令和3年度の当初予算編成等に当たっての留意事項

令和2年10月19日
総務部長 

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、県民の生命や暮らし、経済や雇用にも大きな影響を与えており、感染収束の見通しが立たない中、今後は、ウィズコロナ、ポストコロナを生き抜くための発想の転換が求められている。このような状況を踏まえ、令和3年度当初予算においては、本年改訂する「鳥取県の将来ビジョン」の実現を見据え、「新型コロナウイルス感染症対策の強化」、「移住定住・産業の分散化の推進」、「デジタル化・ICT化の展開」などを軸に、さらなる医療提供体制の充実・強化や「新しい生活様式」による感染防止対策、地方への企業移転や新たな人の流れの創出、さらには、遠隔や非接触などの新しい価値観に対応するオンラインの活用やSociety5.0社会の実現など、新型コロナウイルスとの共存や感染収束後を睨んだ施策を進めていくことが必要である。また、政府は、規制改革を最重要政策に位置づけていることから、押印や書面、対面撤廃に向けた動きなど、デジタル化推進に向けた動向にも留意し、本県としても推進していくことが必要である。さらに、本年3月に策定した第2期地方創生総合戦略「鳥取県令和新時代創生戦略」に掲げる目標を実現するため、持続可能な地域づくりなど、現下の全国的課題への対応も含め、地方創生の一層の推進に向けて、機動的かつ効果的に政策を展開していかなければならない。
 その際、「財政誘導目標」を踏まえ、将来への負担をできる限り増やすことなく、持続可能な県政運営の道筋を堅持することとし、行財政改革の推進やスクラップ・アンド・ビルドの徹底など、引き続き、事業の大胆な見直しと重点化を図る。また、働き方改革として、予算要求業務の省力化、負担軽減に向けた取組の実施など、効率的な予算編成を行うとともに、「鳥取型オフィスシステム」を活用した予算要求聞取りなど、新型コロナウイルスの感染拡大防止にも配慮した予算編成作業を行う。
 ついては、以下の事項に留意されたい。

  

1.基本的な考え方

  

(1)県財政を取り巻く厳しい状況

 国の財政状況は、令和元年度末の債務残高が対GDP比237%と、主要先進国中最悪の水準が続く中で、景気の悪化に伴う税収減と新型コロナウイルス対策に係る巨額の支出による財政赤字の拡大により、令和7(2025)年度までに国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化という目標の達成が大変厳しい状況となっており、今後、この危機的状況からの脱却に向けて、経済再生と財政健全化に向けた取組の一層の強化が行われるものと想定される。
 本県においても、依然として高い水準にある公債費や高齢化による社会保障関係費の増加など様々な財政圧迫要因を抱えている中で、新型コロナウイルスの影響による大幅な県税収入の減が見込まれ、また、本県財政に大きな影響のある地方交付税についても、原資となる国税収入の減が見込まれるなど厳しい状況が想定される。
 これらのことから、本県財政は今後も厳しい財政運営を強いられることを予想しなければならない状況であり、選択と集中をより一層進め、財政の健全化を推進する必要が高まっている。

(2)新型コロナウイルス対策とウィズコロナ、ポストコロナに向けた取組

 新型コロナウイルスの感染拡大が未だ収束を見ない中、次なる感染の波への備えにも万全を期すため、生命と健康を守るための取組に最優先で取り組む必要がある。加えて、国は、「経済財政運営と改革の基本方針2020」において、新しい未来に向けて、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた経済・財政一体改革の推進や「ウィズコロナ」の経済戦略による経済活動の段階的な引上げ、さらには、デジタルトランスフォーメーションの推進や東京一極集中型から多核連携型の国づくりなどによる「新たな日常」の実現に向けた施策を推進することとしている。
 本県においても、医療提供体制の更なる充実・強化や「新しい生活様式」による感染防止対策など、新型コロナウイルス対策に最優先で取り組むとともに、疲弊した地域経済の回復や、ポストコロナを見据えた地方への企業移転や新たな人の流れの創出、さらには、経済・教育分野におけるオンライン活用の充実・強化や、非対面型ビジネスモデルへの転換支援など、危機的状況をチャンスに変えるような視点や、ウィズコロナ、ポストコロナにも貢献できるような視点をもって事業を組み立てること。
 なお、イベント等に係る事業の組立にあたっては、「3密(密閉、密集、密接)」を避けた会場設営や、新型コロナ対策安心登録システムの活用、オンラインでの実施など、感染防止対策を施すことを踏まえた内容で予算要求すること。

