2020年10月 タイ王国及び東南アジア諸国の動向

    タイ王国及び他の東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書

    1. デモの発端・現在までの経緯
    2. これまでのデモとは異なる点
    3. おわりに

なお、全文版ではタイの経済統計を1ページにまとめた「ワンページタイ経済」も併せてご覧いただけます。

  

タイ王国及び他の東南アジア諸国の経済・産業動向、社会動向報告書2020年10月

 こんにちは。鳥取県東南アジアビューローの辻です。
 日本でも各メディアで報道されたことと思いますが、現在タイでは連日、反体制デモがひらかれています。2019年野党の新未来党の党首であるタナトーン・ジュンルンアンキット氏の議員資格の剥奪に端を欲し、活発化を見せているタイの反体制デモ。今回は世界的に注目を集めるデモが起こるに至った背景や、今までの運動と異なる点についてお伝え致します。

1.デモの発端・現在までの経緯

デモの発端

 現在タイ国内で行われているデモは、2019年末に野党の新未来党の党首であるタナトーン・ジュンルンアンキット氏の議員資格が剥奪され、その後、2020年2月21日には同党の解党と党首を含む幹部16人の今後10年間の政治活動の禁止が命じられたことに端を発します。
 この新未来党は、それまでタクシン派・半タクシン派と国を二分していたどちらの勢力でもなく「反軍政」を掲げ、2019年3月に実施された総選挙の数カ月前に結党された新党ながら、下院で500議席のうち約80議席を獲得し第3党へと躍進。軍政を批判し、クーデターを禁じる憲法改正や軍の人員半減などの公約を打ち出し、若者を中心に高い人気を博していました。

現在までの経緯

 現在行われているデモの参加者の主な要求は、(1)プラユット政権の退陣 (2)新憲法の制定 (3)国民への脅迫の中止 の3点です。
 今年2月の新未来党への解党命令を受けて始まった今回の反政府運動ですが、3月に新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が発令した非常事態宣言により、集会の禁止や夜間の外出禁止措置が取られたため、一旦沈静化しました。しかしその後、非常事態宣言による規制の緩和が進むのに伴い、6月下旬頃から再び運動が開始されるようになりました。(コロナウイルスの感染拡大に係る非常事態宣言は現在、7度目の延長により、11月末日までとされています。)以降、運動は活発化、不定期的に行われているデモの規模も拡大しています。

 このデモの規模拡大を受け、タイ政府は10月15日午前に非常事態宣言(コロナウイルス感染拡大に係る非常事態宣言とは異なります。)を発令し、5人以上の集会を禁じることとなりました。しかし、同日午後以降も集会の開催は止まらず、16日には、バンコクの中心部で行われた集会中に、タイ警察がデモ隊に向けて放水。デモ隊の強制排除に動き、現場は緊迫した状況となりました。以降も18日には、バンコクの中心部で2万人規模の集会が行われる等、この強制排除の動きが逆効果となり、運動は活発化する結果となりました。また、14日からの連日のデモの影響により、一部道路の封鎖や、バンコクの主要公共交通機関であるBTSやMRTが一時運転を停止する等、一時は市民生活にも影響がおよぶほどに、集会の規模は拡大しました。

 タイ政府はその後、10月22日の正午付けでデモ対策の非常事態宣言を解除。更に10月26、27日には臨時国会を開催し、そこでプラユット首相が憲法改正の支持を表明、解決策を見出すための委員会を設けることが提案されるなど、歩み寄りの姿勢を見せました。しかしその一方で、もう1つの争点である自身の辞任については拒否をしています。

2.これまでのデモとは異なる点

 現在タイ国内で行われているデモには、過去に行われていたデモと比較していくつか大きく異なる点があります。以下では、その中でも2つの点に焦点を当ててご説明致します。

(1)学生の積極的なデモへの参加

 現在行われている反政府運動は、大学生をメインに構成された学生団体が主催しています。2月~3月の運動開始当初は、学生団体が在籍する大学学内で行われるものがほとんどだったものの、7月以降はその活動範囲を広げ、BTSの駅近郊等にも活動の場を移しています。
 この動きが更に若い世代、中高生にも波及しており、大規模集会に参加する学生も多く見受けられ、更に8月21日には、中学・高校生ら500人以上が教育省前に集まり首相の辞任や憲法改正を求める反政府運動を行いました。大規模集会において高校生が演説を行う場面も見受けられており、過去の運動と比べ、中・高校生の若い世代の積極的な関与が、今回の運動全体の1つの大きな特徴として取り上げられています。デモを実施する学生たちは、SNSを駆使して集会の開催告知を巧みに行い、政府側の規制に対抗しています。

(2)直接的な王室の批判

 先に述べた通り、今回のデモには主な3つの要求があり、この現政府への批判や憲法改正等の内容については、過去に行われてきた反政府運動でも取り上げられてきたものです。しかし、今回のデモに参加している一部の学生からは、国王を頂点とする王室の改革についても10項目の要求が掲げられています。
 タイ国内では、王室は崇拝の対象とされており、国王らの名誉を傷つけると、不敬罪として1件につき最高禁錮15年の重罪が科されます。新たに掲げられたこの10項目の中には、この不敬罪の撤廃や王室の政治関与をなくすことが含まれています。国民が王室のあり方を議論するのはタブーとされてきましたが、コロナウイルスの影響で国民の生活が圧迫される中、タイ王室が世界有数の資産を持つことも不満を増幅させる一因となっています。
 タイのワチラロンコン国王は1年の大半をドイツで過ごしているとされており、10月26日にはデモ隊がバンコクにあるドイツ大使館へ行進し、大使館員へ、国王が同国から国事行為を行っているかの調査を求める要望書を提出しました。この件を巡り、ドイツのマース外相は26日、ドイツで国事行為を行うべきではないという見地から、「ドイツ政府は国王の行動を注視している」と述べており、今後の動向によっては国際問題に発展する可能性も孕んでいます。

3.おわりに

 タイ国内の反政府運動は、記事を作成している11月現在も継続的に行われています。若者世代の王室批判により、王室を崇拝する親世代との世代間の分断や王室擁護派との対立、更には、国王の生活拠点となっているドイツとの国家間での問題など、国内外においてより大きな軋轢を生み出す可能性を孕んでおり、タイ政府の対応を含む今後の動向について、国際的な注目を集めています。

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