例えば、再利用する方法としてはPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)の導入を検討してはどうであろうか。
    上記は再利用する観点から述べたが、最初から再利用を考えない土地であるならば早急に処分を図るべきである。
    また、上記は警察職員宿舎を前提に述べたが、今後建設の予定が無い知事部局、教育委員会宿舎では、民間の賃貸住宅にも空きが出ているような状況であるので、古い宿舎は処分して民間住宅の借上げをしていくのも一つの方向としては良いのではないか。
    そうすれば、宿舎に入っている人と入っていない人に不公平感はなくなる。
 
5.4 管理事務の一元化について
    警察については特殊性がある警察職員宿舎以外は一元的に管理ができるのではないか。一元的に管理することにより、管理コストの大幅な減少が見込める。
    また、宿舎の効率的運用が図られるのではないか。比較的新しい宿舎に人を集め、古い宿舎、入居率の悪い宿舎は廃止することにより土地の有効的な活用を図ることができる。
 
5.5 管理方法について
    知事部局、教育委員会及び警察本部は鳥取県公有財産事務取扱規則により、建物等の取得、増築したときは支出額を記入し、取壊しのときは支出額を減少することとする支出額のみの管理となっている。これに対し、企業局、病院局は固定資産原簿、固定資産台帳により減価償却を行い、現在の建物の簿価で管理している。
    県の会計は、予算会計であるため、支出時のみの管理でも良いと思われるが、県は県民から受託した財産(税金等)を運用しているのであるから、その運用状態を県民に示す義務があると思われる。このためには、現在財産がどのようになっているかを示す意味で減価償却を行い宿舎管理すべき必要があると思われる。
 
県営住宅
1 監査対象部署
  生活環境部住宅政策課及び各総合事務所生活環境局建築住宅課
 
2 監査の視点
 (1) 県営住宅ストックが公営住宅制度の趣旨に則り、有効に活用されているか。
 (2) 家賃決定等、入居者間の公平性が保たれているか。
 (3) 入居(募集)、退居に関し、入居者、応募者間の公平性が保たれているか。
 (4) 家賃徴収、滞納管理が効率的かつ効果的に行われているか。
 
3 外部監査の結果
3.1 管理代行について
    管理代行分の家賃徴収率が、直轄分に比べて、低くなっており(平成17年度でマイナス9.8パーセント)、家賃未収額(残高)も1.4倍となっている。
    入居者の入居基準も異なることなく、また、徴収率が特に低い鳥取市、米子市などは、直轄分と同じ地域であることから、地域性による相違も認められない。したがって、このような徴収率の差異は、制度的な問題、すなわち、「管理代行」制度自体に内在するものと考えられる。つまり、各市町村と取り交わされる管理委託契約上、家賃未収が生じた場合の負担の多くを県が負担することとなっており、管理代行者である市町村が十分な納付指導を行う動機付けに乏しいものとなっている。
    契約により、家賃未収の負担をどのように分担すべきか、又は、そもそも責任の分担という困難な問題を抱えた管理代行制度自体を見直すべきか、検討する必要がある。
 
3.2 家賃徴収事務に係るシステムについて
    現在、県営住宅の家賃は、「県営住宅管理システム」により管理されている。基本的には、入居者の収入申告に基づく家賃の算定及び家賃の徴収管理を行なうシステムである。
    本システムは、公営住宅の家賃算定等、特殊な機能を有するものであるが、滞納管理という面では、十分な機能を発揮しているとは言い難いものである。
    内金入金等の入力が十分に行えないなどのシステム上の諸問題から、システムによった滞納管理が十分に行えないこととなり、結果として、入居者別の台帳(滞納整理票)に基づく滞納管理しか機能していないという状況を招いている。必然的に、滞納の全体的な状況をリアルタイムで把握することが困難となり、滞納先の洗出しを3ヶ月に1度、特別な業務として行わなければならなくなっている。これが、滞納状況の見極め及びそれに対する対応を遅らせる原因となっている。
 
