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第1章 監査の概要

第1 監査の種類

 地方自治法第252条の37第1項の規定に基づく包括外部監査
 

第2 選定した特定の事件

 観光関連事業に関する財務事務の執行について
 

第3 監査の対象とした理由

 観光は、県内経済の活性化や雇用機会の拡大などに寄与するなど、多方面において与える影響は大きいと考えられ、これに関連する産業が鳥取県の重要な産業となっている。それゆえに鳥取県でも観光振興には注力しており、観光関連事業の担当部局である文化観光局における平成24年度の決算額は約34億円と多額である。
観光関連事業では、補助金・負担金並びに委託料の支出により、イベントや観光PRなどのソフト事業を実施するケースも多く、また、平成24年度を「まんが王国とっとり」建国イヤーとし、まんがに関連した事業に対して約10億円を投入して各種イベントなどを行っている。そのような事業に関する支出については、支出内容が今後の観光振興に資するものであることが重要であり、また、それらの事業には県民が参加する機会も多いことなどからも、県民の関心が高いものであると考えられる。
そこで、観光関連事業について、地方自治法第2条第14項及び第15項の規定による経済性・効率性・有効性に反する財務事務の執行がなされていないか監査する必要があると判断した。
 

第4 監査を実施した期間

 平成25年7月1日から同年12月31日まで
 

第5 監査対象部局

 観光関連事業に関する監査のため、文化観光局のうち、特に観光関連事業と関係性が深いと認められる観光政策課及びまんが王国官房並びに観光関連の外郭団体である公益社団法人鳥取県観光連盟(以下「観光連盟」という。)を対象とした。

第6 監査の方法

 この監査の実施に当たっては、観光政策課・まんが王国官房並びに観光連盟の決算額のうち大部分を占めている、補助金・負担金及び委託料を主な監査対象としたうえで、それらの事業のうち、金額の重要性の観点から主に決算額が100万円以上の事業を抽出し、事務の執行について関係法令に従って適正に行われているか等の財務事務の監査の他に、経済性・効率性・有効性の観点を加味し、関係書類の検討などによる監査を実施した。
 なお、監査対象とした事業のうち、指摘事項及び意見を付さなかったものについては、本監査報告書においては割愛している。

第7 監査の視点

1 地方自治法第252条の37によれば、包括外部監査人は、包括外部監査対象団体の財務に関する事務の執行及び包括外部監査対象団体の経営に係る事業の管理のうち、同法第2条第14項及び第15項の規定の趣旨を達成するため必要と認める特定の事件について監査するものとされる。
 つまり、我々が行う監査は、住民福祉の増進を目的として、経済性、効率性、有効性を追求し、地方公共団体がその事業等のあり方を新たな視点から見直し、地方行財政改革を促す監査であることを期待され、行うものである。

2 私たち3人は、税理士である。税理士は、税に関する唯一の国家資格であり、仕事柄日常において納税者たる県民の声を受け止める立場にある。その使命は申告納税制度の理念に沿って適正な納税を進めることにあるが、その理念を推進させるには県民の行政への信頼が不可欠であり、税の無駄使いは県民の納税意欲を減退させることになると考える。納税意欲と行財政改革は表裏一体であり、そういう意味で県民は、税の使われ方に大変注目している。従って我々は、このたび包括外部監査を行うに当たって、その期待を背負って納税者たる県民の目線で監査することを心がけた。

3 具体的には次の着眼点で監査した。
 (1) 補助対象は適切か、公益上の必要はあるか。
 (2) 補助金等交付要綱は適切な内容で制定されているか。
 (3) 補助金及び負担金の算定は適切か。
 (4) 補助事業の実績報告は適切か。
 (5) 補助交付団体への指導、監督は適切か。
 (6) 委託契約の契約内容は適正か。
 (7) 委託金額の精査は適正に行われているか。
 (8) 委託先からの実績報告並びに県における完了検査手続は適正か。
 (9) 観光連盟における会計処理は適正になされているか。

