防災・危機管理情報


新春座談会
備えあれば憂い梨
防災支えの地域づくりを

  鳥取県中部地震から10年。震災の教訓も生かしながら、災害に強い地域づくりを進める取り組みが広がっています。今年10月には本県で「ぼうさいこくたい(防災推進国民大会)2026」が開催。大会は一層の防災力向上への契機にも。それぞれの立場、地域で力を尽くす皆さんから、“災害に強い鳥取県”に向けた展望をお聞きしました。
防災支え愛の地域づくりをのイメージイラスト(県政だより1月号の表紙)


EVENT

ぼうさいこくたい2026 in 鳥取
  国民の防災意識向上や防災活動の活性化などを目指し、産学官民の関係者が活動発表、交流する日本最大級の防災イベント(内閣府等が主催)

【開催日】 10月17日(土)・18日(日)
【会場】 エースパック未来中心、鳥取県立美術館 等

白鳥(しらとり) 孝太(こうた)さん
白鳥孝太さんの写真1
鳥取県社会福祉協議会 鳥取県災害福祉支援センター災害支援専門官
阪神・淡路大震災で支援活動を経験。国際NGOで避難者支援、被災地行政の支援、復興まちづくりなどに従事。鳥取県中部地震では被災者支援を担当。

石津(いしづ) 明加里(あかり)さん
石津明加里さんの写真1
鳥大防災Lab.所属/ぼうさいこくたい2026鳥取県運営委員会副会長
鳥取大学2年。土木工学を専門に学びながら、防災サークル「鳥大防災Lab.」に所属し公民館や学校での防災意識啓発などに取り組む。

三津国(みつくに) 美枝子(みえこ)さん
三津国美枝子さんの写真1
松崎地区伝統市「三八市」実行委員
「三八市」実行委員会立ち上げメンバーの一人。自営業の傍ら、多彩な仲間たちとともに人と人とを繋ぐ場の創造がライフワークに。

松本(まつもと) みゆきさん
松本みゆきさんの写真1
福米中学校区防災体験キャンプ実行委員長
2人の娘を育てる母。福米中学校区防災体験キャンプに親子で参加、その後運営に参加し実行委員長として地域の防災に力を注ぐ。

平井(ひらい) 伸治(しんじ)
平井知事の写真
鳥取県知事


白鳥 孝太さん
「声をかけあえる」地域づくりを

白鳥孝太さんの写真2


石津 明加里さん
実体験通じた学びを大切に

石津明加里さんの写真2


三津国 美枝子さん
コミュニティ育み地域の力に

三津国美枝子さんの写真2


松本 みゆきさん
子どもの経験、未来に繋げたい

松本みゆきさんの写真2


平井伸治
絆社会が私たちの素晴らしい財産


地域で紡ぐ防災力

知事  明けましておめでとうございます。今年は中部地震から10年の節目。地域総出で行方不明者を発見し死者ゼロとなり、集会所で「支え愛避難所」を設けるなど、「支え愛」の力が災害を乗り越えられた最大の要因でした。現場主義ですべての一部損壊住宅やお店の復旧を支援する県独自策を投入し、他県より早く復旧が進みました。
  節目に合わせ「ぼうさいこくたい」を倉吉で開催し、全国に向け、鳥取県は地域の絆、「支え愛」で災害を跳ね返した力があるとお見せしましょう。併せて、私たちの地域の防災力を、さらに高める機会になれば。皆さんと一緒に考える年にしたいと考えています。

白鳥 中部地震では、一軒一軒を訪ねて回り被災された方のそれぞれの状況に合わせて支援に繋ぐ「災害ケースマネジメント」に携わりました。能登半島地震では福祉の専門職で構成された鳥取県DWAT(災害派遣福祉チーム)として避難所で活動しました。
  避難者の方々が早く地元地域に帰れることが大切で、そのためには「安心して暮らせる地域づくり」に普段から取り組んでおくことが必要だと痛感しました。「声をかけあえる」地域づくりのために、県や市町村、社会福祉協議会がお勧めしているのが「支え愛マップ(災害時にも(・・)支援が必要な人、声かけができる人、避難場所や避難経路などを、住民同士で話し合いながら描き込んだ地域の地図。災害時だけでなく、日ごろからの「繋がり」や「支え合い」の大切さを再確認する。)」です。

DWATの活動の様子
避難者の関連死や二次被害を防ぐための活動をするDWAT(石川県)

避難所運営ゲームの様子
参加者同士で話し合いながら課題に取り組む「避難所運営ゲーム」(県立米子西高校)


知事  丁寧に福祉も含め解決策を見出す「災害ケースマネジメント」を全国で初めて実行。地域で手を差し伸べる支え愛が全国から評価されていますね。

石津  「鳥大防災Lab.」では、避難所運営について学んだり、地域の方や子どもたち向けに防災ボトルや新聞紙スリッパづくりの体験ワークショップ、鳥取県版HUG(避難所運営ゲーム)の研修会などを行ったりしています。特に子どもたちに対しては、実体験を通して防災を身近に感じてもらうことを大事にしています。
  HUG研修会では、参加された方が自分たちの地域の状況を踏まえて避難所運営の課題を考え、実際さながらに創意工夫される様子が印象的ですね。

防災ボトルや新聞紙スリッパづくりの体験ワークショップの様子
子どもたちと楽しみながら防災を学ぶ(鳥取市立面影小)

