防災・危機管理情報


 男女共同参画推進員として活動した平成13年度1年間の所見を発表します。

1 石田敏光 推進員

 「男女共同参画推進員1年生」

 21世紀は、環境・情報・人権の時代といわれ、私たちの社会においては男女共同参画社会の実現が最も重要な課題となっています。このような世紀の始まりに、私は片山知事より男女共同参画推進員を任命され、フレッシュな気持ちで取り組んだこの1年間、苦情申出の審査・セミナーの受講・会議への出席と、多くの勉強、経験をすることができました。
 先日、5年ぶりに父の従妹と孫娘(小学校1年生)が、大阪から元気な姿で我が家にやって来ました。内輪の話で恐縮ですが、実は5年前の平成9年夏に父の従妹・娘・孫娘の3人がやって来たときには、大変深刻な問題を抱えていて、その相談のためにやってきたのでした。その内容は、娘の夫によるドメスティック・バイオレンス(DV)の問題でした。
 身近な親戚には、DVについて相談をすることができず、また、どこへ相談に行ってよいのか分からず悩んでいたそうです。私は、話を聞き終わるとすぐに、倉吉市の福祉事務所に相談を持ちかけ、母子寮を紹介されました。母子寮の対応は大変親切で、一旦は入寮しようと心が動いたようですが、現実を考えると母親の勤め先、子どもの保育等大きな問題があるため入寮をあきらめました。
 3人は大阪に帰りこの経験を基に、区役所に相談、まず保育所、次に母親の勤務先が決まりました。その後、離婚もようやく成立し、一家には幸せが戻ってきました。現在、母親は朝早くから夜遅くまで食堂の開業を夢見て一生懸命働いており、子どもは祖父母が預かり元気で小学校に通っているそうです。DVに対しての理解や取組みがなされていない時代でしたが、区役所の担当の対応が良かったのが幸いだったようです。
 さて、推進員への申し出に対する審査の方法については、なにぶん前例がありませんので、まず、推進員4名の協議によりルールを決めることになりました。申出案件の処理は4名の推進員が順番で担当し、4名の合議により審査を行い、推進員4名の連名で審査結果を通知することとしました。
 第1号の申出は、DV被害者に対する民間の支援団体からのもので、(1)行政の民間シェルター活動に対しての理解不足とDV対応のための職員研修の必要性、(2)民間シェルター活動に対する公的支援不足の2点の申出内容でした。まず、県の担当課に文書照会を行い、次に申出者との面接を行いました。その後、担当課を面接調査を行い、推進員会議を5回開催し、協議を重ね審査結果を通知しました。
 審査をする上で分かった大切なことは、申出者との面接の際、申出書に記載された内容を良く理解するということでした。書面には、数多くの苦労の現実と思いが述べてあり、申出内容としては上記の(1)(2)に整理しました。担当課の面接においても、現状と今後の取組みの確認が重要です。審査結果については、勧告することができるとありますが、第1号案件については合議の結果「助言」としました。
 第2号の申出は、本報告書の前の頁に掲載されているとおり「助言」しました。第3号は現在審査中です。
 男女共同参画という言葉はまだなじみが薄いようですが、私が出席したある会合の中で、「『・・・母の会』の活動が低調な原因は、男女共同参画社会において名称及び構成が良くない。」との意見が出たり、最近、マスコミの記事や報道及びテレビドラマ等で、男女共同参画について多く取り上げられるようになってきていて、徐々に身近なものになってきているような気がします。また、各地でセミナー・講演会が活発に行われており、男性の参加がまだまだ少ないようですが、一歩ずつ確実に男女共同参画社会の実現に向かって進んでいると思います。
 県でも鳥取県男女共同参画センター「よりん彩」の相見所長を中心に職員、ボランティア団体の人たちは大変がんばって活動しています。
 私自身、男女共同参画推進員の2年生になりますが、より一層の研鑽を行い役割を果たしていく決意です。県民の皆様の申出をお待ちしています。



2 大月悦子 推進員

 「推進員一年生を終了して」

 鳥取県男女共同参画推進条例が施行されるに当たり、とても関心を持って関わってきました一人として、平成12年12月に成立した条例に苦情、不服の処理のため第三者機関が設けられているこの条例に期待するものがありました。
 推進員のお話がありました時、かなりの専門性を要する役割なので、非常に悩みましたが、私はジェンダーに対する視点をしっかり見据えて取り組むことならば、今までの学習がお役に立てるのではないかと思い引き受けさせていただきました。
 今までに3つの案件の申出があり、2つの案件はそれぞれの機関に助言として審査結果を出し、1つの案件は審議中です。
 いずれも、推進員に期待を寄せている感が強く感じられました。そのためには申出者の思いを真摯に受け止め、現状の分析を十分に行わなくてはとの思いで審議いたしました。
 審査のプロセスでお互いの意識が変わってくることを体験しています。
 男女共同参画社会について、まだまだ意識が不十分、性別による固定的な役割分担意識や社会慣行が残っている現在、条例の全文の中で「鳥取県民は、社会を構成する男性と女性が、対等な立場で、個性豊かに生き生きと暮らせる社会を形成するため、男女共同参画社会の早期実現を目指すことを決意し、この条例を制定する。」と謳われていることに役立てるよう一つひとつの案件をただ形式的に調査・資料請求・報告とならないよう今まで以上に丁寧に、関係を大切にしながら、結論だしていきたいと思います。
 県民からの苦情が男女共同参画社会を推進する為に重要であると考えます。より多くの申出を期待しています。



