3.1 三大湖沼等豊かな自然環境の保全・再生

平成19年度版 鳥取県環境白書

3.自然と人間との共生の確保

 3.1 三大湖沼等豊かな自然環境の保全・再生

中海水質浄化対策推進

1 事業の目的・効果
  (1)鳥取県及び島根県では、中海の水質保全のため、平成元年度以降、湖沼水質保全計画を策定し、各種水質保全施策を総合的かつ計画的に推進してきた。
  (2)しかしながら、湖沼環境基準の達成には至っておらず、平成16年度には第4期計画を策定し、関係機関、関係市、事業者及び住民等の理解と協力を得て、引き続き浄化対策を推進している。

2 事業内容
  (1)下水道の整備等各種浄化施策をとりまとめた第4期「中海に係る湖沼水質保全計画」(平成16~20年度)の推進
  (2)中海水質改善対策協議会(鳥取・島根両県及び中海周辺4市1町)において一層の水質改善のための方策を検討
  (3)中海水質汚濁防止対策協議会(鳥取・島根両県及び中海周辺4市1町)の運営
  (4)住民参加型の水質調査等の実施

 過去の実績

  • 平成18年度実績
    ・下水道の整備等各種浄化事業をとりまとめた第4期「中海に係る湖沼水質保全計画」を推進した。
    ・中海水質改善対策協議会(鳥取・島根両県及び中海周辺4市1町)を開催し、この協議会を通じて、両県並びに関係市長は今後も、より一層連携して中海の水質改善に取り組んでいくことに合意した。
    ・中海水質汚濁防止対策協議会(鳥取・島根両県及び中海周辺4市1町)の運営を通じて、水質浄化に向けた各方面の取組を促進した。
  • 平成19年度実績
    ・下水道の整備等各種浄化事業をとりまとめた第4期「中海湖沼水質保全計画」を推進した。
    ・中海水質改善対策協議会(鳥取・島根両県及び中海周辺4市1町で構成)を開催し、水質改善措置等を検討・協議した。
    ・中海水質汚濁防止対策協議会(鳥取・島根両県及び中海周辺4市1町で構成)の運営を通じて、水質浄化に向けた各方面の取組を促進した。

●担当:生活環境部 水・大気環境課 水質担当 電話0857-26-7197


参考URL
 
   鳥取県水・大気環境課のwebサイトより
 「水・大気環境課」
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=20225

中海の水質浄化と賢明利用事業 <平成19年度新規>

1 事業の目的
 中海の現状、関係行政機関の取組み、NPO法人などの活動や効果の情報を住民へ提供するとともに、住民参加型の水質調査を実施して自然再生活動の輪を流域全体に拡大する。

2 背景、現状、及び課題

(1)平成17年11月ラムサール条約の登録を受け、賢明利用と環境保全が大きな課題。
(2)湖沼水質保全計画に基づき水質浄化対策を実施しているが全体的に横ばいの状態。
(3)今後、中海の自然再生を進展させていく上では地域住民の参加が不可欠であり、関心を高めていく必要がある。
(4)賢明利用については、観光やレクリエーションでの活動支援が課題。 
(5)これまでの中海の水質調査は湖心部分を中心に行っており、湖岸の水質調査は行われていなかった。

3 事業の内容

(1)中海関係情報誌の作成
  中海の現状、関係行政機関の取組み、NPO法人などの活動や効果、住民参加型の湖岸における水質調査の結果等を掲載した情報誌を発行。
(2)住民参加型の水質調査
  中海流入河川調査、湖沼環境モニター(五感により湖沼の環境を採点)。
(3)中海沿岸の環境モニタリング事業
  身近な中海沿岸15箇所程度において、五感を含めた水質等のモニタリング調査を実施。
(4)中海の再生と賢明利用推進協働事業
  ·中海の再生と賢明利用をテーマに住民座談会を開催し、意見交換の実施。
  ·NPO、住民団体等の活動家による先進地視察の実施。

