こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
新型コロナウイルスが世界的に流行する前、ASEAN加盟国の中でも比較的経済開発が遅れた新興国のカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの4か国は、それぞれの頭文字をとってCLMV諸国と呼ばれ、これから経済成長が見込まれるニューフロンティアとして位置付けられていました。中でも注目されていたのは、ASEAN加盟国内第3位の人口(約9700万人)をかかえ、順調に経済成長を続けるベトナムです。
コロナ禍の影響により、ベトナムも他国と同様に経済成長に陰りが見えましたが、2022年1月~3月のGDPは前年同期比5.03%増となり、今後もコロナ対策の規制緩和とともに経済も回復していくものと報じられています。今回はそのベトナム最大の民間企業であるビングループ(Vingroup)についてお伝えします。
創業わずか29年の大企業
ビングループの創業者であるファム・ニャット・ブオン氏が、1993年にウクライナで創業した即席麺の製造・販売を行うテクノコムがビングループのルーツとなっています。テクノコムをウクライナ国内の食品加工業でトップにまで成長させたブオン氏は、2000年にウクライナ国内の事業を売却しベトナムへ帰国した後、不動産開発事業(ビンコム)、観光開発事業(ビンパール)に次々と参入し、複合商業施設、高層オフィスビル、リゾートホテル、ゴルフ場などをオープンさせました。2012年にはビンコムとビンパールを統合してビングループを設立、自らは会長に就任して事業の多角化を本格的にスタートさせ、住宅開発、医療、教育、小売業、農業、製造業とあらゆる分野で事業を手掛けるようになりました。
ビングループのWEBサイト(中央右は同社開発の東南アジア最高層ビル「ランドマーク81」)
ベトナム初の自動車メーカーに
ベトナム最大のコングロマリットに成長したビングループは、2017年にビンファスト(VinFast)を設立し、ベトナム初の自動車メーカーとして自動車業界に参入を果たしました。その背景には、国を挙げて自動車産業に注力し、さらなる経済発展を目指すベトナム政府と民間企業の姿勢が見て取れます。ベトナムでは個人の移動手段として用いられているのは、圧倒的にバイクが多く、街中では以前に比べて車を見かけるようになったものの、まだまだバイク社会が根強く残っています。ベトナムのような新興国においては、一人当たりのGDPが3,000ドルを超えると、耐久消費財の市場が急速に拡大すると言われており、2020年に一人当たりのGDPが2,700ドルを超えたベトナムは、数年後には3,000ドルを超えて、車社会を迎えることが期待されています。その期待の中、国を挙げて開発されたのがビンファストなのです。
街中を走るバイク
ビンファストが工場を設立した2017年からわずか1年後の2018年11月、 初の販売車種であるガソリン車Luxを発売しました。会社設立当初、ビンファストは自前では自動車製造の技術を持っていませんでしたが、世界中の自動車関連企業と提携することでノウハウや知的財産を獲得、またGMベトナム工場を買収することで生産能力を、GMベトナムのディーラー網を使うことで販売力をつけ、わずか1年で国内販売を展開するまでになりました。今後、ビンファストはガソリン車の生産を止め、EV車のみの生産に切り替える方針を示しており、2021年にはアメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、オランダの欧米5か国に支社を設立、新型の電動SUVの受注を始めました。今年3月にはアメリカのノースカロライナ州とEV自動車専用の工場立ち上げについて同意し、2024年7月の竣工を目指すと発表しました。このように国内販売だけでなく、EV先進国である欧米の市場を狙ってグローバル展開を加速させています。今後もビングループの動きに注目していきたいと思います。
ビンファストの新型電動SUV(VinFastのWebより)
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