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 鳥取県監査委員は、地方自治法第199条第2項の規定に基づき実施した行政監査の結果に関する報告及び監査意見を、平成24年度行政監査結果報告書(社会福祉法人の会計処理に係る県の指導監査)に取りまとめ、知事等に提出するとともに公表します。その概要は下記のとおりです。
  監査委員:岡本康宏、湯口夏史、興治英夫、前田八壽彦
 なお、地方自治法第199条の2の規定により、監査委員 伊木隆司は、監査を行っていない。
  

第1 監査の概要

1 監査対象事務

社会福祉法人の会計処理に係る県の指導監査

2 監査対象事務の選定理由

 県は、社会福祉法人(以下「法人」という。)の適正な運営と円滑な社会福祉事業の経営の確保を図るため、指導監査を行っているところであるが、平成21年度に県内の法人において不適正な会計処理が判明し、社会的な問題となった。
 その後、県では、法人の指導監査をより適確に行うため、指導監査体制の強化を図ってきた。そうした中、平成23年度には別の法人で不適正な会計処理が判明した。
 このような状況を踏まえ、県の指導監査が、法人の公正かつ適正な運営等を確保する観点で不適正な会計処理の防止を図るとともに、不適正案件に対し速やかに改善措置を講ずることができる実効性のあるものとなっているかどうかについて監査を実施し、事務の改善に資することとした。

3 実施期間

 平成24年7月4日から同年8月23日まで

4 監査対象機関

 鳥取県福祉保健部福祉保健課

5 監査の着眼点

 (1) 法人内部の運営体制に対する指導監査は、適正に行われているか
 (2) 効果的な指導監査を行う体制になっているか
 (3) 指導監査は、実効性のあるものになっているか
 (4) 不適正案件に対して必要な措置が適切に行われるようになっているか
 (5) 指導監査権限の市への移譲に対する対応が十分に取られているか

第2 法人の指導監査の実施状況

 法人の指導監査は、社会福祉法第56条第1項の規定に基づき、法人の運営が関係法令等に基づいて適切に行われているかを確認することにより、適正な法人運営と円滑な社会福祉事業の経営の確保を図ることを目的として実施している。
 指導監査は鳥取県社会福祉法人指導監査実施要綱に基づき、毎年度、指導監査の基本方針及び監査計画を定めて、一般監査と特別監査に区分して実施している。
 一般監査は、全ての法人を対象として、法人の運営状況に応じた実施区分により、定期的に実施している。特別監査は、法人運営等に重大な問題があるため、重点的な指導監査の実施を要すると認められる法人を対象に、随時に実施している。

第3 監査結果及び監査意見

1 法人内部の運営体制に対する指導監査は、適正に行われているか

(1)内部統制(監事監査や役員の内部チェック等)に関する確認について

【監査結果】
 平成23年度に指導監査を実施した法人の約半数近くで内部統制に関して文書指摘があった。
(文書指摘等の主な内容)
・理事会開催前に提出されるべき理事の書面表決書が理事会終了後に提出されていた。
・理事会で借入金の議決を行った際に利害関係者である理事が加わっていた。
・法人と理事長及びその親族の土地取引について理事会の議決がなかった。
・議事録の内容が、不明瞭なものがあった。
【監査意見】
 文書指摘等の中には、理事会や評議員会が形骸化していたり、法人の運営が理事長の親族等の一部の理事のみで行われているのではないかと懸念されるものがあるなど、内部統制が十分に働いていないと思われる状況が見受けられた。
 また、内部統制に関して指摘しているものの、法人の中には文書指摘を受けた後も改善が見られない法人があるなど、内部統制を機能させるための指導が十分浸透しているとは言い難い状況にあった。
  ついては、指導監査に当たっては、議事録の記載内容をこれまで以上に充実するよう強く指導するとともに、議事録等により公正な立場で厳格な審議が行われているかどうかを確認されたい。
 また、必要に応じ、専門的な知識を有している法人指導監査専門員である公認会計士からアドバイスを受ける等により内部統制に関する指導監査の充実を図られたい。
 さらに、法人が内部統制機能の重要性を認識して、公正かつ適正な法人運営を行うよう、役員等を対象とした研修等を実施されたい。