4 効果

(1)湖岸の水質調査により、湖岸部分で取り組まれている清掃活動等の効果を検証する。
(2)身近な中海関係情報を地域住民へ伝え、自然再生活動の輪を流域全体に拡大する。

 過去の実績

  • 平成19年度実績
    (1) 中海の再生と賢明利用を考える会
     地域住民、関係行政機関が連携した県外の取り組み事例を紹介した。(開催回数:3回、参加人数:延べ221人)
    (2)中海湖岸のモニタリング調査の実施
     NPOなどの取り組みが実施されている中海の湖岸7地点(各2回)で水質調査を開始し、ホームページで調査結果を情報提供した。

●担当:鳥取県西部総合事務所 生活環境局 環境・循環推進課
環境衛生係 電話0859-31-9350

アマモとサルボウを用いた中海の水質浄化に関する研究

1 事業の背景
(1)これまで中海の水質浄化を目的として流入負荷の削減を中心とした施策が講じられてきたが、未だ環境基準は達成されていない。
(2)その理由のひとつとして生物の激減によって、これらによる水質浄化能が失われてきたことによると考えられる。
(3)したがって、かつて中海に生息していたアマモ類・サルボウ等生態系の回復を視野に入れた水質浄化手法を検討する必要がある。

2 事業内容
 今後の水質浄化施策に活用するためにアマモ類(アマモ・コアマモ)・サルボウを用いた水質浄化技術の検討を行う。
(1)現地調査、室内実験による生育可能域の推定、及びその確認
(2)室内・室外実験(現場での移植実験等)による水質浄化能の測定

3 効果
(1)アマモ場の再生による生態系回復。
(2)アマモ類とサルボウの分布拡大による水質浄化効果。
(3)水産振興、住民活動の支援等の地域貢献。

アマモとサルボウによる水質浄化のしくみ

 過去の実績

  • 平成18年度実績(関連事業)

    ○藻類・貝類等による中海浄化手法検討事業

    (1)中海(崎津漁港承水路)のコアマモは広範囲の塩分濃度に適応可能であり、特に中程度の塩分域が生育の好適条件であることが示唆された。
    (2)コアマモの生育環境について、塩分、濃度の好適条件があることが示唆された。
    (3)コアマモの移植を行う際には、事前に移植候補地のモニタリングを行うなど、移植地や移植時期の選定に注意する必要があると考えられた。
  • 平成19年度実績

    (1)水路における実験によりコアマモの増殖、および種子生産に成功した。
    (2)室内実験により、サルボウの生育には高塩分が必要であるため浅場への放流はリスクが大きいこと、本種の水質浄化能力は夏季に最大になることが明らかになった。

●担当:生活環境部 衛生環境研究所 水環境室 電話0858-35-5417

参考URL
 鳥取県衛生環境研究所のwebサイトより
 「衛生環境研究所」
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=3565

中海生態系の長期変動と研究成果の活用方法に関する研究<平成19年度新規>

1 事業の現状・目的・効果
(1)中海生態系は20世紀に著しく衰退した後、回復の兆しが見えない。
(2)さらに、降水量の変動や海面上昇に代表される近年の環境変動が、中海生態系に新たな変化を引き起こす恐れがある。
(3)したがって、中海生態系の管理には、過去における生態系の衰退と今日における環境変動の影響を考慮に入れなければならない。
(4)また、生態系の管理には住民の理解が不可欠なため、中海生態系に関する情報を積極的に公開する必要がある。


2 事業内容
 中海生態系が(ア)過去に衰退した過程を明らかにすると同時に、(イ)今日の環境変動が将来の中海生態系にどのような変化を生み出すのかを予測し、中海生態系の長期的な管理法を提言。
(1)過去100年間に中海生態系がどのように衰退したのかを、底質コア試料等を用いて明確化。
(2)降水量の変動や海面上昇をはじめとする近年の環境変動が、将来の中海生態系にどのような変化を生み出すのかを近年の環境・生物データを用いて予測。
(3)以上の成果を長期的な中海生態系の管理のための資料とする。さらに、成果を中海環境GISにまとめて、県HP上の「とっとりwebマップ」を用いて住民に公開。

