男女共同参画推進員として活動した平成14年度1年間の所見を発表します。
1 石田敏光 推進員
任期を終えて・・・ありがとうございます
「石田さん、変わりましたね!」と片山知事から言われ、自分自身を顧みると、「男女共同参画社会」の実現は必要かつ当たり前のこととしてとらえ意識して実践するようになりました。
議員提案では全国初の鳥取県男女共同参画推進条例、それに基づく推進員制度は全国でも画期的なものです。
そこで当面の間、推進員4名の合議により審査を行うものとしました。
実際に審査を始めると、申出案件の処理には、ファーストフードのようにスピードが必要なものと、スローフードのようにじっくりと時間をかけて行うものがあると感じました。
平成13年度は、3件の申出があり、2件の助言を行いました。
平成14年度は、平成14年1月に提出のあった申出を継続審査し、9月に県に対して「審査結果通知書」を提出、勧告を行いました。
申出の内容は、鳥取県男女共同参画センター「よりん彩」には、会議室や研修室がなく、倉吉未来中心の9つあるセミナールームのうち、1、2を同センターの施設として位置付けてもらいたいとのことです。
面接調査、先進施設訪問調査、アンケート調査、全国の施設の状況調査等を行い、会議を重ねた結果、申出のとおり、セミナールーム1、2をセンターの施設として位置づけるように措置をするよう勧告しました。
鳥取県は全国の中でも、男女共同参画推進の先進県として注目を浴びており、片山知事のリーダーシップは殊に有名です。そのシンボルとして重要な拠点となっている「よりん彩」だからこそ実現していただきたいのです。その為には条例の見直し等多くの難題を解決していかなければなりません。
この2年間推進員を経験して感じていることは、知事が提言、実行されているノルウェーの「クォータ制」(公的に任命される理事会、審議会、委員会は、男女両方のメンバーから成り、一方の性が少なくとも40%を占めなければならないこと)が官民を問わず男女共同参画社会を実現するためには重要だということです。
「よりん彩」は、県として又市町村と共に数多くのセミナー等ソフト事業を展開しています。もっと多くの人の参画を期待しています。
任期満了に当たり、いっしょに議論した推進員の大月さん、伊達さん、西村さん、関わりのあった多くの皆さんに感謝を申し上げ、引き続きこの経験を生かし男女共同参画社会の実現に向け努力する所存です。
片山知事をはじめ、皆様のご活躍を期待します。ありがとうございました。
2 大月悦子 推進員
「男女共同参画推進課」と「苦情の申出」がキーワード
鳥取県男女共同参画推進条例に基づいて、推進員に任命され、2年の任期が終了致します。
埼玉県に次いで、全国に先駆けてということもあり、どのような苦情の申出があるのか期待と不安の出発でした。苦情があるということはジェンダーに敏感な視点を持っている県民がいるということ、改善されることにより、男女共同参画社会の推進に繋がる。知事の英断によって設けられた制度である。
初年度は思考錯誤の中で進められましたが、2年目には、推進員会議の運営に係る原則を事務局と確認し、型を整えつつ、事案の審議を進めることが出来ました。
平成13年度第3号申出(2ページ参照)は、男女共同参画を推進するために必要な体制の不備を指摘したもので、この申出は今後の鳥取県の取り組みを問うているものであった。
申出に対して、「勧告」という当初予想もしていなかった、厳しい審査結果を知事に通知した。
調査、学習、資料収集、他の施設訪問など、何度も議論を重ねての結果である。
勧告に対して「男女共同参画推進課(以下担当課)」は「NO」という返答でした。また、倉吉市のみに対して、他の市町村は活動の拠点の整備・提供に取り組んでいるから活動の拠点の整備、提供を積極的に検討して頂きたいとの依頼がなされている。
この事案の審議の過程で担当課は当初から、特定の個人的な申出と理解した先入観を持ったままでの検討と伺えた。
知事に決裁を求める書類に添付している資料は反対しているもののみで、一方的な情報で決裁されたものでした。
推進員は、担当課が男女共同参画社会を推進する後押ができる、いわゆる車の両輪と考えていただけに失望は大きなものでした。
勧告と併せて担当課に男女共同参画社会の実現を目指しての研鑽を望んだ、その回答は、研修会に参加すること、団体の意見を聞くことでした。これらは勿論大切なことであるが、研鑽は鳥取県が他県に例のない多くの県民が係わって策定された、条例の趣旨、内容の理解、県民の意見に対する対処のことであるということを改めて望みたい。
もう一方、男女共同参画社会を推進する重要なキーワードは、県民の苦情である。ジェンダーに敏感な視点で、「変だな、不合理だな」と感じていてもそれを申し出るまでには、かなりハードルが高いようでした。気軽にとは無理かもしれないが、あらゆる機関で考え直す機会にもなり、苦情の申出は歓迎されるものである。勇気を持って申し出て頂きたい。
今後はその面でのお手伝いをしたいと考えています。
3 伊達季代子 推進員
人権の世紀をつくる
