2022年1月 タイ王国及び東南アジア諸国の動向

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タイ王国及び東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書

~新国家戦略「BCG経済モデル」~

 こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
 2015年9月に国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択され、昨今では日本でもこの言葉を目にする機会が多くなったと思います。タイでも2019年にバイオ(Bio)、循環型(Circular)、グリーン(Green)の頭文字から成る「BCG経済モデル」が提唱され、2021年1月にはプラユット首相が国家戦略モデルにすることを表明、2026年までの5か年計画でBCG関連産業に対する投資を加速させる方針を発表しました。
 今回の報告書では、この「BCG経済モデル」についてご説明いたします。


【目次】
  1. BCG経済モデルのターゲット産業
  2. 各産業の課題と目標
  3. BOIによるBCG関連産業への投資奨励

BCG経済モデルのターゲット産業

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、他国同様に経済が低迷していた2021年1月、プラユット首相は「タイは、農業国の一方で高所得国への発展を目指す中、BCG経済モデルを採用することで、新たな農産品による収穫最大化、農業手法や地域の最適化、廃棄物や化石エネルギーなどの削減を目指す」と、BCG経済モデルを国家戦略として推進していく考えを示しました。ターゲットとなる産業分野は、「農業・食品」「医療・ヘルスケア」「バイオエネルギー・バイオマテリアル・バイオケミカル」「観光・クリエイティブ経済」の4分野です。この4つの産業のGDPは、全体の21%に当たる3.4兆バーツ(約11.56兆円※)であり、これを2026年までに全体の24%に当たる4.4兆バーツ(約14.96兆円)に引き上げることを目標としています。(※1バーツ=約3.4円で算出)

 以下の具体的な4つの戦略に沿って計画が進められます。

[戦略1]

〇保全と利用のバランスを取りながら、資源基盤と生物多様性の持続可能性を推進する。

[戦略2]

〇資本、資源、アイデンティティー、創造性、最新技術を用いて、共同体と草の根経済の能力を向上させる。「生物多様性」と「文化的多様性」を重視しつつ、地域を基盤とする発展可能性を「内側からの爆発」に活用し、生産チェーンをより高付加価値なものへと昇華させる。

[戦略3]

〇知識、技術、イノベーションにより、BCG経済の下で産業における持続可能な競争力を向上・促進するとともに、「少ない方が豊か」という思想に基づいた環境に優しい生産システムを重視する。

[戦略4]

〇世界的な変化に素早く対応する能力、免疫力を高め、影響を緩和する。


NSTDA(タイ国立科学技術開発庁)によるBCG経済モデルのイメージロゴ
NSTDA(タイ国立科学技術開発庁)によるBCG経済モデルのイメージロゴ


各産業の課題と目標

【農業・食品】

 かつては「アジアの穀庫」と呼ばれ、世界最大のコメの輸出国としても知られていた農業国タイですが、近年ではその座をインドやベトナムに奪われ、2020年の統計では世界第三位となっています。近隣のコメ生産国と比べて生産性が低く、労働者人口の3割前後が農業に従事しているにも関わらず、GDPの10%前後しか生み出せていません。今後はより高度な機械化、スマート化により生産効率を上げるとともに、製品の高品質・高付加価値化が求められます。

【医療・ヘルスケア】

 タイも日本と同じく少子高齢化問題を抱えており、将来的な医療・介護費の増加が心配されています。またワクチンや医療・医薬品の多くを輸入に頼っているため、医療分野の自立を目指し、タイ政府はワクチン、バイオ医療、医療機器の研究開発と生産技術を向上させ、予防医療・個別化医療を推進する医療政策を進めています。

【バイオエネルギー・バイオマテリアル・バイオケミカル】

 タイでは近年PM2.5などの大気汚染の深刻化や国内天然ガス資源の枯渇などを背景に、エネルギー政策の見直しの必要性が高まっています。その中で再生可能エネルギーは2014年以降の年平均成長率が10%以上の伸びを続けており、タイにとって欠かせないエネルギー資源の一つとなっています。再生可能エネルギーの中でもバイオマスエネルギーは7割以上を占めていますが、年間4,000トンのバイオマスが未使用と試算されていますので、今後も成長が期待されます。また、東部経済回廊(EEC)の事務局は、域内にバイオ技術の技術開発プラットフォーム「バイオポリス」を用意し、バイオ産業に関連した技術革新を支援する方針です。