(2)外部監査の活用について

【監査結果】
 国や県は、法人の運営の透明性の確保を図るため、外部監査の積極的な活用を求めている。
 外部監査は一部の法人では活用されているものの、新たな経費負担を伴うことから消極的な法人が多く、活用が進んでいない状況にある。

【監査意見】
 法人は、事業実施に当たって介護報酬、補助金等の公金を受け入れていることから、より一層、運営の透明性の確保を図ることが必要である。
 ついては、公金を一定額以上受け入れている法人に公認会計士等の専門家による外部監査の活用を進める方策を検討されたい。

2 効果的な指導監査を行う体制になっているか

(1) 法人の会計経理を指導監査できる人員の配置及び研修について

【監査結果】
 平成21年に判明した法人の不適正な会計処理を契機として、平成22年4月1日から職員や法人指導監査員(銀行OB等の非常勤職員)の増員及び法人指導監査専門員(公認会計士等の非常勤職員)の配置により順次指導監査体制の強化を図っている。
 また、平成23年7月に福祉保健課内に福祉指導支援室を設置し、さらに平成24年4月からは福祉指導支援室の業務を見直し、法人施設指導室に改組し、法人の指導監査を中心に行うようにしている。
【監査意見】
 指導監査の体制は、平成21年度以降強化されていると考える。
 指導監査を担当している職員が受講している国の研修の内容は、会計実務の基礎的内容が中心であり、国の行う研修だけでは、指導監査マニュアルにある経理に係るチェック項目について細部まで確認して、不適正な会計処理を発見する手法や知識を習得するには十分とは言い難い。
 ついては、担当職員へ指導監査に必要な手法や知識を体系的に習得させるため、計画的に研修が行えるような体制づくりを検討されたい。
 

(2) 法人指導監査専門員の活用について

【監査結果】
 法人指導監査専門員を配置した平成22年度以降の指導監査では、毎年指導監査を実施すると判断した法人等に対し、必要に応じて法人指導監査専門員が同行することとしているが、平成23年度の法人指導監査専門員の同行実績は、当該年度に指導監査を実施する毎年度指導監査が必要な法人の約3割に留まっている。
 職員及び法人指導監査員と法人指導監査専門員との指導監査時における役割分担や内容に関する事前打合せは、特に個別の問題がある場合にのみ行っている。
【監査意見】
 指導監査の計画を立てる際には、法人指導監査専門員と協議することが、より効率的な指導監査につながるものである。
 また、指導監査を効率的かつ効果的に実施するため、事前に法人指導監査専門員と入念に打合せを行い、法人指導監査専門員の専門的知識や技能を最大限に活かすべきである。
 ついては、指導監査の実施計画の立案に当たっては、法人指導監査専門員の意見を踏まえられたい。
 また、不適正な会計処理が懸念される法人の指導監査に当たっては、できる限り法人指導監査専門員を同行するよう検討するとともに、実施前には法人指導監査専門員と法人個々の状況に応じた指導監査方法の打合せを十分に行われたい。

(3)不適正な会計処理が懸念される法人に重点を置いた指導監査について

【監査結果】
 毎年指導監査を実施する法人は、専ら文書指摘の件数のみに着目して決定していた。
 法人の現況報告書(組織、事業内容、財務諸表等)、監査調書や文書指摘等の書類を年度別にまとめて綴っており、法人毎には整理を行っていなかった。
【監査意見】
 指導監査は、法人の組織、事業内容、経営状況、文書指摘の内容とその改善状況等の情報を事前に十分把握して実施する必要がある。
 ついては、法人毎に指導監査に必要な情報を一元的に整理し、分析及び評価を行い、不適正な会計処理が懸念される法人に対して、重点的に指導監査が行えるよう検 討されたい。