鳥取県男女共同参画推進員の任を拝命して2年間が、3月で終わります。「人権の21世紀」を実現すべく、県政の県民への人権意識啓発活動の展開が着実になされているのを肌で感じた2年間でした。情報公開の時代ということも、県民一人ひとりの人権意識へ大きな影響を与えていると思います。
しかし、「平成13年度第3号申出」に対して私たち推進員が片山善博鳥取県知事に行った勧告(3ページ参照)についての、県・男女共同参画推進課の対応は、「推進」という文字が全く当てはまらないものでした。急遽、こちらが希望し、開かれた片山知事との話し合いで、「男女共同参画はユニバーサルデザインです。」という県の姿勢を確認することができました。担当課は、せっかくの知事の姿勢を無にしないような歩みをしていただきたいと思います。
2年間の月日の間に、全国的に見ても、市町村レベルで見ても、男女共同参画への関心は大いに高まっています。実際、鳥取県でも「男女共同参画センターよりん彩」(倉吉未来中心)の“出前講座”や“一日移動センター ミニよりん彩”などの参加者の中に、回を追うごとに男性の姿が多く見られるようになりました。男女共同参画社会について共に学んでいる喜びを感じます。共感しあえる人との出会いがそこにはあるからです。ある男性の参加者が、「私は皿洗いを手伝い、ゴミ出しも手伝いますよ、と自負していたのですが、その手伝っているという意識が、まだまだ共同参画の意識に至っていないのだなと思いました。少しずつ勉強になっていますよ。」と語られた言葉に、人権の世紀をつくっていくのは一人ひとりだなと思いました。
幼児教育現場に身を置くものとしては、日常に“一人ひとりを大切に教育をする”という教育の基本があり、それは一人ひとりの子供の存在を尊重するという姿勢がなくては不可能です。そういう意味で、幼児教育現場は男女共同参画社会のモデルになるべきであろうと考えます。世界を見渡してみると、算数や国語のように教科書を使用している国もあるのですから。しかし、鳥取県の教員新任採用研修には、男女共同参画社会の講義はありません。鳥取県には「人権局」も置かれたことですし、他の部署との連携を期待しています。
私自身、男女共同参画社会についてはまだまだ勉強中です。だからこそ、「男女共同参画って?」とか「PTAでできることを考えたいのですが」とかの声に耳を傾け、さらに共に考えていきたいと思います。
4 西村正男 推進員
所見
本年度の推進員の活動は平成13年度第3号申出について審査して勧告をしたことに尽きるので、その勧告が必ず実現されなければならないことを述べる。
申出の全部の内容及びこれに対する勧告の全部の内容は別途報告されているとおりであるが、勧告の趣旨は「倉吉未来中心のセミナールーム1~9のうちセミナールーム1、2を鳥取県男女共同参画センターの施設として位置づけるよう措置すること。」である。条例の定める本来の「勧告」はこれが初めてであり(これまでの2件の申出に対する結論の「助言」についての説明は昨年度の報告書中の私の所見を参照)、極めて意義深いものであると自負している。
しかしながら、この勧告に従って是正又は改善の措置をとることには、大きな困難を伴う。それは、倉吉未来中心が複合施設であることから、県以外の諸団体との交渉調整を要するし、条例(鳥取県立倉吉未来中心の設置等に関する条例)の改正をも必要とするからである。推進員はそのようなことも承知の上で、鳥取県の男女共同参画を進めるにはぜひとも必要であるとして、この勧告をしたのである。
この予想される困難に恐れをなして逃げ腰となったのが、男女共同参画推進課である。同課の逃げ腰対応は2回あり、1回目は、審査中に示された同課の見解「セミナールーム1、2を男女共同参画センターの付属施設とすることについて、男女共同参画推進面ではマイナスの方が大きい。」であるが、その不当性は勧告の理由中で述べた。2回目は、勧告後の2月19日に、勧告に対する回答として同課が推進員に示した「セミナールーム1、2を男女共同参画センターの付属施設とは位置づけない。」という見解である。しかし、推進員の勧告に対する回答としてこのような見解を示すことは、鳥取県男女共同参画推進条例に対する明白な違反である。同条例によれば、推進員の勧告については、県の機関はこれを尊重して是正又は改善の措置を講じなければならず(第30条2項)、その後は、推進員が県の機関に是正又は改善の措置についての報告を求めることとなっており(第31条)、推進員の勧告に対して県の機関がこれに異をとなえることは全く想定されていないからである。このように、男女共同参画推進課の条例に対する無理解には甚だしいものがあると言わなければならない。条例を正しく解釈する限り、推進員の勧告は県の機関により必ず実現されなければならないものであり、未実現である限り、推進員は永遠に是正又は改善の措置の状況の報告を求めることになるのである。
男女共同参画社会の実現のために、全国でも希な推進員制度を設けた鳥取県であるが、推進員が行った最初の「勧告」をも実現しないというのであれば、推進員制度の存在意義はないし、果たして、県に、男女共同参画社会の実現への意欲が真にあるかが問われていると言わなければならない。