(3)デジタル化の推進・Society5.0社会の実現やICT技術の活用による事務の効率化

 デジタル化やICT技術の進展により、全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、少子高齢化や地方の過疎化など地域の課題や困難を克服する、Society5.0社会の実現に向けて取り組んでいく必要がある。

 こうした中、電子申請の更なる活用や業務のペーパーレス化、AIやRPAといったICT技術を活用することにより、一層の業務の効率化を行い、働き方改革や県民サービスの向上に資する取組について積極的に検討するとともに、県内産業における先端技術の活用や行政手続きのデジタル化など、Society5.0社会の実現に向けて取り組む。あわせて、各事業の予算要求に当たっては、関係する事業者など、県民の働き方改革の観点からも事務負担軽減等の検討を行うこと。
 その際、デジタル時代や新しい生活様式に移行するための行政手続きの見直しについて検討する「新たな行政様式確立プロジェクト」を、令和3年度当初予算編成作業に連動させることにより、デジタル化の推進を予算を絡めた実効性の高い施策に練り上げること。

(4)SDGsの理念を踏まえた施策の推進

 少子高齢化時代において、地域が急速な人口減少や地域経済の縮小を克服し、将来にわたって成長力を確保するには、人々が安心して暮らせるような、持続可能なまちづくりと地域活性化が重要となってくる。
 本県においても、本年4月に「とっとりSDGs宣言」を行ったところであり、循環型社会の推進などの環境施策や、健康づくり、地域コミュニティ活性化による持続可能な地域づくりなど、地域課題の解決の促進に向けて、全ての分野において、積極的にSDGsのゴールを意識した事業の組立を行うこと。

(5)徹底した事業見直しと重点化による重要施策の積極的な推進

 県財政を取り巻く状況が極めて厳しくなると見込まれる中で、重点施策に県の資源(財源・人員)を傾注する必要があるため、県民の皆様からの意見等を踏まえ、機動的に、最小の経費で最大の成果を導く、効果的な事業の立案を行うととともに、事業のスクラップ・アンド・ビルドをこれまで以上に徹底すること。
 その際、単に事業予算だけではなく、事業遂行する際のマンパワー等にも留意し、組織全体でのトータルコストの膨張は、厳に慎むこと。
 なお、新型コロナウイルスの影響下において、会議や打ち合わせ等については、引き続き、出張の必要性を適切に判断し、ウェブ会議システム等を積極的に活用するなど、感染防止に努めるとともに、ポストコロナにおける会議や出張の在り方を定着させるよう取り組むこと。
 したがって、予算要求にあたっては、意義や効果の薄れた事業の見直しや類似事業の統廃合を積極的に行うため、新規事業はもとより全ての事業について費用対効果、必要性・緊急性等を検証するとともに、公共関与のあり方、持続可能性、国や市町村との役割分担などの視点で、思い切った事業の取捨選択を行うこと。
 また、一定規模以上の公共施設整備等の際には、「鳥取県PPP/PFI手法活用の優先的検討方針」に基づき、従来型手法(県の直営実施)に優先してPPP/PFI手法を検討すること。
 以上のことから、特に継続事業に関して、事業目的の明確化及び、成果の説明(定量的評価又は定性的評価)が困難な事業については、廃止を検討すること。

(6)鳥取県産業振興条例、障害者優先調達推進法、鳥取県手話言語条例及びあいサポート条例等を踏まえた対応

 県内産業の育成による県内経済の発展と県民の雇用の確保を目的に制定された「鳥取県産業振興条例」の趣旨を踏まえ、県産品・県産材のより一層の活用に努めるほか、県内在住・県出身の人材、県内事業者の活用を意識した事業の組み立てを検討すること。
 障がい者就労施設等の受注の機会を確保するために制定された「障害者優先調達推進法」の趣旨を踏まえ、障がい者就労施設等から優先的に物品及び役務を調達するよう配慮することとし、予算積算時に障がい者就労施設等から見積書を徴取するなど、積極的かつ計画的な発注につながるよう努めること。また、「鳥取県手話言語条例」や「あいサポート条例」の趣旨を踏まえ、手話通訳者及び要約筆記者の配置に必要な経費を見積もるなど、ろう者が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう配慮するとともに、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の充実と情報アクセシビリティの保障に配慮すること。
  