 過去の実績

  • 平成19年度実績
    (1)底質コア試料の分析と文献資料の整理により、中海の環境と生物相は20世紀に急激に劣化したこと、劣化のタイミングは水域により異なっていたことが示唆された。
    (2)東郷池の水質データの分析と文献資料の整理を行い、成果を「東郷湖物語」としてまとめ、環境学習に活用した。
    (3)中海と東郷池の水質データをデータベース化した。

●担当:生活環境部 衛生環境研究所 水環境室 電話0858-35-5417


参考URL
 鳥取県衛生環境研究所のwebサイトより
 「衛生環境研究所」
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=3565

東郷池におけるピコプランクトンの増殖特性に関する研究

1 事業の背景・目的
 東郷池は、流域下水道整備等種々の施策を講じたにもかかわらず水質浄化の顕著な効果がみられない。その理由のひとつに、今まで注目していなかったピコプランクトンの存在とその増殖が考えられる。
 そのため、ピコプランクトンの増殖特性や水質への影響を明らかにし、生態系保全を視野に入れた効果的な水質浄化対策等を検討する必要がある。

2 事業内容
 これまでの研究で、東郷池湖水中のピコプランクトン(シネココッカス、シネコキスティス)の存在が明らかになったことから、その増殖特性と水質汚濁への影響等を解明するために次のことを行う。
(1)東郷池湖水からピコプランクトンを単藻分離し、培養。
(2)単藻分離したピコプランクトンを用いて藻類培養試験等を実施し、増殖特性を明確化。
(3)(1)(2)で得られた知見を水質浄化対策や望ましい生態系保全のための施策検討の基礎資料を作成。

 過去の実績

  • 平成18年度実績
    (1)藻類培養試験の文献検索を実施し予備実験を行った。
    (2)東郷池湖水より、ピコプランクトンを単藻分離し、純粋継代培養することに成功した。
  • 平成19年度実績
     東郷池のピコプランクトン調査及びその増殖特性の把握試験で以下の事項が示唆された。
    (1)東郷池のピコプランクトンは、植物のプランクトン量の指標である全クロロフィルaの20~40%程度を占めている。
    (2)ピコプランクトンは東郷池の塩分濃度でも十分増殖可能であり、また、それを超える広範囲の塩分(海水程度)でも増殖可能である。

●担当:生活環境部 衛生環境研究所 水環境室 電話0858-35-5417

 


参考URL
鳥取県衛生環境研究所のwebサイトより
「衛生環境研究所」
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=3565

湖山池水質浄化対策推進

1 事業の目的
  (1)湖山池の水質保全のため、平成3年度に湖山池水質管理計画(第1期)を策定し、下水道整備等の各種浄化施策を総合的かつ計画的に推進してきた。
  (2)しかしながら、湖沼環境基準の達成には至っておらず、平成13年度には第2期計画を策定し、関係機関、関係市、事業者及び住民等の理解と協力を得て、引き続き浄化対策を推進している。

2 事業内容
  (1)下水道の整備等各種浄化施策をとりまとめた第2期「湖山池水質管理計画」(平成13~22年度)の推進

 過去の実績

  • 平成18年度実績
    ・下水道の整備等各種浄化施策をとりまとめた第2期「湖山池水質管理計画」を推進した。
  • 平成19年度実績
    ・下水道の整備等各種浄化施策をとりまとめた第2期「湖山池水質管理計画」を推進した。

●担当:生活環境部 水・大気環境課 水質担当 電話0857-26-7197


参考URL
 鳥取県水・大気環境課のwebサイトより
 「水環境」
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=20225

統合河川環境整備事業 湖山池

1 事業の目的・効果
【事業の背景・現状・課題】 
 湖山池に流入する生活排水及び産業排水等により、池の水質は悪化し、富栄養化に伴う有機汚泥が堆積し、汚泥からの栄養塩類の溶出が進んでいる。
【事業の目的・効果】
 水質悪化が池の水を利用する者や市民から懸念されており、湖山池水質管理計画(第2期)で目標としている水質基準を未だ達成していない。
 そのため、池底に堆積している栄養塩類を含んだ底泥を浚渫することにより、池内の水質浄化を図る。