第8 監査手続

 実際に文化観光局等に赴き関係書類の説明を受け、ヒアリング及び監査を行った。監査後、文化観光局等と質疑のやりとりを行い、報告書を作成した。

第9 包括外部監査の実施者

   外部監査人      税理士  高田 充征
   外部監査人補助者   税理士  杉浦 為佐夫
   外部監査人補助者   税理士 公認会計士 池原浩一

第10 利害関係

 包括外部監査の対象とした事件につき、外部監査人及び補助者は地方自治法第252条の29
に規定する利害関係はない。

第2章 監査の結果

 このたびの包括外部監査の指摘及び意見の件数は、次のとおりである。

観光政策課

項目名

指摘

意見

温泉地魅力向上事業

古事記1300年記念るるぶ情報版古代ロマンの旅掲載事業

山陰海岸世界ジオパークネットワーク推進事業

平成24年度旅行者誘客のためのパブリシティ業務委託

県有地の有効活用

まんが王国官房

項目名

指摘

意見

鳥取県「まんが王国とっとり」国家戦略プロジェクト推進補助金

平成24年度米子映画事変開催事業補助金

「まんが王国とっとり建国記念 国際まんが博」県主催イベント運営業務

「国際まんが博」スタンプラリー開催業務委託

国際まんが博関連施設フリーパス券「ゴールドビザ」作成業務委託

「まんが王国とっとり」小学館グループメディア広告制作・掲載業務委託

まんが王国とっとりPRパネル等制作設営委託業務

国際まんが博ボランティアセンターに係る業務委託

第1回まんが王国とっとり国際マンガコンテスト作品集発刊業務

まんが王国官房全体についての指摘事項及び意見

17

15

鳥取県観光連盟

項目名

指摘

意見

「国際まんが博」観光客誘致促進事業(県受託事業)

とっとり「受注型企画旅行」旅行商品造成支援事業(県補助事業)

2012年山陰デスティネーションキャンペーン推進事業

会計処理関係

観光連盟全体についての意見

13


合計

35

23


 包括外部監査報告書に記述した指摘事項及び意見のうち、特に記述すべきと思われるものについて、以下に要約して記載する。

第1 観光政策課

1 平成24年度旅行者誘客のためのパブリシティ業務委託

(1) 事業概要

区分

委託料

委託先名

株式会社山陰放送

契約内容

(中四国テレビ番組でのパブリシティ業務

(関西テレビ番組での露出  ほか

委託期間

平成24年7月13日(契約締結日)から平成25年3月31日まで

委託金額

10,500,000

(2) 監査の結果

ア 委託業務の実態と関係書類との不整合について【指摘事項】

 当該委託業務の契約期間の終期は平成25年3月31日であるが、実際には委託業務の全部が完了したのは、委託内容の一部であるCS放送のCM放映が全て完了した平成25年4月30日であったことが当該CMに係る放送通知書より判明した。しかし委託先からは、実施期間が「平成24年7月13日(金)~平成25年3月31日(日)」とされた実施報告書が平成25年4月30日に提出されており、それを受けて、観光政策課において業務完了年月日が平成25年3月31日とした委託業務完了検査調書を作成している。つまり、業務が全て完了したのは翌年度である平成25年4月30日であるにもかかわらず、書類上においては平成25年3月31日に全業務が完了したこととなっている状態であった。これは業務の実態と、関係書類との間に齟齬(そご)が生じている状況であり、このように実態と異なる書類作成を行うことは問題である。今後は、このような事態が生じないように、課内でのチェック体制の強化などの対策を講じるべきである。

2 県有地の有効活用

(1) 監査の結果
 平成5年頃に、砂丘観光の中核的施設として「砂丘博物館」建設の構想が浮上し、その予定地として平成11年3月に鳥取市浜坂に約37,500平方メートルの用地を合計金額899,621,136円で取得した。しかし、後に、大規模プロジェクトなどの事業見直しの実施により平成13年に事業中止となり、以後当該用地は行政財産として管理されている状態である。現在は鳥取砂丘こどもの国の臨時駐車場として、また、砂防林の機能を保全するためという名目で土地を保有し続けている。
 当該用地は、鳥取砂丘こどもの国の繁忙期であるゴールデンウィークなどの限定的な期間のみに利用されているに止まっており、また、臨時駐車場として利用されるのは当該用地の約33%程度の部分のみで、有効活用されているとは言い難い状況である。
このような広大で、かつ約9億円という多額の公金を投入した公有財産が実質的に遊休状態となっている現状を重く受け止め、現時点での問題を先送りすることなく、有効活用へ向けた検討を早急に行うべきである。

