2023年4月 タイ王国及び東南アジア諸国の動向

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タイ王国及び他の東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書

タイの自動車市場の今

 こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。

タイは「アジアのデトロイト」と呼ばれ、長らくASEAN域内における最大の自動車生産国として君臨してきました。世界がEV(電気自動車)へシフトしていく中で、タイ政府は今後も自動車産業の集積地としての立場を維持するために、EVに対する奨励策を打ち出しています。今回は大きな変革の入り口に立つ、タイの自動車産業の今についてお届けします。

 

タイ政府が掲げる目標と奨励策

 タイ政府は2030年までに国内の自動車生産に占める電気自動車(EV)の割合を30%に引き上げることを目標に掲げ、EVにおいてもASEAN域内の生産ハブになることを目指しています。現在のガソリン車を中心とした自動車市場、サプライチェーンから、EVへの段階的な移行を図るため、(1)供給面での支援策(投資促進)、(2)需要面での支援策(補助金による消費刺激)、(3)関連インフラ・制度整備(標準、試験施設、人材育成)の3本柱でEV普及を進めています。

 

タイ政府の主なEV振興策

販売補助金

小売価格200万バーツ以下(≒800万円)以下のBEVに対し、バッテリー容量に応じて7万~15万バーツ(≒28万~60万円)の販売補助金を付与

物品税引き下げ

(2022年~2025年)

車種に応じて0~2%へ引き下げ

(現行8%)

BEV車輸入関税引き下げ

(2022年~2023年)

20~40%引き下げ

(現行日本車20%、韓国車40%、欧州車80%)

 また、EV普及の大きなカギとなるバッテリーの生産や充電ステーションの整備についても優遇策を打ち出しています。タイ投資委員会(BOI)が実施したEV用バッテリー材料の輸入関税低減や充電ステーション運営の法人税免除を受け、多数の既存企業がEV用バッテリー工場の建設を発表したり、ガソリンスタンド最大手のタイ石油公社(PTT)が充電ステーションや充電器の設置を行うなど、インフラ整備の動きも活発になってきました。

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                                   商業施設の駐車場に整備された充電ステーション

 

タイ国内のEV販売動向

年別新車登録台数
2018
2019
2020
2021
2022
自動車全体
3,089,956
3,106,951
2,657,060
2,682,200
2,971,535
EV
BEV
273
879
3,051
4,834
15,090
HEV+PHEV
18,990
28,503
29,986
43,143
67,603
全体に対するEVの割合
0.62%
0.95%
1.24%
1.79%
2.78%

※BEV=バッテリー式電気自動車 HRV=ハイブリット車 PHVE=プラグインハイブリッド車データ出所:タイ運輸省

 

 タイ運輸省の発表によると、5年前の2018年には自動車全体に対して僅か0.62%だったEVの登録台数が、2022年には2.78%まで急増しました。特にBEVの台数は5年間で50倍以上、昨年と比較しても3倍以上と高い伸び率となっています。この好調なBEV市場を席巻しているのが、中国のEVメーカーです。中国EV最大手のBYD(比亜迪汽車)をはじめ、GWM(長城汽車)、MG(上海汽車)、NETA(哪吒汽車)などがタイの市場に続々と参入しています。現在はまだ売り上げのほとんどが完成車の輸入での販売となっていますが、各社ともにタイ工場の操業や新規建設を始めています。このように、一見好調に見える中国メーカーですが、購入したユーザーの間では供給不足による納車の遅れや故障時の修理などのアフターサービスの不備などに対して不満の声がインターネット上で話題となったり、高額な搭載バッテリーの交換費用や車両保険料が購入の障壁になるなど、問題点も少なくありません。

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                 中国メーカーBEVの中でも特に人気のBYD ATTO3(左)とORA(右)

 

タイ自動車業界のこれから

 先述のとおり、タイでは2030年に自動車生産に占める電気自動車(EV)の割合を30%にする目標を掲げています。その達成のために、タイ投資委員会(BOIは従来からの支援対象であるBEVに加えて、2023年から新たに燃料電池自動車(FCV)も優遇措置の対象としました。BOIのEV振興策は、恩典を使って優遇措置を受けたEVメーカーに対して、車体の生産開始から一定期間以内に指定された主要部品をタイで生産することを義務付けており、また補助金を利用してBEVを輸入・販売した企業に対しても、2026年からバッテリー(セル/モジュール)を国内生産することを義務付けています。このことにより、将来的にEV部品の国内サプライチェーンが構築されることが見込まれています。

 一方で恩典の内容は下がるものの、HEVやPHEVも引き続き優遇措置の対象であるほか、ガソリン車の生産も、機械の輸入関税免除の対象となっています。タイがガソリン車を含め幅広く優遇措置を継続する背景には、国内で生産された自動車の約半数が輸出されていることがあります。輸出先には新興国も含まれ、新興国では今後も一定のガソリン車需要が継続すると思われおり、そういった輸出先の幅広い需要に応えるため、タイはASEAN域内のEV製造ハブを目指しつつ、同時にガソリン車の生産も維持しようとしています。政府目標では2035年時点で自動車の国内販売を100%EVとする一方で、生産ではEVの割合を乗用車やピックアップトラックで50%、バイク(二輪)で70%、バスで85%にとどめて残りはガソリン車としており、その後も生産を継続する方針が垣間見えます。

 ここ数年で大きく変わり始めたタイの自動車業界ですが、今後その変化のスピードはさらに増していくと思われます。

 

 

 

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