2 事業内容
 ○底泥浚渫 V=5,000m3

 過去の実績

  • 平成18年度実績
    ○底泥浚渫 V=4,000m3
  • 平成19年度実績
    ○底泥浚渫 V=5,000m3

●担当:県土整備部 河川課 計画担当 電話0857-26-7374

参考URL
 鳥取県河川課のwebサイトより
 「鳥取県県土整備部河川課」
http://www.pref.tottori.jp/doboku/kasen/kasenka.htm

※リンク先削除

湖山池水辺環境整備事業(湖山池水質浄化施策検討事業)

1 事業の目的・効果
【事業の背景・現状・目的】
 湖山池公開討論会で市民合意を得た、水質浄化の基本方針「湖山池を汽水湖として再生する」を実現するため開始した、塩分導入実証試験をはじめ、湖山池で展開されている浄化に対する取組について、公開の場で意見交換を行い、今後の湖山池の水質浄化について検討する。

【事業の効果】
 (1)湖山池の水質浄化に係る総合的な検討、効果的な施策等の検討を行うにあたって、県民・有識者の幅広い意見を浄化施策に反映させることができる。
 (2)湖山池周辺自治会の水質浄化に対する取組を紹介することで、県民の水質浄化に対する意識を高めることができる。

2 事業内容
 ・湖山池の水質浄化に対する住民及び行政の取組を紹介して意見交換を行い、施策に反映
 ・住民へ浄化に関する啓発の推進

 過去の実績

  • 平成18年度実績
    平成18年7月15日(土) 
    第6回湖山池水質浄化100人委員会開催
  • 平成19年度実績
    平成19年7月14日(土) 
    第7回湖山池水質浄化100人委員会開催

●担当:県土整備部 河川課 計画担当 電話0857-26-7374

参考URL
 鳥取県河川課のwebサイトより
 「鳥取県県土整備部河川課」
http://www.pref.tottori.jp/doboku/kasen/kasenka.htm

※リンク先削除

中海漁場環境調査

1 事業の目的・効果
 中海の漁場環境や本県水産資源の育成場としての実態を明らかにし、水産資源の有効利用や漁場環境の保全・改善等、水産振興策を検討するための基礎情報を得るとともに、本庄工区開削の影響把握に備える。

2 事業内容
(1)有用魚介類調査:有用魚介類の季節的な分布動向を把握し、漁場や未利用資源の有効利用。
 ·標本船調査:中海の漁業を代表する刺網漁業の実態把握。
 ·アサリ調査:アサリの産卵生態、成長及び分布量の変動を解明。
(2)育成場調査:美保湾も含めた有用魚介類(ヒラメ・カレイ類・エビ類等)の育成場としての機能や環境条件を把握し、保護施策や造成手法の指標を得る。
 ·加入仔稚魚分布調査:調査船による表層ネットでの仔稚魚採集。
 ·遊泳稚魚分布調査:水中歩行による表中層ネットでの稚魚採集。
 ·着底稚魚分布調査:潜水による底層ネットでの稚魚採集。
(3)アマモ分布調査:アマモの分布及び定着のための環境条件を明らかにし、保護や造成の指標を得る。
 ·分布調査:陸上及び水中での分布調査。
 ·季節的消長観測:季節別の潜水ライン調査。
(4)本庄開削影響調査:魚介類にとって好ましい開削方法の指標を得る。開削前後での魚介類への影響を比較。

 上記(1)~(4)の調査結果を基に解析する。上記の調査に基づき、県民への情報提供や島根県との連携を進める。

 過去の実績

  • 平成18年度実績
    1 調査内容の概要
    (1)定期調査
    図1に示した定点を設定し、以下のような調査を月1回実施した。
    M1~3:ラーバネット
    C1~5:水質、底質、底性生物、ラーバネット、サーフネット(C2、C5のみ)
  • 図1 鳥取県栽培漁業センターが実施した調査の定点

