1 債権ごとの対応状況
(1)債権管理の流れ
財源確保推進課が示しているマニュアルに基づいて未収金発生後の債権管理の流れを整理すると、大きく次のAからDの段階に分けられるが、各債権管理機関においてはその流れに沿った取組が必要である。
段階
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対応
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A
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督促状、催告書
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・督促状、催告書など主に文書による対応
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B
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状況把握
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・電話催告や面談、臨戸徴収等の納付交渉
・所在調査、財産調査
・保証人への請求
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C
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債権分類
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・状況把握を踏まえた債務者の区分け
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D
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法令及び分類に則した徴収対応
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・法令及び債権分類に則した徴収対応
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(2)債権ごとの対応状況
今回監査対象とした債権ごとの対応状況は以下のとおりである。
(A~Bは平成25年度、C~Dは監査時点での対応状況)
○:概ね適正に対応、△:対応が不十分又は検討の余地がある、×:対応ができていない
債権名
機関名
未収金額(平成25年度決算)
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マニュアルに基づく要領改正年月日
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対応状況
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A
督促状、催告書
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B
状況
把握
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C
債権
分類
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D
法令及び分類に則した徴収対応
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a 児童措置費負担金
福祉保健部福祉相談センター
7,470,639円
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H26.3.24
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○
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○
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○
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○
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b 放置違反金 ※(注)
警察本部交通指導課
1,900,000円
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-
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○
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○
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×
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×
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c 児童扶養手当返納金 ※
福祉保健部子育て王国推進局
青少年・家庭課
4,227,140円
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H26.3.26
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○
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△
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△
|
△
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d 生活保護費返還金・徴収金
中部総合事務所福祉保健局
福祉支援課
6,459,156円
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H26.3.28
(新設)
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○
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○
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○
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△
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e 鳥取県専修学校等奨学資金返還金 ※
総務部人権局人権・同和対策課
21,546,406円
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H26.3.28
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○
|
○
|
○
|
○
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f 看護職員等修学資金貸付金返還金
福祉保健部健康医療局医療政策課
10,373,062円
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H26.7.4
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○
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△
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×
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×
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g 中小企業高度化資金貸付金、
中小企業設備近代化資金貸付金 ※
商工労働部経済産業総室
566,008,355円
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H26.6.11
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○
|
○
|
○
|
○
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h 母子福祉資金及び寡婦福祉資金貸付償還金 ※
中部総合事務所福祉保健局
福祉支援課
6,040,812円
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H26.3.26
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○
|
○
|
○
|
○
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i 進学奨励資金貸付金返還金、
育英奨学資金貸付金返還金
教育委員会事務局人権教育課
325,711,476円
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H26.4.11
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○
|
○
|
×
|
×
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k 心身障害者扶養共済制度掛金等加入負担金 ※
福祉保健部障がい福祉課
1,076,420円
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H25.7.25
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○
|
○
|
×
|
×
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l 県営住宅明渡等請求事件損害賠償金
生活環境部くらしの安心局