第2 まんが王国官房

1 鳥取県「まんが王国とっとり」国家戦略プロジェクト推進補助金

(1) 監査の結果

 ア まんが・アニメ活用トライアル事業

 (ア) 補助金実績報告書の提出期限の遵守について【指摘事項】

 当補助事業についての、補助金実績報告書の報告期限は「鳥取県『まんが王国とっとり』国家戦略プロジェクト推進補助金交付要綱」の第11条第1項1号に、「補助事業等の完了のから30日を経過する日」と定められている。しかし、補助金実績報告書の提出状況を確認したところ、期限を遅延して提出しているものが散見された。なかには、補助対象事業の完了が平成24年8月であるにもかかわらず、補助金実績報告書の提出日が平成25年5月27日であったものも見受けられた。事業完了者に対する報告書の提出状況のチェックや、未提出者への督促などの作業が十分に行われていなかったことによるものであるが、速やかに報告書の提出を受けて事業内容の精査を行う必要があることからも、今後はこのようなことがないよう規定どおりに報告書の提出を受けるようなチェック体制の構築をすべきである。
  
イ 「まんが王国とっとり」協働推進事業

(ア) 補助対象経費から控除すべき収入額の誤り【指摘事項】

【漫画『大山の奇談』】
 a 事業概要

区分

補助金

事業概要

・『大山の奇談』を漫画にし、大山周辺の小学校(13校)の5・6年生に寄贈した。

・『大山の奇談』の引き渡し式をシャトーおかだにて実施した。

交付先

(個人)

補助金額

446,000円

 事業報告書を閲覧したところ、漫画『大山の奇談』を2,000冊発刊して、1,000冊は小学校に寄贈し、残り1,000冊は販売したと記載されていた。事業報告書に添付されている事業収支決算書では、残り1,000冊の販売収入(約80万円)の一部については、収入の部の自己財源に含まれているものと考えられ、補助対象経費から控除されていない。支出の部の印刷代には、2,000冊分の印刷費が計上されているため、漫画の販売収入については、補助対象経費から控除し、補助金交付額を算定する必要がある。漫画の販売収入を80万円と仮定すると、133,827円が補助金の算定基準額となり、補助金交付決定額は、その2分の1の66,913円となるため、結果として、補助金が379,087円過大に交付されている。

補助対象経費

a

控除すべき

収入額

b

適正な補助金交付額

c=(a-b)×1/2

実際の補助金交付額

d

過大交付額

d-c

933,827

800,000

66,913

446,000

379,087

【ゲゲゲの鬼太郎ゲタ飛ばし大会~まんが王国とっとり とっとりゲタ王決定戦~】

 a 事業概要

区分

補助金

事業概要

ゲゲゲの鬼太郎ゲタ飛ばし大会~まんが王国とっとり とっとりゲタ王決定戦~と題し、「まんが王国とっとり」建国元年特別ゲタ飛ばし大会を開催した。

交付先

社団法人境港青年会議所

補助金額

677,000

 収入の部に計上されている登録料収入は、大会参加者の大会参加料であり、補助対象経費から控除する収入項目である。そのため、補助対象経費の決算額(1,502,700円)から登録料収入の決算額(448,700円)を控除した1,054,000円が補助金の算定基準額となり、補助金交付決定額は、算定基準額の2分の1である527,000円とする必要があった。結果として、補助金が150,000円過大に交付されている。

補助対象経費

a

控除すべき

収入額

b

適正な補助金交付額

c=(a-b)×1/2

実際の補助金交付額

d

過大交付額

d-c

1,502,700

448,700

527,000

677,000

150,000


「まんが王国とっとり」協働推進事業における補助金過大交付額の一覧

事業名

補助金実績額

(a)

適正な補助金額

(b)

過大交付額

(a)-(b)