2.予算編成に当たっての留意事項


  

(1)政策戦略会議と「知事一発査定」

 予算査定に先駆けて「政策戦略会議」等を開催し、戦略的課題や部局横断的な課題に対して、統轄監を中心とした幹部間の連携により方針を検討することとし、その過程においても、県民・団体等の意見交換を積極的に実施するとともに、令和新時代プロジェクトチーム等の場で部局を超えた議論を行うこと。
 政策戦略会議において検討する「政策戦略事業」については、年内は立案段階として十分な議論・検討、事業化に向けた論点整理を中心に行う期間に充て、予算要求を行うこと。なお、働き方改革の観点から、「知事一発査定」を実施し、査定は知事の一段階だけとする。
 また、1月を「政策戦略事業」を中心とした予算編成に充てるため、これを除く「一般事業」については先行して予算要求を行い、1月初めに計上案をホームページで公開する。「一般事業」の査定においても、政策戦略事業同様、これも知事レビューにおいて一発査定とする。
 例年、継続事業で政策的議論の必要性が低い事業についても政策戦略事業として要求されるケースがあることから、効率的に予算編成作業が行えるよう、政策戦略事業については真に政策的議論が必要なものに限定して要求すること。

(2)知事査定、予算要求聞取りにおける新型コロナウイルス感染防止対策

 新型コロナウイルスの感染防止対策として3密を避けるため、また、多くの職員を長時間拘束することによる「費用対効果」に鑑み、知事査定等においては、必要最小限の人数での実施とするとともに、財政課が行う要求課からの聞取りについても、「鳥取型オフィスシステム」を活用した上で、必要最小限の人数で行うこととする。

(3)作業の効率化、省力化による働き方改革の実現

 国全体の働き方改革の動きを踏まえ、県庁自らが働き方改革に率先して取り組む必要があることから、予算要求業務においても全庁を挙げてカイゼン、時間外勤務の縮減に取り組むこと。
 予算要求業務における省力化、負担軽減を図るため、昨年導入した予算要求書の仕様の標準化や、予算要求資料について真に必要なものを厳選し、データベースによる情報共有や既存資料の活用を徹底すること、さらには、議案説明資料と予算要求書については、原則として同一の内容とし、議案説明資料のオートメーション作成機能(予算要求書からワンクリックで転記)の活用を図ること。
 また、原則として、財政課長聞取は行わないこととし(ただし、より効果的な事業とするために必要な場合は、個別に政策的な協議を行う場合がある。)、その他の事業についても財政課が行う要求課からの聞き取りについては、終業時刻までに終了することとする。
 要求課においても、日々の業務改善は、県民のみならず、職員の負担軽減にも繋がることから、本庁と地方機関との間で行われる資料作成などにおいて、例年どおりの前例踏襲による無駄な作業が生じていないかなど、すべての予算要求業務の再点検を行い、資料作成の省力化や作業の効率化に努めること。
 また、契約事務の省力化を図る観点から、現在、単年度で契約している保守管理委託契約等についても複数年契約への移行が適当と考えられる場合には、債務負担行為を活用すること。

(4)「県民とともに作る予算」

 本予算は「県民とともに作る予算」であり、「鳥取県民参画基本条例」の趣旨を踏まえ、事業の企画立案に当たっては、積極的に現場に出向き、現場を担う方々や県民の皆様からの声、各種団体からの意見や提言に素直に耳を傾けながら事業を検討すること。特に、地方創生を先導するための効果的な対策を具体的に打ち出すためには、現場の方々の意見や提言が極めて重要であることから、様々な声に対して県の立場で政策目的を明確化し、事業の効果性も十分念頭に置きながら検討すること。