3 指導監査は、実効性のあるものになっているか

(1)不適正な会計処理の適確な把握について

【監査結果】
 指導監査マニュアルは、国の指導監査要綱に基づき作成しているが、平成21年度に不適正な会計処理が発生したことから、平成22年度以降は指導監査に当たっての着眼点や考え方を追記するなど県独自の指導監査マニュアルを作成している。
 この指導監査マニュアルは、指導監査におけるチェックリスト及び法人の自主点検という2つの用途に使用されている。
【監査意見】
 不適正な会計処理を発見して是正させるためには、近年改善命令を発した土地取引や本部と施設との間の資金異動等の不適正事例を参考としながら、指導監査を実施する必要がある。
 ついては、指導監査を実施する者が過去の不適正事例を重点的にチェックでき、不適正な会計処理を適確に把握できるような手引書等を作成されたい。

(2)法人の施設の経理状況の確認について

【監査結果】
 施設経理について、福祉保健課は近年発生した不適正事例を踏まえ、財務諸表や関係帳簿等で会計・経理の確認を行っているが、保育所等を除き、施設現場での書類や現金の確認は行っていない。
 一方、各福祉保健局の施設の指導監査では、施設基準や利用者へのサービス等の処遇面の確認が中心となり、経理面はほとんど確認できていなかった。
【監査意見】
 法人本部と施設との間の不適正な資金異動や施設における現金管理に関して不適正な会計処理が行われていたことは、施設の経理処理の確認が十分でなかったことに一因があると考えられる。
 ついては、法人の指導監査を行う福祉保健課と施設の指導監査を行う福祉保健局とがこれまで以上に連携を密にして、法人の施設の経理状況の確認が計画的に実施されるよう検討されたい。

 (3)指導監査の実効性の確保について 

【監査結果】
 一部の法人の指導監査時に関係書類の隠蔽や指導監査に協力しないなどの妨害が発生し、指導監査の実効性を確保することが困難な事例が認められた。
【監査意見】
 指導監査が実効性のあるものとなるよう、隠蔽や妨害があった場合には公表することを検討するとともに、これらに対して、強制力を行使できる制度の整備を引き続き強力に国に要望されたい。

4 不適正案件に対して必要な措置が適切に行われるようになっているか

(1)指導監査結果に基づく情報共有について

【監査結果】
 指摘事項は、指導監査マニュアルによる指摘区分に沿って、内部の決裁を受けて決定している。
 なお、特に重要な案件については、上司と協議を行っているが、その他の案件については、通常の決裁手続で処理しており、課内で指導監査結果に係る情報共有を行うための検討会等は行っていない。
【監査意見】
 指摘事項の内容やその要因を組織内で意見交換して検討することは、他法人の不適正な会計処理の未然防止や早期発見に有効である。
 ついては、指摘事項の決定に当たっては、予め組織で情報共有するという観点で内容確認の場を設けて関係職員で総合的に検討されたい。

(2)文書指摘後の改善指導等について

【監査結果】
 平成22年度の指導監査で文書指摘を行ったにもかかわらず改善がなされず翌年度の指導監査で同様の文書指摘を行っているものがあった。
(主な未改善の内容)
・理事長の報酬の判断となる業務及び勤務の実態の確認ができる書類がなかった。
・入札を行うべき発注金額のものを随意契約で行っていた。
【監査意見】
 指導監査により文書指摘した事項が翌年度も改善されていないことは大きな問題であり、このまま未改善の状況が放置されれば公正かつ適正な法人運営に支障が生ずると考える。
 なお、契約に関しては、法人は公共性が高いことを認識して、安易に特定の業者と随意契約することなく、入札により競争性の確保が図られるよう指導監査すべきである。
 ついては、不適正案件が未改善のまま放置されることのないよう引き続き改善状況を確認するとともに、必要に応じて改善命令を発する等により対応されたい。