3 伊達季代子 推進員

 「社会は人間のために」

 「戦争の世紀」と言われた20世紀の最後の10年は、それまでの90年と違って、一人ひとりの人間としての人権の尊重が日常に提唱されるようになったと思います。そして、21世紀は世界中で「人権の世紀」を実現する時代になると確信します。
 さて、鳥取県では、平成12(2000)年12月、鳥取県男女共同参画推進条例が、議員提案としては全国で初めて制定されました。13年4月には鳥取県男女共同参画推進員4名がその任を受け、鳥取県民からの男女共同参画にかかわる苦情申出を受け、審査し、条例に照らし合わせて、鳥取県への勧告、助言を行うに至りました。
 一年を経て、3件の苦情申出があり、審査の結果、うち2件は県への助言も終え、現在1件が審査中です。最初の申出は、民間シェルターを開設している団体からでした。行政より早く開設されたシェルターに対しての市町村担当職員の理解度の低さ、対応の悪さが提起されました。私自身の生活が、家庭においても職場においても男女共同参画を実行している方なので、申出の内容について、はじめは想像し難く、理解し難いものでした。とは言え、検討を重ねていく中で、男女共同参画に基づく新たな知識、考え方、言葉、これからの方向等、独りよがりではない視点を多く学ぶことができました。また、テレビニュースをはじめ新聞、雑誌、書物にいかに多くの男女共同参画の記事があり、国会でも男女共同参画社会を目指して法制を早く整えようとしている姿勢があるのを見ました。
 R・フォン・ヴァイツゼッカー(東西ドイツ統一時の大統領)は、「社会は人間のためにある。しかし人間が社会のためにあるのではない。」と言っています。鳥取県が男女共同参画推進条例を実行していくことで、どのような性を持つ者も、どのような障害を持つ者も、どのような年齢の者も、県民一人ひとりが輝いて生きる県づくりを、より着実に果たしていくのではないでしょうか。



4 西村正男 推進員

 「推進員の所見」

1 処理案件
 処理案件の内容及び処理結果については別途取りまとめて報告がなされているので省略し、処理に当たって手続き上検討しなければならなかった問題点について以下に述べ、併せて今後の課題も記す。今後の課題の部分は私見である。

2 合議制
 本年度の案件の処理は全て合議によって行った。
 この点について鳥取県男女共同参画推進条例施行規則は、推進員は独立して職務を遂行し、合議によるのは、知事等に勧告し又は意見を述べる場合、意見を公表する場合、その他合議で決定した場合であると定める(同規則3条)。本年度は各案件を合議により処理することを合議で決定した。
 同規則が推進員の単独処理を原則と定めているのは埼玉県の同制度の影響があるものと思われるが、同 県の制度では私人間の行為についての苦情も案件となるためにそのようになっていると思われるところ、鳥取県ではその点がなく、県の施策についての苦情又は県の対応通知に対する不服についてのみ審査する(鳥取県男女共同参画推進条例19条及び24条)のであるから、今年度のわずかな処理経験を踏まえても、推進員どうしの意見の交換のできる合議によるのが望ましいと実感された。
 今後の課題として、合議を原則として、案件の個別事情により推進員1人で処理することも合議で決定できることにする方向の規則の改正が、検討されるべきである。

3 審査結果の主文
 本年度処理の案件の審査結果の主文は、いずれも、「助言する」とした。
 この点についての前記条例又は規則を見ると、まず、条例で、結果を申出者及び県の機関に通知しなければならない(同条例29条)ことと、必要と認めるときは、知事等に勧告し又は意見を述べ、意見を公表することができる(同条例30条)ことが定められている。次に、規則で、前記のとおり、知事等に勧告し又は意見を述べる場合と意見を公表する場合は合議により行うと定められている(同規則3条)。特に合議によるとの定めであるから、この勧告等は審査のいわばかなり強い結論だと想定されるところ、そこまでではない審査の結論の表し方の定めがない。かといって、審査の結論は上記勧告等のみであると解することは、同規則が推進員の単独処理を原則と定めていることとそぐわない。そこで、勧告等ほどに強くない結論の表し方については、その内容が推進員の判断に委ねられているものとして、上記「助言する」とした。なお、埼玉県の制度では、勧告、意見表明、助言ができることとされている。
 今後の課題として、審査結果の主文の類型を、却下(審査を行わない事項についての申出についての応答の表現)及び棄却(申出の理由がそのとおりだとは認められなかった場合の応答の表現)も含めて整理して、規則の改正を検討する必要がある。

4 その他
 鳥取県で初めての制度であり、我々初代の推進員は、試行錯誤の中で議論を重ねながら職務に当たっている。その根拠は前記規則の「職務の執行の方針に関すること」は合議により決定するとの定め(同規則3条)である。このような合議の積み重ねがこの制度の運用をなめらかにし、県民に真に頼られる制度になる下地を作ると思うのであるが、考えておかなければならないのは、職務の執行の方針に関する合議結果をどういう形で文書(規範)にして、県民に公表し、あるいは後の推進員に伝えるかということである。議事録をめくってみるしか方法がないのでは役に立つとは思えず、推進員の職務遂行についての細則を、何らかの規範として、推進員の会議で定めることができるようにならないか、鳥取県の条例秩序の中で検討することが望まれる。

最後に本ページの担当課    男女協働未来創造本部 未来創造課
    住所  〒682-0816 倉吉市駄経寺町212-5 エースパック未来中心内
    電話  0858-23-39760857-26-7075    
    ファクシミリ  0858-23ー3989
    E-mail  mirai-souzou@pref.tottori.lg.jp

Copyright(C) 2006~ 鳥取県(Tottori Prefectural Government) All Rights Reserved. 法人番号 7000020310000