漫画『大山の奇談』

446,000

66,913

379,087

ゲゲゲの鬼太郎ゲタ飛ばし大会~まんが王国とっとり とっとりゲタ王決定戦~

677,000

527,000

150,000

合計

1,123,000

593,913

529,087

ウ 「まんが王国とっとり」戦略プロジェクト事業
 「まんが王国とっとり」戦略プロジェクト事業に関しては、以下のような補助金の交付事例が見受けられた。
【エヴァンゲリオン・レーシングの活用による『まんが王国とっとり』及び地域、企業、団体等の活性化 a 事業概要

区分

補助金

事業概要

(エヴァンゲリオン・レーシングによるステージイベント

  エヴァンゲリオン・レーシングによるレーシングマシーン(2輪車)の展示やステージイベント、レースクイーンの撮影会など。

(レーシングチームとして参加した、もてぎ、鈴鹿、筑波、富士の各会場でまんが博ののぼり設置、チラシの配布を行った。

交付先

エヴァンゲリオン・レーシング

補助金額

5,000,000

b 監査の結果
(ア) 収支決算書の内容確認の明確化について【指摘事項】

 収支決算書の支出の部に計上されている報償費・旅費のうち2,000,000円と広告宣伝費900,000円の合計2,900,000円は、トリックスターという団体に対して支払われている。このトリックスターの鳥取地区の担当と、補助金申請者であるエヴァンゲリオン・レーシングの責任者は同一人物であり、報償費・旅費や広告宣伝費が補助金申請者の所属する団体に支払われていることになる。
 収支決算書の添付資料には、項目ごとに支払先とその金額のみが記載されているだけであるため、詳細な支出内容については不明である。支出金額が大きいものや支払先が補助金申請者の関係先である場合には、支出内容を明らかにし、支出金額が適正か否か判断できるようにするため、請求書などの支出関連証憑書類を添付させ、決算内容を明確にする必要がある。

2 平成24年度米子映画事変開催事業補助金

(1) 事業概要

区分

補助金

事業概要

映画を軸に、音楽、トーク、展示など、さまざまなポップカルチャーを商店街に集め、11日間で延べ5万人を動員。地元のボランティア参加も150名を超え、“地元発信”でイベントを開催した。

交付先

米子映画事変実行委員会

補助金額

35,000,000

(2) 監査の結果

ア 補助金実績報告書の提出期限の遵守について【指摘事項】

 当該補助事業に係る補助金実績報告書は、平成25年5月8日付で提出されているが、補助金実績報告書の提出期限は、補助金交付決定通知書において、補助事業の完了の日から30日を経過する日までに実績報告を行わなければならないとされていることから、遅くとも4月30日までに補助金実績報告書を提出しなければならない。
 実績報告が遅れた理由としては、事業の規模が大きく、収支決算書等の作成に時間を要したため、補助金実績報告書の提出が遅れたのではないかとのことであるが、事業の開催は平成24年11月であることから、期限内に実績報告を行うことは、十分に可能であったと考えられる。今後は、補助対象者に補助金実績報告書の提出期限を遵守させる必要がある。

3 「まんが王国とっとり建国記念 国際まんが博」県主催イベント運営業務

(1) 事業概要

区分

委託料

委託先名

A共同企業体(代表者 株式会社トレードマーク鳥取、構成員 株式会社電通西日本岡山支社ほか5社)

事業内容

まんが王国とっとり建国記念として、「国際まんが博」と称して鳥取県全域において8月4日から11月25日の間で「とっとりまんがドリームワールド」などの各種イベント等を開催した。

委託金額

495,247,040

(2) 監査の結果

 ア 委託契約金額の算定根拠について【指摘事項】
 委託契約金額の内容が適正なものであるかについて、委託契約時における見積書である「実施見積書」などの根拠資料より検討を行ったところ、「実施見積書」の明細において「一式」と表示しているのみで、金額の算定根拠が曖昧なものが多く見受けられた。
 実施見積書のうち、まんがドリームワールドの部分における「アニメーションゾーン一式40,000,000円」について確認したところ、会場内のスティッチのアニメーションゾーンとのことであった。しかし、見積金額の積算根拠が全く不明であり、また、最終的な実績額は35,477,256円とA共同企業体より実施費用の明細書の提示があるものの、同明細書の細目欄には「映像制作、美術製作費」と表示しているのみで、全く算定根拠が不明なものでありながら、そのまま精算を行っている状況であった。
 実施見積書の明細におけるその他の項目についても同様に「一式」との表示のみで、算定根拠が不明なものがほとんどであり、また、これらの各見積内容等については、まんが王国官房において十分な精査は行われていない。
 今後は委託契約においては委託内容の詳細な明細を委託業者から徴することにより、委託金額が委託内容に比して適正なものであるかを十分に検証するように改善すべきである。