(3) 改善命令の発動基準の策定について

【監査結果】
 社会福祉法では、改善命令に関する規定はあるものの、それを発動する場合の具体的な基準等は定められていない。
【監査意見】
 改善命令は、法人の不適正案件を速やかに改善させるための有効な手段の一つと考える。しかし、社会福祉法等には改善命令を発動する場合の具体的な基準等が定められておらず、県も定めていないことから、発動を判断しづらいと考える。
 ついては、法人の不適正案件が迅速かつ適切に改善されるよう、不適正案件の軽重を区分して点数化する等の客観的かつ透明性のある改善命令の発動基準を策定されたい。

5 指導監査権限の市への移譲に対する対応が十分に行われているか

[法人の指導監査権限が移譲される4市からの聴取内容]
○県への要望
・指導監査技術等の研修を開催してもらいたい。
・県が行う指導監査に同行し、指導監査のノウハウを習得したい。
・市が行う指導監査に同行してもらい助言を受けたい。
・人件費等の財源措置の協力をお願いしたい。

(1)指導監査権限を円滑に移譲するための対応について

【監査結果】
 県は4市の担当者への説明会等を行っており、また、指導監査の権限移譲に向けた研修会の実施や県の指導監査への市職員の同行を予定している。
 また、法人ごとに組織運営、経営状況、文書指摘などの情報を整備して引き継ぐことを予定している。
【監査意見】
 これまで指導監査業務を行っていない4市が法人の指導監査を適正に実施するためには、引き続き権限移譲により生じる様々な課題へ適切に対応する必要がある。
 ついては、市が権限移譲後の指導監査を円滑かつ効果的に実施できるよう、市の要望を踏まえながら細やかで適切な対応を図られたい。
 また、国に対して、指導監査権限の移譲に関して財政面の支援措置が適確に行われるよう要望されたい。

(2)指導監査権限を移譲する法人の内部統制に係る確認について

【監査結果】
 指導監査権限を移譲する法人の指導監査において、県は通常の指導監査と同様に実施しており、特に内部統制機能の充実に関して重点を置いた対応は行っていない。
【監査意見】
 法人の運営が公正かつ適正に行われるためには、法人の内部統制機能を充実させることが重要であるが、前述のとおり一部の法人では内部統制が十分に機能しているとは言い難い状況も見受けられている。
 内部統制が十分に機能していない法人の指導監査権限を移譲した場合、市の指導監査への負担が増加すると見込まれる。
 ついては、市へ指導監査権限を移譲する法人の今年度の指導監査に当たっては、法人の内部統制機能の充実の観点も踏まえた指導監査を実施されたい。

(3) 権限移譲後の市への協力体制について

【監査結果】
 県は、監査技術の向上を図るための研修会の開催を予定している。
 一方、4市は、指導監査実施に当たって、実施内容や体制整備に関して不安を抱いている。
【監査意見】
 4市とも権限移譲後の指導監査の実施に関して不安を抱いていることから、指導監査が円滑に実施されるよう対応する必要がある。
 ついては、権限移譲後の市からの指導監査に関する相談や要望に迅速かつ適切に対応でき、必要な情報を提供できる相談窓口の設置を検討されたい。

6 総括的意見

 平成12年の介護保険法の改正以降、特定非営利活動法人や株式会社等が社会福祉施設の運営に参入する等、法人の経営環境に質的な変化がもたらされた。
 このような中、県の指導監査の結果からは、多くの法人は概ね適正に会計処理を行っているものと認識できるものの、一部の法人において不適正な会計処理が見受けられたことから、指導監査を実効性のあるものとするための対応が必要となっている。
 ついては、法人の公正かつ適正な運営と社会福祉事業の円滑な経営の確保を図るため、指導監査が法人の内部統制機能の充実や不適正な会計処理の早期改善と未然防止に向けて、より一層実効性のあるものとなるよう努められたい。

  

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