~日系企業との取引に関心のあるタイ企業インタビュー~
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
製造業の東南アジア生産拠点として中心的な役割を果たしているタイには、2,300社を超える日系の製造業企業が進出しています。タイでは、GDPに占める製造業の割合は3割を超えており、基幹産業の一つとなっています。当然のことながら、タイ資本の製造業企業も多く存在し、中には海外の展示会に出展するなど外国企業との取引を希望する意欲的な企業もあります。
今回は、東京で開催された「機械要素技術展(M-Tech)」への出展経験がある「タイモンコンファスナー株式会社(THAI MONGKOL FASTENERS CO., LTD.)」のインタビューをお届けします。
機械要素技術展に出展したタイモンコンファスナー株式会社のピーラ氏、ナッタポン氏
御社の業種と企業規模(従業員数など)を教えてください。
「タイモンコンファスナー株式会社」は、ネジやスクリューを製造している会社で、1978年に設立されました。当時、タイ国内でネジやスクリューを製造している会社は少なく、大半の企業は輸入頼り、高い輸入関税を支払わなくてはなりませんでした。そんな中で、ネジやスクリューを製造して市場の需要をサポートするため、弊社を設立しました。その後、国内及び国外でネジやスクリューを安価で製造する競合相手が増え、競争に勝つための他の手段が必要になりました。20年前にはOEMとオーダーメードの製品の製造を引き受けるようになり、更に10年前からは、自動車業界用の部品を製造するようになりました。現在、弊社製品のうち70~80%は自動車業界のクライアント向けであり、残りの20~30%は建設、電化製品、農業といった産業分野の部品を製造しています。
設立当初は10人しかいなかった従業員も、現在は約120人ほどになりました。サムットプラカーンとチョンブリーに工場があり、近年は、国外のパートナーと協働して複雑な機械加工や熱処理が含まれる事業もサポートしています。その結果、多種多様な製品製造に対応できるようになりました。
御社の事業内容及び主要製品について教えてください。
弊社は自動者業界で2次、3次サプライヤーに属し、エンドユーザーはタイ国内に製造拠点をもつ、日本やアメリカの自動車メーカーです。クライアントの大半は主に弊社が製造したネジを使用しています。仕事によってはネジのプレス加工も行いますが、旋盤加工の工場を持つクライアントと一緒に仕事を行うことにより、より複雑な工程を含む仕事を請負えるのと同時に、クライアント側も費用、原材料、時間を節約することができます。
弊社の主要製品はクラッチ、緩衝器、サイドミラー、自動車用日よけの軸等、自動車部品に使用されるネジやスクリューです。
「タイモンコンファスナー株式会社」の主要製品
御社の強みを教えてください。
弊社の強みは、得意先のコスト削減につながるよう、試行錯誤し、新しい製造方法を柔軟に取り入れることが可能な点です。様々なクライアントに対応できる商品があり、クライアントの要望にあわせて製造方法の調整も可能です。コストを最低限に抑える製造工程の提案もできます。またモンクット王工科大学北バンコク校※の教授にアドバイスをもらい、クライアントの要望に合致した製造方法を見出すことができます。
現在、同校の教授と一緒に新しい機械の研究開発を行っており、当機械を弊社工場で試用しています。この機械が100%の能率を発揮できるようになれば、この先、販売できるようになるかもしれません。
事業を運営するにあたり、大事にしている点をお聞かせください。
顧客の要望に最大限かつ的確に応えることです。
技術者への研修はどのように行っていますか。(技術面でのアドバイス、勉強会や講習会)
安全などの規則について従業員に社内講習を行っています。業務については、先輩が後輩を教える方法をとっています。現在、ボルトに関する知識を教えるコースや、欠陥製品を市場に出さないために、従業員に製品評価と分類方法を教えるコースを準備しています。時には外部から講師を招待して従業員のために講演を行なっています。
事業運営における障害はありますか。
初期の頃は、製造におけるノウハウが挑戦となりました。弊社は金型の設計はできないので、日系企業から機械2台と金型を購入しましたが、従業員が機械の使い方がわからない、何度も金型の修正をしなくてはいけないといった問題が生じ、生産の遅れが発生していまいました。しかし、経験を積んだ後は、タイ国内の業界の中でも比較的早い段階で、ステンレスのネジやスクリューを製造できる会社となりました。その後、競合相手が多くなりましたが、他種製品の製造を増加させて対応しています。
1997年にはアジア通貨危機の影響により、原材料価格の変動という問題に直面しました。その当時は、一般的な産業分野から自動車業界へとクライアントが変わりつつあり、価格管理が難しくなりました。2011年には大洪水が発生し、予測できない需要に対処しなくてはなりませんでした。そして現在は、新型コロナウイルス感染症の蔓延という問題に直面しています。従業員を感染リスクから守らなくてはなりません。また自動車工場のラインが停止となりオーダーも減少しています。自動車産業が回復すれば、オーダーも増加すると思いますが、それまでは需要の増減に向き合わなくてはなりません。
海外支店はありますか。今後、海外展開の予定はありますか。
弊社は2つの工場の他に、一般的なボルトやネジといったパーツを販売するため、3つの小売業社を設立し、国内の3箇所で店舗を経営しています。
「Soon Thai Jun Import Ltd.,Part.」、次に、より多種な商品を取り扱うため「L.S.T. SUPPLY CO. LTD.」を設立し、最後に「LEE SOON THAI (THAILAND) CO., LTD.」を設立しました。