イ 委託料確定額の精査について【指摘事項】
 当該事業においては委託契約金額499,771,387円に対して委託料確定額が495,247,040円であり、最終的には概算払額との差額である4,524,347円の戻入を行っている。委託料確定額の495,247,040円は、当事業に係るイベント等の入場料などの収入金額を差し引いた後の金額であり、委託契約金額と委託料確定額との対比は下表のとおりである。

委託契約金額(概算払)

委託料確定額

費用合計額

499,771,387

519,566,013

収入金額(△)

24,318,973

差引金額

499,771,387

495,247,040


 上表のとおり差引金額としては、委託料確定額の方が少額ではあるが、委託料確定額における収入金額を控除する前の金額、つまり費用合計額のみの対比であれば、19,794,626円増加している。増加の原因を、委託契約時における見積書である「実施見積書」と委託料確定額の明細である「実施費用明細」より比較検討を行ったところ、まんがドリームワールド共通費の明細うちのイベントに係る「リース備品費」の増加などが主な原因と判明した。しかし、当該増加内容の詳細についてはまんが王国官房においては全く検証作業がなされていない。費用額が増加していることに全く着目することなく委託料の精算作業を行っており、委託業者側の言いなりに委託料を支払っていることと同様の結果となっている。
 委託料に関する精査においては、県の担当者のみでは困難であるということであれば、委託金額が一定額以上のものもなどについては、第三者である専門の者に精査してもらうような仕組みづくりを行うことも一つの方策と考える。
      

4 「国際まんが博」スタンプラリー開催業務委託

(1) 事業概要

区分

委託料

委託先名

株式会社小学館集英社プロダクション

事業内容

県内の観光拠点数カ所にスタンプポイントを設置し、「ゲゲゲの鬼太郎」「名探偵コナン」などのキャラクタースタンプを使用したスタンプラリーを行い、県の集客及び観光周遊の目的で実施されたものである。

委託期間

平成24年8月3日(契約締結日)から平成24年12月31日まで

委託金額

10,487,200

(2) 監査の結果
 

ア 事業完了年月日の不整合について【指摘事項】

 当該委託業務の契約期間の終期は平成24年12月31日であるが、実際には委託業務の全部が完了したのは、委託先から県へ当選景品の納品が完了した平成25年3月29日であり、実際の事業の完了は契約の終期を大幅に遅延したものとなっていたことが当該景品の納品書により判明した。しかし委託先から、事業完了年月日が契約期間の終期である平成24年12月31日と表示された業務実績報告書が、実際の事業完了年月日である平成25年3月29日に提出されていた。つまり、適正に契約が履行されていないにもかかわらず、全ての委託業務が平成24年12月31日までに完了しているかのような報告書となっていたものである。今後は、このような事態が発生しないよう徹底すべきである。

5 「まんが王国とっとり」小学館グループメディア広告制作・掲載業務委託

 
(1) 事業概要

区分

委託料

委託先名

株式会社小学館メディアプロモーション

事業内容

「まんが王国とっとり」をテーマとした情報発信を通じて、国際まんが博をはじめとする本県まんが王国の魅力や取り組みを広く県内外にPRし、観光入込客の増加を図るなど「まんが王国とっとり」の施策実施にあたり必要な情報発信を実施する。

委託金額

30,000,000

(2) 監査の結果

ア 特定の旅館に関する広告掲載について【指摘事項】

 当該業務委託について、実際に発売された雑誌を閲覧することにより、雑誌への広告掲載内容の確認を行ったところ、サライ10月号の広告掲載は、広告掲載2ページのうち1ページは三朝温泉の特定の旅館の紹介が行われていた。 三朝温泉の特定の旅館の選定及び広告記事の制作は、雑誌の編集者が行ったものとはいえ、特定の旅館を宣伝するような内容となっており、県が委託料を支払って、広告掲載を行っている以上、県が特定の旅館の広告料を負担しているような印象を県民に与える可能性がある。また、特定の旅館のみ紹介することは、税金を使用した広告掲載としては、他の旅館との公平性に欠ける点でも問題がある。 広告の内容については、契約当事者双方で協議し決定すると契約上なっていることから、広告内容が特定の旅館を宣伝するような不公平な印象を持たれるような内容にならず、広告内容に県民の理解が得られるように、県は注意を払うべきであったと考える。