    2 調査結果の概要

    (1) 有用魚介類調査
    ・中海の刺網漁業者に操業野帳の記載を依頼し、スズキ、ボラ等の漁業資源の利用実態を把握した。
    ・鳥取県水域におけるアサリの分布生態を定期調査による採泥サンプルより把握した。全調査点でアサリの稚貝(殻長10mm未満が主体)は出現するものの、アマモ群落のあるC-2で特に多い状況が見られた。9月以降個体数が減ったが、これは夏場に中海で貧酸素域が発生したことや、大水による塩分低下に起因していると考えられた。

    (2)環境
    ・中浦水門付近を境界に、中海内部では溶存酸素の乏しい水塊が恒常的に存在し、劣悪な漁場環境であることが分かった。一方中浦水門より外側(境水道)では、比較的貧酸素の影響が少ない傾向が認められた(図2)。

    図2 定点C2(上段)とC5(下段)の水深別D.Oの推移

    (3)育成場調査
    ・H18年4月~12月の各種ネット調査で、8目37科60種以上合計6264個体(ラーバネット3004個体、サーフネット3060個体、その他200個体)の魚類仔稚魚および若魚を採集した(表1)。
    ・貧酸素の影響が少なく、アマモ場などが分布する境水道付近はスズキ・メバル・ヒラメ・カレイ類の育成場として高い機能を有していると考えられた(図3)。一方、中海奥部では環境的に劣悪なため、出現する魚類幼生の種の多様性は低く、分布量も少ない傾向があった。

    表1 中海漁場環境調査で採集した魚類リスト(H18年4~12)



    図3 外江地区のアマモ場でサーフネットにより採集されたスズキ仔稚魚

    (4)アマモ場分布調査
    ・中海(鳥取県水域)におけるアマモ場の分布を調べるため、陸上からの目視調査を実施した。鳥取県水域におけるアマモ場は境水道周辺に固まっており、奥部には大きな群落は見られなかった。
    ・外江地区にあるアマモ場の季節消長を把握するため、潜水によるライン調査を行った。アマモ群落は夏場に枯失したが(図5)、冬から春にかけて回復した。

    図4 陸上目視によるアマモ場分布調査の結果


    図5 外江地区におけるアマモ場の様子(左 H18年7月、右 H18年9月)
  • 平成19年度実績

    1 調査内容の概要
    (1)定期調査
    図1に示した定点を設定し、以下のような調査を月1回実施した。
    C2~5:水質、底質、底性生物、ラーバネット、サーフネット(C2、C5のみ)
    C6~7:水質、ラーバネット(2ヶ月に1回、島根県調査船で実施)
    鳥取県栽培漁業センターが実施した調査の定点
    図1 鳥取県栽培漁業センターが実施した調査の定点

    2 調査結果の概要
    (1) 有用魚介類調査
    ・中海の刺網漁業者に操業野帳の記載を依頼し、スズキ、ボラ等の漁業資源の利用実態を把握した。
    ・鳥取県水域におけるアサリの分布生態を定期調査による採泥サンプルより把握した。全調査点でアサリの稚貝(殻長10mm未満が主体)は出現するものの、アマモ群落のあるC-2で特に多い状況が見られた。9月以降個体数が減ったが、これは夏場に中海で貧酸素域が発生したことや、大水による塩分低下に起因していると考えられた。
    (2)環境
    ・中浦水門付近を境界に、中海内部では溶存酸素の乏しい水塊が恒常的に存在し、劣悪な漁場環境であることが分かった。一方中浦水門より外側(境水道)では、比較的貧酸素の影響が少ない傾向が認められた(図2)。

