~タイのEC市場について~
こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
タイ政府は、タイで新型コロナウイルス感染症が拡大した昨年4月以降、ロックダウンによる規制強化と緩和を繰り返してきましたが、国民生活に大きな影響を与えた規制の一つとして「大型商業施設(デパート・ショッピングモールなど)の閉鎖※」が挙げられます。
(※2021年9月時点では時短営業中)
そのような状況の中、EC(電子商取引)の市場が順調に拡大を続けています。
今回は、タイにおけるEC市場についてお伝えします。
【目次】
- タイのEC市場のトレンド
- タイの主なECプラットフォーム
- タイのEC市場の今後と課題
1 タイのEC市場のトレンド
タイのオンラインマーケティングサイト「Marketeer Online」によると、タイのEC市場の市場規模は、コロナ禍以前の2019年は1,633億バーツ(約5,438億円※)でしたが、コロナ禍の影響を大きく受けた2020年には2,940億バーツ(約9,790億円※、前年比81%増)にまで成長しました。(※「1バーツ=3.33円」で算定)
2018年までの市場成長率が10~20%であったことを考えると、この1年間の成長は驚異的な伸びと言えます。その要因として、コロナ禍におけるロックダウンの規制により、実店舗での買い物ができなくなったことが大きく影響していると言われています。また、利用者の7割以上が、スマートフォンを使用して購入しているなど、スマートフォンの普及も一因と言われています。
品目別の売上げを見ると、最も売れているのは携帯・家電製品で全体の約4分の1を占めています。以下、ファッション、美容、生活雑貨と続いています。
2 タイの主なECプラットフォーム
タイのECプラットフォームで2大勢力といえるほど圧倒的な数の利用者を誇るのが、「Shopee(ショッピー)」と「Lazada(ラザダ)」の2社です。
Shopee
サービス開始は2015年と後発ながら、若者に人気のアイドルグループや世界的人気を誇るサッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドをブランド大使として任命するなど積極的なマーケティング活動を展開し、タイでもっとも利用されるECサイトの1つになるまで急成長を遂げました。
Shopeeが急成長を遂げた最大の要因として、購入者が商品を受け取るまで販売者への支払いを保留する「Shopee Guarantee」という機能が挙げられます。かつての日本と同様に、EC(通信販売)を使ったっことがないタイ人は「無事に商品を受け取ることができるのか?」という不安から、ECサイトを通じた買い物を避ける人も少なくなかったですが、この機能により購入者の安全性が確保されたことで、EC初心者の利用が急増したと思われます。
また、ライバルのLazadaと比べてC2C(消費者対消費者)取引が多いことも特徴です。
残念ながら、対応言語がタイ語のみとなっているため、現地在住の外国人にとっては利用するためのハードルが高くなっています。
Lazada
タイでまだECの利用が少なかった時代にECサイトを立ち上げたLazadaは、タイにおけるECサイトの先駆け的存在です。
ドイツのベンチャー企業「ロケット・インターネット」が、世界最大のECサイトである「Amazon.com」が参入していない東南アジアのオンライン消費者市場を狙い、2012年にインドネシア・マレーシア・フィリピン・タイ・ベトナムの5カ国でサービスを開始、2014年にはシンガポールでもサービスを開始しました。2016年に中国のEC最大手のアリババの傘下に入り、その後も利用者・出店者ともに順調に成長を続けています。
出店できるのは法人のみであり、中古品の販売はできないなど、B2C(企業対消費者)取引のみとなっているので、Shopeeと比べて幅広い品揃えが特徴です。昨年、自動車メーカーのトヨタがオフィシャルショップをLazada内に開設し、純正部品のオンライン販売を始めたことも話題になりました。
英語対応もされているので、外国人も容易に利用できます。
その他のプラットフォーム
その他にも、実店舗をもつデパート(Central Online)やホームセンター(HomePro)、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど、あらゆる小売業態がEC市場に参入を果たしています。
昨年のタイにおける小売市場全体に占めるECの割合(EC化率)は約8%でしたが、今年は10%以上に拡大すると見られてており、今後、益々EC化率が増加していくと思われます。
3 タイのEC市場の今後と課題
Lazadaの運営会社Lazada Thailandによると、タイのEC市場は2021年も順調に成長し、市場規模は二桁拡大すると見込まれています。
同社が運営するブランド正規品のオンライン店舗「LazMall」は、ロックダウンの影響で実店舗での販売ができなくなったブランド各社が続々と出店し、出店しているブランドは前年から4.5倍の9,000を超えました。売上げが約63%、注文数が約67%、顧客数が約47%とそれぞれ大幅に増加しています。
このように順調に成長を続けるタイのEC市場ですが、問題がないわけではありません。
タイでは、以前は日本に比べて個人向けの小口荷物の物流サービスがあまり普及していませんでした。近年のEC市場の成長に合わせて外資を含めた多くの物流企業が参入しましたが、急速な成長スピードに追いつけない状況が続いています。
また、利用者の多くが住むバンコク都心部では慢性的な渋滞が発生しているため、四輪自動車での配送は時間がかかってしまいます。一方、素早い配送が可能なバイク便は、少ない物量しか運ぶことができません。今後、このような物流の問題をどのように解決していくかが課題だと思われます。
海外からEC市場に参入する「越境EC」については、タイでの障壁となるのが「関税」です。
国外からタイの個人(購入者)宛に国際郵便で商品を送る場合、品物の申告価格が1,500バーツ(約5,000円)を超えると関税が発生し、購入者が受け取りの際に納付しなければなりません。つまり、購入者は商品の購入代金に加えて関税も支払わなければ、商品を受け取ることができないということになります。
タイの業者と提携し、現地の倉庫に在庫をして発送する方法もありますが、この場合もタイ側で通関する際に関税が生じることは同じで、さらに倉庫の使用料も発生します。また、化粧品や食品などは食品医薬品局(FDA)の認証が必要とされているため、事前に登録申請が必要です。中国のような越境ECに対する税の優遇措置がタイでも施行されない限り、残念ながら日本からタイへの越境ECは難しいと言わざるを得ません。
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鳥取県東南アジアビューローの運営法人(鳥取県が業務委託)
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