6 まんが王国とっとりPRパネル等制作設営委託業務

()事業概要

区分

委託料

委託先名

株式会社エス・アイ・シー

事業内容

まんが王国とっとりPRパネル・パンフレット・ビデオ等の制作及び設営

委託金額

1,561,350

()監査の結果

ア 実績報告書等の入手・保管について【指摘事項】

 当該委託業務においては、実績報告書の提出が行われていない。また、PR用パネルやPR用パンフレット・PR用ビデオの制作を委託し、実際にパネル・パンフレット・ビデオは納品されているが、納品書は入手・保管されておらず、制作物の展示設営に関しても業務完了報告書は入手・保管されていない。そのため、当該委託業務が、委託契約どおりに遂行されたことを証明する外部からの証憑が入手・保管されていない状況となっている。実績報告書や業務完了報告書は、委託業務が実際に委託契約どおりに行われたことを証明する重要な書類であり、また、納品書は、制作物が委託契約どおりに納品されたことを証明する重要な書類である。委託業務においては、実績報告書の提出を求め、入手・保管するとともに、業務完了報告書・納品書は必ず入手・保管する必要がある。

7 まんが王国官房全体についての意見

 上記の個別案件以外に、まんが王国官房全体に係る問題として、以下のような事項が見受けられた。
(1) 経済波及効果の算出について【意見】
 県は、鳥取環境大学への委託により、まんが王国とっとりに関連する各イベント等への来訪者数などをもとに、平成24年度における国際まんが博の経済波及効果を算出している。
 まんが王国とっとりに関連する各イベントの経済波及効果は、イベント開催による消費額やそれに伴う生産誘発額などによって算定を行っており、各イベント会場の来訪者数に、それら来訪者の飲食代などの消費額を乗ずることなどにより算出している。
 平成24年度における国際まんが博の、経済波及効果の算定における来訪者数は、のべ来訪者数3,217,756人として集計しているが、その数値の集計内容について監査を行ったところ、以下の問題点が見受けられた。

ア 鳥取市にて平成24年8月に開催された、「鳥取しゃんしゃん祭」のメインイベントである一斉傘踊りの全来訪者数185,000人のうち、その半数の92,500人を経済波及効果算定基礎の来訪者数に含めていた。

イ 米子市にて平成24年8月に開催された、「米子がいな祭」の全来訪者数207,400人のうち、花火大会の来訪者80,000人を除く127,400人の半数63,700人を、経済波及効果算定基礎の来訪者数に含めていた。

ウ 鳥取市のJAの野菜等の直売所である「わったいな」で、平成24年11月に開催された「わったいな祭」において、まんが王国とっとり関連のステージイベントや漫画家によるぬりえ教室、フィギア展示などを実施しているが、当祭りの期間における直売所である「わったいな」の入館者の全員にあたる24,000人を、まんが王国とっとりの関連イベントの来訪者数に含めていた。

以上、来訪者に関しては、約320万人であるのべ来訪者数の一部分について監査を行ったところである。上記のいずれについても、まんが王国官房側は、各来訪者数の算定は妥当であるとの見解を示しているが、前述のとおり、まんが王国とっとり関連イベントを開催したことにより増大した来訪者とは言い難いと考えられ、経済波及効果を算定する際の原則から外れることにもつながる。そのような来訪者数により、まんが王国とっとりの有効性を示す指標である経済波及効果の算定ベースとして県民に公表することは、過大に算定された数値によって県民に説明していたも同様であると考える。経済波及効果は参考数値といえど、県民が県の行う事業の有効性の判断の材料ともなるものでもあることから、このような拡大した解釈に基づき算定することのないようにすべきである。

