令和2年度の当初予算編成等に当たっての留意事項

令和元年10月11日
総務部長

 豊かな自然の中で人々が支えあう「令和」の時代において、鳥取県が全国をリードし、新たな時代にふさわしい「幸せの形」と「地域の活力」の創造に向けて、今年度新たに掲げた「安心・しごと・ひと・暮らし・ふるさと」の5つの「令和新時代創造チャレンジ項目」をはじめ、本年度末に策定予定の「鳥取県令和新時代創生戦略(仮称)」に掲げる目標を実現するため、令和2年度当初予算においては、さらなる地方創生の取組や経済・雇用の安定、安心・安全な暮らしの実現など県政の諸課題の解決に加えて、国際情勢や国内の経済動向による県内への影響、さらにはSDGs達成に向けた取組やSociety5.0の実現など、現下の全国的課題への対応も含め、機動的かつ効果的に政策を展開しなければならない。
 その際、本年6月に新たに設定した財政誘導目標を念頭に、地方交付税の7年連続減少などにより、年々厳しさを増している本県の財政状況の中においても、持続可能な県政運営の道筋をつけるべく、さらなる行財政改革の推進や徹底したスクラップ・アンド・ビルドの実行など、事業の大胆な見直しと重点化を図るとともに、働き方改革として、予算要求業務の省力化、負担軽減に向けた取組の実施など、効率的な予算編成を行う。
 ついては、以下の事項に留意されたい。

  

1.基本的な考え方

  

(1)県財政を取り巻く厳しい状況

 国の財政状況は、平成30年度末の債務残高が対GDP比237%と主要先進国中最悪の水準が続く中で、今後も高齢化の進展に伴う社会保障関係費の増嵩が避けられない状況にあるが、令和7(2025)年度までに国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化という目標は堅持されており、歳入・歳出両面において財政健全化に向けた取組の一層の強化が想定される。
 本県においても、7年連続の地方交付税の減少や、度重なる災害対応による収支の悪化、さらには依然として高い水準にある公債費や高齢化による社会保障関係費の増加など様々な財政圧迫要因を抱えている。
 特に、本県財政に大きな影響のある地方交付税については、景気回復に伴う地方税収の増加により今後も総額の抑制が見込まれるが、消費税率の引き上げ分は、社会保障費の充実や臨時財政対策債の削減に充当されるため、地方が自由に使える財源にはつながらないことや、本県のように人口が少なく経済規模の小さな団体にとっては、景気対策によっても大きな税収増は期待できないことから、一般財源の確保をはじめ、今後も厳しい財政運営を強いられることが予想される。
 これらのことから、本県財政は今後も極めて厳しい財政状況を想定しなければならない状況であり、経済対策や全世代型社会保障の構築に向けた取組、さらには、人口減少下でのインフラの維持や地域公共交通網の形成などに重点的に予算配分を行う一方、選択と集中をより一層進め、財政の健全化を推進する必要が高まっている。

(2)徹底した事業見直しと重点化による重要施策の積極的な推進

 県財政を取り巻く状況が極めて厳しくなると見込まれる中で、重点施策に県の資源(財源・人員)を傾注する必要があるため、県民の皆様からの意見等を踏まえ、機動的に、最小の経費で最大の成果を導く、効果的な事業の立案を行うととともに、事業のスクラップ・アンド・ビルドをこれまで以上に徹底すること。
 その際、単に事業予算だけではなく、事業遂行する際のマンパワー等にも留意し、組織全体でのトータルコストの膨張は、厳に慎むこと。
 したがって、予算要求にあたっては、意義や効果の薄れた事業の見直しや類似事業の統廃合を積極的に行うため、新規事業はもとより全ての事業について費用対効果、必要性・緊急性等を検証するとともに、公共関与のあり方、持続可能性、国や市町村との役割分担などの視点で、思い切った事業の取捨選択を行うこと。
 また、一定規模以上の公共施設整備等の際には、「鳥取県PPP/PFI手法活用の優先的検討方針」に基づき、従来型手法(県の直営実施)に優先してPPP/PFI手法を検討すること。
 以上のことから、特に継続事業に関して、事業目的の明確化及び、成果の説明(定量的評価又は定性的評価)が困難な事業については、廃止を検討すること。

(3)地方創生の次のステージに向けた取組

 国においては、2015年度から2019年度までの地方創生の取組を踏まえ、本年12月に第2期のまち・ひと・しごと創生総合戦略を策定し、「関係人口」の創出・拡大、Society5.0の実現、SDGsを原動力とした地方創生など、新たな視点に重点をおいて施策を推進することとしている。
 本県においても、今年度中に「鳥取県令和新時代創生戦略(仮称)」を策定することとしており、「令和」新時代において鳥取県が全国をリードすべく、今年度新たに掲げた「安心・しごと・ひと・暮らし・ふるさと」の5つの令和新時代創造チャレンジ項目の実現に取り組むとともに、地方創生の取組を一層加速し、その実現に向けた歩みを確かなものとするため、創生戦略に盛り込む施策の実現に積極的に取り組むこと。

