平成25年度第3回鳥取県和牛産肉能力検定委員会概要

日 時 平成25年11月14日(木)午後1時30分~午後3時15分
場 所 東伯郡琴浦町松谷606 鳥取県農林水産部農林総合研究所畜産試験場
出席者  河本委員、柴田委員、藤原委員、高橋委員、岸本委員、
    尾古委員、天野委員、木嶋委員、宮崎委員、國岡委員、山本委員
    畜産課 野儀係長、JAいなば 平木氏
事務局 畜試  赤井場長、田中室長、小江研究員  

内容
1 鳥取県和牛産肉能力検定委員会の運営について
説明等
・鳥取県附属機関条例が新設され、検定委員会は附属機関の一つに位置付けられた。
・このため委員会規約は失効し、今後は条例に基づいて委員会は運営されることとなる。
・また、委員の任命も畜産試験場長が任命してきたが、今後は県知事の任命となる。
・これまでは委員の代理出席を可としてきたが、条例での委員は個人に任命するものとの考えであることから、代理出席を不可とする。ただし、これまで代理でも対応されていた農協などから意見を聞いたり、情報を提供することができないことは本委員会開催の趣旨に反することから、代理でも出席をお願いしたい(採決には加われないが)。 
・条例では委員長については記載されていないことから、置かないこととする。ただし委員会の司会進行については、これまでどおり河本委員を議長として引き続きお願いする。

2 協議事項
議題1 「野上茂」の選抜・保留について
         →「野上茂」を現場後代検定不合格とする。
説明等
「野上茂」
・後代検定は以前に終了していたが、全共の種雄牛選びをする上で選択枝を広げておく必要から選抜を保留していた。10月18日に全共出品対策部会が開催されて方針が決定され、「野上茂」は選から漏れたこともあり協議に上げた。
・平成19年10月18月生。血統は「百合茂-第5隼福-平茂勝」。
・伯耆町産
・直接検定 発育+0.1σ、DG1.26、現在の発育は平均程度。
・母牛の産子成績は「安平照」「北景茂」「百合茂」の去勢、去勢、去勢で枝肉重量527.6kg、491.4kg、497.5kg、BMSNo11、5、6。
・現場後代検定成績は事業団との共同利用であることから27頭で調査。枝肉重量467.4kg、ロース芯面積53.8cm2、バラ厚7.8cm、皮下脂肪2.9cm、歩留まり73.1%、BMSNo.6.2。詳細を見て頂くと、一番良いもので去勢、雌にそれぞれBMSNo.10、11。5等級は3頭のみ。悪いものではBMSNo.3があるが、基本的には4等級がほとんどを占めるような状況(4等級以上発生率は70.4%)。
・検定外の成績も参考までに掲載しており、BMSNo.10が1頭あるもののBMSNo.4,5,6あたりが多い。
・オレイン酸含有率については53.3%であり県内平均並。
・種雄牛の予測育種価をみると、脂肪交雑順では36番目になる。
・家畜改良事業団との共同利用で実施していたことから、事業団でも21年度後期候補種雄牛の中から選抜が行われ、順位は上から7番目であったが選抜からは外れた。

意見等
○本牛は、体の伸び、尻型、もも下がりはいい牛。体上線はゆるくはないが若干登り背と感じる。惜しいところは肩端、肩後。
○ストローの在庫量と今後の需要予測はどうか。
 →凍結精液の在庫は5800本程度ある。今後の需要予測は、「野上茂」の父が「百合茂」であり、同じように父が「百合茂」の「百合風」がすでにいるが精液の注文がない。成績は「百合風」より落ちることを考えれば、使っていただけないのではと考える。
○事業団との共同利用とのことだが、事業団の方はどのように言っておられるのか。
 →事業団の方では、枝重、BMS、ロースの育種価を重みづけし、1対2対1の割合で計算をして順位を出している。その順位では25頭中7番目の成績であったが、本当に必要なのは上位の一握りの牛であり、血統的にも特別な特徴があるわけでもなかったことから選に漏れた。
○使ってもらえそうもないのなら仕方がないのでは。事業団が不合格にしているのに鳥取県が合格ですといっても使ってもらえないのでは。
○可もなく不可もなくという感じ。

◎事業団では不合格になったことや、精液の在庫が5800本程度あること。先に合格している「百合風」の利用状況、後に「百合白清2」が控えていることや皆さんのこれまでの意見から「野上茂」を検定不合格としてよろしいか。
 →異議なし。