    定点C2(上段)とC5(下段)の水深別D.O.(溶存酸素量)の推移
    図2 定点C2(上段)とC5(下段)の水深別D.O.(溶存酸素量)の推移

    (3)育成場調査
    ・H19年4月~H20年3月の各種ネット調査で、11目31科61種以上合計4,185個体(ラーバネット1,699個体、サーフネット2,486個体)の魚類仔稚魚および若魚を採集した(表1)。
    ・貧酸素の影響が少なく、アマモ場などが分布する境水道付近はスズキ・メバル・ヒラメ・カレイ類の育成場として高い機能を有していると考えられた(図3)。一方、中海奥部では環境的に劣悪なため、出現する魚類幼生の種の多様性は低く、分布量も少ない傾向があった。

    表1 中海漁場環境調査で採集した魚類リスト(H19年4~H20年3)
    中海漁場環境調査で採集した魚類リスト(H19年4~H20年3)

    外江地区のアマモ場でサーフネットにより採集されたスズキ仔稚魚
    図3 外江地区のアマモ場でサーフネットにより採集されたスズキ仔稚魚

    (4)アマモ場分布調査
    ・中海(鳥取県水域)におけるアマモ場の分布を調べるため、陸上からの目視調査を実施した。鳥取県水域におけるアマモ場は境水道周辺に固まっており、奥部には大きな群落は見られなかった。
    ・外江地区にあるアマモ場の季節消長を把握するため、潜水によるライン調査を行った。アマモ群落は夏場に枯失したが(図5)、冬から春にかけて回復した。

    陸上目視によるアマモ場分布調査の結果
    図4 陸上目視によるアマモ場分布調査の結果

    外江地区におけるアマモ場の様子(左
    図5 外江地区におけるアマモ場の様子(左 H18年7月、右 H18年9月)

    ●担当:農林水産部 水産振興局 水産課 栽培漁業センター 増殖技術室
    電話0858-34-3321


    参考URL
     鳥取県栽培漁業センターのwebサイトより
     「鳥取県栽培漁業センター」
    https://www.pref.tottori.lg.jp/saibaicenter/

    内水面漁場環境保全事業

    1 事業の背景・目的
     毎年20m3以上のゴミが回収されている湖山池・東郷池では、湖沼環境が改善されず、シジミ漁等の操業に支障を来たしている。
     そこで、内水面漁業の振興及び健全な内水面の環境保全を図るため、地域住民等に呼びかけを行い、湖底、湖岸清掃を実施する。

    2 事業内容
     湖山池漁協及び東郷湖漁協が事業実施主体で実施する湖底・湖岸清掃に対して支援する。
    (1) 湖山池
    •  湖底清掃
    •  地域住民を巻き込んだ湖岸清掃

    (2) 東郷池

    •  湖底清掃

    3 効果
    (1)湖沼環境が改善され、シジミ等の漁業資源の増加が見込まれる。
    (2)地域住民が参加することにより、地域住民の環境保全意識が向上する。

     過去の実績

    • 平成18年度実績
      回収されたゴミ量
       湖山池:8.48t
       東郷池:48m3
      集計表

      推計グラフ
    • 平成19年度実績
      回収されたゴミ量
       湖山池:6.0t
       東郷池:36m3
      ゴミ回収量
      ごみ回収量推移

    ●担当:農林水産部 水産振興局 水産課 漁業振興担当 電話0857-26-7317

    参考URL
     鳥取県水産課のwebサイトより
     「水産課」
    http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=44462

    湖沼増養殖試験(湖山池)

    1 事業の背景、目的 (1)県(河川課)が主体となって実施する湖山池塩分導入試験において、魚類へ与える影響の把握を当センターが担当する。
    (2)この調査で、魚類の遡上を促進する湖山川水門の操作方法を提言し検証するとともに、塩分導入が湖山池の生態系・漁業へ与えた影響を評価する。

    2 事業の内容
    (1)塩分導入試験が池内魚類へ与える影響の調査
     池の下流域と奥部で定置網により魚類を採捕し、塩分導入が魚類・底生動物へ与えた影響を把握・評価する。
    (2)魚類遡上を促進する水門管理手法の解明調査
     湖山川水門の上・下流に定置網を設置して時期・時間帯別に魚類等を採捕し、魚類遡上を促進する水門管理手法を解明する。