(2) 「まんが王国とっとり」事業の今後の方向性について【意見】
 鳥取県においては、県民の声を行政に反映させるため、メール、郵送、電話等により「県民の声」として、行政に対する意見や要望などを県民から受け付けている。
 まんが王国官房についての平成24年1月から平成25年7月までの「県民の声」の状況を確認した結果、現時点においては「まんが王国とっとり」の事業に対して、否定的な意見や提言も多く見受けられる状況である。
 現状において必ずしも県民の賛同を得ているとは言い難いと思われる状況を踏まえると、やはり県民に対する説明が足りない部分もあるのではなかろうか。まんがやアニメを活用した事業が、今後どのように鳥取県に、また県民にプラスとなるのかなどの将来ビジョンが県民に示されていないことも、賛同を得ていない一つの原因とも思われる。このような事業を実施することは、県内経済の活性化を目的とする一種のきっかけづくりであるとも考えられるが、そのきっかけによって県民の自主的な活動などに移行することによってはじめて事業効果が発現されるものと思われる。そういった意味でも、事業に対して県民の理解を十分に得ることは必要不可欠である。
 事業計画や将来ビジョンを県民に十分に開示することによって、さらに県民の意見も取り入れるなどして、事業の方向性や方法、そして「まんが王国とっとり」事業そのものを継続するか否かなどの議論を十分に行っていくことが望まれる。

第3 鳥取県観光連盟

1 「国際まんが博」観光客誘致促進事業(県受託事業)

(1) 監査の結果
 

ア 「まんが王国とっとり」バスツアー誘致事業

 
(ア) 限度額を超えた補助金の交付【指摘事項】
 当該補助金は、1事業所あたり合計20万円を限度として交付されるものであるが、名鉄観光サービス株式会社姫路支店に対しては、誤って21万円の補助金を交付していることから、限度額を超過している1万円については、補助金の返還を求めるべきである。

(イ) 補助対象期間外の旅行商品に対する補助金の交付【指摘事項】
 当該補助金は、旅行出発日が平成24年8月3日から同年11月25日までの旅行商品を対象に交付するものであるが、奈良交通株式会社に対しては、旅行出発日が11月26日と12月3日の旅行商品に対して補助金を交付している(補助金の金額はそれぞれ5万円)ことから、補助金の交付対象期間外の旅行出発日のバスツアーに係る補助金である10万円については、返還を求めるべきである。

(ウ) まんが博(含む関連事業・施設)への立ち寄りを行っていないバスツアーへの補助金の交付【指摘事項】
 当該補助金は、まんが博(含む関連事業・施設)への立ち寄りを条件に交付するものであるが、株式会社阪急交通社中部日本営業本部に対しては、まんが博関連施設に立ち寄っていないバスツアーに対して20万円の補助金を交付している。
 要件を満たさない実績報告に対して交付している20万円の補助金については、返還を求めるべきである。
(エ) 補助金実績報告書の提出期限の遵守について【指摘事項】
 補助金交付要綱では、補助事業完了後10日以内に補助金実績報告書を提出しなければならないとなっているが、補助金実績報告書の提出が遅いものがある。具体的には、8月29日出発のバスツアーに係る補助金実績報告書の提出日が12月21日となっているものもあり、これ以外にも補助金実績報告書の提出が補助事業完了後10日超経過しているものが散見される。
 補助金実績報告書の提出が遅れると、補助金の交付手続きも遅れ、事務手続きが終了しないため、補助金実績報告書の提出期限を遵守させる必要がある。

イ 「まんが王国とっとり」商品造成支援事業

(ア) 限度額を超えた補助金の交付【指摘事項】
 当該補助金は、1事業所、1事業活動に対して20万円を限度として交付されるものであるが、株式会社ジェイティービー西日本国内商品事業部に対しては、30万円の補助金を交付しており、限度額を超えた交付となっている。これは、以前から補助金交付先と30万円の補助金を交付することで商品造成事業を行う前提で話を進めていたため、補助金の限度額が20万円と決まったにもかかわらず、限度額を超えていることがわかっていながら、30万円の補助金を交付したとのことである。
 限度額を超えている10万円については、補助金の返還を求めるべきである。