議題2 「高桜」の選抜・保留について 
     →「高桜」を現場後代検定不合格とする。
説明等
「高桜」
・平成19年9月18日生。血統は「福桜-高森-糸北鶴 」。
・鹿野町産
・発育+1.7σと発育良く、体積感のある牛。 
・当時、県内で「平茂勝」産子が多いということがあり、その流れでない気高系の牛ということで取り組まれた。また、平成17年当時は「福桜」がBMS、ロースともに県内育種価トップであったこともあり、この雄で種雄牛を造成しようと考えた。母の「たないとにしまつ」も産肉成績にいいものを持っている。
・現場後代検定成績は、調査頭数18頭で、枝肉重量487.0kg、ロース芯面積55.2cm2、バラ厚8.1cm、皮下脂肪2.8cm、歩留まり73.4%、BMSNo.5.5。詳細をみると、BMSNo.が二桁のものがなく、4、5、6あたりの数値が多い。しかし、枝肉重量及びロース芯面積については、改良目標数値を超えておりこれまでの牛と比較しても良い結果。
・検定外の成績も掲載しているが、平均BMSNo.が5.5であるとおり、3頭の成績は6、4、6となっている。
・種雄牛の予測育種価を脂肪交雑順に並べると、「高桜」は108番目となる。ただし、枝肉重量、ロース芯の良さと血統的なことも踏まえて協議していただきたい。
・枝肉写真をスライドで説明。番号1,2,3,4,7,9,10,12,13,16,17,18の牛12頭を提示。特徴としては、ロースのサシは小ザシもあるがやや粗めであり、肉色はやや濃いめ、モモ抜けは悪い、枝は張りが少なくうすめに感じる。 

意見等 
○発育については良いと感じ、体の幅、尻の幅といった体積感というところでは良いところがある。体上線は平直でゆるくない。惜しい点で肩端、肩後とあるが「野上茂」に比べるといい。枝肉成績は5等級が3頭、オレイン酸は54.3%、枝肉重量は本牛が体積感のある牛ということもあり487kg、父が「福桜」ということでロース芯の大きさ、小サシ、モモ抜けの良さを伝えられたらということで造成されたわけだが、肥育成績ではやや肉色の濃さとモモ抜けに若干難があると思われる。
○凍結精液の在庫量は。
 →約6千本ある。
○私のところでも検定を行ったが、重量はあったがBMSが期待外れだった。今の肉の需要動向から考えると、等級間格差が狭くなっているので重量のとれる牛というのは有利と考えられるが、もう少しBMSNo.があればと感じる。
○肉色、モモ抜けは良くない部分はあるが、先ほどのスライドからみると、深みもあるし幅もある。肉を扱う業者はここまで大きいのは好きではないが、農家が飼いやすくて重量があるのは魅力的。また、「福桜」が父の牛は全国的にもほとんどいないので残してもいいかな。雌で残す場合でも体型はいいと思う。ただ種を付けてもらえるかどうか。もう少し様子をみてもいいと思う。スライドをみるかぎりでは好きな体型。
○もの食いは良さそうという意見があったが、私は良さそうに感じなかった。育種価の期待値よりは検定後の方がいいが、まだこの結果では不十分ということは、この牛が検定にかかる当時は良かったが、今とは望む肉質のレベルが違ったんだということか。背中が強くて繁殖牛には良いと言われたが、あれだけ背が登っているというか、後足が短いというのは子牛に出てくるような気がする。体高が高くて十字部が低いのは、あまり好きではない。
○肥育農家が飼いやすいと言われたが、体型とかをみて飼いやすいということか。
○あのような体型の牛はエサを食べないとならない。肉としては評価はしないが枝肉重量はとれる。
○今は赤肉の嗜好も出てきているように思う。私たち繁殖農家は肥育農家が枝肉重量が多くて儲かるようになればと思う。
○そういう意味では「百合風」の精液がどんどん出て行かなければならないが、この種が出ていないのは全く宣伝してないのか、名付けの親が良すぎるとか。
 →PRが足りないということもあるが、「百合風」のBMSが「勝安波」に劣るため、比較されて使われないのでは。「百合風」の枝肉重量はいいのだが。精液の販売状況から見ても「勝安波」以外にはBMSを期待されるのか検定中の「百合白清2」や「白鵬85の3」などが出ている。
○先ほど「野上茂」を保留しないということになったが、「高桜」は脂肪交雑が108番目。そのため、これを残すということになれば条件に乏しいのだが、重量が取れる。それから体型は少し登背ということもあり好きではない。「福桜」の息牛としては置いておく価値はあるのかな。もう少し脂肪交雑があればいいのだが、雌牛の足を引っ張ってしまうように思う。

◎肉質面には難があるが量としては取れる、そして飼いやすさということもあるが、繁殖雌牛として残っていくかということになると、背が強いものの登り背ということで十字部の低いような牛も産まれてくる可能性があれば、繁殖雌牛としては懸念される。「福桜」の雄牛ということで全国的にも少ないということもあるが、約6千本の精液の在庫があることと、今後の利用ということも考慮すると今回の選抜保留については、保留しないということでよろしいか。
○試しにベストマッチしそうな牛につけてみて、こういう牛かとみるのはいいが、次につけるかということになると、2回3回とつけるとは思えない。
 →保留しないということで異議なし。

