(これは、「とっとり夢ひろば」第83号(平成28年7月発行)へ掲載された記事です。)
平成28年2月、鳥取県立博物館に所蔵されている銅剣(どうけん)にサメの絵が見つかったことが話題になりました。弥生時代の銅剣に絵が描かれることは珍しく、特に、製造後に絵を描いたものは、全国でも初めての例です。
現在、鳥取県立公文書館県史編さん室では、鳥取県の歴史をまとめた『新鳥取県史』を編さんしています。その本に今回の銅剣も紹介されることになり、奈良文化財研究所という研究機関に詳しい調査を頼みました。その際、この銅剣にサメの絵が描かれていたことがわかったのです。銅剣とは、今から約2000年前の弥生時代のマツリ(儀式)の道具のひとつです。
鳥取県立博物館蔵 奈良文化財研究所撮影
当時描かれた絵には、右手に武器と左手に盾を持つ人物や、2個の銅鐸(どうたく)のようなものをつり下げた木などがあり、マツリの様子を表していると言われています。そのようなことから、銅剣や銅鐸といった青銅の道具を使ってムラの繁栄や食物の豊作を祈願していたと考えられています。
また、弥生時代に描かれる生き物のモデルは、シカ、サギ、カエルなどといった田んぼに現れる生き物で、食物の豊作をイメージさせるものが普通です。サメの絵は、島根県から兵庫県までの日本海沿岸でしか発見されていませんし、今回の銅剣を含めて現在確認されている13点の出土品のうち、なんと11点が鳥取県で見つかっているのです!鳥取県周辺に住んでいた弥生人たちは、マツリの道具にサメの絵を描くことで、とても地域色の強い儀式を行っていたと考えられます。
サメ絵画土器
海の中で暮らす生命力あふれるサメを選んで描いた人々は、海とのかかわりがとても深い暮らしをしており、サメの生命力にあやかりたい思いがあったと想像できますが、どのような儀式を行っていたのかは、まだ謎のままです。
この銅剣は、現在、鳥取県立博物館に展示されており、他にも弥生時代のマツリの道具を見ることができます。まだ本物を見たことがない人は、ぜひ、博物館に足を運び、当時の様子を想像してみてください!