浜村自主防災会のHUG研修会の様子
浜村自主防災会へのHUG研修会。地域との連携で防災力アップを図る


知事  鳥大防災Lab.の皆さんには鳥取県版HUG開発にも携わっていただきました。地域で考え防災力を高めていくのが、鳥取県らしさかもしれませんね。

三津国  松崎地区の伝統市「三八市」を復活させるために仲間と立ち上がりました。また、空き店舗だったところにコミュニティカフェ「梅や」を作り、地域の方が繋がる場、移住者をサポートする場となっています。地域のお年寄りの避難誘導訓練や、防災ワークショップなど、地域防災力の向上にも取り組んできました。
  中部地震の際は、移住者の若者たちがお年寄りへの声掛けや避難誘導に走ってくれるなど、防災における地域づくりの重要性を改めて感じました。

 三八市の様子
三八市で、通りは賑わいを取り戻し、人と地域が繋がる場に

三八市実行委員会のメンバーの写真
パワフルな女性が集まった実行委員会メンバー


知事  普段から結びつきがあったからこそ震災時にも支え合うことができたんですね。象徴的なエピソードで、大いに学ぶべきモデルです。

松本  防災体験キャンプでは、実際の避難所となる小学校の体育館に一晩泊まります。段ボール1枚で床に寝たり非常食を食べたり煙体験をしたり、親子で一緒にさまざまなことを体験します。災害は、子どもが1人の時に起こるかもしれない。命を守るため、子ども自身に正しい知識や経験を持たせてあげることがとても大切なんですよね。また、キャンプを通じて地域の方が繋がっていくことが地域防災の役に立っているとも感じています。

 防災体験キャンプでのカードゲームの様子
防災体験キャンプではカードゲームなども活用し知識を深める

体育館にはられたテントの写真
実際にテントでの宿泊も体験する貴重な機会


知事  子どもたちが自然な形で災害時に何が大切なのかを学んだり、どうやって避難するかをみんなで考える。将来に繋がるモデル的な事業で、他の地域に広がればと願います。
  皆さんのお話から、世代から世代へと防災の知恵を引き継いでいくことや、地域の中でみんながそれぞれの役割を果たしていくことの大切さが伝わってきました。

繋がりが地域を守る

白鳥  災害福祉支援センターで取り組んでいる防災福祉教育では、小中学生を中心に親子や地域の方々を対象に「これまでの災害から学ぶこと」をお伝えしています。「いのちを守るために、自分に出来ること」がテーマです。
  また、障がい者や医療的ケアが必要な方たちとそのご家族にとって「安心して避難できる場所」が必要で、社会全体にとっても大切なことです。当事者やご家族を中心に地域住民や学校、福祉施設や行政などが互いに協力し合って、はじめて実現すると思います。「自助、互助、共助、公助」すべての連携が必要です。
  「ぼうさいこくたい」では、それぞれが「いのちを守るため、私には何ができるか?」のヒントを持ち帰れる、そんな場になればいいですね。

石津 鳥大防災Lab.では、今後もワークショップやHUGの研修を通じて、防災に関心を持つきっかけを提供していきたいと考えています。未来を担う子どもたちに興味を持ってもらうことも意識しています。HUGは、地域の方の意見もいただきより良いものにしていきながら、どう全国に広めていくかも考えていきたいですね。
 「ぼうさいこくたい」に向けて、大学生の立場から防災にどう関わることができるのか、他大学とも連携しながら考えていきたいなと思っています。

三津国  中部地震では、日頃のコミュニケーションの大切さを実感しました。三八市やカフェ梅やが、地域の繋がりを守り育てる場であり続けられるようこれからも頑張っていきます。震災から10年が経ちますが、防災意識が薄れてしまわないようワークショップや訓練も続けていきたいと思っています。
  また、例えば避難所が誰にとっても穏やかに過ごせる場所となるためには、女性の目線で考えることも重要ですよね。私たち女性が多い会ならではの視点で、地域の役に立っていけたらと考えています。

松本  少子高齢化社会の中で、いざ災害が起こったときにカギになるのが中高生の力だと思っています。小さいうちに防災キャンプやHUGを体験して少しでも知識や経験を持った子どもたちが力を合わせてくれれば、きっと大きな力になります。子どもたちが楽しみながら学ぶという点を大切にしながら、今後も防災体験キャンプを続けていきたいと思います。その上で、これまでの経験も踏まえて次に何ができるか。地域から、企業や行政とも連携しながら少しずつでも繋がりを広げ、一歩進んでいけたらと考えています。

知事  皆さんそれぞれに、「ぼうさいこくたい」も活用し、その先の安心、安全を見据えていらっしゃること、大変にありがたいと思います。
  皆さんのお話にもあったように、大切なのは地域のコミュニティの力です。例えば「支え愛マップ」。現在、約3分の1の集落で取り組まれています。作成過程で地域の実情が自然と共有でき、災害時にはこれを基に行動するもので、中部地震でも役立ちました。さらに、今では避難にあたって支援が必要な方一人ひとりに即した「個別避難計画」の策定も進んでいます。DWATの整備など体制づくりも進め、福祉避難所開設などの工夫を図っています。
  誰にとっても過ごしやすい避難所運営のためには、女性の参画も非常に重要です。女性のための避難物資の備蓄のほか、トイレ、食事、ベッドなども順次整備中。県民の皆様の安心に繋げていきたいと考えます。
  災害はいつ起こるかわからない。いざ起こった時、行政は既存の枠組みにとらわれず現場で必要とされることをすぐにやる。これが早期の復旧にも繋がります。その片方で、地域の皆さんが自分たちにできることを協力してやっていく体制、風土が根付いていけばさらに強い地域になります。「ぼうさいこくたい」が、その推進力になればと考えます。
  「鍬をそろえて山畑の春日うちかえす」(河本緑石)。
  みんなで力を合わせて畑を耕すように、絆を大切に、県民皆が“(うま)くいく”よい年にと祈ってます。

新春座談会の様子



 

 

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