議題3  平成25年度直接検定第5群「隆福也」の選定について
          →「隆福也」を選定する。
「隆福也(たかふくなり)」
・平成25年7月20日生。血統は「隆之国-福之国-福桜 」。
・鳥取市河原町産
・発育+0.8σ 
・母牛の産子成績は「鶴丸3」「勝安波」「北之庄」の雌、去勢、雌産子で枝肉重量407.6kg、493.9kg、453.9(389.4)kg、ロース芯面積69cm2、59cm2、72(62)cm2、BMSNo11、12、
  8(12)。(後日、協議資料の「北之庄」産子成績の間違いが判明。括弧内が本当の数値)
・優良遺伝子領域は枝肉重量2領域、ロース芯面積2領域、BMS 2領域保有。
・母牛の「ふくふく」は脂肪交雑育種価では県内4番目の牛。
・「福之国」の産子はオレイン酸含有率が高いということもあり、産肉成績とさらにオレイン酸の向上をねらい「隆之国」で雄牛づくりに取り組んだ。
・この牛は受精卵産子。場内でも同じ産子が産まれたが発育の問題があったため委員会での協議は見送った。
・発育は+0.8σであり全体的には平均的な発育の牛。美点としては皮膚、被毛、背腰幅、体伸。惜しい点では肩端、肘後。写真でも肩周りが気になるのが分かる。
・導入は1月セリの予定。

意見等
○発育等を一緒に見に行った。発育は+0.8σであり、体深さは平均程度で特別幅があるという感じでもなかったため、良い点や惜しい点でも上げなかった。体伸びはあるほう。「隆之国」の産子は割と前幅のある牛が多いと思うが、本牛はないわけではないが、それほどでもないため美点に入れていない。ただ背腰幅についてはあると思う。子牛ということはあるが、皮膚のゆとりと柔らかさ、被毛の密度と柔らかさというところはこの牛の一番の良いところと思う。資質面で期待される。惜しい点で「隆之国」の雌牛も多く見てきたが、肩端と肘後というところで「隆之国」産子の特徴が出ていると思われる。
○宮崎の種雄牛を使って種牛造成をしようとした場合は、相手の了解がいるとかということはないか。
 →「隆之国」は民間の精液なので問題ない。
○写真はいつ撮ったのか
 →11月1日に撮った。私が悪いのかカメラが悪いのかピントが合っていない。
○昨日見てきたがこの写真より良かった。フォローじゃないが。
○おもしろい牛じゃないでしょうか。
○「隆之国」で勢いもあるし。基礎雌にねらいを持って取り組まれたのだから進めて欲しい。
○よく分からないのですが、優良遺伝子領域保有状況は何種まであるのでしょうか。系統でという訳か。
 →それほど多くは分かっていないが、例えば枝肉重量では鳥取系で2領域、藤良系で2領域ぐらいが分かっている。鳥取系で枝肉重量2領域となると気高系由来の増体にかかわる領域があって、良いものを2つ持っているということ。ちなみに「平茂勝」はその2つともホモで持っている。当然、全く持っていない牛もある。
○そういう見方で行くと、藤良系の血統がかなりあるにもかかわらず。BMSでは藤良系の領域がないということは、未だ分かっていない部分があるというのか。
  →分かっている部分はあるが分かっている領域を持っていないと言うこと。「隆之国」自体を調べていないので分からないが、「ふくふく」も BMSの能力は非常に高く「北国7の8」「福之国」の流れではあるが、藤良系の遺伝子領域を持っていない。持っている方が良いということで提示している資料ではあるが、この領域をいくつ持っているから良いですよとはなかなか言えない。プラスα的な資料として考えて欲しい。
○期待育種価の枝肉重量が県内供用中雌牛の平均より低いということは、質しか狙っていないという理解をしながら、このいい写真をみせてもらうと、ちょっと気になるのが色が白っぽく写っている。これは本牛の色なのか。「隆之国」をだいぶ産ませてきたが、黒い牛と白い牛が出てきて、あまり白い牛は良くないということを言う人がいる。そこが気になるの。やってみないと分からないが。毎回、候補牛がいないということではこまるので直接検定を実施して様子を見るのもいいのではと思う。
 →現場で見た際は気にならなかった。写真の写り具合にもよると思われるが。
○日光が射してはなかったか。昨日見た時は下の写真(白くない)のような色の感じであった。

◎「隆福也」を導入し、直接検定を行うということでよろしいか。
  →異議なし。

次回開催予定
 1月予定
内容
○改良基礎雌の選定に関すること
○直接検定第6群の選定について
                                ほか

H25年度第3回検定委員会資料.pdf

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