    3 効果
    (1)塩分導入試験が湖山池の生態系へ与えた影響が評価できる。
    (2)湖山川水門上下流で魚類の調査を行うことにより、魚類の遡上を促進する水門操作を提言し・検証することが可能となる。この水門操作法により豊かな湖山池の再生(魚類の資源回復)策につながる。

     

     過去の実績

    • 平成18年度実績
      (1)池内魚類分布
       池口と奥部に小型定置網を設置し、毎月魚類等の採捕をおこなった結果、平成18年4月から19年3月までの間に27種の魚類と3種の甲殻類が入網した。
       また平成17年度と比較するとワカサギの入網数が大幅に減少した。ブルーギル、オオクチバスの数に大きな変化はなかった。
      (2)湖山川魚類分布
       湖山川水門上流側と下流側に小型定置網を設置し、魚類の採捕を行った結果、平成18年4月から19年3月の間に27種の魚類と、4種の甲殻類が入網した。水門上流側より下流側の方が海域由来の生物が多かった。ワカサギについては入網数がすくなく評価することができなかった。
       なお、試験の内容と結果については、「湖山池水質浄化100人委員会」、「平成18年度湖山池塩分導入実証試験の情報交換会」などで報告を行っている。
    • 平成19年度実績
      (1)池内魚類分布
       池口と奥部に小型定置網を設置し、毎月魚類等の採捕をおこなった。池口では海産種が、池奥では両側回遊種の種類が増加した。
       ブルーギル、オオクチバスの数に大きな変化はなかった。
      (2)湖山川魚類分布
       湖山川水門上流側と下流側に小型定置網を設置し、魚類の採捕を行った。上流域では、海産種・両側回遊種の数・種類数が増加した。また、下流域でも海産種の数・種類が増加した。
       ワカサギは昨年に比べ入網数が大幅に増加し、水門の上流と下流で入網数に大きな差はなかった。
       なお、試験の内容と結果については、「湖山池水質浄化100人委員会」、「平成19年度湖山池塩分導入実証試験の情報交換会」などで報告を行っている。

    ●担当:農林水産部 水産振興局 水産課 栽培漁業センター 生産技術室担当
    電話0858-34-3321

    参考URL
     鳥取県栽培漁業センターのwebサイトより
     「鳥取県栽培漁業センター」

    https://www.pref.tottori.lg.jp/saibaicenter/

    魚の棲む豊かな湖沼河川再生調査<平成19年度新規>

    1 事業の背景、目的
     河川管理施設(県)の運用および流入河川に造られた堰堤など生息環境の改変により、魚を育む豊かな湖沼河川が失われつつある。
     本事業は、地元・県民(町・漁業者等)と連携してこのような実態の把握と改善方策の解明を進め、県を含む管理や運用を所管する機関への提言につなげることを目的とする。

    2 事業の内容

    (1)東郷湖においては、海との間をつなぐ水門の設置以降、魚類(ワカサギ等)の資源量は激減している。このため、地元(町・漁協)と連携して魚類資源の回復策を探る。
    (2)橋津川水門の上・下流に定置網を設置して魚類を採捕し、回遊移動(阻害)の実態(時期・時間帯等)を解明する。
    (3)産卵実態(場所・時期・産卵場の保全状況・産卵遡上阻害等)を解明する。
    (4)改善策の検討と実証を行う。

    3 効果

    (1)水門操作や堰堤の小規模改良により、魚類資源を回復できる可能性がある。
    (2)河川管理施設のより適正な運用を提示することができる。

     過去の実績

    • 平成19年度実績

      (1)定置網調査
       東郷湖、橋津川に小型定置網を設置し、魚類等を採捕した。淡水種17、海産種16、両側回遊種10種、エビ・カニ類10種が採捕された。 

      (2)ワカサギ・シラウオ調査
       東郷湖のワカサギの数は極めて少なかったものの、流入河川内で産卵していることが確認された。シラウオは湖岸や流入河川河口域で産卵が確認された。