(4)ICT技術の活用による事務の効率化

 AIやRPAといったICT技術を活用することにより、更なる業務の効率化を行い、多様化する県民ニーズに応えるなど、働き方改革や県民サービスの向上に資する取組については積極的に検討すること。あわせて、各事業の予算要求に当たっては、関係する事業者など、県民の働き方改革の観点からも事務負担軽減等の検討を行うこと。

(5)鳥取県産業振興条例、障害者優先調達推進法、鳥取県手話言語条例及びあいサポート条例等を踏まえた対応

 県内産業の育成による県内経済の発展と県民の雇用の確保を目的に制定された「鳥取県産業振興条例」の趣旨を踏まえ、県産品・県産材のより一層の活用に努めるほか、県内在住・県出身の人材、県内事業者の活用を意識した事業の組み立てを検討すること。
 障がい者就労施設等の受注の機会を確保するために制定された「障害者優先調達推進法」の趣旨を踏まえ、障がい者就労施設等から優先的に物品及び役務を調達するよう配慮することとし、予算積算時に障がい者就労施設等から見積書を徴取するなど、積極的かつ計画的な発注につながるよう努めること。また、「鳥取県手話言語条例」や「あいサポート条例」の趣旨を踏まえ、手話通訳者及び要約筆記者の配置に必要な経費を見積もるなど、ろう者が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう配慮するとともに、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の充実と情報アクセシビリティの保障に配慮すること。
  

2.予算編成に当たっての留意事項


  

(1)政策戦略会議と「知事一発査定」

 予算査定に先駆けて「政策戦略会議」等を開催し、戦略的課題や部局横断的な課題に対して、統轄監を中心とした幹部間の連携により方針を検討することとし、その過程においても、県民・団体等の意見交換を積極的に実施するとともに、令和新時代プロジェクトチーム等の場で部局を超えた議論を行うこと。
 政策戦略会議において検討する「政策戦略事業」については、年内は立案段階として十分な議論・検討、事業化に向けた論点整理を中心に行う期間に充て、予算要求を行うこと。なお、働き方改革の観点から、「知事一発査定」を実施し、査定は知事の一段階だけとする。
 また、1月を「政策戦略事業」を中心とした予算編成に充てるため、これを除く「一般事業」については先行して予算要求を行い、1月初めに計上案をホームページで公開する。「一般事業」の査定においても、政策戦略事業同様、これも知事レビューにおいて一発査定とする。
 例年、継続事業で政策的議論の必要性が低い事業についても政策戦略事業として要求されるケースがあることから、効率的に予算編成作業が行えるよう、政策戦略事業については真に政策的議論が必要なものに限定して要求すること。

(2)作業の効率化、省力化による働き方改革の実現

 国全体の働き方改革の動きを踏まえ、県庁自らが働き方改革に率先して取り組む必要があることから、予算要求業務においても全庁を挙げてカイゼン、時間外勤務の縮減に取り組むこと。
 予算要求業務における省力化、負担軽減を図るため、「議案説明資料」作成のオートメーション化や予算要求資料の削減を行うとともに、定例的で政策的判断を伴わない事業について、財政課による聞き取り・計上案整理作業の簡素化に取り組む。その他の事業についても財政課が行う要求課からの聞き取りについては、原則として終業時刻までに終了することとする。
 また、働き方改革や「知事一発査定」の観点から、一律に行っていた財政課長聞取については、廃止することとする。加えて、予算要求資料については、真に必要なものを厳選するとともに、データベースによる情報共有化や既存資料の活用を徹底すること。
 要求課においても、日々の業務改善は、県民のみならず、職員の負担軽減にも繋がることから、本庁と地方機関との間で行われる資料作成などにおいて、例年どおりの前例踏襲による無駄な作業が生じていないかなど、すべての予算要求業務の再点検を行い、資料作成の省力化や作業の効率化に努めること。
 また、契約事務の省力化を図る観点から、現在、単年度で契約している保守管理委託契約等についても複数年契約への移行が適当と考えられる場合には、債務負担行為を活用すること。

(3)「県民とともに作る予算」

 本予算は「県民とともに作る予算」であり、「鳥取県民参画基本条例」の趣旨を踏まえ、事業の企画立案に当たっては、積極的に現場に出向き、現場を担う方々や県民の皆様からの声、各種団体からの意見や提言に素直に耳を傾けながら事業を検討すること。特に、地方創生を先導するための効果的な対策を具体的に打ち出すためには、現場の方々の意見や提言が極めて重要であることから、様々な声に対して県の立場で政策目的を明確化し、事業の効果性も十分念頭に置きながら検討すること。