「国際まんが博」観光客誘致促進事業における補助金過大交付額の一覧

交付先名

補助金実績額

(a)

適正な補助金額

(b)

過大交付額

(a)-(b)

名鉄観光サービス株式会社

姫路支店

210,000

200,000

10,000

奈良交通株式会社

200,000

100,000

100,000

株式会社阪急交通社

中部日本営業本部

200,000

0

200,000

株式会社ジェイティービー西日本国内商品事業部

300,000

200,000

100,000

合計

910,000

500,000

410,000

ウ 県への委託費の返納について【指摘事項】
 上記の「国際まんが博」観光客誘致促進事業の補助金の支払実績は、バスツアー誘致事業10,500,000円と商品造成支援事業1,807,500円との合計12,307,500円となっている。当該事業は、県からの委託費12,000,000円を財源に実施しているが、補助金の過大交付分410,000円を考慮すると、補助金の支払実績は11,897,500円となる。そのため、補助金の支払実績を超過している委託費102,500円は県へ返納する必要がある。
 

県への委託費の返納額

補助金実績額

(a)

過大交付額

(b)

適正な補助金額

(c)=(a)-(b)

県からの委託費

(d)

県への返納額

(d)-(c)

12,307,500

410,000

11,897,500

12,000,000

102,500

エ 補助金の交付実績のチェック体制について【指摘事項】
 上記の2つの補助金は、交付件数が多く、また補助金の交付条件も定められていることから、補助金の交付条件を満たさないバスツアーや商品造成に対して、誤って補助金を交付する可能性があり、実際に過大な補助金の交付が行われている。
 補助金の交付元である観光連盟においては、当該補助金の担当者のみではなく、誤った金額の補助金の交付を防止するため、複数人でチェックを行う体制を構築するなどの必要がある。
 また、県は当該事業を観光連盟に委託している関係から、当該委託事業の業務完了検査は行っているが、その際には補助金の過大交付は発見されていない。県は、誤って補助金を交付する可能性が高い場合や、誤って補助金を交付することを防止する体制が整っていないと思われる場合には、県の業務完了検査をより厳格に実施する必要がある。


2 とっとり「受注型企画旅行」旅行商品造成支援事業(県補助事業)

(1) 監査の結果

ア 補助金の過大交付【指摘事項】

 株式会社農協観光滋賀支店に係る補助金については、補助金交付申請書で10台分の申請が行われ、補助金実績報告書でも10台分の実績報告が行われていることから、300,000円の補助金を交付している。しかしながら、補助金実績報告書に添付されている宿泊先からの請求書などを閲覧した結果、バスの実際の運行台数は7台であった。
 過大に実績報告が行われている3台分の補助金90,000円については、補助金の返還を求めるべきである。

イ 県への事業実績報告について【指摘事項】

 当該事業は県からの補助事業であり、観光連盟から事務費も補助対象となるものと誤認して、県へ事務費も含め5,000,000円の補助金の交付申請が行われ、県から観光連盟へ5,000,000円の補助金が交付されている。また、観光連盟が県へ提出している事業実績報告書の実績額も事務費相当額290,000円を含め5,000,000円であり、補助金確定額は5,000,000円である。しかしながら、観光連盟の決算書に計上されているバス旅行実施事業者への補助金の支払額(上記アの過大交付分を含む)は、4,710,000円となっている。
 補助金交付決定通知書では、「補助金の額の確定は、対象経費の実績額と交付決定額のいずれか低い額により行う。」となっていることから、対象経費の実績額(4,710,000円)の方が低いため、事業実績報告書の実績額は、4,710,000円とすべきである。
 県から観光連盟に過大に交付されている290,000円の補助金及び上記アの過大交付分90,000円の合計額380,000円については、県へ補助金を返納する必要がある。

宿泊促進のためのバス旅行商品支援事業における補助金過大交付額の一覧

交付先名

補助金実績額

(a)

適正な補助金額

(b)

過大交付額

(a)-(b)

株式会社農協観光滋賀支店

300,000

210,000

90,000

合計

300,000

210,000

90,000

県への補助金の返納額

補助金実績額

(a)

適正な補助金額

(b)

県への返納額

(a)-(b)

5,000,000円

4,620,000円

380,000円 

 

  

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