【指摘事項】
 多くの滞納者の管理をすべて台帳(滞納整理票)管理で行うことは、そもそも効率的、効果的でない。様々な状況を管理する上で、手書き台帳が有効な場面もあるが、滞納の発生・解消の状況を全体として管理することが、台帳では極めて困難となる。併せて、定期的に行われる滞納先の洗出しに係る事務作業等の時間的なコストも看過できない。
 現状の台帳に偏った体制を改め、より効率的かつ効果的な滞納管理を行うためにもシステムの改善を行う必要がある。
 
3.3 滞納事務について
    東部、中部、西部の各総合事務所により、滞納管理の状況が大きく異なっている。つまり東部、西部総合事務所に比べて、中部総合事務所は、滞納件数が極めて少ない状況となっている。また、中部総合事務所では、管理代行分についても、市町村の担当者と同行して、十分な管理が行なわれている。これは、中部総合事務所の管理戸数そのものが少なく、担当職員数も少ないが、職員1人当たりの管理戸数が少なくて済んでいるためと考えられる。
    一般に、「管理の限界」と呼ばれる考え方がある。即ち、一定レベルの仕事量を超えると、途端に仕事の効率が下がるという「限界線」がある、というものである。この点、東部、中部、西部の各総合事務所の職員配置が適正であるか否か、検討する必要がある。さらには、現状、原則的に「2人1組」で納付指導を行うために、各総合事務所に納付指導員が2名ずつ配置されており、その点で職員配置が硬直化している。

【指摘事項】
 東部、中部、西部の各総合事務所により、滞納管理の状況が大きく異なる以上、適正な人員配置とすることは言うまでもない。
 この場合、滞納指導員を2名1組とする原則的な運用方法を改めることを検討することも考えられる。又は、滞納管理の状況が良好な中部総合事務所の担当地域(管理団地)を増やすという方法も考えられる。
 いずれにせよ、全体として滞納管理が最も良好に行える体制に改める必要がある。
 
3.4 収入未申告者について
    10ヶ月以上経過しても収入未申告という状況が、平成18年4月1日で68件、全戸数に対して1.8パーセントある。それ以前に滞納等が発生している等、特別の事情のある者もあるが、そうでない者、すなわち、単にルーズであることから未申告となっている者もある。
    収入未申告であれば、割安な応能応益家賃でなく、近傍同種家賃を徴収しなければならず、自己責任とはいえ、これが原因となり家賃滞納が発生することも多々ある。滞納管理は、発生の抑止という点が重要であり、収入未申告について十分な管理を行っていくことが求められる。
 
3.5 滞納者の家賃減免について
    家賃の減免は、基本的に、県の判断により、県の負担で行われるものである。平成18年4月1日の家賃算定において、月額13,392千円、年にすると160,715千円にものぼる。
    このような減免は、家賃滞納者に対しても行われている。減免の対象者が収入基準等により判定されることを考えると、そのような要件に該当する以上、入居者の事実上の権利として減免の対象となり得る、とも考えられる。ところが、滞納管理の面からすると、そのような入居者に対する一定の譲歩が、入居者の何の負担もなく行われることには疑問を感じる。
 
3.6 法的措置の実効性・機動性について
    平成17年度における4ヶ月以上及び前年度以前分の滞納者が131件いるにもかかわらず、訴訟件数は平成17年度10件、平成18年度(平成18年12月現在)17件となっており、必要十分な法的措置が行われていない。 
    解除通知から強制執行まで、1年程度の期間を要しており、多くの入居希望者が入居できない現状では問題がある。また、確定判決を得て、明渡請求についての強制執行を実行しても、家賃支払請求については、差し押さえる財産がないなど、実質的に回収が困難な状況である。

【指摘事項】
 法的措置の実効性・機動性を高めるためにも、訴訟事務を効率化する必要がある。訴訟代理人として弁護士に委託するだけでなく、県自ら訴訟を行うことも必要である。
 また、現状1年程度要している解除通知から強制執行までの期間を短縮化する必要がある。滞納者への法的措置を実施する見極めを迅速かつ厳格に行う等、改善を要する。
  

Copyright(C) 2006~ 鳥取県(Tottori Prefectural Government) All Rights Reserved. 法人番号 7000020310000