(4)市町村の役割への配慮

 県と市町村はパートナーであるとともに、市町村は住民に一番身近な地方公共団体であり、住民生活に密着した行政を行っていることに鑑み、県の施策実施に市町村の協力をあおぐに当たってはその自主性を尊重すること。
 特に、各市町村の地方創生が実現し、さらに県全体の地方創生へとつなげていくためには、県と市町村がこれまで以上に連携・協力して取り組んでいくこと。
 したがって、市町村を通じて実施することが現実的、効果的と考えられる施策については、市町村における適切な判断に基づき予算措置等が円滑に行われるよう、令和2年度当初予算編成に当たり、十分に事前の相談・調整を行うこと。
 なお、既存施策であっても、事業の実施状況や現場、市町村からの意見等を踏まえて総点検を行い、市町村の関与や負担のあり方について検証を行うこと。

(5)国の制度・施策に関する情報収集の徹底

 国の予算編成は、「令和2年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針」において、裁量的経費を10%削減する一方で、「新しい日本のための優先課題推進枠」を設けており、Society5.0の実現に向けた安心・安全なデータの流通・利活用が図られる環境の整備など、「経済財政運営と改革の基本方針2019」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ・令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」等を踏まえた諸課題について予算編成過程において検討するとされ、真に必要なニーズにこたえるためゼロベースでの精査、施策・制度の抜本的見直しや各経費間の優先順位の厳しい選択が行われることが予想される。
 したがって、様々なチャンネルを使って国の動向等についての情報収集・分析を徹底し、国庫補助金などの有利な財源措置を積極的に活用するとともに、できる限り適切な見積もりを行った上で要求すること。

(6)財源確保に向けた取組の強化

 未利用財産の処分、環境の変化等により遊休化している県有資産の徹底的な洗い出しと利活用、広告料収入の確保、基金や特別会計の総点検、受益と負担の公平の観点から費用を徴収すべきものがないか等、新たな財源の確保について積極的に検討すること。
 国庫の財源措置のみならず、各種公益法人等からの事業内容に応じた助成も含めて、当該助成制度が本県の実情や具体的事業に適合したものかどうかを十分に検証した上で積極的に活用すること。
 また、ふるさと納税による地域活性化をより一層進めるため、使い道を明確にして共感を得ることにより事業の原資を募る「クラウドファンディング型ふるさと納税」の活用ができないか、既存事業も含め点検を行うこと。加えて、新たな事業を立案する場合には、社会貢献意欲のある企業から原資を募る「企業版ふるさと納税」の活用ができないか、積極的に検討すること。
 なお、有利な助成財源があることのみをもって必要性・緊急性の低い事業を行うことがないようにすること。

(7)予算要求額及び事業数の精査

 一層厳しさを増した本県の財政状況を踏まえ、予算要求段階から更に経費の精査を図ることとし、経費の積算に当たっては、事業ごとの決算額や令和元年度の事業の執行状況を踏まえるとともに、特に新規事業については関係者との調整を十分に行い、事業ニーズを的確に捉えることにより、過大な見積もりとならないよう留意すること。
 なお、補助金については、年度途中で安易に補正予算により増額することのないよう、執行方法についてよく検討した上で積算、要求すること。
 また、予算要求作業の簡素化と、弾力的な予算執行、決算作業の効率化を図る観点から、住民ニーズ等を踏まえた新規事業の打ち出しや事業の再編を行った場合は、徹底したスクラップ・アンド・ビルドの実行により、事業内容や目的等が類似した事業については廃止し、事業数の削減に努めること。

(8)予算編成過程の透明化

 予算要求段階から予算編成過程を公開するので、事業名も含め県民へのわかりやすさを第一に考えて要求書等を作成することとし、特に用語については、いわゆる行政用語や専門用語、外来語やカタカナ語、略語などで県民にわかり難い表記がないかどうかを十分に注意すること。

(9)規制改革会議や県政モニタリング事業における意見の反映等

 規制改革会議がとりまとめた規制緩和や廃止、手続きの簡素化等に関する県民からの提案に対する対応方針や、県民参加型の行政評価として実施している「県政モニタリング事業」においてとりまとめられた改善提案を踏まえ、それらを可能な限り反映した要求を行うこと。

(10)NPO等との協働・連携事業の的確な対応

 NPO等との協働・連携事業を立案する場合は、所要経費の積算において、実施する事業の内容に応じて人件費を的確に見込むこととするほか、事業実施に当たっての諸手続などで相手方に過度な負担を課すことのない仕組みを検討すること。
  

    

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