住まいまちづくり課
157,539,419円
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H26.11.19
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○
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△
|
×
|
×
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m 県営住宅家屋貸付料、同駐車場使用料、同水道料金等使用料 ※
西部総合事務所生活環境局
建築住宅課
29,117,272円
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H26.11.19
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○
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△
|
×
|
×
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n 医業未収金(患者自己負担分)
病院局中央病院
185,539,908円
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H26.6.13
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○
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△
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○
|
○
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(注)・※印は本監査を書面監査で実施。
・放置違反金については、行政制裁金という債権の性質上独自の取扱いとなることから財源確保推進課による要領改正等の指導の対象外となっている。
2 債権管理の各段階における対応状況
(1) 督促状、催告書について(段階A)
監査対象の全ての機関で督促状や催告書の発行等の法令等に定められた事務手続については、概ね適正に行われていた。
(2) 債務者の状況把握について(段階B)
債務者の状況把握や臨戸徴収の実施などについて、5機関で次のとおり取組が不十分な事例が見受けられた。
ア 債務者の状況確認について
3機関では、時効期間が経過した債権が相当数あるが、時効の援用により債権が消滅する可能性が高いことから、回収業務の優先順位が低くなり、状況確認等がほとんど行われていなかった。
〔該当債権〕
l 県営住宅明渡等請求事件損害賠償金(住まいまちづくり課)
m 県営住宅家屋貸付料、同駐車場使用料、同水道料金等使用料(西部総合事務所生活環境局建築住宅課)
n 医業未収金(患者自己負担分)(病院局中央病院)
イ 臨戸徴収の実施について
債務者の状況把握や納付交渉を行う上で臨戸徴収は重要な取組であるが、4機関については、平成25年度中に全く実施していない、又は出張時に1回実施したのみであるなど、取組が不十分であった。
〔該当債権〕
c 児童扶養手当返納金(青少年・家庭課)
f 看護職員等修学資金貸付金返還金(医療政策課)
l 県営住宅明渡等請求事件損害賠償金(住まいまちづくり課)
n 医業未収金(中央病院)
【監査意見】
未収金の回収には、債務者の現況を確認した上で、その状況に応じて早期に対応することが重要である。
消滅時効期間が経過した債権について、費用対効果の面から、対応する優先順位が低くなってしまうことは理解できるものの、こうした債権が相当数放置されることは適切とは言えず、計画的な状況把握や整理が求められる。
臨戸徴収については、医業未収金において平成26年度から臨戸徴収を実施し、直接面談することで債務者の状況確認が行われ収納実績が出ている事例もあり、未収金回収につながる債務者の状況確認の手法として効果的であると思われる。
ついては、債務者の状況確認や臨戸徴収などの取組が不十分な債権管理機関においては、取組を計画的に進められたい。
(3) 債権分類について(段階C)
監査実施時点で、債権分類による債権の整理を行っていないなど、取組が不十分と見受けられる事例があった。
ア 未収債権の分類について
監査対象とした債権のうち半数近くで債権分類が未実施であった。
区分
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債権数(機関数)
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債権分類を実施
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7(6)
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債権分類を未実施
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6(6)
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債権分類が未実施の債権について、未実施の理由は次のとおり。
・債務者の状況確認が不十分であったため
〔該当債権〕
l 県営住宅明渡等請求事件損害賠償金(住まいまちづくり課)
m 県営住宅家屋貸付料、同駐車場使用料、同水道料金等使用料
(西部総合事務所生活環境局建築住宅課)
・債務者の状況確認は行っているが、債権分類については作業中であるため
〔該当債権〕
f 看護職員等修学資金貸付金返還金(医療政策課)
(平成26年12月末で分類作業済み)
k 心身障害者扶養共済制度掛金等加入者負担金(障がい福祉課)
・債務者の状況は概ね把握しているが、個別に対応しており、分類不要としているため
〔該当債権〕
i 進学奨励資金貸付金返還金、育英奨学資金貸付金返還金
(教育委員会事務局人権教育課)
・債権の性質が行政制裁金であり、債務者の状況によって取扱いに差を設けるような分類はできないため
〔該当債権〕
b 放置違反金(警察本部交通指導課)
イ 債権の分類基準について
債権分類については実施しているものの、債務者の状況や回収可能性を踏まえず、滞納期間のみで一律に区分した分類基準になっていた。
〔該当債権〕
c 児童扶養手当返納金(青少年・家庭課)
【監査意見】
債務者の未納理由や資産状況等を適時に把握して債権を整理分類し、その状況に則した対応をとることは、限られた人員で効率的な回収を図るとともに、組織で情報を共有し、県民に対する説明責任を果たすためにも必要な取組である。
ついては、債権分類を実施していない機関においては、債務者の状況等を適切に把握した上で、債権を分類し、それぞれの区分に則した効率的な債権回収に取り組まれたい。
(4) 法令及び債権分類に則した徴収対応について(段階D)
監査実施時点で債権分類を実施している6機関においては、分類に則した対応は概ね適切に行われていた。
なお、延滞金についての手続が行われていないなど、3機関について事務手続が不適正な事例があった。
ア 延滞金に関する手続について
児童扶養手当返納金において、地方自治法及び鳥取県延滞金徴収条例の規定により、納期限までに納付がなく督促をした場合、この納期限後の納入に対し延滞金を徴収することとなっているが、平成23年度以降延滞金に係る手続を行っていなかった。
〔該当債権〕
c 児童扶養手当返納金(青少年・家庭課)
イ 債務の免除に関する取扱いについて
看護職員等修学資金貸付金返還金において、借受人が死亡した場合、貸付金の返還に係る債務の免除に関する条例を適用し、債務を免除する取扱いとしているが、2人について免除の処理を行っていなかった。
〔該当債権〕
f 看護職員等修学資金貸付金返還金(医療政策課)
ウ 不納欠損処分について
生活保護費返還金・徴収金において、平成25年度末までに消滅時効が成立していた5人について、鳥取県債権管理事務取扱規則に定める不納欠損処分手続を行っていなかった。
〔該当債権〕
d 生活保護費返還金・徴収金(中部総合事務所福祉保健局福祉支援課)
3 財源確保推進課の取組状況
(1) 債権管理の全庁的な指導について
所管課の債権回収計画の進捗を年4回確認し、未収残高や現年の未収金が増加した理由を確認している。
また、要領の改正や新設について、所管課(19債権)に対し、要領改正等の重要性の説明と盛り込むべき項目の提示を行い、2機関(2債権)について個別具体的な方針の協議を実施している。
(2) 債権回収に係る相談業務体制について
財源確保推進課で年間50件程度の法的な相談業務に対応しているほか、各債権に共通する内容については庁内LAN上の税外未収金情報交換データベースに掲載し共有を図るなどの取組を行っているが、裁判等の法的手続について不安を抱えている機関や各機関の実態に即したより実効的な職員研修の実施を求める機関も見受けられた。
【監査意見】
財源確保推進課においては、債権管理の調整支援機関として、各機関の取組状況に応じた指導・助言などを引き続き行うとともに、各機関からのより専門的な研修や指導等の要望にも積極的に対応されたい。
平成25年1月に全庁的な債権回収の取組方法等をまとめたマニュアルの作成、同年10月には「鳥取県債権回収計画等に関する条例」に基づく議会への報告と、債権回収に向けた全庁的な取組が進められてきたところである。
こうした状況を受け、今回監査対象とした債権については、債権の特色を踏まえた具体的な要領の改正や新設が行われ、その要領に沿って債権分類を実施することにより、回収努力のメリハリがつくようになったという機関もみられるなど、債権回収の取組には一定の評価ができるものと考える。
しかし、債務者の状況確認や債権分類が行われていないなど、今後改善を要すると見受けられる機関も存在していた。
県の未収金には、生活保護費返還金・徴収金や県営住宅家屋貸付料のように、そもそも資力が乏しい者を対象としている債権であるが故に、未収金の発生は避けられず、その徴収が困難に陥ることも理解できるが、県の財源確保、負担の公平性の観点から、個別の事情を勘案した上でどのような徴収努力がなされているのか、県民にその説明責任を果たす必要はあるものと考える。
ついては、債権管理機関においては、債権回収の取組について、債務者の状況把握や債権分類などの取組を進め、より一層説明責任を果たせるよう努められたい。