      (3)魚類産卵実態調査
       東郷湖へ流入している東郷川の第1堰堤(最も下流部に位置)は魚道がないため、コイ・フナが遡上できず、産卵が阻害されていた。この結果を基に、地元により魚道が設置された。

    ●担当:農林水産部 水産振興局 水産課 栽培漁業センター 生産技術室担当
    電話0858-34-3321

    参考URL
     鳥取県栽培漁業センターのwebサイトより
     「鳥取県栽培漁業センター」
    https://www.pref.tottori.lg.jp/saibaicenter/

    東郷池水質浄化対策推進

    1 事業の現状・効果
      (1)東郷池の水質保全を図るため、従来から下水道、農業集落排水処理施設の整備などの種々の対策を講じ、東郷池への汚濁負荷削減を図ってきたが、現在のところ、湖沼環境基準の達成には至っていない。
      (2)このような状況から、東郷池のなお一層の水質改善を図るため、平成18年度に東郷池水質管理計画を策定し、関係機関、事業者及び住民等の連携のもと、浄化対策を総合的かつ計画的に推進する。

    2 事業内容
      (1)生活排水対策等各種浄化施策をとりまとめた「東郷池水質管理計画」(平成18~27年度)の推進
      (2)東郷池湖上観察会

     過去の実績

    • 平成18年度実績
      ・生活排水対策等各種浄化施策の検討を行い、第1期「東郷池水質管理計画」を策定した。
    • 平成19年度実績
      ・各種浄化施策をとりまとめた第1期「東郷池水質管理計画」を推進した。

    ●担当:生活環境部 水・大気環境課 水質担当 電話0857-26-7197

    参考URL
     鳥取県水・大気環境課のwebサイトより
     「水環境」
    http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=20225

    湖水中の難分解性有機物に関する研究<平成18年度終了>

    1 事業の概要
     湖山池では、流域発生源対策が行われているにもかかわらずCODが環境基準湖沼類型Aを達成していない。その要因として生分解が困難な「難分解性有機物」が無視できない量存在する(CODの約6割を占める)ことが判ってきた。また、琵琶湖や霞ヶ浦等でも同様の報告がある。
    そこで、水中の「難分解性有機物」を吸着除去することを目指し、鳥取県東部産の天然石(14種)を粉砕・調製した「天然石粉末」を吸着剤とし、前処理した難分解性有機物のみ残存する湖山池湖水や流入河川水、及び「人工腐植(代表的な難分解性有機物)溶液」を用いて、水中の難分解性有機物の吸着特性を把握するための室内実験を行った。

     過去の実績

    • 平成18年度実績

      (1) 14種の鉱物粉末について、「人工腐植溶液」を用いて難分解性有機物の吸着実験を実施したところ、泥岩(美歎)及び火山礫凝灰岩(二上山)が、比較的吸着能力が高いことが判った。

      (2) (1)の2種の鉱物について、さらに広い有機物濃度の溶液で吸着実験を実施したところ、泥岩(美歎)の吸着能力が高い(特に高濃度)とともに、2つ以上の吸着機構がある可能性が示唆された。

      (3) 最も吸着能力が高かった泥岩(美歎)に対するpHを変えた「人工腐植溶液」による実験や、実際の試料水(河川水、下水処理水、湖水)を用いた実験結果等から、水中の難分解性有機物の鉱物への吸着は疎水性吸着であることが示唆され、吸着特性が有機物の種類や溶液のpH等の存在環境の変化(それに伴う有機物の構造の変化)によって敏感に変化することが判った。

      (4) 湖水や流入河川水等での吸着除去を適用する場合、処理対象の有機物が多種の混合物でpHも変動することが予想されることから、能力を発揮させるには前処理(pH調製等)が必要であり、さらなる検討が必要である。

    ●担当:衛生環境研究所 大気・地球環境室 電話0858-35-5414

    参考URL
     鳥取県衛生環境研究所のwebサイトより
     「衛生環境研究所」
    http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=3565

      

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