海外展開の予定は今のところありません。弊社は日本やヨーロッパへ商品の輸出を行っていますが、生産量の1~2%を占める程度です。この数字は、日系企業とのビジネスにおいて、弊社製品を輸出したり、タイ国内の日系企業クライアントから親会社への製品輸出を依頼されて発生したものです。海外のクライアントの大半は自動車業界や建設業界になります。
日系企業の製品やテクノロジーに関心はありますか。もしあれば、どの種類にとりわけ関心がありますか。
製品製造に役立つ機械に関心があります。現在、2、3の日本の機械製造メーカーと商談中ですが、弊社の仕事の性質と合致する機械が見つかっていません。加えて、高額な日本の機械に対して、クライアントからのオーダー量が十分ではないため、購入を決断するまでに至っていません。業務のボリュームと合致すれば、日本から追加で機械を購入するかもしれません。以前にローリングマシーンを日本から購入しましたが、業務量も多くないので、機械購入の計画はまだありません。弊社が使用している機械のうち日本の機械は約10~15%で、大部分は台湾の機械を使用しています。
タイの産業、とりわけ製造業の現状についてご意見をお聞かせください。
タイの製造業界全体をみてみると、収入は減少し、状況は良くないと思います。その他、観光業界は新型コロナの影響により最悪な状況にあります。ホテルや飲食店は通常営業ができないため、コロナ禍の現状にあわせて変化し、生き残るために他の手段を考えなくてはなりません。現在、物流が停滞しつつあり、通常より配送に時間がかかるため、集荷場所に長時間保管された小包や食品がダメージを受けてしまうという問題が発生しています。
しかしながら、パッケージ業界や自動車産業の見通しは明るいと思います。なぜなら、昨年度、タイは新型コロナの抑え込みに成功し、海外からのオーダーが増加しているからです。農業界は今後も安定しているのではないでしょうか。タイ農産物の需要は引き続きあると思います。
新型コロナウイルス感染症のビジネスへの影響と現在実施している対処方法、また収束後の製造業の方向性やビジネスチャンスについてご意見をお聞かせください。
新型コロナウイルスの感染を防ぐための知識を従業員に提供しています。また、ワクチン接種のためのキャンペーンを行い、従業員がワクチン接種できる会場を探すのを手伝っています。
当初、ワクチン接種を希望する従業員は40%しかいませんでしたが、ワクチン接種の重要性を従業員に説明した結果、現在では工場で働く従業員の90%がワクチン接種を完了しました。その他に、マスクやアルコールジェルを従業員に配布しています。また、従業員同士の距離を確保する、従業員を2つのグループにわけるといった予防策を講じています。
これまでに従業員のコロナウィルスの検査を2回行い、従業員が感染しているケースもありましたが、工場内でのクラスターはまだ発生していません。
従業員が感染した場合、食事の配達や病院を探しをサポートするといった社内方針を設けています。
日本企業とタイ企業が参加するビジネスマッチング、交流会、展示会などに関心がありますか。
ビジネスマッチングに関心があります。一年に一度、東京と大阪で開催されるM-Techというビジネス展示会があり、毎年、東京で参加しています。またタイ国内でもビジネスイベントに参加しています。今年は「Subcon Thailand 2021」のヴァーチャル展示会に参加予定です。
もし、目指している将来像が同じ方向の企業と商談ができれば、一緒にビジネスを行える可能性は非常に高いと思います。とりわけ、弊社はまだトレーディング部門が無いので、まずはこの分野で交渉したいですね。企業の強みと弱み、そして企業価値を共有できればと思います。タイミングや交渉内容にもよりますが、弊社は交渉の扉を大きく開いています。
将来的に製品の海外輸出の割合を増加させる方針はありますか。
現在、展示会などでブースの設置に重点を置いています。しかしながら、現状は業務量がかなりあるので、まずは製品の品質やコストの低減など社内管理に注力し、その後、海外の市場開拓を目指したいと思います。いずれにしろ、ビジネスが将来にわたって成長し続けられるよう、海外展開を進めることは確実だと思います。
最後に、鳥取県の製造事業者に向けてPRをお願い致します。
弊社は、自動車業界、家具、 農業機器、機械修理、建設業で使用されている、多種多様な工業用ファスナーの製造に熟練しています。弊社製品は「ISO9001」と「TS16949」の規格で生産されているのに加え、40年以上の事業経験があるので、皆様には弊社の製品とサービスの品質を信頼いただけると思います。クライアントの様々なリクエストに応えるため、現在に至るまで、常に学び続け、生産技術の発展、そして革新的な製品の開発を続けています。
「タイモンコンファスナー株式会社」の外観
企業概要
■企業名:THAI MONGKOL FASTENERS CO., LTD.
■所在地:69 Moo 2 Soi Rattanatanee, Bangna-Trad Road, Rachatheva, Bangplee, Samutprakarn, 10540, Thailand
■Tel: (+66)2-316-6336-7 , (+66)2-316-6339-40
■Fax: (+66)2-316-9690
■Email: thaimongkol@gmail.com
■URL: https://www.thaimongkol.com
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鳥取県東南アジアビューローの運営法人(鳥取県が業務委託)
アジア・アライアンス・パートナー・ジャパン株式会社
タイを中心に、ベトナム・インドネシア・インド・メキシコにて主に日系中堅・中小企業様の海外進出や進出後の会計税務法務を中心とした運営支援業務を行っております。
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