【観光・クリエイティブ経済】

 新型コロナウイルスが流行する以前、タイの観光収入は世界第4位の605億ドル(約6.6兆円)で、GDP全体に占める割合は約1割でタイにとって観光業は非常に重要な産業となっています。新型コロナウイルスの影響によって大打撃を受けた産業でもありますが、今後はデジタルインフラを整備しつつ、持続可能かつ自然の観光資源が回復できる観光を目指して、フードツーリズム、エコツーリズム、文化観光、スポーツ観光、ウェルネス観光といったニッチな分野との連携を図りながら、アップグレードした観光立国としての復活を目指します。


生産性向上が課題のタイの農業
 デジタルインフラの整備やニッチな分野との連携を通じて復活を目指すタイの観光
[左]生産性向上が課題のタイの農業、[右]デジタルインフラの整備やニッチな分野との連携を通じて復活を目指すタイの観光


BOIによるBCG関連産業への投資奨励

 タイ国内への投資奨励業務を担当するタイ投資委員会(BOI)が発表したBCG経済分野の対内直接投資動向によりますと、2021年1月から9月までのBCG関連直接投資は、申請ベースで前年同期比で2.6倍にあたる1,284億バーツ(約4,366億円※)となりました。この額は、同期間中の対内直接投資額全体の約4分の1にあたり、注目度の高さを示しています。(※1バーツ=約3.4円で算出)

 BOIは、BCG関連産業への直接投資をさらに増やすべく、国内外の事業者からの投資に対して様々な恩典を付与しています。付与される恩典の条件や内容については、事業内容によって細かく分類されていますが、主な恩典は以下の通りです。

[主な恩典]

 ・法人所得税の免除(最大8年間)
 ・機械輸入税の免除
 ・輸出向け原材料の輸入税の免除
 ・研究開発に使用する原材料の輸入税の免除
 ・その他、税制以外の恩典(土地所有許可、スマートビザなど)


 また、同時に地方への産業誘致を促進するために、各経済回廊ごとに立地に基づいた開発を計画し、地域によって追加の恩典も付与する方針です。


BCG関連産業の立地に基づいた開発(BOI資料より抜粋)
BCG関連産業の立地に基づいた開発(BOI資料より抜粋)


 タイは、2015年に採択された地球温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」に批准した最初の締約国の1つであり、2030年までに温室効果ガスを20~25%削減することを表明しています。また、タイ政府は2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる「カーボンニュートラル」の達成、2065年までに排出量ゼロの「ゼロエミッション」の達成を目標に掲げ、あらゆる手段で気候変動課題に取り組む姿勢を示しています。BCG関連産業には絶好の進出機会ですので、ご興味をお持ちの方は当ビューローにぜひご相談ください。


県内企業の皆様への現地情報のご提供について

 タイ王国の最新の現地情報については、以下にお問合せください。

鳥取県東南アジアビューロー 担当:辻 三朗 (TSUJI SABURO)

TEL/FAX:+66-(0)2-260-1057+66-2-260-1057
E-mail:tottori@aapth.com

鳥取県商工労働部通商物流課 担当:永田

TEL:0857-26-76600857-26-7660
FAX:0857-26-8117
E-mail:tsushou-butsuryu@pref.tottori.lg.jp

鳥取県東南アジアビューローの運営法人(鳥取県が業務委託)

アジア・アライアンス・パートナー・ジャパン株式会社

 タイを中心に、ベトナム・インドネシア・インド・メキシコにて主に日系中堅・中小企業様の海外進出や進出後の会計税務法務を中心とした運営支援業務を行っております。

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最後に本ページの担当課    鳥取県商工労働部通商物流課
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