(5)市町村の役割への配慮

 新型コロナウイルスによる危機的状況を一刻も早く打破すべく、市町村とはしっかりと連携しながら感染防止対策や本県経済の回復等に向けて取り組んでいるところであるが、元来、県と市町村はパートナーであるとともに、市町村は住民に一番身近な地方公共団体であり、住民生活に密着した行政を行っていることに鑑み、県の施策実施に市町村の協力をあおぐに当たってはその自主性を尊重すること。
 特に、各市町村の地方創生が実現し、さらに県全体の地方創生へとつなげていくためには、県と市町村がこれまで以上に連携・協力して取り組んでいくこと。
 したがって、市町村を通じて実施することが現実的、効果的と考えられる施策については、市町村における適切な判断に基づき予算措置等が円滑に行われるよう、令和3年度当初予算編成に当たり、十分に事前の相談・調整を行うこと。
 なお、既存施策であっても、事業の実施状況や現場、市町村からの意見等を踏まえて総点検を行い、市町村の関与や負担のあり方について検証を行うこと。

(6)国の制度・施策に関する情報収集の徹底

 国の予算編成は、「令和3年度予算の概算要求の具体的な方針について」において、引き続き、新型コロナウイルスへの対応を最優先とし、また、事務負担の軽減と作業の効率化の観点から、要求額は、基本的に対前年度同額とするとの方針が示されてはいるが、国もこれまで以上に厳しい財政状況の中での予算編成であり、事業によっては抜本的な見直しや優先順位の厳しい選択が行われることも想定される。
 したがって、様々なチャンネルを使って国の動向等についての情報収集・分析を徹底し、国庫補助金などの有利な財源措置を積極的に活用するとともに、できる限り適切な見積もりを行った上で要求すること。

(7)財源確保に向けた取組の強化

 未利用財産の処分、環境の変化等により遊休化している県有資産の徹底的な洗い出しと利活用、広告料収入の確保、基金や特別会計の総点検、受益と負担の公平の観点から費用を徴収すべきものがないか等、新たな財源の確保について積極的に検討すること。

 国庫の財源措置のみならず、各種公益法人等からの事業内容に応じた助成も含めて、当該助成制度が本県の実情や具体的事業に適合したものかどうかを十分に検証した上で、積極的に活用すること。
 また、ふるさと納税による地域活性化をより一層進めるため、使い道を明確にして共感を得ることにより事業の原資を募る「クラウドファンディング型ふるさと納税」の活用ができないか、既存事業も含め点検を行うこと。加えて、新たな事業を立案する場合には、社会貢献意欲のある企業から原資を募る「企業版ふるさと納税」の活用ができないか、積極的に検討すること。
 なお、有利な助成財源があることのみをもって必要性・緊急性の低い事業を行うことがないようにすること。

(8)予算要求額及び事業数の精査

 一層厳しさを増した本県の財政状況を踏まえ、予算要求段階から更に経費の精査を図ることとし、経費の積算に当たっては、事業ごとの決算額や令和元年度の事業の執行状況を踏まえるとともに、特に新規事業については関係者との調整を十分に行い、事業ニーズを的確に捉えることにより、過大な見積もりとならないよう留意すること。
 なお、補助金については、年度途中で安易に補正予算により増額することのないよう、執行方法についてよく検討した上で積算、要求すること。
 また、予算要求作業の簡素化と、弾力的な予算執行、決算作業の効率化を図る観点から、住民ニーズ等を踏まえた新規事業の打ち出しや事業の再編を行った場合は、徹底したスクラップ・アンド・ビルドの実行により、事業内容や目的等が類似した事業については廃止し、事業数の削減に努めること。

(9)予算編成過程の透明化

 予算要求段階から予算編成過程を公開するので、事業名も含め県民へのわかりやすさを第一に考えて要求書等を作成することとし、特に用語については、いわゆる行政用語や専門用語、外来語やカタカナ語、略語などで県民にわかり難い表記がないかどうかを十分に注意するとともに、必要に応じて注釈を加えること。

(10)規制改革会議や県政モニタリング事業における意見の反映等

 規制改革会議がとりまとめた規制緩和や廃止、手続きの簡素化等に関する県民からの提案に対する対応方針や、県民参加型の行政評価として実施している「県政モニタリング事業」においてとりまとめられた改善提案を踏まえ、それらを可能な限り反映した要求を行うこと。

(11)NPO等との協働・連携事業の的確な対応

 NPO等との協働・連携事業を立案する場合は、所要経費の積算において、実施する事業の内容に応じて人件費を的確に見込むこととするほか、事業実施に当たっての諸手続などで相手方に過度な負担を課すことのない仕組みを検討すること。
  

    

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